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2014年05月09日 (金) | 編集 |
GOOOOD JOB!!!
「WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~」は、ひょんな事から林業のインターンとなった都会っ子が、未知なる山の一年を通して成長してゆく姿を描く、言わば一次産業青春映画だ。
しかし軽いコメディと侮るなかれ。
恋と自分の居場所を巡る葛藤は、林業という知ってる様で知らない世界への興味から、やがて日本の土着的な精神文化を取り込み、奥深い映画的世界を形作る。
山の木々と人間の営みに象徴される生命の循環を、そのまま戯画化したような、パワフルなクライマックスには誰もが度肝を抜かれるだろう。
笑いと、少しの涙、そして血沸き肉躍るスペクタクル。
コミカルなエンターテイメントとして一級品である事はもちろん、日本人の心の琴線に触れるアニミズム的な世界観も意外と深く、世代を問わずに楽しめる秀作だ。
※核心部分に触れています。
大学受験に失敗した平野勇気(染谷将太)は、ふと目にしたブックレットの表紙の美女に一目ぼれ。
彼女に会えると思い込んで、一年間の林業インターンに応募してしまう。
ところが、列車を乗り継いでたどり着いた研修センターがあったのは、コンビにも無く、携帯電話すら圏外の山奥の村。
早速逃げ出そうとする勇気だったが、どうやら更に山奥に住んでいるらしい表紙の美女・石井直紀(長沢まさみ)と仲良くなりたいという誘惑に負けて、一ヶ月の研修をなんとか乗り切る。
残り11ヶ月、勇気が働く事になったのは、直紀が住む村にある中村林業。
熱血の山男、飯田ヨキ(伊藤英明)のスパルタな指導を受けながら、勇気は次第に山の仕事にも慣れてゆく。
そんなある日、卒業以来会っていなかった高校時代のガールフレンドが、大学のスローライフ研究会の合宿で、林業の仕事を見学したいと言ってくるのだが・・・・
矢口史靖監督のベストと思える、素晴らしい仕上がりである。
平凡な若者が、全くミスマッチな“何か”と出会い、悪戦苦闘しながら人生の目標を見つけてゆく。
男子高校生がシンクロナイズド・スイミングに挑戦する「ウォーターボーイズ」や、田舎の女子高生たちがジャズバンドを組む「スウィングガールズ」に連なる、矢口監督お得意のパターンだ。
少し違うのは、今回は群像劇ではなく、染谷将太が好演する平野勇気を単独でフィーチャーした物語であるという事だろう。
もちろん原作ものという事もあるのだろうけど、これは映画を観ると必然である事がわかった。
勇気が足を踏み入れた林業の世界というのは、想像以上に深くて広い文化的、歴史的なバックグラウンドを持つのである。
それ故に、一年と言うスパンで物語を構築すると、勇気の経験する事、感じた事を描くだけでも精一杯になってしまうのだ。
同時に、この奥深さは良くも悪くも「ウォーターボーイズ」以降の矢口作品に漂っていた、ストーリー展開のテンプレ感を破壊している。
いや、構成そのものは実にロジカルなのだが、物語が終盤に近づくにつれて、映画が予想外の範囲まで取り込み始め、良い意味でカオスな世界へ突入するのだ。
そのベースとなっているのが、日本人の心の奥底に流れる自然への畏敬の念である。
木の時間、山の時間と人間の時間は違う。
今、自分たちが切り倒して使っている木は、遠い祖先が植えて、代々じっくりと手間隙をかけて育ててきたもの。
そして今植えた木を切り倒すのは、自分たちではなく遠い未来の子孫たちなのだ。
だから山に入り、森で働く人間たちは、過去と未来の両方に対して責任を負っているのである。
この国に人間が住み始めて以来、ずっと続いてきた人間と自然の共生を絶やさないために、現代の木こりたちは子孫を欲し、勇気の様に外からやってくる人間を求める。
シンクロやジャズでは描けなかった、生きる事そのものの意味が、本作の根幹にはあるのだ。
星霜幾百年の遠大な木の一生が、人間を含めた生命の循環に繋がる脚本の巧みな工夫が本作のキモ。
映画の前半は、右も左も分からない勇気が、ブックレットの表紙の美女・直紀に対する下半身的欲望によって、何とか山に踏みとどまり、林業と言う新しい体験に目を開かされてゆくプロセスだ。
やがて彼が、ずっと森と共に生きてきた村の人々の想いを徐々に理解できるようになると、物語は山の文化の底知れぬ精神性に向かって枝を伸ばし始める。
山奥で見つけた古い石組みの神像に、勇気が何気なくお供えをするエピソードが、彼が神隠しにあった村の子供を探し出し、山男の一員として認められるシークエンスの伏線として機能する上手い仕掛け。
濃密な山の暮らしを続ける中で、一年が終わったら都会へと帰るはずだった勇気の心にも、大きな迷いが生じてくる。
そして最大の見せ場となる、壮大に狂った村祭りの、強烈過ぎるインパクト。
