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ショートレビュー「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦 ・・・・・評価額1600円」
2014年05月15日 (木) | 編集 |
弱くても、夢を決して諦めない!

まもなく開幕する世界最大のスポーツの祭典、サッカーW杯
世界の頂点を目指して本戦に出場するのは32チームだが、2011年から始まった予選で涙をのんだ実に171ものチームの中に、オセアニア地区の米領サモア代表がいる。
人口わずか55000人、アメリカ合衆国の自治領の米領サモアは、94年にFIFAに加盟したものの、W杯予選通算16戦全敗、129失点、2得点という悲惨な歴史を持つ。
2002年の対オーストラリア代表戦の31失点は、国際Aマッチ史上、一試合での最多失点記録だという。
これは、そんな世界最弱のナショナルチームの選手たちと、彼らをたった3週間でW杯予選に挑ませるという重責を負ったオランダ人指揮官を追ったドキュメンタリー映画。
目指すのは、負けしか知らないチーム待望の初勝利だ。

太平洋の小さな島の代表には、金もスキルも無い。
若者の多くは、学校を卒業するとすぐに米軍に入隊して本土へと出て行ってしまうために、将来性のある選手を確保する事も困難。
もちろんプロチームなど存在せず、選手は全員他の職業を持っている。
一日の仕事を終えて練習に集まる、ほとんど部活状態のチームにあるのは、サッカーへの愛と情熱だけだ。
ピッチの、ベンチの誰もが何かを背負って、試合に挑む。
オーストラリア戦で31失点という“伝説”を作ってしまったキーパーのニッキーは、汚名をそそぐために引退を撤回し、移民先の都会から島へと戻ってくる。
本土で兵士として勤務しながら軍のチームに所属しているが青年ラミンは、身重の妻を残し、故郷のために年次休暇を全て使って代表に合流。
長いキャリアを持つトーマス・ロンゲン新監督も、交通事故でサッカー選手だった娘を失い、心の傷を抱えている。

個性的なチームの中でもユニークな存在が、ジャイヤ・サエルアだ。
ジョニーという出生名を持つ“彼女”は、史上初めてトランスジェンダーとして代表戦出場を目指すサッカー選手なのである。
米領サモアのあるポリネシアでは、歴史的、文化的にトランスジェンダーが認められ、とても尊重されているという。
チームメイトの誰もが、自然に彼女の存在を受け入れ、彼女もまた献身的にプレーする様子は、性同一性障害や同性愛への偏見を吹き飛ばし、スポーツの持つ可能性を改めて感じさせる。

そして、本作が日本の観客に特に響く理由がひとつ。
米領サモアは、2009年の9月29日に発生したマグニチュード8.1のサモア沖地震で津波に襲われ、大きな被害を出した。
代表でプレーする選手にも大切な人や家を失った人たちがおり、彼らにとってW杯予選への挑戦は鎮魂と復興の象徴なのである。

本作は、映画としては奇を衒ったところの無い正攻法のドキュメンタリーだ。
客観的な視点をキープしつつ、適度な距離感で選手や監督にそっと寄り添い、起こった事実を描写する。
それでもこの話は全く知らなかったので、いつしかどん底から挑戦する彼らに感情移入し、試合のシーンではまるでライブの様にドキドキした。

それにしても、やはりW杯というのはサッカー関係者にとっては永遠の夢なんだな。
ヨーロッパやアメリカでプロとして活躍してきたロンゲン監督でも、W杯予選を代表監督として戦うのは特別なのだという事が伝わってくる。
ここにあるのは、おそらくサッカーというスポーツの最もピュアな姿だろう。
ドンと背中を押される様な、気持ちの良い感動をもらえる秀作であり、間近に迫ったW杯気分を盛り上げるにもピッタリの映画だ。

今回は、ポリネシアのお話なので、フランス領ポリネシアのタヒチの地ビール、「ヒナノビール」をチョイス。
正統派のラガービールで、ライトなテイストながら薄過ぎることもなく、スッキリした喉越しと適度なコクのある味わいは、どちらかと言うと日本のビールに近い。
と言う事はつまり、日本の夏の気候にもピッタリで美味しいということ。
都内でもポリネシア料理の店などには、ほぼ確実に置いてあるのでご賞味あれ。
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ある過去の行方・・・・・評価額1650円
2014年05月15日 (木) | 編集 |
誰もが、真実を隠している。

イラン新世代の鬼才、アスガー・ファルハディ待望の最新作は、別居中のフランス人妻との離婚手続きのために、テヘランからパリへとやって来た元夫が見た、家族の真実を巡る物語だ。
新しい恋人と、互いの子供を連れて再婚しようとする元妻。
しかし思春期の長女のある告白から、それぞれの抱える秘密と嘘が徐々に明るみに出る。
前作のイランの乾燥した風景から一転、ウェットなフランスの情景を背景に、人の心が織り成すミステリアスな愛憎劇
登場人物の複雑な関係と繊細な内面描写が作り出すサスペンスは、更にシャープに切れ味を増し、人間心理の真相の闇はますます深く、暗い。

