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思い出のマーニー・・・・・評価額1700円
2014年07月21日 (月) | 編集 |
永遠の愛が、宿るところ。

「借りぐらしのアリエッティ」の、米林宏昌監督による長編第二作。
原作は英国の作家、ジョーン・G・ロビンソンの児童文学で、舞台を北海道の架空の街に変更し、心と体に傷を抱えた12歳の少女杏奈と、謎めいた少女マーニーとのひと夏の交流を描く。
昨年公開された2本のジブリ作品「風たちぬ」「かぐや姫の物語」は、共にアニメーション映画史に残る傑作だったが、米林監督はポスト宮崎・高畑世代として実に見事なアンサームービーを作り上げたと思う。
おそらく、御大たちの作品に比べれば制作期間もバジェットも大幅に縮小されているはずで、実際とても小さな世界の物語なのだけど、志は決して負けていない。
じわじわと心に染みこんできて、いつの間にか作品世界の虜にされ、終わった後には長く静かな余韻を味わえる、まことに愛すべき小さな宝石の様な作品
※ネタバレは最小限だけど、鑑賞前には読まないでください。

夏の頃。
心を閉ざした12歳の少女、杏奈(高月彩良)は、持病の喘息の療養のために、海沿いの田舎町に暮らす親戚の元にやってくる。
入り江の湿地帯の奥に建つ古い洋館になぜか心惹かれた杏奈は、誰も住んでいないはずの館から現れた同世代の金髪の少女、マーニー(有村架純)と出会う。
それ以来、杏奈とマーニーは入り江に潮が満ちる夜毎に会い、お互いの秘密を語り合ううちに、いつしか二人は固い友情で結ばれる様になる。
しかしマーニーは、自分の事は決して誰にも話してはいけないという。
一体なぜ?マーニーは何者なのか?
ある日、杏奈が館を訪れると、そこでは引越し作業と改装工事が始まっていた。
驚いて立ち去ろうとした杏奈を、見知らぬ少女が呼び止める。
「マーニー!あなたマーニーでしょ?」と・・・・


なんとリリカルな美しい映画だろう。
原作は未読で、正直予告編からもどんな映画なのかが全然伝わって来ず、百合っぽい少女たちの友情ものなのかと思っていたが、いやあ良い意味で期待を裏切られた。
主人公の杏奈は、幼い頃に実の親を亡くし札幌で養父母に育てられている。
血縁が無いとはいえ両親は優しく、何不自由の無い恵まれた生活。
しかしある事をきっかけに、杏奈は彼らの愛を信じられなくなってしまうのだ。
彼女は「この世界には魔法の輪があって、輪の内側の人と外側の人がいる」と言う。
屈託なく笑う同級生たちは内側の人で、自分はその中には決して入れない外側の人なのだと。
マーニーと過ごしたミステリアスなひと夏の経験は、疎外感から家の中でも学校でも孤立し、いつしか心を固く閉ざしてしまった杏奈が、魔法の輪の本当の秘密を解き明かす思春期の通過儀礼。
これは孤独な少女が、いかに自分の周りが愛に満ちているのかを知る、真実のラブストーリーなのである。

物語的には杏奈がマーニーと出会い、毎夜二人で秘密の時間を過ごす以外に、特に大きな事件は何もおこらない。
なぜ杏奈は一度も行った事のない洋館に心惹かれたのか?
マーニーとは一体何者なのか?なぜ杏奈の前に現れたのか?
映画はマーニーの正体を巡るミステリを牽引力に、二人の少女がお互いを合わせ鏡として心に隠している葛藤を吐露させてゆく。
まあこれは観ていれば直ぐにわかってしまうのだけど、マーニーは現実の存在ではない。
はるか時の彼方から杏奈の心を訪れ、この世界の理へと彼女を導いてゆく存在なのである。
過去からの思念が現在に影響を与えてゆくという物語構造は、例えばジャック・フィニイ辺りが好きな人は絶対はまると思う。
マーニーを巡る意外な真実、そしてなぜ彼女が杏奈と出会わなければならなかったのかが明かされる、終盤30分の組み立ての巧みさは、物語を味わうカタルシスを感じさせ、スクリーンから溢れてくる愛の深さに、思わず号泣してしまった。

思えば、米林監督の前作「借りぐらしのアリエッティ」も、なかなかに面白い青春ファンタジーの佳作だったが、疑問に感じる部分もいくつかあった。
たぶん、脚本でクレジットされていた宮崎駿とのベクトルの違いなのだろうが、人間の少年と小人の少女の物語に、彼らを含むより大きな世界を象徴させようとする意図と、逆にパーソナルな青春の葛藤を描きたいという意図が必ずしも噛み合わないまま展開していた様に思う。
物語が三幕構成の第二幕、即ち若者たちが困難な人生に歩みだす部分で断ち切られているのは狙いだとしても、彼らが基本的に受動的な立場のままで、自らの決断によって大きく変化する前に終わってしまうのはやや物足りなく感じた。

