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ショートレビュー「ぼくたちの家族・・・・・評価額1600円」
2014年06月10日 (火) | 編集 |
もう一度、“家族”始めました。

昨年の「舟を編む」で大ブレイクした石井裕也監督が、早見和真の同名小説を映画化したヒューマンドラマ。
「ぼくたちの家族」というタイトルが示唆する様に、モチーフとなっているのは家族というミニマムなコミュニティのあり方だ。
バラバラだったある一家が、母の急病を切っ掛けにして、崩壊、葛藤、再生の道のりを歩む物語は、前作同様に派手さはないが、じっくりと登場人物の心の変化を描き、見応えは十分。
スッと心に染み入り、長く余韻を引く良い映画だ。

一見するとごく普通の、両親と息子二人の四人家族。
ある時、重度の物忘れの症状に悩まされた母が、病院で検査を受けた結果、脳腫瘍と診断され、余命七日を宣告される。
基本の視点を担うのは、妻夫木聡が演じる長男だ。
引き籠りだった過去を持つ彼は、既に結婚して家を出ているが、身重の妻はあまり親世代と関わりを深めたがらず、それが重荷となり実家とは距離がある。
ところが母の入院によって、父が事業のために巨額のローンを抱え、母までもがサラ金で借金まみれという事実が明らかとなる。
正に青天の霹靂、突如として変わってしまった世界に残された男所帯は大きく動揺するが、やがて母の病気に対するセカンドオピニオン、そして借金という家族の問題を解決するために、それぞれが全力で動き始めるのだ。

この物語は、原作者の実体験が元になっているらしい。
自身の母親が余命宣告を受け、転院先の病院を探している間に執筆を開始したという。
だからだろうか、設定は極めてリアルで、この種の所謂難病ものにありがちな、感傷的な美談に逃げなかったのが良かった。
何しろ、登場人物が直面している最大の問題は命と金という生々しいものである。
母の病気は本当に脳腫瘍なのか?治療の可能性は無いのか?借金を消すことは出来ないにしろ、それぞれが未来を向ける方法は無いのか?
元引き籠りでガラスの心の長男、目的の無いチャラ男の次男、優柔不断な父の三人は、いつの間にか崩壊していた家族の肖像、そして自分自身の弱さに今一度向き合い、現状に抗い再生への道筋を求める。
彼らの求心力の中心となり、葛藤の帰結を導くのは、病の進行によって認知能力に問題が出た結果、思いがけずも無垢な少女の様な聖性を帯びてゆく母の姿だ。
時に優しく思い出を語り、時に辛辣にそれぞれの欠点を突く彼女の前では、父も息子たちも虚飾を捨て、素の自分で問題にぶつかってゆくしかないのである。

石井裕也監督は、やはり「舟を編む」で一皮剥けたと思う。
丁寧な演出もそうだが、家族全員のキャラクターを上手く立てながら、物語の軸はあくまでも長男に固定し、ぶらさない作劇も巧みだ。
激しい感情の発露やドラマチックな事件は極力控え、例えば中華料理店での会食や、ある朝の突然の父子ジョギングに見られる様な、小さな日常の行動で着実に物語を転がし、変化を見せてゆく。
唯一、長男の妻に関しては最終的に非常に重要なポイントを担うので、もう少し内面を描いても良かった様に思うものの、バランスを考えると難しいところだ。
これは、ある家族の崩壊と再生を描いた力作であり、後味は優しく、気持ちが良い。
若いくせに良い意味でジジ臭い、石井監督の“円熟”を感じられる一本であり、次回作の「バンクーバーの朝日」も俄然楽しみになった。

何となく昭和の松竹映画をイメージさせる本作、昭和の庶民の酒、元祖ビアテイスト飲料のホッピーを使った「ホッピー割り」をチョイス。
発売元のホッピービバレッジが推奨する“三冷”の飲み方は、まずビアジョッキと甲種焼酎、そしてホッピーをキンキンに冷やす。焼酎は、ムード的にはキンミヤで拘りたいところ。
そしてジョッキに甲種焼酎を1、ホッピーを5の割合で注ぎ入れる。
これでちょうどアルコール度5%のビールっぽいホッピー割ができるというもの。
個人的にはもうちょっと焼酎を増やして、1:4位の方が好みだけど。
氷は風味を損なうので決して入れてはならない。
ちなみにホッピーは意外と地域差があって、関東地方ではメジャーだけど、地方に行くとあまり知られていなかったりする。

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