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円卓 こっこ、ひと夏のイマジン・・・・・評価額1650円
2014年06月01日 (日) | 編集 |
最近、イマジンしてる?

大阪の団地で、大家族の愛に包まれて暮らす小学三年生の女の子、琴子(こっこ)のひと夏の成長を描くユーモラスなヒューマンドラマ。
天真爛漫だが、まだ他人の気持ちを思いやる事を知らない子供時代。
この世は未知の事だらけで、キラキラした好奇心は目に入るもの、耳に入るもの全てに向けられる。
でも、そんな“知りたい”という気持ちが、見ることも聞くことも出来ない、友達や家族の心の中に向けられた時、世界は今まで見えなかった新たしい顔を覗かせるのだ。
行定勲監督は、人が誰かの心と繋がろうとするときに、初めて体験する戸惑いと痛みを、子供たちの日常の中に寓話的に描き出す。
映画初主演となる芦田愛菜が、可愛くて小憎らしいエキセントリックな毒舌少女、こっこを演じて圧巻の存在感だ。
※核心部分に触れています。

小学3年生のこっこ(芦田愛菜)は、両親(八嶋智人・羽野晶紀)と三つ子の姉(青山美郷)、お爺ちゃん(平幹二朗)お婆ちゃん(いしだあゆみ)の8人大家族。
彼女は“普通”が大嫌い。
同級生のめぐみちゃん(草野瑞季)はある日“ものもらい”になって眼帯をしてきた。
一番の仲良しのぽっさん(伊藤秀優)は“きつおん”で、パクくん(古谷聖太)は“ざいにちかんこくじん”で、ゴッくん(野澤柊)の親は“ぼーとぴーぴる”らしい。
みんな人と違ってカッコええなあ、憧れる、真似したい!
でもある時、不整脈の発作で倒れたパクくんの真似をしたら、ジビキ先生(丸山隆平)に叱られてしまった。
なんで?不整脈って、カッコええやん?
納得いかないこっこに、お爺ちゃんが「イマジン」という不思議な言葉を教えてくれる。
そうして他人の気持ちをイマジンすると、新しい世界が見えてきたけど、同時に今まで知らなかった苦しさも芽生えてしまった。
小学3年生の夏休み、人の心のミステリを巡る、こっこの小さな冒険がはじまる・・・・


この映画とは、個人的に少し繋がりがあるので、あんまり推すのは憚られるのだけど、非常にユニークな視点を持った意欲作だと思う。
小学三年生が主人公だが、子供向けのいわゆるキッズムービーではない。
これはいわば、嘗て子供だった大人たちが、初めて他人の心という未知の世界に触れた時の新鮮な気持ちを思い出し、今一度追体験する映画だろう。
冒頭の眼帯少女のアップから、気分は一気にウン十年前にタイムスリップ。
確かに9歳の頃、人と違う事はカッコイイと思っていた。
こっこと同じ様に、クラスメートの眼帯が羨ましかったし、骨折してギプスをはめて来た子にも、在日韓国人の子にも憧れたし、真似できるものならしたかった。

「ものもらい」「ばくりゅうしゅ」「ふせいみゃく」
毎日知る新しい言葉を、こっこは秘密のジャポニカに書き留めている。
表紙には「だれおも あけることならぬ」の文字(笑
そうそう、これもやった。
成長期の子供たちには、倦怠なんて言葉は無縁。
未来は全て目新しく、驚きと発見に満ちている。
新しい言葉や知識は、なんだかそれ自体が宝物みたいに大切に思えたものだ。
特に一ヶ月以上という、当時は無限の長さに思われた夏休みは、ワクワクとウキウキの体験が詰まった、思い出の宝箱
自分の家と学校の教室だけが世界だった頃には、初めて訪れるお金持ちの友達の家に目を見張ったり、学校の飼育小屋のウサギを世話するのだって大きな冒険だ。
子供の頃、世界は毎日新しく生まれ、広がってゆくものだったのである。

