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猿の惑星:新世紀(ライジング)・・・・・評価額1750円
2014年09月16日 (火) | 編集 |
“星を継ぐもの”は誰だ?

2011年に公開されたリブート版「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の、10年後の世界を描く新シリーズ第二弾、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は驚くべき映画だ。
ルパート・ワイアットから監督を引き継いだマット・リーヴスは、絶滅に瀕した人類と進化した猿たちの予期せぬ出会いから始まる壮大な叙事詩を構築し、あっさりと前作を凌駕してみせた。
二つの種族10年ぶりの邂逅は、寛容と不寛容、愛と憎しみの連鎖を生み出し、大いなる葛藤に駆られた彼らは、いつしか破滅的な戦いへとなだれ込む。
前作でジェームズ・フランコが演じたウィル・ロッドマンは登場せず、物語の主役は完全にカリスマ的リーダーとなったシーザーに。
シェイクスピアもかくや、と思わされるほどにドラマチックに盛り上がる傑作である。
※ラストに触れています。

致死性ウィルスによって、人類の大半が死滅し、世界が崩壊してから10年。
僅かに生き残った人類は、都市の廃墟に小さなコミュニティを作って細々と暮らしていたが、文明の火を繋ぎとめていた備蓄燃料も間もなく底をつく。
リーダーの一人、マルコム(ジェイソン・クラーク)は水力発電所を稼動させるために、仲間と共に北部の森の中にあるダムへと向かう。
しかし、そこで彼らが出会ったのは、シーザー(アンディ・サーキス)に率いられた進化した猿たちだった。
10年前、森に消えた彼らは、自然と共生する独自の文化を築いていた。
突然の人間との再会に戸惑いつつも、シーザーはダムで作業したいというマルコムの申し出を受け入れるが、嘗て実験動物として切り刻まれ、人間に深い恨みを抱くコバ(トビー・ケベル)は、密かに人間を滅ぼすための最終戦争を画策する・・・


期待を遥かに上回る、素晴らしい仕上がりだ。
前作でウィル・ロッドマンが開発したアルツハイマー治療薬、ALZ-112を投与され、驚異的な知能を得たシーザーは、同じ薬によって進化した猿たちと共に、人類の支配から逃れ、人里離れた森の奥深くに独自の哲学を持った文化を開花させつつある。
一方の人間は、猿インフルエンザウィルスと化したALZ-113のパンデミックによって、人口の90%は死滅。
文明は崩壊し、ウィルスへの免疫を持った僅かな生存者が、都市の廃墟に留まって人類の再興を目指している。
10年の間に片方は増え、もう片方は大幅に減った。
この数的均衡状態にある二つの知的生物が出会ったとき、“星を継ぐもの”の地位を巡る新たな戦いが始まるというのが本作の骨子である。

映画の世界観は、完全に現代社会の縮図として機能する。
人間と猿の対立の要因となる水力発電所は、即ちエネルギー資源だ。
それは猿たちの暮らす森の真っただ中にあり、電気を必要としない彼らには何の意味も持たないが、人間たちにとっては文明を維持する最後の希望である。
発電所を金や石油などに置き換えれば、これが世界中で有史以来繰り返されてきた資源を巡る争いのメタファーとして描写されているのは明らかだ。
他人のテリトリーの中にある“どうしても欲しい何か”という分かりやすいトリガーによって、二つの種族の葛藤に火がつく。

もっとも、人も猿も一枚岩ではない。
絶滅寸前に追いやられた人間たちは、誰もが猿インフルエンザによって大切な人を亡くしている。
別に猿たちが意図的に広めた訳ではないものの、災いを媒介した存在として猿は忌み嫌われている様なのだ。
また前作の事件の直後にパンデミックが始まったせいか、猿たちが知性を持った顛末については知られておらず、突如として現れた言葉を話す類人猿は、人間たちにとっては未知のモンスターなのである。
それ故に猿たちを単なる動物として駆除を主張する者もいれば、新たな知性であることを認めて交渉しようとするマルコムの様な者もいる。

同時に、人間のキャラクターよりもむしろ個性が描き分けられている猿たちも、嘗ての支配者との再会に、複雑な反応を見せる。
最終的には袂を別ったものの、ウィルとの幸せな幼少期の記憶を持つシーザーは、人間にも様々なタイプがいて、皆が悪人でない事を理解している。
だから彼はマルコムの申し出を受け入れるのだが、研究所の実験動物として残酷な仕打ちを受けてきたコバの様に、人間への不信感を拭い去れない者もいる。
銃を持った人間の出現は、嘗ての恐怖を呼び起こし、同時に文明を失いつつある人間に対する復讐心と野心を覚醒させてしまうのだ。
コバは人間との歴史を知らない、シーザーの息子のブルーアイズら若い猿たちを抱き込み、やがて謀略によってシーザーを葬り、恐怖によって猿たちを支配すると、人間と猿との最終戦争を画策する。

