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ジョバンニの島・・・・・評価額1650円
2014年02月27日 (木) | 編集 |
失われた島々の記憶。

北方四島の人々の戦後が、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフに、幼い兄弟に投影して描かれる。
ソ連軍による占領とロシア人少女との淡い初恋、そして過酷な樺太での抑留生活。
ある日突然祖国から切り離され、故郷にいながら外国の虜囚となった子供たちが見た世界とは何か。
素晴らしいクオリティのアニメーション制作は、プロダクションI.G.が担当し、監督はベテランの西久保瑞穂。
「最後の忠臣蔵」の杉田成道が共同脚本とボイスキャストの演出を担当しており、アニメーションならではのファンタジックな表現と、写実的なリアリティが絶妙なコラボレーションを形作る。
殆どの日本人が知らないもう一つの戦後史は、実話をもとにした重量級の力作だ。
※ラストに触れています。

1945年夏。
北方四島の一つ、色丹島では戦時中とは思えないほど平和な日々が続いていた。
島で生まれ育ったジュンペイ(横山幸汰/仲代達矢)とカンタ(谷合純矢)は、村の“防衛隊長”を勤める父(市村正親)と漁師の祖父(北島三郎)と暮らしている。
しかし、敗戦によって暮らしは一変。
進駐してきたソ連軍によって、村人の財産は没収され、漁業すら禁止された。
国民学校の佐和子先生(仲間由紀恵)は、どんな事になっても平常心を失わない様にと指導するが、やがて島の小学校には、ソ連軍人の子供たちが転入してくる。
大人たちの心配をよそに、何時しか子供たちは交流を深め、ジュンペイは自分たちの家を接収した軍人の娘、ターニャ(ポリーナ・イリュシェンコ)に恋心を抱くのだが、やがて住人たちは島外へと移動させられる事になり・・・


太平洋戦争を描いた作品は沢山あるが、戦後ソ連によって占領された北方四島や南樺太を描いた作品は極端に少ない。
劇場映画では、本作の他には「樺太 1945年夏 氷雪の門」があるくらいだろうか。
やはり日本人の戦争の記憶の中でも、人口的に極端なマイノリティである事が、商業映画としての成立を難しくしているのだろう。
この作品の企画は、原案としてクレジットされている米国人留学生が、主人公のモデルでもある得能宏氏ら元島民らの手記を読み、研究リポートとしてまとめて杉田氏のところに持ち込んだ事からスタートしたという。
日本人が殆ど関心を持たない自分たちの過去を、外国人が思い出させるというのは、「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」もそうだった。
やはり外からの視点というのは、重要なのである。

色丹島の危うい戦後の日常を描く前半部分が、圧倒的に素晴らしい。
北方四島の問題解決を訴える作品だが、一方的に日本の主張を押し付けるのとは違う。
この映画には困難な状況はあれど、“敵”の存在は描かれていないのだ。
進駐してきたソ連軍の兵士は、実際にはもっと激しく略奪を行い、村人への暴行事件も多発したらしいが、それを訴えるのが映画の趣旨ではない。
どんな歴史にも多面性があるもので、映画に描かれたターニャやその家族との交流は、得能氏と亡くなった弟の実体験であるという。
日本人とロシア人で隣り合わせの教室を使う事になった子供たちが、何時しか壁越しに歌声の交歓を楽しみ、心の壁を取り払ってゆくシーンのなんという高揚。
政治的な軋轢や言葉の違い越えて、人間は通じ合えることを実に映画的に表現した素晴らしい描写だ。

