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ショートレビュー「誰よりも狙われた男・・・・・評価額1650円」
2014年11月11日 (火) | 編集 |
“A most wanted man”は誰だ?

スパイ小説の名手、ジョン・ル・カレが2008年に発表した同名小説をもとに、古今東西のスパイのメッカ、ドイツを舞台に、9.11後の諜報の世界を描くいぶし銀の秀作だ。
監督は伝説的なロック・フォトグラファーであり、映画監督としてもデビュー作の「コントロール」で高い評価を得たアントン・コービン。
また今年2月に46歳で急逝した、フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作の一つ(主演作としては最後)でもある。
なるべく予備知識無しで、集中力を切らさずに観るのが吉だろう。
※だから観る前は読まないで!

複雑なプロットと込み入った人間関係を特徴とするル・カレの原作なので、まあ一筋縄ではいかないとは思っていたが、今回も作劇は凝っている。
彼の代表作である「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を映画化した「裏切りのサーカス」に比べると、メインの登場人物はそれほど多くなく、観やすいことは観やすいものの、ちょっとしたところにも重要な伏線が隠されていたりするので油断は禁物だ。
皆が英語を喋っているので、誰が何人なのか一瞬戸惑うが、ホフマンが演じるのは港湾都市のハンブルグで、テロ対策チームを率いるドイツ諜報機関のリーダー、ギュンター。
彼はイスラム過激派の疑いありとされる密入国者の青年、イッサに目をつける。
イッサがまだ完全な過激思想に染まっていないと考えたギュンターは、法的な保護と引き換えに彼をおとりに仕立て上げ、イスラム過激派の資金源と見なされる“ある大物”を摘発しようとする。
要するに海老で鯛を釣ろうという訳だが、彼の前に立ちはだかるのは、おとりを使うリスクを回避し、疑わしきは片っ端から捕えろと主張するCIA。

「世界を平和にする」目的は同じでも、そのアプローチは真逆。
作戦遂行の過程に関わる、関係者一人ひとりの人生まで、なるべく救いたいというギュンターの理想と、大きな目的のためには個人の犠牲は厭わない、CIAの冷徹かつ乱暴な理論。
しかもギュンターはCIAの横やりによって、大きな挫折を味わった過去がある。
まさに最大の障害は身内という訳だが、ギュンターは何とかCIA強硬派を懐柔しつつ、イッサを支援する人権派の弁護士や、彼の父親の資産を握る銀行マンなどに飴と鞭をちらつかせて味方に取り込み、徐々にイッサの心をつかむことに成功。
あとは従順な“エサ”となった海老に、鯛が食い付くのを待つ作戦の最終局面に駒を進める。

しかし、スリリングな物語の展開と共に、徐々に湧き上がる不安感と疑問。
一見すると、ギュンターは悪戦苦闘しながらも全てをコントロールし、順調に作戦を進めているように見えるが、何かがおかしい。
一体、タイトルにある「A most wanted man」とは、誰の事なのか?
冠詞が“The”ではなく“A”である事がミソである。
本当の“エサ”が明かされ、綿密に組み上げられたプロットのすべての要素が一点に収束するラストは、物語のカタルシスに思わずニヤリ。
スパイ映画とは言っても、基本的に誰も死なないし「007」や「ミッション・インポッシブル」の様な派手なアクションは皆無だが、これは戦慄の心理戦
何者かの意思によって絡め捕られ、人知れず人生が破滅してゆくこっちの方がずっと恐ろしい。
舞台となるハンブルグは、ル・カレがMI6のスパイだった冷戦時代に、実際に勤務していた街だ。
今回も周到な取材を元に執筆しているはずで、きっと現在の世界でもこの映画みたいな事が本当に起こっているのだろうなと思わされる十分な説得力がある。
まあギュンター的には「ファ~ック!!!」と叫びたくなる気持ちは分かるが、スパイ・ミステリとして実に鮮やか。
名優ホフマン最後の台詞は、正しく魂の絶叫であった。

今回はハンブルグに本拠を置く、「ホルステン プレミアム」をチョイス。
1516年にバイエルン公ヴィルヘルム四世が制定し、現在もその効力を持つ世界最古のビール法、ピルスナー純粋令に基づき大麦、ホップ、水、酵母のみから作られる伝統的製法を頑なに守ってきた老舗銘柄。
会社としてのホルステン・ブリュワリーは1879年創業だが、その醸造の歴史は実に800年に及ぶという。
辛口で淡麗シンプルな味わい、適度はコクとホップ感は、いわゆるドイツビールのスタンダード。
緊張感溢れる映画で乾いた喉を、すっきりと潤してくれる。
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