■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
※エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。
■TITLE INDEX
※タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
※エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。
■TITLE INDEX
※タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
※noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
※noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
2013年04月15日 (月) | 編集 |
激突する魂。
ポール・トーマス・アンダーソンの作品を、面白いかと聞かれれば、どれを観ても特別に面白くはない。
ただ、毎回グッタリとした疲労感と共に、「何だか凄いモノを観た」という独特の感覚を味わうのである。
スクリーンの登場人物から怒涛の勢いで迸る葛藤の大波が、ダイレクトな圧力となって観客に映画を体感させる、とでも表現出来ようか。
特に本作のホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンという組み合わせは、濃厚過ぎる二種類のスープを同時に飲む様だ。
舞台となるのは第二次世界大戦直後のアメリカ。
フェニックス演じる帰還兵の青年フレディは、社会生活に順応出来ず、季節労働者として各地を渡り歩き、密造酒を自作しては酔いつぶれるという孤独で刹那的生き方をしている。
そんなある日、偶然に新興カルト“ザ・コーズ”と言う大きな家族を束ね、人々から"マスター"と呼ばれるランカスター・ドッドと出会ったフレディは、彼を人生の拠り所として身を委ねようとするのだ。
ランカスターのモデルとなっているのは、ハリウッドスターにも信者が多いことでも知られるサイエントロジーの教祖、ラファイエット・ロナルド・ハバードだと言われているが、人間的でありながら静かなカリスマ性を持つキャラクターを、ホフマンがさすがの貫禄で味わい深く造形している。
彼とフレディの間柄は、話の取っ掛かりの部分では擬似的な父と息子と言えるだろう。
帰還船に乗って戦争から戻ったフレディは、肉体は陸地に足をつけているものの、魂は漂流したままだ。
そして、密航した船で再び海へ出て、新たな人生の指針であり導き手となるランカスターと出会うのである。
ここからアンダーソンは、徹底してこの二人の関係に寄り添い、彼らの内面の葛藤を描く。
全ての映像が二人をフォーカスし、物語性すら希薄化させ、最終的には彼ら以外の要素は殆ど印象に残らない程だ。
人は皆、何かを求めて、何かを心の拠り所として生きてゆく。
“マスター”と呼ばれ崇拝されるランカスターさえも、本質は己の作り上げてきた物、これから作ろうとする物によって支配されている。
当初はランカスターへの信仰に目覚めるかに見えたフレディは、すぐにそこに答えは無い事を知ってしまう。
なぜなら彼とランカスターは、やがて教祖と信徒という擬似親子から、お互いの中にお互いを見る関係へと変化するからだ。
フレディはランカスターの瞳の中に自分の可能性の未来を見て、逆にランカスターは迷える若者に嘗ての自分を見る。
カルトという閉じた殻の中で、両者が共存する事は不可能なのだ。
過去のアンダーソン作品と同じく、登場人物の誰にも感情移入は出来ない。
しかし決してスクリーンから目を離せず、作品の余韻は不協和音となって心の中に長く響き続ける。
それは我々が彼らを理解不能だからではなく、むしろ映画が抉り出す彼らの内面に、自分自身の心の奥底にもあるが一度掘り出してしまうと無視する事が難しい部分を感じ取るからだろう。
観客は無意識のうちに、スクリーンの内側の彼らと精神的な三角関係を形作らされており、共感を拒否しているのは、フレディやランカスターではなく我々自身なのである。
船と海が重要なモチーフとなる本作には錨のラベルのサンフランシスコの地ビール「アンカースチーム」をチョイス。
スッキリした味わいと適度なコクを持つ琥珀色の液体は、ジリジリと火花を散らす演技合戦でカラカラとなった喉を優しく潤してくれるだろう。
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い
ポール・トーマス・アンダーソンの作品を、面白いかと聞かれれば、どれを観ても特別に面白くはない。