イラン人のアハマド(アリ・モサファ)は、4年ぶりに嘗て暮らしたパリへとやって来る。
いまだ法的には婚姻状態にある元妻のマリ(ベレニス・ベジョ)の求めで、正式に離婚手続きをするためだ。
ところが、彼女は自分の連れ子二人と、新しい恋人であるサミール(タハール・ラヒム)とその息子と既に同居していた。
実はマリは彼との子を妊娠しており、二人は再婚を考えているのだ。
彼女の元夫として、サミールとの対面に気まずさを隠せないアハマドだったが、彼はマリと長女のリシュー(ポリーヌ・ビュレル)との仲がギクシャクしている事に気づく。
やがてリシューはアハマドに、母とサミールが元々不倫関係にあり、サミールの妻がその事で精神を病んで自殺未遂し、今も植物状態にある事を告白するのだが・・・・


「ある過去の行方」とは奇妙な邦題だが、映画を観るとなるほど言いえて妙だと思える。
ファルハディの前二作品では、何らかの事件をきっかけに人間関係が動きだし、それまで秘められていた登場人物の本音がさらけ出される。
例えば大きな反響を呼んだ「彼女が消えた浜辺」では、カスピ海沿岸のリゾートにバカンスにやって来た友人同士のグループが、エリという女性の失踪によって混乱に陥る。
ある人物が善意でついた小さなウソが、更なるウソの連鎖をよび、やがて人間関係がグチャグチャに崩壊してゆく。
前作の「別離」では、離婚調停中の夫婦が雇った信心深い介護ヘルパーの女性が、雇い主の夫に暴行されたと訴えた事で、二組の夫婦による泥沼の訴訟合戦へと展開する。
どちらの夫婦にも心に秘めた秘密があることから、彼らの関係はいよいよ底なしのドツボへと嵌まり込んでしまうのだ。

本作の場合、登場人物の相関図はさらに縮小し、基本的にはちょっと変わった一つの家族の物語である。
ただし、彼らの関係は実質的に既に破綻しており、表面的に取り繕っている家族が、なぜ壊れてしまったのかを明かしてゆく話になっているのが新しいと言えば新しい。
イランからやって来るアハマドはいわば映画の狂言回しであり、家族の秘められた謎を解く探偵でもある。
既に離婚を決意し、家族の外にいる彼は、冷静な目で絡み合った感情のもつれの原因がどこにあるのかを見極めねばならない。

はたして本当に自殺未遂の原因は不倫だったのか?それとも年頃のリシューの求める理想の愛と現実のギャップが生み出した妄想に過ぎないのか?
少女が心の中に押し込めていた感情の吐露を受けたアハマドは、嘗て愛した家族の将来のために、時間をさかのぼり、自殺未遂の前に何が起こったのかを調べはじめる。
誰がウソを言って、誰が言っていないのか?本心を隠しているのは何者か?
ある人物の証言によって、事実関係が明らかになったかと思えたのもつかの間、ここから映画はさらに一ひねり。
幾つもの“真実”のぶつかり合いが葛藤を巻き起こし、葛藤が更なる葛藤を生み出す先の見えない展開はファルハディ節の真骨頂だ。

しかし、ミステリ要素そのものは、テーマを導き出す手段に過ぎない。
本作が描こうとするのは、原題が示唆し、邦題がより分かりやすく指し示す様に、人間の心の中で絡み合う、過去と現代、未来の関係である。
登場人物は皆、未来を向こうとしているが、その実過去によってがんじがらめにされているのだ。
離婚によって過去と決別し、新しい生活を始めようとしているマリが選んだ新恋人のアミールは、おそらくはアラブ、北アフリカ系で容姿がアハマドとよく似ている。
アミールはもちろん、植物状態の妻との関係を抱え、物語のキーパーソンであるリシューは、奔放な母と何人もの“父”との暮らしから、愛の真実に絶望している。
そして一見すると、葛藤の外にいる様に見えるアハマドもまた、フランスでの生活に馴染めず、家族を捨てて帰国した事に自責の念を感じているのだ。
真摯に過去に向き合わず、自分の感情を押し通そうとする者は、結局偽りの未来しか選べないのである。

物語のテリングのスタイルは、前作からさらに洗練されており、淀みのない清流のような滑らかな語り口は心地よさを感じるほど。
しかし全体の印象として、若干薄味になった様に感じるのは、事実上のフランス映画となった事で、今までファルハディ作品の重要なスパイスであったイスラムの信仰という要素が無くなったからだろう。
アハマドはイラン人とは言っても、フランスで暮らしてフランス人と結婚したくらいだから、イラン人コミュニティとの関係が出てくるくらいで、キャラクターとしてあまり異国の人ならではという要素は多くない。
また彼は物語の狂言回し的なポジションで、自身はそれほど深刻な問題を抱えている訳ではないので、内面が少し見えにくい。
個人の中にあるイスラムへの信心の程度、というものがジワジワと人間関係の複雑さに絡んでくるような面白さは、本作には無いのだ。
もっとも、それによって人間ドラマとしてはより普遍性を持った愛憎劇となっているのもまた事実。
はたしてファルハディはずっとこの路線で行くのか、そろそろ毛色の違ったジャンルを作ったりするのか。
やはり次回作が楽しみな作家である。

人生の岐路に立つ人間たちが織り成す濃密な心理ドラマ、この映画にはやはりフルボディな赤、「レ・コント クオール」の2011をチョイス。
黒いワインと呼ばれるほどダークな外観のイメージ通り、タンニンが豊富で、非常にコクがある。
ただ2011だとまだ若くやや渋みを感じてしまうので、もうちょい熟成させた方が良いかも知れない。
BBQなどのワイルドなお肉料理と相性がよく、何よりコストパフォーマンスが抜群。
家飲み様にはちょうど良く、煮込み料理やソースのベースとしても使いやすい庶民の味方だ。
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