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ホドロフスキーのDUNE・・・・・評価額1700円
2014年06月23日 (月) | 編集 |
砂の惑星の狂想曲。

おそらく映画史上最も有名な未完成作品、異才アレハンドロ・ホドロフスキー監督によるSF超大作、「DUNE」のビハインド・ザ・シーンに迫ったドキュメンタリー。
ホドロフスキーのファンだというフランク・パヴィッチ監督は、この幻の映画のプロジェクトがどの様に始まり、どの様に崩壊に追い込まれたのか、そして関わった人々に何を齎したのかを時系列に沿って追ってゆく。
過去にも様々なメディアによって断片的に紹介されてきた「DUNE」だが、その全貌を明らかにした本作を観ると、改めてそのスケールの大きさと、作り手の野心的なビジョンに驚かされる。

フランク・ハーバードが1965年に発表したSF小説「デューン」は、砂の惑星アラキスを舞台に、権力闘争の末に殺されたレト侯爵の忘れ形見ポールが、自らの力と使命に目覚め、抑圧された先住民フレーメンを率いて革命を引き起こす物語。
独特の中世的な世界観に、数百メートルもある巨大なミミズ状の生物、サンドワームなどの奇想天外なクリーチャーが登場し、欧米はもちろん、日本の漫画やアニメーションにも大きな影響を与えた傑作である。
高い人気ゆえ、出版当初から映画化が何度も構想されたが、余りにも壮大過ぎる物語のためにことごとく頓挫。
1984年になって、デヴィッド・リンチ監督でようやく映画化されたが、それ以前で最も実現に近づいたのが、「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」などでカルト的な人気を博していたホドロフスキーらのプロジェクトだ。

当時46歳のホドロフスキーと、若干28歳の若きプロデューサー、ミシェル・セドゥは、映画で世界を変えるべく、超大作を作り上げる“魂の戦士”として、世界中からスタッフ・キャストを集めてゆく。
たとえ一流であっても、人間として、創作者として作品に相応しくなければ起用しない。
ハリウッドでは超大物だが尊大なダグラス・トランブルではなく、売出し中だった「ダーク・スター」のダン・オバノンをVFXの責任者として迎える。
画面を彩るメカデザインにはSF画家のクリス・フォス、キャラクターデザインとストーリーボードにバンデシネアーティストのメビウス、悪役ハルコネン男爵関係のデザインはH・R・ギーガー、音楽にはピンク・フロイドにマグマ。
キャストに迎えられたのは、サルバドール・ダリ、オーソン・ウェルズにミック・ジャガーまで!
巨大なプロジェクトに、超個性的な面々が集まってくる展開は、まるで「七人の侍」か「水滸伝」の梁山泊の様だ。
まだ誰も観た事のないモノを創り出し、人々の度肝を抜いてやろうという若者たちのパッションによって、未知の芸術が形になってゆくプロセスにワクワクする。

しかし、現実に映画を作るとなると、やはり最後の問題は金。
今でこそ、このスタッフたちの名前を聞いて、胸躍らない映画ファンはいないだろうが、当時の彼らは殆どがまだ無名の若手だ。
ヨーロッパに拠点を置きながら、ハリウッドのメジャースタジオに資金を出させるという挑戦は困難を極める。
オーソン・ウェルズはビッグネームだが、既に過去の人だったし、ダリやミック・ジャガーは所詮キワモノと思われたのは想像に難くない。
もちろんスタジオ側の反応はある程度予測されていた事で、ホドロフスキーとセドゥは彼らの懸念を払拭するために、読めば映画の全てを理解できる綿密なストーリーボードの本を作り、メジャー各社に送っている。
だが、それでもハリウッドは、(彼らにとっては)理解不能のカルトシネマを撮っている変人監督と、海の物とも山の物とも分からぬ若い映画人たちに投資する事は無かったのである。
世界を変えるはずだった映画は、こうして志半ばにして霧散してしまうのだ。