ただ、毎回グッタリとした疲労感と共に、「何だか凄いモノを観た」という独特の感覚を味わうのである。
スクリーンの登場人物から怒涛の勢いで迸る葛藤の大波が、ダイレクトな圧力となって観客に映画を体感させる、とでも表現出来ようか。
特に本作のホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンという組み合わせは、濃厚過ぎる二種類のスープを同時に飲む様だ。
舞台となるのは第二次世界大戦直後のアメリカ。
フェニックス演じる帰還兵の青年フレディは、社会生活に順応出来ず、季節労働者として各地を渡り歩き、密造酒を自作しては酔いつぶれるという孤独で刹那的生き方をしている。
そんなある日、偶然に新興カルト“ザ・コーズ”と言う大きな家族を束ね、人々から"マスター"と呼ばれるランカスター・ドッドと出会ったフレディは、彼を人生の拠り所として身を委ねようとするのだ。
ランカスターのモデルとなっているのは、ハリウッドスターにも信者が多いことでも知られるサイエントロジーの教祖、ラファイエット・ロナルド・ハバードだと言われているが、人間的でありながら静かなカリスマ性を持つキャラクターを、ホフマンがさすがの貫禄で味わい深く造形している。
彼とフレディの間柄は、話の取っ掛かりの部分では擬似的な父と息子と言えるだろう。
帰還船に乗って戦争から戻ったフレディは、肉体は陸地に足をつけているものの、魂は漂流したままだ。
そして、密航した船で再び海へ出て、新たな人生の指針であり導き手となるランカスターと出会うのである。
ここからアンダーソンは、徹底してこの二人の関係に寄り添い、彼らの内面の葛藤を描く。
全ての映像が二人をフォーカスし、物語性すら希薄化させ、最終的には彼ら以外の要素は殆ど印象に残らない程だ。
人は皆、何かを求めて、何かを心の拠り所として生きてゆく。
“マスター”と呼ばれ崇拝されるランカスターさえも、本質は己の作り上げてきた物、これから作ろうとする物によって支配されている。
当初はランカスターへの信仰に目覚めるかに見えたフレディは、すぐにそこに答えは無い事を知ってしまう。
なぜなら彼とランカスターは、やがて教祖と信徒という擬似親子から、お互いの中にお互いを見る関係へと変化するからだ。
フレディはランカスターの瞳の中に自分の可能性の未来を見て、逆にランカスターは迷える若者に嘗ての自分を見る。
カルトという閉じた殻の中で、両者が共存する事は不可能なのだ。
過去のアンダーソン作品と同じく、登場人物の誰にも感情移入は出来ない。
しかし決してスクリーンから目を離せず、作品の余韻は不協和音となって心の中に長く響き続ける。
それは我々が彼らを理解不能だからではなく、むしろ映画が抉り出す彼らの内面に、自分自身の心の奥底にもあるが一度掘り出してしまうと無視する事が難しい部分を感じ取るからだろう。
観客は無意識のうちに、スクリーンの内側の彼らと精神的な三角関係を形作らされており、共感を拒否しているのは、フレディやランカスターではなく我々自身なのである。
船と海が重要なモチーフとなる本作には錨のラベルのサンフランシスコの地ビール「アンカースチーム」をチョイス。
スッキリした味わいと適度なコクを持つ琥珀色の液体は、ジリジリと火花を散らす演技合戦でカラカラとなった喉を優しく潤してくれるだろう。

記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い
![]() 4/17 16:59までポイント10倍!【送料無料】(海外お土産 アメリカお土産 アメリカ土産 アメリカ... |
スポンサーサイト
2013年04月15日 (月) | 編集 |
映画の黙示録。
※ラストに触れています。
異才レオス・カラックス13年ぶりの劇場用長編作品は、幻の都で“映画の死”を描く先鋭的な実験映画だ。
運転手付のリムジンでパリを巡りながら、様々な役柄を演じてゆく謎の男。
ある時はホームレスの老婆、ある時はモーションキャプチャの俳優、ある時は殺し屋、ある時は瀕死の病人。
カラックスが1エピソードを担当した2008年のオムニバス映画「TOKYO!」で、地下道から出没して人々を恐怖に陥れた怪人“メルド”も、本作の主人公が演じるキャラクターの一人として登場する。
彼の前にはカメラは無いし、観客もいない。
ただ、指定された場所へいって、一つの人生のごく短い断片を生き、終わればまた次なる断片の主人公へと姿を変える。
ここは言わば、スクリーンの枠の中だけに存在するパリという名の劇場で、主人公は永遠の虚構を生きる“映画”の象徴だ。
この世界は映画で出来ている。
が、そこは何故か死の香りが充満しているのである。
物言わぬ人々が、まったく無反応にスクリーンを見つめる冒頭部分と、逆に“カーズ”の車の様に言葉を持ったリムジンたちが、映画と観客について語るラスト。
