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2014年09月03日 (水) | 編集 |
「NO」を言える幸せ。
チリのピノチェト独裁政権の退陣に繋がった、1988年の国民信任投票を背景にした異色のポリティカルドラマ。
強大な力で国を支配する政権側に対して、反体制派に与えられたのは一日僅か15分のテレビ放送枠のみ。
恐怖政治による長年の抑圧の結果、民衆は、いや政治家すらも変革の可能性をすっかり諦めてしまっている。
一体どうすれば、有権者は投票所に来て政権へ「NO」の票を投じてくれるのか。
これは、移ろいやすい民衆の心を動かし、内なる良心を呼び起こすために、本来政治には無縁だった広告マンたちが、絶対不利の戦いに挑んだ27日間の物語だ。
陸軍総司令官だったピノチェトが、クーデターでアジェンデ社会主義政権を倒し、権力を握ったのは1973年。
以降反対派は徹底的に弾圧・粛清され、数千人が処刑されたり、行方不明になったりしたという。
ピノチェトと軍部は暴力と恐怖によって、人々の声を封じ、以降15年に渡ってチリを支配する。
そして1988年、世界では冷戦が終わりつつあり、東西対立の中で放置されていたチリの国情は徐々に国内外からの批判を浴びるようになり、ピノチェトは自分の任期をさらに8年延長する事の是非を国民投票にかける事を約束する。
とは言っても、長年の独裁によって野党組織はズタズタにされ、テレビも新聞・雑誌も有力なマスコミは全て政権の息がかかった所ばかり。
反体制派がかろうじて国民への呼びかけに使えるのは、投票までの27日間、視聴率の低い深夜に設定されたテレビ放送枠だけなのだ。
だが、十分な人も金も無い反体制派にとって、15分を埋めるだけでも一苦労。
しかも彼らには、テレビという媒体で人々に考えを伝えるノウハウなど無い。
そこで集められたのが、メディアとそれを観る民衆の心理を知り尽くした、広告プロフェッショナルたちという訳だ。
ちょっと潤んだ小鹿の様な目をしたガエル・ガルシア・ベルナルが、無理難題に挑む広告クリエイターを好演。
はたして、時代にマッチした強力な表現とは何か。
ただ深刻にピノチェトの罪を羅列したところで、委縮した人々は動かない。
むしろ恐怖を呼び起こし、マイナスの効果を生み出すかもしれない。
しかし、長年にわたって犠牲を出しながら政権と戦ってきた反体制派には、どうしてもこれだけは訴えなければならないという、絶対に譲れない一線もある。
様々な立場のグループが寄り集まった中、広告マンたちは硬軟のバランスを取りながら、過去との対決と未来への希望の象徴として「NO」を時代のアイコンとして広めてゆく。
体制側の「YES」陣営と、反体制の「NO」陣営の熾烈な広告合戦。
最初のうちは余裕綽々だった政権が、だんだんと追い詰められ、遂にはネガティブキャンペーンの泥仕合に突入せざるを得なくなるプロセスは、まるで静かに白熱するチェスの試合を見るかの様だ。
一応、政権側からの妨害工作や脅迫の類もあるのだが、映画的には場外乱闘の描写はほどほどにしておいて、基本的に双方の広告マン同士の頭脳戦を軸にしているのが良かった。
1:1.40のアスペクト比、RGBが滲んだ懐かしのアナログテレビ風の映像も雰囲気を高めるが、ユニークなレトロタッチの映像を実現するために、本作の撮影には最新のデジタルカメラでもフィルムカメラでもなく、80年代当時の日本製のテレビカメラ、池上通信機の HL-79EALが使用された。
この工夫によって、現代に作られたドラマ部分が、作中に使用されている当時のドキュメンタリーフッテージや、テレビ番組とイメージ的にシームレスとなり、まるで全体が記録映画であるかのようなリアリティを感じさせる。
本作は四半世紀前のチリで起こった歴史の転換点を描いた作品だが、非常に普遍性のある物語となっている。
権力が良識の声を封じようとする時、あるいは多数の正義が少数の正義を黙殺しようとする時、いかにして戦えば良いのか、いかにして人々の意識を変えるのか。
1988年の10月、ペンならぬカメラが剣に勝利した歴史的な事実は、今の日本のみならず、世界中の色々な社会葛藤に当てはめてみる事が可能だろう。
これこそ、シンプルでありながらスリリングで奥深い、今の時代にマッチした強力な表現と言えるのではないか。
チリと言えば南米のワインどころだが、夏の終わりにはチリのビール「ソット ストロングエール」をチョイス。
ゾットはアメリカの実業家ケヴィン・ソットが2006年にチリで立ち上げた新しい銘柄で、まだ生産量は少ないながらも世界的に高い評価を受けている。
幾つかのタイプを製造しているが、ストロングエールは複雑で重層的な香りとコク、いかにも正統派エールらしい適度な苦みを楽しめる。
ノンフィルター、低温殺菌せず、瓶内二次発酵させた高品質のクラフトビールだ。
ちなみにソットではメルローのワイン作りも始めているそうで、いつか手に入れて飲んでみたい。
