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ショートレビュー「ペーパーボーイ 真夏の引力・・・・・評価額1550円」
2013年08月09日 (金) | 編集 |
フロリダ発、青春残酷物語。

ある殺人事件を巡る、マザコン少年の最初で最後の究極の恋の物語。
キービジュアル以外の内容の予備知識無しで観たので、てっきり爽やかな青春成長ストーリーだと思っていた。
まさかこんな「スプリング・ブレイカーズ」「青い体験」「悪魔のいけにえ」が合体した様な映画とは思わなかったよ。

1969年の夏という設定が良い。
公民権運動は既に大きな成果を挙げている時期だが、いまだに差別は色濃く残り、本作でも人種間の微妙な関係が、いかにも何かが起こりそうな雰囲気を醸し出す。
物語の背景となるのは、警官を殺害したとして、沼地に住むヒラリーという粗野な男が死刑判決を受けた事件。
主人公のジャックは、フロリダの田舎町のローカル新聞社の息子で、両親の離婚で幼くして実母を失い、父の後妻に納まろうとしている女とはわだかまりを抱えている。
彼は、マイアミで新聞記者をしている兄のウォードと、同僚のヤードリーの取材活動を手伝う事になり、事件と関わってゆくのだ。
冤罪を疑うウォードは、ヒラリーと獄中結婚したシャーロットという軽薄な女に協力させて、彼と面会を重ねる作戦をとるが、やがてジャックは年上のシャーロットに恋心を抱いてしまうのである。

「プレシャス」で脚光を浴びたリー・ダニエルズ監督は、事件の謎解きはあくまでも背景に留め、むしろシャーロットを軸にした男女の複雑な因縁話にフォーカスしてゆく。
ここで、登場人物たちの心象を象徴するのが“水”のモチーフだ。
ジャックの住む街は、海沿いに広大な沼地が広がり、ヒラリーの一族はまるで世捨て人の様に、ボートでしか行けない人里離れた沼の奥に暮らしている。
ジリジリと照りつける真夏の太陽に、むせ返る様な湿気。
沼地は強烈な引力で事件に関わった人々を惹きつけ、迷路の様な水路に彷徨う彼らは、シャーロットを触媒として、まるで沼の毒気にあてられたかの様に次々と泥水へ落ち、隠していた内面を暴き出される。
有能な事件記者であるウォードは、現代よりも遥かにタブー視されていた同性愛者という一面を持ち、ヤードリーもまた白人社会でのし上がるため、目的のためなら手段を選ばない隠された顔を露呈する。
むろん彼らが救おうとしているヒラリーも、一筋縄では行かない多面性を秘めているのである。
そして人々の思惑が交錯し、遂にヒラリーが法の頚木を逃れた時、ジャックもまた愛する女のために自分をさらけ出し、腐臭漂う泥水の中を這い蹲る事となるのだ。
嘗て水泳の選手だったジャックは、いつもきれいなプールで泳いでいた。
だが、一夏で濃密極まりない一生分の経験をしたジャックは、純粋だった頃の透明な水には、もう二度と戻れないのである。

恋の妄想に耽る童貞ジャックを演じるザック・エフロンや、ジョン・キューザックのイカレキャラも良いが、やはり本作の白眉はニコール・キッドマンのビッチっぷりだだろう。
ミア・ワシコウスカの母親役を演じた「イノセント・ガーデン」でも、恋愛体質のキャラクターを好演して映画を引き締めていたが、本策では全ての男たちを虜にし、文字通り世界と共に朽ち果ててゆく。
46歳にして強烈な色香を放つこのファム・ファタールは、彼女にしか演じられまい。
えげつない話のえげつないキャラクターだが、本作のキッドマンには間違いなく目を離せない映画力があるのだ。

今回は暑苦しい映画なので、清涼なビールの代表「コロナ エクストラ」をチョイス。
バブルの頃、カットしたライムを突っ込んでラッパ飲みするのが流行したけど、これやるとリサイクルの時に面倒なので、最近は絞り汁だけ流し込むのが主流かな。
非常にライトな味わいで、特に熱帯夜の続くこの季節に飲みたくなる一本だ。

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