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横道世之介・・・・・評価額1750円
2013年02月26日 (火) | 編集 |
世之介さ~ん!大好き~!

不器用だけど一生懸命で、懐かしくも瑞々しい青春の記憶。
「悪人」「パレード」などで知られる吉田修一の同名小説を元に、「南極料理人」沖田修一監督が作り上げたのは、バブルが花開こうとする1980年代中期の東京を舞台に、大学生の横道世之介と彼を取り巻く人々を描く、詩的な味わいを持つユーモラスな物語だ。
綿密に作りこまれた四半世紀前のビジュアルは、世之介世代ど真ん中の私から見ても納得の出来栄え。
高良健吾が不思議な魅力を持つタイトルロールを好演、「ごきげんよう」が口癖のお嬢様ヒロインを演じる吉高由里子が超絶にカワイくて惚れてしまいそうだ。
※核心部分に触れています。

横道世之介(高良健吾)は長崎出身の18歳。
大学入学のために上京した彼は、ずうずうしくて空気が読めないが、誰とでもすぐに友達になれる特技を持っている。
同級生の倉持一平(池松壮亮)と一緒にサンバ研究会に入部したのを皮切りに、世之介は謎めいた年上女性の片瀬千春(伊藤歩)、同性愛者の加藤雄介(綾野剛)らと次々に仲良くなり、なぜか社長令嬢の与謝野祥子(吉高由里子)をガールフレンドにして青春を謳歌する。
そして長い歳月が流れた16年後、世之介の記憶がそれぞれの胸に再び響きだし・・・


誰にでもある、人生の黄金時代。
増村保造の映画でも有名な、井原西鶴の「好色一代男」の主人公と同じ、けったいな名前を持つ横道世之介は、眩い光で人々を照らす太陽だ。
冒頭、新宿駅東口に立つ斉藤由貴のAXIAの巨大看板を見た瞬間、心はあのころにタイムスリップ。
今にして思えばダサダサの若者たちのファッションや、おにゃんこクラブのパチモンみたいなアイドル、当たり前だが誰一人として携帯電話やモバイルデバイスに目を落としていない風景すらも、全てが懐かしい。
この街に降り立った横道世之介は、お人好しで押しが強く、出会った人と直ぐに仲良くなってしまう特質を持っているものの、それ以外はごく普通の地方出身大学生だ。
安アパートに暮らし、大学の講義はそこそこ出席しながら、サークル活動やバイトにも精を出す。
もちろん頭の半分位は女の子の事で占められており、ひょんな事から出会った年上の千春に憧れつつ、超お嬢様キャラの祥子に愛され、それなりにいい感じの仲になる。
ここにあるのは、誰もが経験する若き日の風景であり、160分もの長尺にもかかわらず特別にドラマチックな事件は何もない。
いや、正確に言えば後述する様に一つだけ起こるが、それとてスクリーン中では直接的には描かれない。

本作は、80年代中期を舞台にした青春物語と、主要登場人物たちの16年後の現在を描くゼロ年代のパートが混在するという独特の構成をとっているが、二つの時代はシームレスに繋がり、切り替わりをはっきり示すような演出は無い。
そのため、一瞬目の前で展開しているのがどちらの時代なのか分からずに、観客が混乱する様に作られているが、これはもちろん狙いだろう。
物語の視点は16年後の現在に置かれており、80年代の溌剌とした青春は過去である。
過ぎ去った時間は二度と戻らないから、心の書庫の中でそれぞれの物語として記憶され、それはまるで白日夢の様に儚く、切ない。
希望に満ちて東京生活を始めた頃、世之介の最初の友達となった倉持一平は、世之介によって後に妻となる阿久津唯と引き合わされる。
彼らにとって世之介は言わば恋のキューピッドだった訳だ。
また、同性愛という秘密を抱えていた加藤雄介にとっては、天真爛漫で何の偏見も持たない世之介は、初めて出来た腹を割って付き合える同性の面白い友達だろう。
ある意味、世之介は主役とは言えないのかも知れない。
記憶という物語の中で、それぞれの青春の傍らにいて、主役である自分の人生を彩ってくれた名バイブレイヤー