なんでも目指したのは“世界一危険で、巨大な奇祭”だそうだが、ここへきて映画は一気にスケールアップし、ダメ男の青春の葛藤から始まった物語は、あくまでも生命のサイクルの物語としての下半身要素を残しながら、見たことも無い様な神話的スペクタクルに昇華されるのである。
しかもぶっ飛んでいるのは確かながら、奇祭の宝庫である日本の秘境のどこかに、本当にあるのかも?と思わせるさじ加減が絶妙だ。
アレとアレをあんな方法で激突させるのはフィクションだろうけど、アレを祀った奇祭は各地に実際にあるし、アレが斜面を滑り落ちるのは長野県で千年以上続く某祭を思わせる。
御神木を切り倒すシークエンスだけで撮影に一週間かけたそうだが、隅々までこだわった画作の丁寧さが、ギリギリのリアリティを感じさせる重要な要因である事は言うまでもない。
作り手の情熱と苦労が、見事に映像に結実している興奮のクライマックスである。
主人公の勇気を演じる染谷将太はじめ、俳優陣は皆キャラ立ちしていて魅力的で、特に海猿から山猿へと転職した伊藤英明が素晴らしい。
相変わらずメチャクチャ暑苦しいキャラクターなのだが、彼の隠し味である三枚目的な演技がこれほど魅力的な作品もないだろう。
妻の優香と“妊活”しながらキャバレーのお姉さんにも手を出すチャラさと、豪快かつ頼もしい山男のギャップ。
年末の賞レースでは助演男優賞候補になるのではないか。
そういえば、先日の「銀の匙 Silver Spoon」も一次産業をモチーフにした良く出来た青春映画だったが、この惑星に息づく無数の命の中で生きるという人間の宿命を思えば、これほど青春をディープに描ける題材は無いのかもしれない。
特に本作の場合は、終盤土着的なファンタジー的な要素までをも取り込んで、破天荒な勢いを生んでいる。
青春の生命のエネルギーが映画的パワーとなって、アレの突進に集約される様は、まことに力強く、スクリーンから緑の熱風を感じる様だ。
現時点で、2014年を代表する日本の娯楽映画の快作と言って良いと思う。
今回は、ロケ地となった三重県の地酒、細川酒造の「上げ馬 純米大吟醸 神の穂50」をチョイス。
三重県産の酒米、神の穂を50%まで精米し醸造された。
スッキリしたくせの無いのど越し。
純米吟醸らしいフルーティな香りが、口の中にフワリと広がり、シンプルながら豊かな米の味わいを楽しめる。
銘柄は、やはり伝統的な奇祭として知られる、三重県桑名市の多度大社の上げ馬神事に因む。
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「WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~」は、ひょんな事から林業のインターンとなった都会っ子が、未知なる山の一年を通して成長してゆく姿を描く、言わば一次産業青春映画だ。
しかし軽いコメディと侮るなかれ。
恋と自分の居場所を巡る葛藤は、林業という知ってる様で知らない世界への興味から、やがて日本の土着的な精神文化を取り込み、奥深い映画的世界を形作る。
山の木々と人間の営みに象徴される生命の循環を、そのまま戯画化したような、パワフルなクライマックスには誰もが度肝を抜かれるだろう。
笑いと、少しの涙、そして血沸き肉躍るスペクタクル。
コミカルなエンターテイメントとして一級品である事はもちろん、日本人の心の琴線に触れるアニミズム的な世界観も意外と深く、世代を問わずに楽しめる秀作だ。
※核心部分に触れています。
大学受験に失敗した平野勇気(染谷将太)は、ふと目にしたブックレットの表紙の美女に一目ぼれ。
彼女に会えると思い込んで、一年間の林業インターンに応募してしまう。
ところが、列車を乗り継いでたどり着いた研修センターがあったのは、コンビにも無く、携帯電話すら圏外の山奥の村。
早速逃げ出そうとする勇気だったが、どうやら更に山奥に住んでいるらしい表紙の美女・石井直紀(長沢まさみ)と仲良くなりたいという誘惑に負けて、一ヶ月の研修をなんとか乗り切る。
残り11ヶ月、勇気が働く事になったのは、直紀が住む村にある中村林業。
熱血の山男、飯田ヨキ(伊藤英明)のスパルタな指導を受けながら、勇気は次第に山の仕事にも慣れてゆく。
そんなある日、卒業以来会っていなかった高校時代のガールフレンドが、大学のスローライフ研究会の合宿で、林業の仕事を見学したいと言ってくるのだが・・・・
矢口史靖監督のベストと思える、素晴らしい仕上がりである。
平凡な若者が、全くミスマッチな“何か”と出会い、悪戦苦闘しながら人生の目標を見つけてゆく。
男子高校生がシンクロナイズド・スイミングに挑戦する「ウォーターボーイズ」や、田舎の女子高生たちがジャズバンドを組む「スウィングガールズ」に連なる、矢口監督お得意のパターンだ。
少し違うのは、今回は群像劇ではなく、染谷将太が好演する平野勇気を単独でフィーチャーした物語であるという事だろう。
