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ショートレビュー「恋するリベラーチェ・・・・・評価額1650円」
2013年11月11日 (月) | 編集 |
この愛すべき大奇人!

50年代から80年代にかけて、ド派手なパフォーマンスで大人気を博したピアニスト、リベラーチェの物語を、彼の晩年の“恋人”であったスコット・ソーソンの自叙伝を元に、スティーブン・ソダーバーグ監督が描く。
本来は米HBO製作のテレビ映画だが、本国以外では劇場公開される。
ソダーバーグは監督引退を宣言し、一応今年相次いで公開された三本が最後らしいのだけど仕上がりで言えば本作がベスト。
よく出来てはいるが、あまりエモーションを刺激されない「マジック・マイク」「サイド・エフェクト」よりもずっと面白い。

物語的には所謂芸能界の内幕物のカテゴリに入るだろうが、本作の白眉は間違いなく病から大復活を遂げたマイケル・ダグラスの怪演だろう。
物語の舞台となるのは、マット・デイモン演じるソーソンがリベラーチェと出会う70年代後半から彼が亡くなる87年までのおおよそ10年間。
出会った時点で既にリベラーチェは還暦間近だった訳だが、 まだまだ精力が服着て歩いてる位にエネルギッシュ。
ド派手なのはステージだけでなく、私生活も成金趣味丸出しのキンキラキン、ゲイで若い男が大好きで、そして何よりこの男、自分大好きのナルシストなのだ。
何しろ恋人となったソーソンを身近に置くだけでは飽き足らず、若い頃の自分そっくりに整形させてしまう位なのだから。
だが、ステージとプライベートが表裏一体、良くも悪くも虚構を生業として生きるリベラーチェにとって、自分がゲイである事、カツラを取れば禿げた爺さんであることは決して公に出来ない秘密。
華やかなセレブリティの裏の裏に隠された孤独は、この破天荒なキャラクターに複雑さと深みを与え、感情移入を誘うのである。

一方のソーソンにとっても、リベラーチェとの出会は人生の一大転機となる。
まだまだ同性愛のタブーが今よりずっと強かった時代だ。
天涯孤独の身で養父母の牧場で育ち、自分の性癖を隠して暮らしてきたソーソンにとって、同じゲイで有りながら、目も眩む様な成功を収めたリベラーチェに見染められた事は、未知の可能性が目の前にパッと開けたのと同義だっただろう。
しかし、リベラーチェとの関係はやがてソーソンに深刻な葛藤をもたらす。
彼と出会わなければ、想像すらできなかったゴージャスな暮らし。
しだいに、ずっと歳上で絶大な権力を持つエンターティナーを深く愛する様になったソーソンは、いつか彼に捨てられる日が来るのではないかと怯え、自分より若いゲイへの嫉妬からドラッグに溺れる様になる。
遂にリベラーチェとの別れを決意しても、鏡を見る度にそこにはもう自分はおらず、若き日のリベラーチェの顔があるだけなのだ。

パワフルでエキセントリックな希代の天才と、彼に魅せられ愛された擬似的な分身。
これは二人の“リベラーチェ”による、シニカルなテイストを持つ良くできたブラックコメディであり、同時に切なくビターなラブストーリーである。
生粋のショウマン、リベラーチェの母にデビー・レイノルズをキャスティングする粋なセンス。
ロブ・ロウが怪しさたっぷりに演じる整形外科医とか、キャスティングの妙は隅々まで効いている。
ソダーバーグの(一応の)集大成としても納得の仕上がりだ。

今回は白装束のオネエにふさわしく、「ホワイトレディ」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、コアントロー15ml、レモン・ジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
薄っすらと透き通った乳白色が美しい。
ジンのすっきりした清涼さと柔らかな果実香が楽しめる、エレガントなカクテルだ。

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ショートレビュー「ばしゃ馬さんとビッグマウス・・・・・評価額1600円」
2013年11月11日 (月) | 編集 |
人生は、シナリオどおりに進まない。

今やってる仕事の制作が佳境を迎え、生みの苦しみから一時逃れるために映画に行ったら、ものすごくリアルな創作の葛藤の物語を見せられて、余計に苦しくなったというオチ(笑
まあ私の悩みはともかく、映画自体はすばらしい仕上がり。
「ばしゃ馬さんとビッグマウス」はシナリオライターを目指す二人の主人公を通して、夢を目指すこと、夢を手放すことの意味を問う、青春映画の佳作である。
原稿に綴られる言葉一つ一つが、そのままシームレスに映像へと繋がる秀逸なオープニングに心をつかまれる。

麻生久美子演じるばしゃ馬さんこと馬渕みち代は、シナリオの道を志して十数年、ただの一度もコンテストに通った事がない。
自分の才能の無さを自覚しつつも、ただひたすらストイックに寝る間も惜しんで原稿を書き続ける。
そんなみち代が、もう一度初心に戻るために受講したビギナー向けのシナリオ講座で出会うのが、ビッグマウスこと天童義美だ。
安田章大が不思議な存在感で演じるこのキャラクターは、自分はまだ一行もシナリオを書いた事が無いくせに、誰に対しても偉そうな上から目線でダメ出しをする。
所謂「オレはまだ本気出してないだけ」な自称天才ダメ男だ。

正に水と油の二人は当然の様に反発しあうのだけど、実は創作の仕事をしている人は、本物の大天才でない限り、誰でも自分の中にばしゃ馬さんとビッグマウスを両方宿していると思う。
正確に言えば、ほとんどの人はビッグマウスを経てばしゃ馬さんになるのだ。
劇中、義美がいかに尊大でバカかを元彼に語るみち代に、昔の彼女を知る元彼は「みち代も昔はそうだったじゃないか」と言う。
挫折を知らない若い頃は、本気で世界は自分のもの、自分が頑張れば何でも出来る、何でも叶うと思っている。
しかし、大きな夢を抱いて実社会に打って出て、何時しかそんな考えは打ち砕かれ、やがて人は選択する。
夢破れて身の程を知り、全く別の道に転進するか、どんなに惨めでも、報われなくても夢にしがみついて生きるか。
本作はそんな人生の岐路に立ったばしゃ馬さんと、ようやく夢への第一歩を歩みだしたばかりのビッグマウスの、青春の始まりと終わりのコントラストが生み出すビターな光と影の物語。

みち代と義美のそれぞれの家族のエピソードや、同じシナリオ講座の生徒で、一握りの成功者となるマツキヨさんのエピソードなど、サブストーリーも本筋と絡み合いうまく機能している。
多分に吉田恵輔監督の実体験が反映されていそうなこの作品、特に物作りを生業にしている人で、全く感情移入できないという人はまずいないのではないだろうか。
思うに、創作の世界で生き残っているのは、ばしゃ馬さんになりつつも、根拠の無い自信とか、どこかビッグマウス的な部分を残している人が多い気がするな。
クリエイターは「Stay hungry, Stay foolish」であれという事か。

今回はばしゃ馬さんと飲みたい日本酒、演じる麻生久美子の地元、千葉県は田中酒造店の「旭鶴 勘三郎 大吟醸酒」をチョイス。
千葉は水源が豊富で、田舎町の小さな蔵元が多い。
殆どが地産地消されてしまうので、他地域にはあまり出回らない銘柄が多いが、こちらはパワフルなボディのコクのあるやや辛口。
このエリアを訪れる事があったらお土産にもお勧めだ。

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