基本的に移動の間以外素を持たない主人公にとって、演じるキャラクターの死もまた虚構。
しかし、その中で唯一本物の死をイメージするシーンが終盤にある。
観客の心の中で生の断片として積み重ねられ、永遠の命を持つかに思われる映画もまた、人々が興味を失うと共に、その虚構性の光を失うのかもしれない。
映画の死はしかし、フィルムかデジタルかなどという些細な事ではない。
人間たちが“光る機械”に興味を失う。
それはつまり、洞窟の中揺らぐ炎の光で壁画を見ることで、静止した絵から動きを感じ取った古代の体験から続く、暗闇の中で時空を超越する創造の叡智=イデアを観るという数万年に及ぶ神秘の共有体験の終わりである。
カラックスは、それこそが映画の死を意味すると考えている様だ。
映画は、トーマス・エジソンによってそのハードはほとんど完成されていたが、今日映画の発明者とされているのはエジソンではなく、リュミエール兄弟である。
彼らが、暗闇の劇場に張られた銀幕に、虚構と現実の狭間に存在する光の世界を映写する事で、初めて映画は完成したのだ。
未来の光であるデジタルで本作を撮りながら、同時に劇場の衰萎による本質的な映画の終焉を予見して見せたカラックスは、さすがに鋭い。
もっとも、それはネットワークを無限の共有空間とし、今までの定義では語る事の出来ない新しい時代の“ネオ映画”の誕生なのかも知れないのだけど。
今回は「パリジャン」をチョイス。
ドライジン30ml、ドライ・ベルモット15ml、クレーム・ド・カシス15mlをステアしてグラスに注ぐ。
美しいルビー色に濃厚な味わいを持つ甘口のカクテルだ。
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い
※ラストに触れています。
異才レオス・カラックス13年ぶりの劇場用長編作品は、幻の都で“映画の死”を描く先鋭的な実験映画だ。
運転手付のリムジンでパリを巡りながら、様々な役柄を演じてゆく謎の男。
ある時はホームレスの老婆、ある時はモーションキャプチャの俳優、ある時は殺し屋、ある時は瀕死の病人。
カラックスが1エピソードを担当した2008年のオムニバス映画「TOKYO!」で、地下道から出没して人々を恐怖に陥れた怪人“メルド”も、本作の主人公が演じるキャラクターの一人として登場する。
彼の前にはカメラは無いし、観客もいない。
ただ、指定された場所へいって、一つの人生のごく短い断片を生き、終わればまた次なる断片の主人公へと姿を変える。
ここは言わば、スクリーンの枠の中だけに存在するパリという名の劇場で、主人公は永遠の虚構を生きる“映画”の象徴だ。
この世界は映画で出来ている。
が、そこは何故か死の香りが充満しているのである。
物言わぬ人々が、まったく無反応にスクリーンを見つめる冒頭部分と、逆に“カーズ”の車の様に言葉を持ったリムジンたちが、映画と観客について語るラスト。
基本的に移動の間以外素を持たない主人公にとって、演じるキャラクターの死もまた虚構。
しかし、その中で唯一本物の死をイメージするシーンが終盤にある。
観客の心の中で生の断片として積み重ねられ、永遠の命を持つかに思われる映画もまた、人々が興味を失うと共に、その虚構性の光を失うのかもしれない。
映画の死はしかし、フィルムかデジタルかなどという些細な事ではない。
人間たちが“光る機械”に興味を失う。
それはつまり、洞窟の中揺らぐ炎の光で壁画を見ることで、静止した絵から動きを感じ取った古代の体験から続く、暗闇の中で時空を超越する創造の叡智=イデアを観るという数万年に及ぶ神秘の共有体験の終わりである。
カラックスは、それこそが映画の死を意味すると考えている様だ。
映画は、トーマス・エジソンによってそのハードはほとんど完成されていたが、今日映画の発明者とされているのはエジソンではなく、リュミエール兄弟である。
彼らが、暗闇の劇場に張られた銀幕に、虚構と現実の狭間に存在する光の世界を映写する事で、初めて映画は完成したのだ。
未来の光であるデジタルで本作を撮りながら、同時に劇場の衰萎による本質的な映画の終焉を予見して見せたカラックスは、さすがに鋭い。
もっとも、それはネットワークを無限の共有空間とし、今までの定義では語る事の出来ない新しい時代の“ネオ映画”の誕生なのかも知れないのだけど。
今回は「パリジャン」をチョイス。
ドライジン30ml、ドライ・ベルモット15ml、クレーム・ド・カシス15mlをステアしてグラスに注ぐ。
美しいルビー色に濃厚な味わいを持つ甘口のカクテルだ。

記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い
![]() ルジェ・クレーム・ド・カシス 20度 700ml 【正規品】 |
| ホーム |