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パラノーマン ブライス・ホローの謎・・・・・評価額1600円
2013年04月06日 (土) | 編集 |
街の歴史に秘められた謎を探れ!

魔女伝説のある街を舞台に、幽霊が見える特殊能力者の少年の冒険を描く長編人形アニメーション
超絶クオリティの映像は「コララインとボタンの魔女」で知られるストップモーション専業スタジオ、ライカの大労作だ。
監督・脚本は「コラライン」でストーリーボード・スーパーバイザーを務めたクリス・バトラーで、これが長編初監督。
共同監督に、アードマン初のCGアニメーション「マウス・タウン ロディとリタの大冒険」サム・フェル
CG全盛の現代にあって、米国では6週に渡ってトップ10圏内に食い込むという健闘を見せたヒット作だ。

300年前の魔女狩りによって、殺された魔女の呪いが今も残るという魔女伝説の街、ブライス・ホロー。
内気な少年ノーマン(コディ・スミット=マクフィー)は、生まれつき死者を見て話ができる能力があるが、それ故に家でも学校でも浮いた存在だ。
ところがある日、親戚のプレンダーガスト(ジョン・グッドマン)の幽霊が現れ「自分は死んだので、これからはお前が役割を引き継がなければならない」と告げる。
魔女は自分を死に追いやった7人の人間に不死の呪いをかけており、彼らの復活を阻止するためには毎年墓の前でおとぎ話の本を朗読する儀式をせねばならないと言う。
ノーマンは、言われた通りに7人の墓で本を読むのだが、なぜか儀式は効かず、ゾンビが復活してしまう・・・


ブライス・ホローのモデルとなっているのは、マサチューセッツ州セイラムだ。
魔女狩りの地として知られるこの街では、1692年3月から始まった魔女裁判によって200人以上が告発され、25人が処刑されたり獄死したりして犠牲となった。
忌まわしい記憶は数々の恐怖小説や映画のモチーフとなり、今では魔女の街として世界的に知られた観光地であり、古い街並みのあちこちに魔女のアイコンが飾られた風景は映画のブライス・ホローとよく似ている。

主人公のノーマンは、ホラー映画好きの心優しい少年だが、死者が見えて、彼らと話せるという特殊能力者ゆえに、周囲からは変人扱いされている。
家族には信じてもらえず、学校でもいじめられ、唯一の友達は太っているためにやはりいじめられっ子のニールだけ。
街中の幽霊とは皆知り合いだが、生者の世界では孤立した異端者だ。
そんなノーマンが、死んで幽霊となったブレンダーガストから突然託された“使命”とは、処刑された魔女によって、彼女を死に追いやった魔女裁判の判事ら、7人の市民にかけられた“ゾンビの呪い”を阻止する事。
同じ特殊能力者だった彼は、毎年儀式を行う事で、7人がゾンビとなる事を防いでいたのだ。

ところが、ブレンダーガストのおっちょこちょいもあって、儀式はあっさりと失敗し、復活したゾンビたちが街に侵入してしまう。
普通のホラー映画なら、ここでゾンビが人々を襲いはじめ、街がパニックに陥るところだが、映画は意外な方向に舵を切る。
異形のゾンビを見たブライス・ホローの人々は、まるで300年前に魔女狩りを行った人々と同じように、問答無用でゾンビを狩り立てるのである。
そう、魔女の呪いとは、7人の不死者によって街を襲わせる事ではない。
不気味な姿の彼らを街に行かせる事で、忌み嫌われ、追われ、殺されるという自分と同じ体験を永遠に味わわせる事なのだ。
ユーモラスに描いてはいるが、異端の者への盲目的な恐怖によって、あっけなく理性を失い暴走する人々の姿は、昨年公開されたティム・バートンの「フランケンウィニー」、あるいは身に覚えの無い性犯罪の嫌疑をかけられ、小さな街で居場所を失う男を描いた「偽りなき者」とも共通する。

人々に欠けているのは、自分とは異なる存在に対する理解と寛容
ノーマンは自らも異端者であるがゆえに、ゾンビたちの痛みを理解し、今度は呪いの大元である魔女の心と向き合おうとする。
今では恐怖の怪物として語り継がれている魔女の本当の姿は、ノーマンと同じ特殊能力を持っていた少女アギー。
ノーマンは、誰からも理解されず、孤独のうちに不条理な死に追いやられたアギーに寄り添い、はじめての友達となる事で、凍りついた彼女の心を解放しようとする。
それが可能なのは、騒動の過程でノーマン自身が自らを受け入れてくれる家族や仲間と共に、自分の居場所を見つけることが出来たからだ。
人間社会はいつの世も排他的な部分を持つが、それでも数十年、数百年というスパンで見れば、少しずつ寛容の度合いは増していると思う。
忘れられた魔女の墓場で、ノーマンと哀しみの鎧を纏ったアギーの魂が対峙するクライマックスは、物語としてドラマチックであるだけでなく、映像的にもアナログとデジタルが絶妙の融合を見せ、絵画的な美しさを持つ名シーンとなった。

ただ、作劇的には欠点も目立つ。
例えばノーマンだけが死者と話せるという設定は、中盤以降騒動の要因が実体を持ったゾンビになってしまい、幽霊そのものが話に絡まなくなるので、魔女の霊との対話を決意するクライマックスまであまり活かされていない。
そのゾンビたちは7人もいるのに、リーダーの“判事”以外は殆どエキストラ状態で、全くキャラ立ちしてないのも勿体無い。
ノーマンを中心にして家族や仲間が結束するという、テーマと直結する部分も、それまでのプロセスでノーマン以外の人物の心情が殆ど描かれていないので唐突に感じる。

もっとも、幾つかの欠点を差し引いたとしても、綿密にデザインされた世界観と、映画ならではの広がりのある美しい映像、冒険心を刺激されるワクワクするストーリー、そして何より作り手の魂がたっぷりと注入された本作は、十分に魅力的な作品だ。
しかし元々アニメーションが物凄く丁寧なのに加えて、3Dプリンターで細かなパーツを量産しだした事で、ますますCGとの見分けがつかなくなってきたのは皮肉。
もちろん、動きにブレが無いために起こるフリッカー現象だけ見ても、これがアナログな手法で作られた作品なのは疑い様がないのだけど。
立体映像の飛び出しはごく控えめだが、この映画の場合精密に作り込まれたディテールを立体的に観察できるだけでエクストラの価値がある。
タイトルロールの主人公ノーマンに、コディ・スミット=マクフィー、薄幸のアギーにジョデル・フェルランドら、マニア泣かせのツボをおさえた豪華キャストも聞き所だ。
ちなみにエンドクレジット後に、本作が紛れもなく昔ながらの人形アニメーションである事が粋な演出で証明されるので、お見逃しなく。

今回はセイラムのあるマサチューセッツから少し南、ニューヨーク州ロングアイランドのべデル・セラーズの「ノース・フォーク・オブ・ロングアイランド メルロー」をチョイス。
アメリカのワインと言うと日本では西海岸のナパやサンタバーバラが知られているが、東海岸のロングアイランドもワインどころとして有名な土地だ。
こちらはホワイトハウスでも使用されている銘柄で、マイルドなミディアムボディ。
豊かな果実香が楽しめ、タンニンも適度で飲みやすい。
映画はたぶん日本ではややマニアックな受けとめ方をされるだろうが、ワインは万人向けだ。
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