でも、自分のしたいこと、知りたいことばかり主張していると、いつか見えない壁にぶち当たる。
不整脈で倒れたパクくんの真似をして叱られたこっこは、なぜ担任のジビキ先生が怒っていたのかがわからない。
彼女は以前にもぽっさんの吃音を真似して、こっぴどく叱られた前科がある。
不整脈も吃音も、他の子供たちには無い特別な事、だからカッコいい、だから真似したい。
ぽっさんは、真似されて嫌だと思う人もいるからだと言うが、こっこにはその感覚がまだ分からないのだ。
そんな彼女をいつも見守っているお爺ちゃんは、「こっこは、友達がどんなこと考えてるか、知りたいと思わんか?そこからイマジンは始まるのかもわからんな」と言う。

「イマジン(想像する)」
このシンプルな言葉に隠された、成長のミステリ。
それからのこっこは、友達はもちろん、自分の周りのあらゆる人の心をイマジンし始める。
母に赤ちゃんが出来て喜ぶ家族の心、離婚しようとしているパクくんのお母さんの心、ノートの切れ端に変な言葉を書いては机に貯めている同級生の幹成海の心。
そして、遂には子供に自分の顔を踏ませては恍惚に浸る変態さんの心まで。
人間は、他人の気持ちをイマジンする事によって共感し、思いやる能力を身につける。
でもそれはやり過ぎると、共感を通り越して相手と一体化してしまったり、逆に本来必要のない遠慮まで作り出してしまう。

この世界は、沢山の人が座っている円卓の様なもの。
人間は一人では生きてゆけないけど、皆が同じことを考えている訳でもない。
皆が適度な距離感と一体感を持っていて、ぐるぐる回るターンテーブルに置かれた料理の様に、必要があれば共有し、必要なければ取らなければ良い。
これはイマジンに目覚めた9歳のこっこが、葛藤しながら世界の理を理解する物語だが、果たして私たちは、円卓を使いこなせているだろうか?
何となく、私を含めた大人たちの多くは、イマジンを始めた頃よりも“遠慮”が先走るように成ってしまっている気がするのだけど。

行定監督の映画で子供が主人公と言えば「遠くの空に消えた」が記憶に新しいが、あの映画は登場人物がやたらと多く、尚且つ子供たちも大人たちも同時に描こうとしていた。
その良い意味での猥雑さが、スクリーンから迸らんばかりの映画の熱を生み出していた事は確かだが、若干の観難さに繋がっていた事もまた事実だと思う。
対して本作は、あくまでも物語の視点はこっこに固定され、全ては彼女の世界の中で消化される。
映画の作りとしては非常にシンプル。
その分、こっこのキャラクターが決定的に重要なのは言うまでもないが、本作の大きな幸運は芦田愛菜という驚くべき才能を獲得できた事だろう。
もちろん、彼女の名前は知っていたものの、主演ドラマは観たことが無く、正直それほど印象には残っていなかったのだが、昨年の「パシフィック・リム」では驚かされた。
巨大怪獣に襲われた演技で、あれほどリアリティを感じさせるものは過去に見た事がない。
そして本作では、映画の中心軸にドーンと鎮座する堂々たる主役の存在感。
例えば是枝裕和監督の映画の子供たち様な、ドキュメンタリー的な自然さとは違う。
芦田愛菜は、才能溢れる俳優であり、表情豊かな目の演技には観客をスクリーンに惹き込む力がある。
大人たちが“子役”という曖昧な言葉でなく、演技者として彼女を正当に評価するなら、年末の賞レースでは主演女優賞の有力候補となるだろう。
俳優陣の中でもう一人印象深かったのが、こっこの三つ子の姉を演じた青山美郷だ。
一人三役、一度演技をして、今度は自分の声を頼りに他の二人を順に演じている訳だが、普通に三つ子の俳優にしか見えない微妙なキャラクターの演じ分けはお見事。
今後要注目の若手女優である。

今回は、鹿が物語のキーになるお話なので、地元大阪の地酒、秋鹿酒造の「秋鹿 純米酒 千秋」をチョイス。
原料の酒米作りから酒造り、販売まで蔵で一貫して行い、生産される全量が純米酒という拘りの強い蔵で、高品質な日本酒には定評がある。
柔らかな米の味わいと旨み、適度なキレと酸味のバランスはよく、あわせる料理を選ばない。
高いコストパフォーマンスは、正しく庶民の味方だ。
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