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ゼロ・グラビティ・・・・・評価額1800円
2013年12月15日 (日) | 編集 |
生きろ。大地を踏みしめるまで。

メキシコの鬼才、アルフォンソ・キュアロン監督の、「トゥモロー・ワールド」以来となる最新作は、地上600キロの宇宙を舞台としたサバイバルサスペンス。
無限に広がる空間に、たった一人取り残される恐怖。
手を伸ばせば届きそうな地球に、帰れないという無情。
撮影技術の開発だけで四年半を費やしたという、体感する3D映像は圧巻の仕上がりだ。
まるで自分が本当に宇宙空間を漂い、絶体絶命の危機また危機の真っ只中へと放り出された様な感覚を味わえる。
2013年時点での映像技術の到達点と言える作品であり、映画館で完全な非日常に浸りたい人には絶対のおススメ作品だ。
※ラストに触れています。

NASAのミッションスペシャリスト、ライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)はマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)と共にスペースシャトル・エクスプローラー号の船外で作業中、スペースデブリとの衝突事故に遭遇する。
シャトルは大破し乗組員は全員死亡、ライアンとマットは有人機動ユニットを使い、何とか国際宇宙ステーション(ISS)にたどり着くものの、マットは機体をつかむ事が出来ず、宇宙の彼方へと漂流してしまう。
ライアンはISSのエアロックを開ける事に成功するが、他のクルーは既に脱出した後で、残されていたのはダメージを受けて、大気圏再突入が不可能なソユーズ宇宙船だけだった。
再びデブリの嵐が到来する前に、ライアンは100キロ離れた中国の宇宙ステーションまでソユーズを飛ばそうとするのだが・・・・


「宇宙なんて大嫌い!絶対行きたくない!」
サンドラ・ブロックじゃなくても、この映画を観た殆どの人がこう思ってしまうのではないか。
もしも子供が観たら、トラウマ化は必至。
将来なりたい職業に、“宇宙飛行士”とは決して書かなくなるだろう。

予告編が公開されて以来、可能な限り情報を入れない様にしていたのだが、勝手にレイ・ブラッドベリの傑作小説「万華鏡」の様な作品なのだろうと予測していた。
宇宙空間で事故に遭い、もはや死を避けられない運命の主人公が、いかにして自分の最期を受け入れるかを描いた哲学的な作品だろうと。
ところが、実際の映画は全く違ったのである。
本作は、「これぞハリウッド!」と言うべき、極限からのサバイバルを描くどストレートな娯楽映画であり、あのとんでもなく恐ろしい予告編が、そのまま90分間ずっと続くのだ。

何はともあれ、目の前に広がる宇宙空間にどっぷり浸って楽しんで欲しい。
鑑賞はできればIMAX3Dで、スクリーンが上下左右の視界ギリギリに迫る前の方の席がベストだろう。
字幕がわずらわしいので、いっそ吹替え版でも良いかもしれない。
映画史に3D革命を起こした「アバター」とはまた別の意味で、これほど3Dである事を生かしきった作品はあるまい。
四の五の言わず、ただ圧倒的臨場感の宇宙空間を体感する。
こういう感覚の映画は過去に観た事が無いが、あえて言えばテーマパークや万博の体感型巨大映像が一番近い。
迫り来る無数のデブリに、何度首を振ってよけようとしてしまった事か(笑
これは古くて新しい、良い意味で究極のアトラクションムービーなのだ。
そして「トゥモローワールド」でも中盤のワンカットに度肝を抜かれたが、今回も冒頭20分近くに及ぶとんでもないシークエンスがある。
まあだからこそ四年半もかかったんだろうけど、どうやって撮ってるのかわからなかった。

凝りに凝った映像とは対照的に、ストーリーは驚くほどシンプルだ。
「宇宙で事故にあった主人公が、勇気を奮い立たせて危機を克服し、生還する話」と、一行で書き表せてしまう。
だが、本作の場合は、これで良いと思う。
演出と物語というのは、ある程度までは両方に力を入れる事が可能なのだけど、どちらかを振り切ろうとすると片方が希薄化する傾向がある。
分かりやすいのは、キューブリックの「2001年宇宙の旅」や、テレンス・マリックの一連の作品、あるいは宮崎駿のゼロ年代の作品だ。
彼らは皆生粋の演出家であり、物語への関心は相対的に低いと言わざるを得ない。

