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ラッシュ/プライドと友情・・・・・評価額1750円
2014年02月06日 (木) | 編集 |
地上で最速、ただそれだけのために。

60年を超える歴史を持つオープンホイールレースの最高峰、F1グランプリを舞台にしたHOT&COOLな人間ドラマ。
通算三度の世界タイトルに輝いた冷静沈着なドライビング・マシン、ニキ・ラウダと、“壊し屋”の異名をとりながらも、火がつくと手の付けられない速さを見せたジェームズ・ハント。
全てが対照的な二人の天才の運命は、今も語り継がれる1976年シーズンに遂に激突する。
20世紀の伝説のチャンピオンたちを、ダニエル・ブリュールとクリス・ヘムズワースが長年のF1ファンも納得の好演。
「アポロ13」「ビューティフル・マインド」など、実録ものを撮らせると非凡な才能を発揮するロン・ハワード監督は、モーターレーシングをモチーフとした、映画史上最良の作品を作り上げた。

1976年のF1グランプリ。
前年のチャンピオン、フェラーリのニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とマクラーレンのジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)が激しくタイトルを争っていた。
理論派でドライビングを“ビジネス”と割り切るラウダは、オーストリアの名家の生まれで、資金調達の才能にも長け、下積みのF3時代から順調にキャリアを積み重ねてきたエリート。
一方、自由奔放なプレイボーイのハントは、長年下位チームでくすぶり、ようやく戦闘力のあるマシンを手に入れた苦労人。
正に水と油の様な二人は、開幕から勝ち星を分け合ってきた。
しかし、悪天候に見舞われたニュルブルクリンクのレースで、ランキングトップのラウダのマシンが大クラッシュし、彼は瀕死の大やけどを負ってしまう・・・・


本作の舞台となる1976年は、日本のモータースポーツファンにとっては歴史的な年だ。
それまでヨーロッパとアメリカ大陸でしか開催されていなかったF1グランプリが、遂に大陸を超えて極東の島国へとやって来たのである。
この年は前チャンピオンのニキ・ラウダが、はじめて戦えるマシンを手に入れたジェームズ・ハントの挑戦を受ける構図が鮮明だった。
しかし、ラウダ優勢のまま中盤戦へと突入した所で、ニュルの大事故が起こってしまう。
ライバル不在の間に、着実にチャンピオンシップポイントを追加したハントが僅か3ポイント差まで肉薄し、次に勝った方がチャンピオンという劇的な状況で、最終戦の日本グランプリを迎える事になったのである。
当時の男の子たちはハント派とラウダ派に分かれて、どっちが勝つか盛り上がったものだ。
因みに私は日本グランプリ前はラウダ派で、後述する様にグランプリ観戦中にハント派に鞍替えした。

1950年に始まったF1グランプリ史は、そのまま数々のライバル伝説の歴史だ。
黎明期のフォン・マヌエル・ファンジオvsアルベルト・アスカリ、60年代のジム・クラークvsグラハム・ヒル、日本でF1人気が過熱した80年代後半にはアイルトン・セナvsアラン・プロスト、90年代にはミヒャエル・シューマッハvsデイモン・ヒルのタイトル争いがシーズンを盛り上げた。
逆にセバスチャン・ベッテルの独走で、誰も彼を脅かせなかった2013年シーズンのF1は、前年比で全世界5000万人ものテレビ視聴者を失ったという。
太陽が強く燃え盛るほどに、月もまた輝きを増す。
プロスポーツの世界において、お互いを引き立てるライバル関係は不可欠なのである。

しかし、映画の世界でこのスポーツを描いた作品は意外と少なく、その出来栄えも今ひとつなものが多い。
F1グランプリをモチーフとした作品で最も有名なのは、ジョン・フランケンハイマー監督の「グラン・プリ」だろう。
三船敏郎のハリウッド進出作としても知られるこの映画は、四人のドライバーの戦いを描く上映時間3時間の超大作だったが、悪くはないものの正直絶賛するほどの作品でもない。
F1以外のサーキットレースを扱った作品でも、スティーブ・マックイーンが主演とプロデューサーを兼務した「栄光のル・マン」がやや目立つくらいで、概ね凡作が並んでいる。
私が本作以前のレース映画の中で最も面白いと思っているのは、実は「カーズ」だったりするのだ(笑

