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ショートレビュー「悪童日記・・・・・評価額1700円」
2014年10月08日 (水) | 編集 |
生きるために、彼らがした事。

戦時下のとある国。
都会で育った双子の兄弟は、迫りくる戦火から逃れるため、“魔女”と呼ばれる粗野な祖母の家に疎開する。
片田舎の農家では働かなければ食事も与えられず、祖母からも村人からも意味もなく殴られる過酷な日々。
村は外国の軍隊の占領下にあり、ここでは生と死はごく薄い壁によって隣り合わせの関係にあることを兄弟は知ってゆく。
やがて彼らは、厳しい現実を生き延びるために、様々な“訓練”を自分たちに課すようになる。
痛みに耐える訓練、空腹に耐える訓練、生き物を殺す訓練。
それらの経験は確実に、彼らから無垢なる時代を奪い去ってゆく。
※ラストに触れています。

固有名詞が一切出て来ない、神話的な寓話劇だ。
まあ劇中話されている言語はハンガリー語だし、映像を見ていれば原作者の故郷でもある第二次世界大戦中のハンガリー西部をイメージしているのは分かるのだが、具体的にはこれが一体どこの国の、どの戦争を描いた話なのか、双子の主人公を含めた登場人物の名前すら描写されない。
それは即ち、どこの誰にでも起こりうる普遍的な物語であるという事だ。
主人公の双子を演じる、ジェーマント兄弟の存在感が圧巻。
実際に彼らは貧しい村の出身で、肉体労働を日課として育ち、家庭に問題を抱え家族と離れて暮らしているという。
もちろん演技経験の無い素人だったそうだが、よくぞ探し出してきたものだ。
本作は基本的に彼ら二人の“僕たちは”という言葉によって物語られ、どちらがどちらかは双子ゆえに判別不能。
「どんな事にも耐えられるけど、引き離されるのはつらい」というように、彼らは二人で一人の不可分な存在なのである。

隣家の兎口の少女と仲良くなったり、小児性愛者の軍人に助けられたりしながら、彼らは極限の時代を生き抜いてゆくが、戦争が終わっても二人に平和は訪れない。
訓練と戦争中の経験によって、すでに子供ではない別の何かになってしまった彼らは、もはや何も知らなかった頃には戻れないのだ。
出征した父を裏切った母の迎えを拒否し、祖母の自殺を助け、戦争前の穏やかで平和な世界の記憶全てを、自らの意思で消去してゆく。
そして彼らの少年時代を締めくくる、最後の訓練とは。
自らの半身を切り離し、あらゆる依存を断ち切るというもっとも辛い経験を経た時、彼らの“個”は確立するのである。

これは戦時下を生きる子供たちの物語だが、戦争の経験が子供らしさを奪うとか、単純に倫理的、反戦的な話とは根本的に違う気がする。
彼らは確かに非情にはなってゆくけれど、基本的に困っている人を見れば助け、悪しき人がいれば罰するという彼らなりの善悪の基準はぶれずに持っている。
二人の中にある絶対的なプライオリティは、ただ生きる事のみ。
むしろ、この映画を観ていると、いったいこの世の中の何が正しくて何が間違っているのか、答えを出すことが出来なくなるのである。
ハンガリー出身の作家、アゴタ・クリストフの原作は昔から興味をそそられつつ、いまだ未読なのだけど、今度こそ続編を含めて読みたくなった。
森に消えた“僕”と、地雷原の彼方に消えたもう一人の“僕”の人生。
熱い戦争の時代から、今度は冷たい戦争の時代へ、大人たちの愚かしさが作り出し、東西に分かれた二人の“元子供だった存在”の未来が凄く気になる。

ハンガリーは古代からのワイン生産地の一つ。
今回はやはり血の様な赤、「エゲルヴィン エグリ・メルロー」の2008をチョイス。
甘く、フルーティな香りとなめらかな舌触り。
少年たちの物語はかなり辛口だったが、こちらはほんのりと柔らかな甘口の仕上がりだ。
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