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ショートレビュー「小さいおうち・・・・・評価額1650円」
2014年02月01日 (土) | 編集 |
彼女が、本当に隠していた事。

ある老女の心の内に70年間秘められていた秘密を巡る、ミステリアスな心理ドラマだ。
山田洋次にとっては、挑戦的な新境地と言っても良いと思う。
舞台は昭和10年代、東京山の手の住宅地に建つ赤い屋根の小さな洋館。
山形の寒村から上京した少女・タキは、この家で女中として働きはじめる。
玩具メーカーの重役を務める旦那様と都会的で垢抜けた時子奥様は優しく、幼い一人息子にも懐かれ、タキは忙しくも楽しい日々を送っている。
しかしある日、旦那様の部下・板倉が登場する事で、小さなおうちには目に見えない愛の嵐が吹き荒れる様になるのだ。

直木賞を受賞した原作は未読。
偶然だろうが、物語の構造が「永遠の0」とよく似ている。
冒頭はどちらも昭和から平成を生きた一人の老女の葬儀のシーンで、現在の若者の視点で過去の人々の人生を辿って行き、現在から見た過去のイメージとリアルの乖離を指摘するのも同様だ。
妻夫木聡演じる親戚の青年・健史は、タキの人生に興味を抱き、生前の彼女に自叙伝を書くように勧める。
映画は、タキの書いたノートを健史が読むという形式で、現在と過去を行き来しながら展開してゆくのだが、この時代を実際に生きた人の生の記憶に触れているのに、健史は「戦時中がこんな様子だったはずはない」と浅はかな知識で否定するのである。
映画のタイプとしては全く異なるが、この二本は見比べると非常に興味深い。

どんな時代であれど、そこにいるのは感情を持った人間だ。
その時が平和でも戦時中でも、楽しい事があれば笑い、狂おしくも人を想う。
変則的な三角関係を構成するタキと時子、板倉は極めて現代的なキャラクターに造形され、だからこそ生々しい存在感を持つ。
愛に関する人間の心を紐解く物語は、70年前の世界を鏡像として、21世紀の今を描いてみせるのである。
心の内を決して表に出さない彼らの関係は、まるでアスガー・ファルハディ監督の心理ミステリーを思わせる静かな緊張感を湛えたまま、戦時下の日常の裏側で推移してゆく。
前作「東京家族」から加速がかかった小津的な画作りは、あるシーンで突然の手持ちカメラへ切り替える事により、登場人物の揺れる心、エモーショナルな意味づけをより際立たせる。
それは、タキがこの家で犯し、生涯に渡って抱えてきたある“罪”が生まれた瞬間でもあるのだ。

劇中、健史のガールフレンドが、バージニア・リー・バートンの同名絵本「ちいさいおうち」に言及するシーンがある。
この絵本は、全編が一軒の小さな家を中心とした構図で構成されている。
牧歌的な田舎に建つ家の周りは、少しづつ開発が進み、やがて高層ビルの林立する大都会となってしまう。
ビルの谷間でボロボロになって忘れられた小さな家を救うのは、かつてこの家で生まれ育った一人の女性だった、という物語だ。
だが、タキにとって、幸せと贖罪の象徴である小さなおうちは、絵本とは違って戦争という人間の最も愚かしい行為によって、もはやこの世界に存在しない。
理想郷は失われ、タキは罪を告白する機会を永遠に失ったまま、その人生を終えるのである。
彼女の残した想いを健史が受け継ぎ、残された人々が全てを知ることで、罪が氷解するラストは感動的だ。

しかしこの映画、おそらくタキの抱えてきた秘密の全ては、あえて明確には描いていないのではないかと言う気がしている。
そのヒントは序盤に一瞬だけ登場する、ある一枚の絵の存在だ。
あの絵をどう解釈するかによって、タキの“戦後”は相当に変わってくるのではないだろうか?
ジンワリとした余韻と共に、奇妙な引っかかりも残す、不思議な味わいの作品だ。

昭和初期の洋館を舞台とした物語に合わせて、近代日本で始めてワイン醸造が行われた甲州からグレイズワインの白、「甲州 鳥居平畑」の2012をチョイス。
名前の通り、勝沼の鳥居平の区画の甲州種を用いて醸造されている。
本場ヨーロッパでの評価も高く、ドライで柑橘系とスパイスの複雑な香りを楽しめる、メリハリの効いた一本だ。

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