ここにあるのは、王に対する謀略と裏切りであり、父と子の対立であり、異民族との遭遇と軋轢、仇敵への復讐、平和への渇望と戦争への欲求、絶望からの救済と予期せぬ破壊、これら全て絡み合う壮大かつ神話的な物語だ。
例えばこの映画を構成する要素を、ジョルジュ・ポルティが定義した36の劇的局面に当てはめてみると、25局面くらいは当てはまるだろうか。
これほど重層的なプロットを2時間10分という比較的コンパクトな上映時間にまとめ上げた脚本チームの仕事は称賛に値する。
前作の出来事を巧みに伏線として利用しながら、一見さんであってもちゃんと理解できるように、本当に必要な部分は物語に組み込んでさりげなく説明するあたりもセンス良い。
視覚的な見せ場も前作以上に凝って作りこまれており、SFアクションとしても見応えは十分だ。

廃墟の都市に砦を作り、守りを固める人間たちに対して、馬に乗った猿の軍団が襲い掛かるシークエンスは、明らかに西部劇の白人入植者vs先住民をイメージしているのだが、この戦いに人間側、猿側どちらにも感情移入キャラクターが加わっていないのがミソ。
客観的に見られるので、激しければ激しいほどに戦いの愚かしさが強調されるという訳だ。
「猿は猿を殺さない」というセリフに象徴される様に、嘗ての支配者である人類とは異なる存在を目指していたはずの猿たちが、物語が進むにつれてどんどん人間化するのも皮肉かつ面白く、それ故に最後のシーザーの選択は心に突き刺さる。
自分たちが人間と変わらないという事実を身をもって知った彼には、もはや他の道は存在しない。
ラストの重厚なシーザーの姿が、「ゴッドファーザー」で生き方の覚悟を決めたマイケル・コルレオーネに重なって見えたのは私だけだろうか。

それにしても、フィルモグラフィに続編やリメイクが多いからか、あまりその作家性が話題にならないが、「モールス」といい本作といい、名作レベルのオリジナルをさらっと超えてくるマット・リーヴスの演出力は全く侮れない。
地味に斬新な「クローバーフィールド/HAKAISHA」もそうだが、さりげなくすごい物見せるのはこの人の特徴かも知れない。

そして本作の成功に決定的な役割を果たした人物がもう一人。
遂にファーストロールにクレジットされた、シーザーを演じるアンディ・サーキスだ。
この人はゴラムとキングコングとゴジラとシーザーの中の人という、映画史上類のないとんでもない俳優なのだが、特に今回のカリスマリーダーはCGのスキンの向こうに圧巻の存在感を見せる。
伝え聞くところによると最近監督業への転身を図っている様だが、ハリウッドはそろそろこの希代の表現者の奮闘に応えるべきだろう。
アカデミー主演男優賞が難しいなら、パフォーマンスキャプチャに対する新たな部門を創設したらどうか。
この映画はサーキスの存在なくしては成立せず、俳優とCGアーティストのコラボレーションによって生み出された“演技”は、もはや映画表現の中核と言っても過言ではないのだから。

「猿の惑星:新世紀(ライジング)」はエキサイティングかつエモーショナルで、最後には猿たちを鏡に自らについて深く考えさせる社会派SFの傑作だ。
間違いなく、今年を代表する作品の一つとして映画史に名を留めるだろう。
惑星の支配権をかけた戦争が始まり、おそらくシーザーが究極の決断を迫られるであろう次回作は、既に2016年の公開がアナウンスされている。
果たして物語は、最終的に1968年の伝説的な第一作に繋がるのか否か、2年後が待ち遠しい!

今回は、猿の暴動ならぬ“ホップの暴動”をチョイス。
映画でシーザーたちが暮らす森からもほど近い、サンフランシスコ・ベイエリアのチコにある若い醸造所、ハイウォーター・ブリューイングの「ホップ ライオット IPA」は、変わった名の通り圧倒的なホップ感が売り物だ。
苦味を前面に押し出したビター&フルーティな味わいはバランスに優れ、とても美味。
パワフルな映画で心地よく疲れた脳を、刺激的に癒してくれるだろう。
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