タイトルが「ジョバンニの島」である事からもわかる様に、本作の重要なモチーフとなっているのは宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」である。
ジュンペイの両親にとって思い出の本であり、ジュンペイとカンタはそれぞれに物語の登場人物から名付けられたという設定だ。
まあジョバンニはわかるけど、子供の名前をカムパネルラからとっちゃうのはどうなの?と思わなくもないが、ともかく彼らはロシア人たちからはジョバンニとカムパネルラと呼ばれ、小さな島には存在しない鉄道に憧れる少年として描かれる。
そして子供たちの創造力が生み出す「銀河鉄道の夜」のイメージは、残酷な現実を描く本作に、アニメーションならではの美しい幻想性を付与しているのである。
特に秀逸なのが、一軒の家を二家族で分け合う事になったジュンペイたちとターニャが、お互いの境界である襖越しに、鉄道模型を組んで走らせるシーン。
ろうそくの炎の揺らめきの中で、小さなヘッドライトを灯した列車が走るシーンは、実写では表現不可能な現実と非現実を軽やかに超えるイマジネーションの輝きに満ちている。

しかし、敗戦と占領という現実の中でも、日常の小さな喜びや希望が見えていた前半に対して、人々を飢えさせないために旧軍の食料を隠していたジュンペイの父が逮捕され、島民がたちが本土送還前に一時的に樺太へと移送される後半になると、物語は次第に死の香りに支配され、痛々しいものになってくる。
過酷な環境で男たちは労働を強制され、本土の土を踏む前に亡くなる人が続出。
やがてカンタもまた、当時不治の病と言われた結核を患ってしまい、日に日に衰弱してしてゆく。
ところが、逮捕されて以来行方が分からなかった父親が、同じ樺太の少し北の収容所にいる事を知ったカンタは、父に会うためにジュンペイや佐和子先生らを巻き込んで、北を目指す小さな旅に出る事を決めるのである。
ジュンペイとカンタがジョバンニとカムパネルラである時点で、鉄道の密行に始まるこの旅路の帰結する先は分かってしまうのだが、「銀河鉄道の夜」そのものが樺太で生まれたという事実は不勉強にも知らなかった。
最大の理解者であった妹を病で失った賢治が、失意の中で傷心旅行に出て、この南樺太で列車に乗った時に、最初の着想を得たのだという。
ただ、この死地への旅に出る動機付けは、どうしても父に会いたいというカンタの感情に他の登場人物の行動が依存している分、やや弱く感じる。
特に語り部であるジュンペイには、弟を思いやる気持ち以上の、彼自身の決断の理由がほしかったところだ。

本作のキャッチコピーは「忘れてはいけない物語」である。
確かにそれはその通りだと思うが、北方四島と南樺太の運命は必然だった訳ではない。
この時代の日本人の幾つもの愚かな選択の結果として戦争起こり、島の人たちに悲劇が降りかかってしまったのだ。
そもそも時代を遡れば、千島は近世以降に倭人がアイヌから奪った島々である。
また日本人にとって失われた島であるのと同時に、戦後70年の間に島で生まれ育ったロシアの人々にとっては与えられた島だ。
映画でもジュンペイたちと別れた後、ターニャはずっと島で暮らし、島で亡くなった事が示唆される。
物語のラストでは、ビザ無し渡航で50数年ぶりに島を訪れたジュンペイが、懐かしいターニャの面影を持つ少女と踊りを楽しむ。
このシーンが、戦後の学校で日露の子供たちが交流するシーンの対として配されているのは間違いないだろう。
歴史的な経緯がからむ領土問題は難しいが、例えば竹島や尖閣の問題が基本経済と軍事と面子の問題なのに対して、北方四島はそこに嘗て暮し、今も暮す人々の存在がより問題を複雑にもするし、逆に解決に近づける力となるのかも知れない。
ジョン・レノンの「IMAGINE」ではないが、いっそ国境など無ければ、と思う。

今回は北方四島を望む根室の地酒、碓氷勝三郎商店の「北の勝 鳳凰」をチョイス。
明治20年創業の日本最東端に位置する老舗酒蔵であり、根室の周辺を旅行すると必ずと言っていいほどどの店にも置いてある地産地消の地酒。
味わいはすっきりして全くと言っていいほど癖がなく、ほのかな酸味と柔らかで控えめのコク。
正に北海の海の幸のために存在するといって言いほど、地元産食材との相性は抜群である。
東京でも郷土料理の店などにたまに置いてあるが、特に魚を食べさせる店なら選んで間違いなしの一本だ。
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