本音かどうかはわからないが、ジブリの鈴木プロデューサーは本作が企画された経緯について、こんな事を言っている。
「(宮崎駿が)口を出す、手を出す時は男女の話。女同士の話については手を出さないから」
なるほど(笑)確かにガール・ミーツ・ガールの題材に宮崎氏は興味がなさそうで、結果的に若い世代が巨匠の影響から逃れ自由に作れたという事だろう。
実際、本作には「アリエッテイ」の様なテーマ性の歪みは微塵も感じられず、物語は収束点に向けて淀みなく紡がれている。
ロジカルに構成されたプロットも良く出来ているが、米林監督の演出力にも着実に進化を感じさせられた。
特にキャラクターのちょっとした仕草を通じた感情表現が実に緻密。
荷物の中に養母からのメッセージを見つけた杏奈が、無造作に封筒を放り投げる時の胸のうち。
削りすぎた鉛筆の芯が折れてしまい、それでもそのまま削り続ける時の葛藤。
演技によって繊細なリリシズムを感じさせ、閉ざされた主人公の心のドアをゆっくりと開いてゆく。
脚本・映像表現共に、ディテールの荒さは残るものの、本作を観る限り、米林監督は宮崎駿とも高畑勲とも違う作家性を開花させつつあると思う。

もう一つ特筆すべきなのは、優れたファンタジーの必須要素である魅惑的な世界観だ。
ここにあるのは一見どこにでもありそうな日本の田舎の風景、しかしそこは日常と非日常の狭間に存在する特異な時空である。
スクリーンに飛び込み、あの祭りに参加してみたい。
月夜の海でマーニーとボートを漕いで、森でキノコを採り、不気味なサイロを探検したい。
小さな入り江に湿地帯が広がる美しい街、思い出の器である壮麗な洋館、手作り感のある親戚夫婦の家など、遊び心溢れる美術デザインはさすがは種田陽平。

そしてこの作品世界への誘惑をより強めている、夏という季節、さらに杏奈とマーニーの秘密の時間が夕暮れのトワイライトタイムという設定も良い。
思うに四季の中でも、夏は一番その移り変わりがわかりやすい季節だと思う。
梅雨から盛夏、そして駆け足でやってくる秋の予感は、例えば響き渡る蝉の声の変遷によっても感じ取れる。
また映画やドラマでは、よく早朝や夕方が使われるが、それは昼や夜と違って、時間による空間の変化そのものがドラマチックなシチュエーションとなるからだ。
夏休みという特別な時間の、昼間と夜が溶け合う夕暮れは、正に幽玄の世界。
死者の魂が、この世に残した愛のために、優しく生者を慈しむ幻想の時なのである。

「思い出のマーニー」は、とても静かな作品だが、観る者の心の隙間にすっと入り込み、いつの間にか忘れられない印象を残す秀作だ。
もっとも、宮崎駿の作品をイコールでジブリ映画と捉えるファンには、物足りなく感じる人もいるだろう。
90年代以降の宮崎作品に特徴的な、強烈な死生観や破壊的なパワーはこの作品には見られず、世界のあり方に関して明確な主張もない。
でもそれは当たり前だ。
十二歳の頃には、色々な思春期の葛藤を抱えてはいたけれど、生も死も現実的な概念ではなかった。
世界はずっと小さくて、ようやく自我と半径1キロの世界との関係をイマジンできる様になる頃である。
宮崎作品だって、例えば「魔女の宅急便」のキキは、自分と身の回りの事で精一杯だったではないか。
奇しくも大ヒットしている「アナと雪の女王」と本作は、ダブルヒロインというだけでなく、テーマへのアプローチも相通じるものがある。
あの映画で、超常の力を持つがゆえ氷の宮殿に閉じこもった雪の女王は、妹アナの献身によって真実の愛を知るが、本作で心の部屋に鍵をかけてしまった孤独な碧眼の少女は、時空を超えて現れた自らの分身によって癒され、自分が愛に包まれている事に気付く。
どちらの作品にも共通するのは、観客もまた彼女らと共に心を解放されるということではなかろうか。

本作は、少々使いすぎじゃないかと思うほど、月が印象的に描写される作品なので、「ブルームーン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、クレーム・ド・バイオレット15ml、レモンジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
クレーム・ド・バイオレットが作り出す、幻想的な紫色が美しい。
ジンの清涼さとレモンの酸味も涼しさを演出し、夏の夜にピッタリのロマンチックなカクテルだ。

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