御年85歳となったホドロフスキーの、ぶっ飛んだ作品からは想像もできない、好々爺っぷりがカワイイ。
「DUNE」の中止から9年後、当時新進気鋭だったデヴィッド・リンチが、「デューン砂の惑星」を映画化した時、彼は大きなショックを受けて映画館に行くことを躊躇したと語る。
自分が実現できなかった夢を、他人にとられてしまったのだから、映画を観たらきっと立ち直れないほど落ち込んでしまうだろうと。
ところが、息子に諭されてイヤイヤながらも映画を観ているうちに、どんどんと元気が出てきたのそうだ。
「だって大失敗なんだもん!」と、嬉しそうに語る老巨匠のお茶目な語り口は、いまだ若々しいパワーを感じさせ、創作への想いは失われていない様に見える。
そして実際、本作で一番面白くて感動的なのは、プロジェクトが頓挫してからだ。
惑星デューンの革命の物語は、図らずも未完の作品による、静かな映画革命に繋がってゆくのである。

作品の中止が決まり“魂の戦士たち”が解散した後、彼らは自らの経験を別の企画に生かしてゆく。
ホドロフスキーは原作者としてメビウスと組み、バンデシネの名作「L'INCAL アンカル」をはじめ、果たせなかった映画のアイディアを盛り込んだ数多くの作品を世に出す。
ダン・オバノンはSFホラーの金字塔「エイリアン」の脚本を書き、おぞましいクリーチャーデザインをギーガー、宇宙服のデザインをメビウスが担当。
その「エイリアン」でブレイクしたリドリー・スコット監督は、後の「プロメテウス」でギーガーが「DUNE」のためにデザインしたハルコネン宮殿を、宇宙人の遺跡のデザインとして復活させた。
そして、70年代から現代に至るまで、多くのSF映画に残る夢の痕跡。
ジョージ・ルーカスが、「スター・ウォーズ」の準備中に、ハーバードの原作小説から強い影響を受けていたのは良く知られた話。
本作は、完成した映画にもホドロフスキー版のストーリーボードに酷似した描写があると主張するが、正直それはちょっとこじつけ過ぎな気がする。
それでも各映画会社に配布されたストーリーボード本は、多くの映画人たちの目に触れ、いくつかの作品でイメージの触媒としての役割を果たしたのは確かだろう。
ホドロフスキーの脚本では、ラストで主人公のポールが殺されるが、彼の心は自由を求める人々の中に生き続け、世界を変えてゆく。
同じように、映画「DUNE」は幻となっても、その志は形を変えて映画史に地殻変動を起こしたのである。

「ホドロフスキーのDUNE」に登場するのは、嘗てまだ誰も観たことの無い芸術によって、本気で世界を変えようと奮闘した人々だ。
映画でも漫画でも工業製品でも、特にモノづくりに関わる人は、本作を観るとドンと背中を押されるようなパワーを受け取り、自らの糧とすることが出来るだろう。
それにしても劇中に登場する「DUNE」の全てが詰め込まれた分厚い本、いつか誰かがホドロフスキー脚本版を映画化する可能性のためにも、是非復刻販売してくれないだろうか。
ある程度高額でも欲しいという人、結構いると思う。
世界でただ一人、ホドロフスキー本人の解説を聞きながらこの本を読み、幻の映画を“観た”ニコラス・ウィンディング・レフンが羨ましくてたまらない!

今回は、さる5月12日に転落事故で亡くなったH・R・ギーガーを追悼して、彼の故郷であるスイスの高地ワイン、「サンピエール ハイダ」をチョイス。
標高1000メートル前後という、ワイン用葡萄としてはヨーロッパで最も標高の高い畑で収穫されるハイダは小粒の品種で、醸造されるワインはフルーティーさとしっかりした酸味を持ち、ドライなのが特徴。
ハイダとは「異端」「非キリスト者」を意味するそうで、魔的な世界を作り出していたギーガーを想って飲むにはピッタリではないか。

ところで各方面に評判の悪いリンチ版の「デューン 砂の惑星」だが、確かに作品のトータルな出来栄えはあまり褒められないものの、キャラクターや世界観の悪趣味で不気味極まりない造形感覚などにはリンチ節が炸裂していて、これはこれで結構楽しめる。
そんなに最悪な作品ではないと思うのだけど。

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