もちろん原作ものという事もあるのだろうけど、これは映画を観ると必然である事がわかった。
勇気が足を踏み入れた林業の世界というのは、想像以上に深くて広い文化的、歴史的なバックグラウンドを持つのである。
それ故に、一年と言うスパンで物語を構築すると、勇気の経験する事、感じた事を描くだけでも精一杯になってしまうのだ。
同時に、この奥深さは良くも悪くも「ウォーターボーイズ」以降の矢口作品に漂っていた、ストーリー展開のテンプレ感を破壊している。
いや、構成そのものは実にロジカルなのだが、物語が終盤に近づくにつれて、映画が予想外の範囲まで取り込み始め、良い意味でカオスな世界へ突入するのだ。
そのベースとなっているのが、日本人の心の奥底に流れる自然への畏敬の念である。
木の時間、山の時間と人間の時間は違う。
今、自分たちが切り倒して使っている木は、遠い祖先が植えて、代々じっくりと手間隙をかけて育ててきたもの。
そして今植えた木を切り倒すのは、自分たちではなく遠い未来の子孫たちなのだ。
だから山に入り、森で働く人間たちは、過去と未来の両方に対して責任を負っているのである。
この国に人間が住み始めて以来、ずっと続いてきた人間と自然の共生を絶やさないために、現代の木こりたちは子孫を欲し、勇気の様に外からやってくる人間を求める。
シンクロやジャズでは描けなかった、生きる事そのものの意味が、本作の根幹にはあるのだ。
星霜幾百年の遠大な木の一生が、人間を含めた生命の循環に繋がる脚本の巧みな工夫が本作のキモ。
映画の前半は、右も左も分からない勇気が、ブックレットの表紙の美女・直紀に対する下半身的欲望によって、何とか山に踏みとどまり、林業と言う新しい体験に目を開かされてゆくプロセスだ。
やがて彼が、ずっと森と共に生きてきた村の人々の想いを徐々に理解できるようになると、物語は山の文化の底知れぬ精神性に向かって枝を伸ばし始める。
山奥で見つけた古い石組みの神像に、勇気が何気なくお供えをするエピソードが、彼が神隠しにあった村の子供を探し出し、山男の一員として認められるシークエンスの伏線として機能する上手い仕掛け。
濃密な山の暮らしを続ける中で、一年が終わったら都会へと帰るはずだった勇気の心にも、大きな迷いが生じてくる。
そして最大の見せ場となる、壮大に狂った村祭りの、強烈過ぎるインパクト。
なんでも目指したのは“世界一危険で、巨大な奇祭”だそうだが、ここへきて映画は一気にスケールアップし、ダメ男の青春の葛藤から始まった物語は、あくまでも生命のサイクルの物語としての下半身要素を残しながら、見たことも無い様な神話的スペクタクルに昇華されるのである。
しかもぶっ飛んでいるのは確かながら、奇祭の宝庫である日本の秘境のどこかに、本当にあるのかも?と思わせるさじ加減が絶妙だ。
アレとアレをあんな方法で激突させるのはフィクションだろうけど、アレを祀った奇祭は各地に実際にあるし、アレが斜面を滑り落ちるのは長野県で千年以上続く某祭を思わせる。
御神木を切り倒すシークエンスだけで撮影に一週間かけたそうだが、隅々までこだわった画作の丁寧さが、ギリギリのリアリティを感じさせる重要な要因である事は言うまでもない。
作り手の情熱と苦労が、見事に映像に結実している興奮のクライマックスである。
主人公の勇気を演じる染谷将太はじめ、俳優陣は皆キャラ立ちしていて魅力的で、特に海猿から山猿へと転職した伊藤英明が素晴らしい。
相変わらずメチャクチャ暑苦しいキャラクターなのだが、彼の隠し味である三枚目的な演技がこれほど魅力的な作品もないだろう。
妻の優香と“妊活”しながらキャバレーのお姉さんにも手を出すチャラさと、豪快かつ頼もしい山男のギャップ。
年末の賞レースでは助演男優賞候補になるのではないか。
そういえば、先日の「銀の匙 Silver Spoon」も一次産業をモチーフにした良く出来た青春映画だったが、この惑星に息づく無数の命の中で生きるという人間の宿命を思えば、これほど青春をディープに描ける題材は無いのかもしれない。
特に本作の場合は、終盤土着的なファンタジー的な要素までをも取り込んで、破天荒な勢いを生んでいる。
青春の生命のエネルギーが映画的パワーとなって、アレの突進に集約される様は、まことに力強く、スクリーンから緑の熱風を感じる様だ。
現時点で、2014年を代表する日本の娯楽映画の快作と言って良いと思う。
今回は、ロケ地となった三重県の地酒、細川酒造の「上げ馬 純米大吟醸 神の穂50」をチョイス。
三重県産の酒米、神の穂を50%まで精米し醸造された。
スッキリしたくせの無いのど越し。
純米吟醸らしいフルーティな香りが、口の中にフワリと広がり、シンプルながら豊かな米の味わいを楽しめる。
銘柄は、やはり伝統的な奇祭として知られる、三重県桑名市の多度大社の上げ馬神事に因む。

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