演出とは、基本的に画に関する事象である。
プライオリティは人によって違いがあるが、どの様な画面を構成し、どの様に俳優を動かし、どの様な芝居を求め、それをどう撮るのかに、その持てる才能を注ぎ込む。
画面の中の事象を徹底的に突き詰め、映像言語によってテーマを描き出すので、登場人物への過度な感情移入も求めない。
「2001年宇宙の旅」なんて、あらすじを聞かされても特に終盤など映像を観ないと意味不明だろうし、震えるほど美しかったマリックの「ツリー・オブ・ライフ」など、ぶっちゃけ観終わってもどんな話だったのかよくわからない(笑
映像のダイナミズムは圧巻の「崖の上のポニョ」や「ハウルの動く城」も、物語を評価する人は少数だろう。
しかしこれらの作品にもっと複雑なプロットや、登場人物の捻った関係とか葛藤を与えてたとしたら、果たしてそれはよりベターな作品になるのだろうか?
その答えはおそらく否であろう。
本作のアルフォンソ・キュアロン監督ももちろん、典型的な演出の人なのである。

もっとも、シンプルとは言っても物語に色々な暗喩を含ませてあり、一筋縄ではいかない。
例えば、本作に登場するテクノロジーは全て既存のものだが、実は登場する宇宙船や宇宙ステーションの年代は微妙に現実とは異なっている。
最初にライアンが搭乗しているスペースシャトルは、2013年の現実世界では既に全機が退役済み、即ち“過去”である。
次に、衝突事故の後でライアンとマットがたどり着くISSは、今も軌道上に存在する現役、つまり“現在”だ。
そして、マットを失ったライアンが、最後の希望として目指す中国の宇宙ステーション・天宮だけは、中国が2020年頃に完成を目指しているもので、2013年現在ではまだ存在していない。
ライアンは、シャトル、ISS、そして天宮へと過去から未来へ向けて移動している。
これは、彼女自身が娘の死という地上に残してきた過去のトラウマと向き合い、現在の葛藤を克服し、あらためて未来に生きようとするプロセスのメタファーになっているのだ。

更に巨視的に考えるなら、天上の世界へと踏み込んだ人類が、自ら犯した過ちによって過酷な試練を受ける話でもある。
宇宙という無限空間は、同時に大地から切り離された究極の閉鎖空間だ。
助けてくれる人は誰もいないという孤立感と、果たして人生は生きるに値するのかという虚無感。
無重力という強大な“力”によって翻弄されながら、危機に立ち向かい、自らの生きる意味、地上の世界のかけがえの無さを実感した人類は、“神の舟”という名の宇宙船によって生き直すために地上へと帰るのである。
宇宙でもしつこい位に水滴によって強調されていた水のメタファー、宇宙船が落下した先が湖である事ももちろん意味がある。
母なる地球の羊水に受け止められ、古い宇宙服を脱ぎ捨てて浮上するのは再生のイメージ。
岸に泳ぎ着き、重力のくびきを全身で感じながら、二本の足で大地に立ち上がるライアンの眼差しのなんと力強い事か。
ラストカットの後で映し出される「Gravity 」のタイトルはガツンと来るものがあるのだけど、邦題は「ゼロ・グラビティ」で逆の意味。
まあ宇宙の話だという事を強くイメージさせる意図は分かるけど、無重力を描く事で重力を感じさせる逆説の効果が薄れてしまったのは少し残念。
やはり邦題とは難しいものだ。

しかし、2013年の冬を代表するであろう、本作と「かぐや姫の物語」という東西の二本が、共に宇宙(月)から眺めた地球をモチーフとしているのは面白い。
届きそうで届かない、離れた所で見るからこそ、その本当の美しさ、そこに生きる事の価値がより分かりやすくなるという事だろうが。

今回は、ソユーズにも搭載されているらしい、ウォッカをベースにした宇宙的カクテル「ルナ・パーク」をチョイス。
ウオッカ20ml、クレーム・ド・バイオレット20ml、飲むヨーグルト10ml、アセロラ・ジュース10mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
クールなホワイトが月の表面をイメージさせる、美しいカクテルだ。
まあヨーグルトの独特の風味があるので、好みは分かれるかもしれない。

ところでロシアがISSに自国のクルーもいるにも関わらず、スパイ衛星を破壊して大惨事を引き起こしたり、中国の神舟宇宙船は、どうせソユーズのパクリだから、ソユーズが操縦できれば何とか動かせちゃうとか、最近の映画にしてはロシアや中国の扱いが結構ぞんざいなのも王道のハリウッド映画らしくて良い。
監督はメキシカンだけど(笑

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