本作の素晴らしい点は、このカテゴリを扱った過去の多くの作品が陥った罠、レースそのものを描こうとしなかった事にある。
モーターレーシングを愛するファンなら同意してもらえると思うが、映画がいくら頑張って映像を作ったところで、ホンモノには絶対かなわない。
かと言って映画でしか出来ない事をやろうとすると、今度はどんどんリアリティを失ってしまう。
また、一度コックピットに座って走り出してしまえば、基本的に狭い空間の中での孤独な戦いとなり、他者との関わりを描けないレースは、あらゆるプロスポーツの中でも、本質的に最も劇映画に向かないカテゴリなのだ。
しかも本作はそもそも実録ものであって、最終的な勝者が誰かははじめから分かっている。
単に抜いた抜かれたで盛り上がる訳が無い。

ロン・ハワードと脚本のピーター・モーガンは、レースを背景としてあくまでも人間を描く。
クライマックスの日本グランプリ、激しい雨が降る中レースは決行されるが、その時点でランキングトップのラウダは僅か二周で自らピットインし、マシンを止める。
10月の冷たい雨に濡れながら、ラウダvsハントのレースを楽しみにしていた小学生当時の私は、彼の行動に心底がっかりし、逆に豪雨の中で魂の激走を見せるハント派に乗り換えたのだ(笑
スポーツとしてのレースは、その時その場で起こった事が全て。
だが、ラウダがマシンを止めた本当の理由はサーキット、あるいはテレビでレースを見ているだけでは分からない。
本作は、そこに至る彼の心の変化を描いており、だから映画として面白いのだ。
愛する人との出会いと結婚、雨が発端となったニュルの事故、ハントの活躍に刺激を受けての壮絶なリハビリと復活、そして富士を襲った再びの雨の悪夢。
それら全てのプロセスを経て、葛藤の末に導き出した途中棄権という決断は、ドラマとして重い説得力がある。
そして一方のハントが走り続けた理由も、二人のレースドライバーとしての哲学の違いもまた、しっかりと描きこまれている。
必ず帰らねばならないラウダと、最速を証明できれば帰れなくても良いハント。
チャンピオンと挑戦者という立場だった二人が、最後にチャンピオン同志として言葉を交わすシーンは、それまでの長い歳月の物語があるからこそ納得できるのである。

もっとも、人間ドラマが中心とはいっても、レース描写自体は素晴らしい出来栄えで、細部まで拘って忠実に再現された当時のグランプリシーンなど、ビジュアル面も見どころの一つだ。
特にクライマックスの富士スピードウェイは、後に大幅な改修の結果全く別のサーキットに生まれ変わっているので、まるで70年代にタイムスリップしたかのような情景には驚かされる。
76年と言えばユニークな6輪車ティレル P34が活躍した年でもあるのだが、富士のシーンでちゃんとカウルにひらがなで“たいれる”と入ってる!
これはF1をはじめて生で見る日本人ファンに向けた、チームの粋なサービスだったのだが、こんな細かいところまで再現しているとは脱帽。
もっとも7年間にわたる物語を二時間に圧縮しているので、事実と異なる点もいくつか。
例えば、映画ではヘスケスがチームを畳んだのでハントはマクラーレンに移籍した事になっているが、実際には資金難に悩まされながらもチームは何とかグランプリに踏みとどまり、78年シーズンまで参戦している。
まあこの辺りは映画的ウソとして十分許容範囲だろう。

本作に描かれた76年シーズンの後、ラウダは翌77年に二度目のタイトルを獲得し、79年にハントとラウダはそろって引退を表明。
その後、グランプリに戻らなかったハントに対して、ラウダは82年に嘗てのハントが所属していたマクラーレンで復帰し、三度目のチャンピオンとなった後の85年に引退した。
映画は、途中ハントの視点になったりラウダの視点になったりするものの、物語の最初と最後はラウダのモノローグでまとめられている。
ハントをはじめ、チームメイトのクレイ・レガッツォーニ、エンツォ・フェラーリ、ハーベイ・ポスルスウェイトら、映画に登場する多くの人物は既に故人。
F1グランプリ自体も、当時とは比べものにならない位に洗練された巨大な産業となり、ドライバーの死亡事故も過去20年間起きていない安全なスポーツへと変質した。
これは過激な時代の生き証人であるラウダの言葉で紡がれる、嘗て共に地上で最速を目指し、今はもう地上にいない人々へと贈るレイクイエム。
38年の時の流れを実感する、感慨深い映画体験だった。

今回はレース観戦で飲みたい、本場オーストリアの代表的なピルスナー「ゲッサー」をチョイス。
苦味は適度で、ドライで喉越しスッキリ爽やか。
欠点らしい欠点の無い、バランスが絶妙な上品な味わいは、なるほど全てに完璧を求めるニキ・ラウダのイメージに重なる。
夏場のサーキットにピッタリな一本だ。
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