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チリのピノチェト独裁政権の退陣に繋がった、1988年の国民信任投票を背景にした異色のポリティカルドラマ。
強大な力で国を支配する政権側に対して、反体制派に与えられたのは一日僅か15分のテレビ放送枠のみ。
恐怖政治による長年の抑圧の結果、民衆は、いや政治家すらも変革の可能性をすっかり諦めてしまっている。
一体どうすれば、有権者は投票所に来て政権へ「NO」の票を投じてくれるのか。
これは、移ろいやすい民衆の心を動かし、内なる良心を呼び起こすために、本来政治には無縁だった広告マンたちが、絶対不利の戦いに挑んだ27日間の物語だ。
陸軍総司令官だったピノチェトが、クーデターでアジェンデ社会主義政権を倒し、権力を握ったのは1973年。
以降反対派は徹底的に弾圧・粛清され、数千人が処刑されたり、行方不明になったりしたという。
ピノチェトと軍部は暴力と恐怖によって、人々の声を封じ、以降15年に渡ってチリを支配する。
そして1988年、世界では冷戦が終わりつつあり、東西対立の中で放置されていたチリの国情は徐々に国内外からの批判を浴びるようになり、ピノチェトは自分の任期をさらに8年延長する事の是非を国民投票にかける事を約束する。
とは言っても、長年の独裁によって野党組織はズタズタにされ、テレビも新聞・雑誌も有力なマスコミは全て政権の息がかかった所ばかり。
反体制派がかろうじて国民への呼びかけに使えるのは、投票までの27日間、視聴率の低い深夜に設定されたテレビ放送枠だけなのだ。
だが、十分な人も金も無い反体制派にとって、15分を埋めるだけでも一苦労。
しかも彼らには、テレビという媒体で人々に考えを伝えるノウハウなど無い。
そこで集められたのが、メディアとそれを観る民衆の心理を知り尽くした、広告プロフェッショナルたちという訳だ。
ちょっと潤んだ小鹿の様な目をしたガエル・ガルシア・ベルナルが、無理難題に挑む広告クリエイターを好演。
はたして、時代にマッチした強力な表現とは何か。
ただ深刻にピノチェトの罪を羅列したところで、委縮した人々は動かない。
むしろ恐怖を呼び起こし、マイナスの効果を生み出すかもしれない。
しかし、長年にわたって犠牲を出しながら政権と戦ってきた反体制派には、どうしてもこれだけは訴えなければならないという、絶対に譲れない一線もある。
様々な立場のグループが寄り集まった中、広告マンたちは硬軟のバランスを取りながら、過去との対決と未来への希望の象徴として「NO」を時代のアイコンとして広めてゆく。
体制側の「YES」陣営と、反体制の「NO」陣営の熾烈な広告合戦。
最初のうちは余裕綽々だった政権が、だんだんと追い詰められ、遂にはネガティブキャンペーンの泥仕合に突入せざるを得なくなるプロセスは、まるで静かに白熱するチェスの試合を見るかの様だ。
一応、政権側からの妨害工作や脅迫の類もあるのだが、映画的には場外乱闘の描写はほどほどにしておいて、基本的に双方の広告マン同士の頭脳戦を軸にしているのが良かった。
1:1.40のアスペクト比、RGBが滲んだ懐かしのアナログテレビ風の映像も雰囲気を高めるが、ユニークなレトロタッチの映像を実現するために、本作の撮影には最新のデジタルカメラでもフィルムカメラでもなく、80年代当時の日本製のテレビカメラ、池上通信機の HL-79EALが使用された。
この工夫によって、現代に作られたドラマ部分が、作中に使用されている当時のドキュメンタリーフッテージや、テレビ番組とイメージ的にシームレスとなり、まるで全体が記録映画であるかのようなリアリティを感じさせる。
本作は四半世紀前のチリで起こった歴史の転換点を描いた作品だが、非常に普遍性のある物語となっている。
権力が良識の声を封じようとする時、あるいは多数の正義が少数の正義を黙殺しようとする時、いかにして戦えば良いのか、いかにして人々の意識を変えるのか。
1988年の10月、ペンならぬカメラが剣に勝利した歴史的な事実は、今の日本のみならず、世界中の色々な社会葛藤に当てはめてみる事が可能だろう。
これこそ、シンプルでありながらスリリングで奥深い、今の時代にマッチした強力な表現と言えるのではないか。
チリと言えば南米のワインどころだが、夏の終わりにはチリのビール「ソット ストロングエール」をチョイス。
ゾットはアメリカの実業家ケヴィン・ソットが2006年にチリで立ち上げた新しい銘柄で、まだ生産量は少ないながらも世界的に高い評価を受けている。
幾つかのタイプを製造しているが、ストロングエールは複雑で重層的な香りとコク、いかにも正統派エールらしい適度な苦みを楽しめる。
ノンフィルター、低温殺菌せず、瓶内二次発酵させた高品質のクラフトビールだ。
ちなみにソットではメルローのワイン作りも始めているそうで、いつか手に入れて飲んでみたい。

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