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ヒッチコック・・・・・評価額1600円
2013年04月10日 (水) | 編集 |
メイキング・オブ・ヒッチコック。

サスペンス映画の神と呼ばれ、映画史に燦然と輝く数多くの傑作を残しながら、華やかな映画賞とは無縁だった無冠の天才、アルフレッド・ヒッチコック
彼の傍らには常に、最大の理解者であり脚本家でもあった、ミセス・ヒッチコックことアルマ・レヴィルの存在があった。
これはホラー映画の歴史を変えた「サイコ」のビハインド・ザ・シーンを背景に、英米の映画業界で長年トップランナーとして走り続けた夫婦が迎えた、思いがけない熟年の危機を描いたヒューマンドラマだ。
アンソニー・ホプキンスが茶目っ気たっぷりに演じるヒッチコックは、あんまり本人とは似ていないが、なんともチャーミング。
アルマを演じるのはヘレン・ミレンだが、こちらもあんまり似てはいない。

1959年。
「北北西に進路を取れ」を大ヒットさせたアルフレッド・ヒッチコック(アンソニー・ホプキンス)は、次回作の題材を探していて、実在の殺人鬼エド・ゲインをモデルとした小説「サイコ」と出会う。
しかし血生臭い内容に二の足を踏むパラマウントに出資を拒否され、自主制作を決意したヒッチコックは、自宅を抵当に入れて資金を調達する。
撮影準備のドタバタが続く中、ヒッチコックはふとした切っ掛けで長年連れ添った妻のアルマ(ヘレン・ミレン)が、脚本家のホィットフィールド(ダニー・ヒューストン)と浮気しているのではと疑い始める・・・・


ヒッチコック爺ちゃんがかわいいのである。
美女大好きで、惚れっぽく、粘着質で、皮肉屋で、ストーカー体質。
けれども60歳になっても女心は理解できず、妻の浮気を疑いながら、同時に娘ほどの年齢の女優に冷たくされてガッカリ落ち込んでしまう様子は、まるでどこかの中学生の男子の様だ。
まあ創作の世界で天才とか鬼才とか呼ばれる人は、どこか子供っぽい部分があるものだが、そんなリアル中二病の手綱を握るのは、やはりしっかりものの妻なのである。

ワガママな夫の影となり、才能を引き出すアルマは、言わば“アルフレッド・ヒッチコック”という作品のプロデューサーだ。
冷静な目で創作者としての夫を観察し、批評し、助力する。
本作の内容がどこまでがリアルでどこまでがフィクションなのかはわからないが、この映画のヒッチコックは、望み通りに映画を撮り、愛おしいブロンド女優たちに夢中になり、好き放題に生きながらも、根っこの部分でアルマに依存している。
ところが、作家として更なる冒険を望むヒッチコックが、ロバート・ブロックの小説「サイコ」と危険な出会いを果たし、一世一代の賭けに出た時、二人の関係もまた大きな危機を迎えるのである。

冒頭いきなりノーマン・ベイツではなく、そのモデルとなったエド・ゲインの殺人シーンから始まるのに面食らうが、その後懐かしの「ヒッチコック劇場」へと繋げる遊び心。
サーシャ・ガヴァシ監督は、ヒッチコックにとっての「サイコ」は、実は私小説的な作品であったと解釈している様だ。
彼が「サイコ」の製作に固執するのも、偏執や窃視症など多分にゲインのキャラクターに自分自身と重なる部分を読み取ったからで、実際に作品の制作が始まると、ヒッチコックはゲインの姿をまるで自らの合わせ鏡、あるいは相談役のセラピストの様に幻視し、対話する様になるのである。
そして、現場がテンパリ始めたのと時を同じくして、ヒッチ爺さんの脳内に湧き上がる妻への疑念と抑え難い嫉妬の炎。

一方のアルマも、自らも豊かな才能を持ちながらも、“天才ヒッチコックの妻”という日陰の仕事を何十年も続けて来た自負がある。
これは彼女に限らないだろうが、ずっと人の作品のために仕事をしていると、やはり“自分の作品”と呼べる物を作りたくなるものだ。
決して一流とは言えない脚本家のホイットフィールドと組んだのも、彼の所有する海辺のロッジでの共作に夢中になるのも、そこは夫との共有の空間ではなく、自由な創作を味わえるからだろう。
だがヒッチコックにとって、アルマは妻であると同時に大いなる包容力で自分を包み込んでくれる母の様な存在でもあり、「大切な“ママ”に裏切られているのでは」という彼自身の不安と葛藤の心理が、そのままノーマン・ベイツの狂気へと投影されてゆく様はなるほどと思わせる説得力がある。

結局、二人の関係は単なる夫婦ではなく、母と息子であり、生き馬の目を抜くハリウッドで闘う戦友であり、相互補完の関係にある偉大なクリエイター。
「サイコ」という映画史上の金字塔が生まれるには、一人では足りず二人のヒッチコックが必要だったのである。
ジョン・マクラフリンの脚本は、一本の映画制作を主人公のメンタリティのメタファーとして展開させ、同時に夫婦が葛藤を乗り越えるドラマをロジカルに組み込んだ。
またこれは、マクラフリンがバレエ「白鳥の湖」の制作を背景に、創造のプレッシャーから崩壊するヒロインの心理を描いた、「ブラック・スワン」のハッピーエンド版と言えるかもしれない。
あの映画にも倒錯した関係の母子(娘)が出てくるが、主人公のニナと本作のヒッチコックの違いは、やはり“こちら側”に引き止めてくれる人がいたかどうかだろう。

しかし、あれだけ沢山の名作を撮ったにも関わらず、ヒッチコック自身は映画界の最高栄誉、オスカーとは遂に無縁のままだった。
渡米第一作の「レベッカ」は作品賞を受賞しているが、これはプロデューサーに送られる賞。
サスペンス、スリラーというジャンルへの偏見が強かった時代もあったのだろうが、監督賞には5度もノミネートされるも受賞ならず、1968年に功労賞であるアービン・G・タルバーグ賞を贈られたのが全てだ。
そんな男をモチーフにした本作が、メイクアップ賞のノミネート以外オスカーからは無視される結果になったのもまた、歴史の皮肉を感じる。
基本は基本的にはワガママ夫としっかり者の妻の話なので、ヒッチ映画を知らなくても楽しめると思うが、少なくとも「サイコ」は観ていた方が面白さ倍増だろう。
まさかトイレ一つにあれほどの駆け引きがあったとはね(笑

この物語に合うのはやはり熟成された英国の酒。
ヒッチコック夫妻の歴史にはまだまだ及ばないが、英国スペイサイドにある蒸留所、グレンリヴェットから、「ザ・グレンリベット アーカイヴ 21年」をチョイス。
世界でもトップクラスのベストセラー、グレンリベットも21年になると滑らかさはそのままに、グッとコクと深みを増す。
強い酒だが、ストレートでチビチビと味わって飲むのが一番楽しめる。
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