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ショートレビュー「唐山大地震・・・・・評価額1650円」
2015年04月01日 (水) | 編集 |
家族は永遠に家族。

中国政府の公式発表でも25万、国外の機関の推定では60万を超える犠牲者を出し、二十世紀最悪の震災と言われる唐山大地震によって引き裂かれたある家族の、32年間に渡る喪失と再生の歴史を描く、大作ヒューマンドラマ。
本作は本来2011年3月に日本公開予定だったが、東日本大震災の発生を受けて、無期限の公開延期の憂き目をみていた。
なるほど、冒頭のトンボの大群の発生という予兆に続く、巨大地震による都市破壊の描写は凄まじい。
今も中国の田舎で大きな地震が起こったというニュースがあると、よくレンガ造りの建物が倒壊しているビジュアルが映し出されるが、この当時の唐山の街も殆どが古いレンガ造り。
どうやら鉄筋などは全く入っておらず、強大な大地の揺れに耐えられず、豆腐がつぶれる様にして次々と人間ごと崩壊してゆく。
運よく建物の外に這い出したとしても、過密な都市部では看板やら建設用クレーンやら、街角に存在するあらゆる物が、凶器となって襲い掛かってくる。
確かに本作は東日本大震災の直後にはキツかっただろうが、4年遅れたとはいえ、これだけ力のある作品をDVDスルーではなく、劇場公開してくれた関係者には敬意を表したい。
※結末に触れています。

物語の軸は、この地獄の中で、母親の究極の決断によって生き別れとなる双子、姉のドンと弟のダーだ。
二人は建物の瓦礫の下に生き埋めとなるが、圧し掛かっているコンクリート塊が不安定なために、助けられるのは一人だけ。
片方を助ければ、もう一人は潰されて死ぬ。
時間が経てば経つだけ状況が悪化する中で、残酷な決断を迫られた母のユェンニーは、かすかに声の聞こえるダーを選択する。
だが、死んだと思われていたドンは、死体置き場で息を吹き返すのだ。
自分は母に見捨てられたと思った彼女は、記憶喪失のフリをして、救援に来た人民解放軍の軍医夫妻に、孤児として引き取られる。
生き延びるも片腕を失い、ユェンニーと共に唐山で暮らすダーと、故郷を離れ養父母の元で徐々に心を開いてゆくドン。
やがて青年となったダーは、隻腕のハンデを持ちながらも自立するために一人で都会を目指し、震災のトラウマにずっと苦しめられるドンは、いつしか医学の道を志す。
運命によって別たれた双子の青春期は、時に接近し、時に離れながらも、交わる事は無いのである。

全く異なる境遇で成長してゆく二人の人生の背景として、中国の急激な高度成長期が垣間見られるのが興味深い。
大家族は核家族へ、レンガ造りの家は近代的な高層マンションへ、自転車はBMWに。
社会の大きな変化と同様、ダーとドンの人生も、それぞれに山あり谷ありのジェットコースターだ。
資本主義の波にのり、成功者となるダーや、シングルマザーとしての人生を選び、遂には海外へと移住するドンの生き方は、正に二十一世紀を駆けるニューチャイナ
若い世代に対して、唐山の古びた家に一人で暮らし、震災で見殺しにせざるを得なかった夫と娘への贖罪の日々を送るユェンニーや、妻に死なれた後も解放軍の官舎で静かに暮らし、ドンを見守り続ける養父らは、いわば去りゆく古き良きオールドチャイナの象徴として描かれる。
そして、ばらばらだった家族が遂に再びめぐり合うのが、あの2008年に起こった四川大地震なのは、ぶっちゃけできすぎではあるものの、この実にパワフルな人間ドラマの帰趨する先として相応しい舞台だろう。
震災によって引き裂かれた双子は、異なる立場でもう一度震災を経験する事によって、心の中に秘めてきた葛藤に決着をつけるのだ。
本作は、32年間に及ぶ愛と哀しみの家族史であると共に、中国と言う巨大な家の激動の時代を象徴する物語。
135分の長尺もエピソードはてんこ盛りで退屈する暇は無く、映画館の大スクリーンで鑑賞すべき力作である。

今回は、唐山のある河北省の隣、山東省の青島で生まれた中国を代表するビール「青島ビール」をチョイス。
青島は1898年にドイツの租借地となったことから、ドイツの投資家が1903年に醸造所を開設、その後第一次世界大戦後には日本資本に買収されたり、共産党に国営化されたり、改革解放の動きの中でこんどは民営化されたり、激動の中国史の中でしぶとく生き残ってきた。
青島人のビール好きは中国でも独特らしく、普通の瓶ビールなどで満足できない住民は、でっかいビニール袋に大量のビールを直接注ぎ入れて買い、その日のうちに全部飲んじゃうのだとか。
青島へは行った事が無いけど、一度体験してみたい豪快なビール文化だ。
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