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ショートレビュー「さよなら、アドルフ・・・・・評価額1600円」
2014年01月28日 (火) | 編集 |
さよなら、無垢だった幼き日々。

敗戦で居場所を失った“ヒットラーの子供たち”の、生きるための旅路を描くロードムービー。
原題の「LORE」は主人公の少女の名前である。
1945年春の敗戦により、ナチス親衛隊の高官だった両親は連合軍によって拘束され、隠れ家に取り残された14歳のローレは、幼い妹・弟たちを連れて、遠く離れた祖母の住む街を目指して旅に出る。

なるほど、第二次世界大戦期のドイツを扱った映画は数多くあるが、ナチス幹部の家族の戦後を描いた作品は珍しい。
主人公の境遇などは、「火垂の墓」を連想させられる。
あの映画では日本海軍高官だった父を持つ幼い兄と妹が、戦争末期から戦後の混乱期の路上へと放り出され、大人たちの助けを得ることが出来ずに死んでゆく。
一方、日本と異なり連合軍の分割占領を受けたドイツ、しかもナチスへの憎悪渦巻く中での果てしない旅は、ある意味更に過酷だ。

旅の間に子供たちを襲うのは、飢えや暴力だけではない。
教えられていた事が全て嘘だった、愛する両親が恐るべき戦争犯罪の加担者だったという冷酷な現実は、まだ幼い心を崩壊させてゆく。
連合軍が、ナチスの残虐性を市井の人々に周知させるために貼ったホロコーストの写真。
そこに写っているぼやけた一人の将校の姿が、ローレにはどうしても父に見えてしまう。
そして困難な旅の協力者となる謎めいた青年の明かす出自は、ローレの心に更なる葛藤をもたらすのである。

ケイト・ショートランド監督は、手持ちカメラによるクローズアップを多用する事によって、記憶と現実の間で揺れ動き、閉塞するローレの心象風景を繊細に描写する。
水浴や洗髪だけでなく、全編に配された水のモチーフは、彼女らを常に寒々しく濡らし、決してスッキリと乾かす事は無い。
繰り返し映し出される湿った足元の描写は、戦後の世界で方向を見失ってさ迷う魂を象徴しているのかもしれない。
今まで隠されていた世界の本当の姿を知ってしまったローレは、祖母の家にたどり着いても、もはや大人たちにとっての純真な良い子供でいることは出来ない。
14歳にして童心に決別せざるを得ない彼女が、物語が終わった後どうなったのか、実際に沢山いたであろう、ヒットラーの子供たちの辿った人生が気になる。

面白いのは、本作が純粋なドイツ映画ではなく、オーストラリアの監督による合作映画だという事。
原作のレイチェル・シーファーも豪独のハーフで英国育ちというバックグラウンドを持つ。
デリケートな題材ゆえに、これはドイツ国内だけではなかなか作れない映画なのかもしれない。
フランス人がイスラエル・パレスチナで撮った「もう一人の息子」もそうなのだが、歴史や因習が絡むイシューには、外からの視点が新しい切り口を与えてくれる事が多々ある。
こういう映画作りはアジアでももっともっと行われるべきだろう。

春から夏の話にも関わらず寒々とした映画なので、今回は冬の日に身体を温められるホットワイン、ケスラー・ツィンクの「グリューヴァイン」をチョイス。
グリューヴァインは赤ワインをベースに蜂蜜やシナモンなど甘味とスパイスを加えたもので、自分でお好みの味を作っても良いが、お手ごろ価格で色々な醸造業者が製造している。
寝る前にこれを一杯飲むと体がポカポカしてとても寝つきが良くなるので、今の時期にはお勧めだ。
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