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大統領の執事の涙・・・・・評価額1700円
2014年02月10日 (月) | 編集 |
その時、執事は見ていた。

「プレシャス」「ペーパーボーイ/真夏の引力」など、ハードな人間ドラマを得意とするリー・ダニエルズ監督の最新作。
ホワイトハウスで34年間に渡り執事を勤めた実在のアフリカ系アメリカ人、ユージン・アレンの生涯にインスパイアを受け、人種解放闘争の視点から合衆国現代史を俯瞰した重厚な歴史ドラマだ。
アイゼンハワーからレーガンまでの7人の大統領の傍らに、執事としての誇りを胸に“空気”の様に存在した男が見つめてきたものとは何か。
フォレスト・ウィテカーが20世紀の目撃者となる主人公の執事を、その妻を実写劇映画の本格出演は久々のオプラ・ウィンフリーが演じる。
歴代大統領の役で、意外な大物俳優たちが続々登場するのも楽しい。
※核心部分に触れています。

1920年代。
未だ奴隷制度の名残が残る南部で育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)は、成長すると北部へと旅立ち、苦難の放浪を経て安ホテルに職を得る事に成功。
見習いボーイから一流ホテルの執事となったセシルは、結婚し二人の男の子の父となる。
やがてその仕事ぶりを認められたセシルは、スカウトされホワイトハウスへ。
世界を動かす重要政策が決定され、様々な情報が語られる国家の中枢で、執事に求められるのは自らの存在感を消し去ること。
決して自己主張せず、忠実に職務に生きる事を信条とするセシルは、激動の60年代に夫として父としての大きな葛藤に直面するのだが・・・・


昨年公開された本国では、人種問題というヘビーな題材にも関わらず、ボックスオフィス三週連続1位という快挙を成し遂げた本作、なるほど期待に違わぬ大力作だ。
アイゼンハワーが率いた黄金の50年代から公民権運動やベトナム反戦運動の60年代、そして衰退の70年代を経て強いアメリカの復権を掲げたレーガン政権の80年代まで、ただひっそりと時代に寄り添った男。
タイトルロールの“The Butler(執事)”セシルはある種の狂言回しであって、壮大なクロニクルの真の主人公は、わずか一世代の間にまるで別の国の様に変貌したアメリカの現代史そのものである。
“白人が黒人を殺しても罰せられない”1920年代の南部の光景から、オバマ大統領が登場するまでの80年間の劇的な時代の流れはどうだ。

超保守的な南部の農園で生まれたセシルは、幼くして親を失う。
母をレイプした白人に抗議しようとした父は、問答無用で射殺され、母はショックから心を病んで廃人に。
このエピソードは、本作の後半にも登場するマルコムXの少年時代を思わせる。
マルコムの父アールは白人至上主義者によって惨殺されるが、警察は自殺と処理し捜査せず、その後母のルイーズは精神病院送りとなった。
本作ではセシルの母親をマライヤ・キャリーが演じているが、ルイーズもやはり白人と黒人のハーフであったという。
セシルのキャラクターはユージン・アレンをモデルとしているものの、本作は完全な実録物ではないので、色々な人物のエピソードをミックスしているのかもしれない。

親を殺した白人の家で、様々な家事をこなす“ハウスニガー”となったセシルは、皮肉にもここで天職である給仕の仕事を覚える。
そして成長し一人で生きてゆく事を決意したセシルは、農園を出るとやがてその資質を開花させ、ホテルの執事として頭角を現してゆく。
遂にはホワイトハウスで働く事になった彼は、実に30年以上にわたって合衆国政治の中枢を間近で見つめる事になるのである。
執事という仕事に求められるのは、決して主張せず、出しゃばらず、その場の空気として存在し、もしも主人たる大統領に何かを問われれば「望まれる言葉」を返す事。
徹底的に“私”を封印して生きるセシルは、キューバ危機からケネディの暗殺、ベトナム戦争の嵐に揺れるアメリカ社会の傍観者である。

社会がどれだけ激震に見舞われても、彼自身はほとんど変化しない。
成長した長男のルイスが自分たちの未来のために公民権運動に身を投じる事にも、自らの役割に甘んずるセシルは、理解を示そうとはしないのだ。
父親に拒絶されたルイスは、やがて武装闘争路線の過激な黒人解放運動、ブラックパンサー党の結党に関与し、一方の次男はベトナム従軍によって国への忠誠を示すという正反対の道を歩みだす。
しかし、セシルが頑ななまでに主張しない生き方にこだわる間にも、彼の仕えた7人の大統領、即ち民意が、少しずつ、少しずつ社会を変革してゆく。
国の成り立ちからの多様性故に、その葛藤の激しさは日本の様な比較的均質な社会とは比べ物にならない。
何より、人々の強烈なまでの当事者意識の強さがある。
マーティン・ルーサー・キング牧師、マルコムX、そして多くの無名の若者たちの犠牲と献身によって生まれたホワイトハウスの外側の大きなうねりは、オーバルルームに決断を迫るのだ。
本作を見るとアメリカはやはり究極のPeople’s nationであり、民主主義の巨大な実験場なのだと感じる。 

そして、物語も終盤になって、変わらない男にもようやく転期が訪れる。
セシルがホワイトハウスの中で、忠実に職務を遂行していた間に、世間はすっかり様変わりしてしまった。
制度としての人種隔離は過去のものとなり、過激な運動にのめり込んでいたルイスは本格的に政治の道へ進み、ベトナムへと渡った次男はアーリントンの土となった。
父が殺された南部の農園も、既にその面影すらない。
嘗て忌み嫌っていた変革者たちによって齎された、奴隷同然だった子供の頃には考えられなかったベターな未来がそこにはある。
変わらなかったのは、実は自分だけだった事にようやく気づいたセシルは、遂にホワイトハウスの外へ出る決意をするのだ。
長年疎遠だった長男は、駆け出しの政治家としてレーガン政権に反対している。
デモに集まった群集の中に、父の姿を見たルイスは言う。
「仕事を失うよ」
「私はお前を失った」

ルイスがホワイトハウスの空気である事をやめて、一人のアメリカ市民へと戻るこの時は、親子の絆が蘇る瞬間でもあり、感動的だ。

現実のユージン・アレンは、映画のセシル同様にバラク・オバマ政権の誕生を見届けた後、2010年に90歳で亡くなっている。
まあ、ある意味でハリウッドのオバマ大統領のシンパ大集合的な政治色故か、アカデミー賞では見事に無視されてしまった本作だが、人間ドラマとしても歴史劇としても、色々な意味で見応えたっぷりの大作である事は間違いない。
そしてこれは人種問題の観点から見たもう一つの「フォレスト・ガンプ」であり、オプラ・ウィンフリーの代表作である「カラー・パープル」を彷彿とさせる部分もある。
アメリカ史に興味のある人にとっては、特にたまらない作品だろう。

今回は、ホワイトハウスでも提供された歴史を持つ、カリフォルニアはアンダーソンヴァレーのシャッフェンベルガー・セラーズのスパークリング、「シャッフェンベルガー・ブリュット」をチョイス。
ピノ・ノワール65%、シャルドネ35%の組み合わせで、プラムや洋梨などの複雑な果実香が楽しめる。
味わいは上品でバランスよく、シチュエーションを選ばない。
泡立ちもクリーミーで、品質の割にコストパフォーマンスが抜群なのも嬉しいポイントだ。
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