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おしん・・・・・評価額1650円
2013年10月13日 (日) | 編集 |
日本の、素晴らしき女たちよ!

1983年から1984年にかけて放送され、平均視聴率52.6%の大記録を打ち立てたほか、世界68カ国で放送され人気を博した伝説の朝ドラ、「おしん」の30年ぶりのリメイク映画化。
明治40年の東北を舞台に、小作農の娘おしんが、ひたむきに家族を想い、過酷な奉公生活や厳しい自然環境に耐え、成長する姿を描いている。
オリジナルで小林綾子が演じた谷村しん役を、映画初主演の濱田ここねが圧巻の存在感で魅せ、母ふじ役は上戸彩が母の深い愛と大人の色香を感じさせて、キャリアベストの好演だ。
監督は「あの空をおぼえている」で知られ、舞台となる山形出身の富樫森が務め、脚本の山田耕大は、長大な物語を109分のコンパクトな映画に纏め上げた。
昭和のテレビ史上に残る傑作ドラマを、平成の作り手たちは見事に換骨奪胎して素晴らしい“日本映画”に仕上げている。
ドラマ版を知っている人も、知らない人も、共に楽しむことが出来るだろう。

明治40年の東北の寒村。
貧しい小作農の谷村家に生まれたおしん(濱田ここね)は、一家の食い扶持を減らすために七歳にして町に奉公に出される事になる。
おしんは、奉公先の材木問屋で働きづめの日々を送りながら、雪解けの頃には年季があけて、愛する母ふじ(上戸彩)の元へと帰れると信じて、過酷な毎日を乗り越えてゆく。
しかしある日、店から50銭が盗まれる事件が起こり、濡れ衣を着せられたおしんは、たまらずに店から飛び出してしまう。
吹雪の森をさまよい、倒れたおしんを助けたのは、山中で世捨て人の様に暮らす俊作(満島新之介)だった。
行くあての無いおしんを小屋に留め、本を読めるようにと文字を教えてくれる俊作にはしかし、誰にも言えない秘密があった・・・


オリジナルの「おしん」は、明治・大正・昭和の激動の時代を生きた主人公の谷村しんが、自らの人生を振り返る構成だった。
もちろん、1年間に渡って放送されたドラマを全て一本に詰め込む事はどだい無理なので、本作はあくまでもおしんが初めて奉公に出てから2年間を描く少女編に絞ったリメイク。
とは言っても、このパートだけでも32回もの放送分があり、映画はここからかなり大胆に、描写するシークエンスを大きく三幕構成に絞り込んでいるのだ。

土地を持たない小作農は、働いても働いてもその分搾取され、蓄えを増やすことは出来ない。
貧困から家族と別れ、おしんが奉公に向かった材木問屋では、朝早くから夜遅くまでこき使われ、満足な食事すら与えられない過酷な日々。
挙句の果てにはいい加減な思い込みで泥棒扱いされ、暴力すら振るわれる。
この酷い奉公先は、今で言うところのブラック企業の様なもの。
耐え難い仕打ちに店を飛び出したおしんを救い、匿うのが、ドラマでは中村雅俊が、本作では満島真之介が演じる俊作だ。
無学だったおしんに文字を教え、教師の役割を果たすこの人物は、実は日露戦争の激戦地、203高地で受けた傷に苦しむ脱走兵であり、与謝野晶子の詩を引用しておしんに戦争の悲惨さ、非人間性を教えるのである。
俊作はおしんを親元へと返すため、山を降りたところを運悪く憲兵隊に見つかり、逃亡を図って射殺されてしまう。
そして彼の非業の死と家族との再会の後、映画の後半でおしんが奉公する加賀屋は、誤解が招いたいくつかのトラブルはあったものの、おしんだけでなく従業員たちが楽しく仕事をし、人々の笑顔が絶えない店として描かれる。
ここに来て、それまでの苦労は報われ、おしんはようやく未来を感じることが出来るのだ。

今なぜ「おしん」なのか?という誰もが感じる疑問への答えも、この物語の取捨選択に見える。
ドラマが生まれた1983年は高度成長期が一段落し、オイルショックをも乗り越えた日本が、“ジャパン・アズ・ナンバー・ワン”の掛け声と共に、バブル時代へと突入する少し前。
誰もが豊かな生活を享受し、貧しかった嘗ての日本が忘れ去られようとする頃に、ある意味で時代へのアンチテーゼとして登場した作品だった。
ならば30年後の現在、この国の今はどうか。
一億総中流といわれた日本は既に無く、格差社会などという言葉が連日の様にテレビやネットに踊る。
映画の材木問屋さながらに、従業員を使い捨て、時に死に追いやるブラック企業が社会問題となり、隣国との対立は日常化し、その是非はともかく平和憲法はもはや風前の灯だ。
映画は、多くの貧しさと僅かな豊かさが混在し、新たな列強勢力として国際舞台に日本が飛び出していった明治末という時代を、現在の合わせ鏡としている様に思えるのである。

物語の中で、おしんは三人の人物から三回大切なものを贈られる。
最初は奉公に旅立つ時、祖母から渡されるなけなしの50銭。
これは結局、おしんが泥棒と疑われた時に、店の者に奪われてしまう。
二度目は、俊作からもらったハーモニカ。
これはハーモニカを欲しがった加賀屋の娘かよとの軋轢と葛藤を齎すが、結果的に和解の切っ掛けとなり、かよはおしんの親友となる。
そして最後は、三度目の奉公に旅立つ時に、母から贈られる50銭だ。
これは実は材木問屋で奪われたのと同じ硬貨。
おしんの無実がわかった後に返還された物を、今度はふじが祖母の形見としておしんに手渡すのである。
これらは困難な時代に生きる人々が、幼いおしんへと託した皆の命と未来の象徴であり、時に激しく、時に優しく背中を押された彼女は、一歩、また一歩と大人へと成長して行く。

時代の閉塞に対して映画が描く希望、それはこの国を生み、育て、守ってきた全ての女たちの溢れんばかりの無償の愛だ。
オリジナルでおしんの母ふじを、本作ではおしんを暖かく見守る加賀屋の“大奥様”を演じる泉ピン子の台詞が心にしみる。
ふじが温泉街に働きに出ている事を知ったおしんは、母がいかがわしい職についているのではないかと疑い、ショックを受けるのだが、そんな彼女を大奥様はこう諭すのだ。
「おしん、女ってのはなあ、自分のために働いでいるんではねぇんだぞ。みんな親や亭主や子供の為に働いでいるんだぁ。つゆほども自分のこど考えねえでなぁ・・・ 」
終盤、祖母の危篤を聞いて、実家に戻ったおしんが見るのは、正にこの言葉通りの母の姿だ。
物語のラスト、新たな旅立ちを前に夕暮れの台所で語らう母と娘の姿の神々しい美しさは、本作のテーマを象徴する名シーン。
昭和を代表する名作ドラマ「おしん」は、全ての母なるもの、全ての女たちへ最高の親愛と敬意を捧げた、大いなる女性賛歌として21世紀に蘇ったのである。

今回は、舞台となる山形の地酒、高橋酒造の「東北泉 雄町 辛口純米」をチョイス。
以前山形へ行った時に地の物のお店で飲んだ酒で、日本海産の肴との相性は抜群だが基本的にどんな料理にも合うと思う。
蔵元では冷蔵を薦めているが、確かに冷で飲むと酒のシャープなキレがより際立つ。
東北の厳しい気候が育てた日本酒文化の粋を、ストレートに味わえる一本だ。

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