そして、過去と現在を振子の様に行き来するうちに、だんだんと物語を覆ってゆく不安と死の香り。
世之介は?現在の世之介は何処にいるのだ?
これは、予告編や公式サイトでも示唆しているから書いても良いと思うが、ゼロ年代の今、彼はもういないのだ。
その事が明示されるのが、彼の愛した二人の女性、千春と祥子の現在を描くパートである。
2001年に新大久保で起きた列車事故を記憶している人は多いだろう。
線路に転落した男性を助けようとして、韓国人留学生と日本人カメラマンが線路に下りたが、間に合わずに三人とも亡くなってしまった事故。
どうやら横道世之介は、このカメラマンをモデルとしている様なのである。
もちろん、本作は完全なフィクションで、世之介と実在のカメラマンも全くの別人だ。
だけど、見ず知らずの他人のために頑張って、その結果命を落としてしまうという人生には、悲しみと同時に「なるほど世之介ならやるかもね」というどこか突き抜けた希望を感じる。

バブル時代にオヤジを転がしていた千春は、実は東北の田舎の出身。
世之介に憧れられながら、かつての自分の様な彼をどこか姉の様に見守っているキャラクターだ。
そして、ラジオDJとなった現在、自局のニュースで懐かしい人の悲しい死を知るのである。
一方、ガールフレンドの祥子は、世之介との付き合いで大きく人生を変える。
彼女が長崎の世之介の実家に遊びに行った時、70年代から80年代にかけて大きな問題になっていたベトナムからの難民船、所謂ボートピープルに偶然にも遭遇してしまうのだ。
その悲惨な境遇に衝撃を受けた彼女は、現在では難民救援のために世界を駆け回る仕事をしている。
運転手付きのセンチュリーに乗ってヒラヒラのドレスを着て、足の立つプールですら溺れてしまう様なお嬢様にとって、世之介は青春の象徴であると共に人生の転換期の大切なパートナー

80年代の過去を描く物語は、祥子が海外への短期留学を決意し、世之介がカメラマンへと進路を定める所で終わっている。
その後の彼らに何が起こったのか、どんな人生を歩んだのかは一切描かれない。
現在の祥子は、幼い女の子に初恋の人の思い出を聞かれ、ちょっとだけ考えて「普通の人」と答え、ただ過ぎ去りし日に未来へと歩む世之介と自分自身に追想の笑みをたたえるだけ。
そう、横道世之介はユニークではあるが、普通の青春を送った普通の人だ。
だからこそ、彼の存在はスクリーンを飛び出して、観客一人ひとりの記憶の物語を呼び覚ます。
まるで、私やあなたの青春にも世之介がいて、あの天真爛漫な笑顔で手を振っているかの様に。

毎度食事シーンに拘る沖田修一監督らしく、今回もやたらと食べるシーンが多く、なおかつ量も多い。
「南極料理人」の伊勢海老フライを思わせる巨大ハンバーガーとか、スイカとか皿うどんとかラブラブなクリスマスケーキとか、観てるだけでお腹いっぱい。
テレビで吉高由里子が「私も高良くんもパンパンです」と言っていたが、なるほど二人共頬っぺたが膨らんでる。
でもそれがいかにも育ち盛り伸び盛りの若者らしくてとても良い。
スクリーンで躍動する彼らを通して、自己の中にあるほろ苦い青春の痕跡をふと垣間見て、明日を生きる力をもらう。
切なくて愛しい、宝箱の様な傑作である。

今回は、80年代の大学生の話という事で、私も当時よく飲んだ昭和の安酒の代表「焼酎のポッピー割り」をチョイス。
冷やしたビールジョッキに甲種焼酎を注ぎ、これまたキンキンに冷やしたホッピーを焼酎1に対して5注ぎ入れるだけ。
元々甲種焼酎が安いのに、それが5倍も楽しめる庶民の一杯。
当時バブルの時代に乗った人は高級酒バンバン飲んでたけど、普通の大学生なんてだいたいはこの手の安酒で一晩楽しんだ物だ。
栄光の80年代に乾杯!
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