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ショートレビュー「国際市場で逢いましょう・・・・・評価額1650円」
2015年06月04日 (木) | 編集 |
疾走する韓国現代史。

朝鮮戦争下の1950年から2014年へ。
生き別れとなった父との約束で、幼くして“家長”となった少年の激動の人生の物語が、そのまま戦後韓国の軌跡と重なる。
これはいわば韓国版「フォレスト・ガンプ」で、127分とこの種の大河映画にしては比較的短めな上映時間は、全くダレる部分がない。
個人史と社会史が密接にリンクした韓国の作品というと、ある男の自殺の瞬間から過去へ過去へと時代を遡る、イ・チャンドン監督の傑作「ペパーミント・キャンディー」がある。
あの映画は2000年を起点に、民主化運動を背景に光州事件が起こった80年へ、いわば現代史の暗部を辿った作品だったが、本作で描かれる期間はもっとずっと長い。
戦争で疲弊したアジアの最貧国が、大きな対価を払いながらも、豊かな経済大国へと上り詰める山あり谷ありのサクセスストーリーを、市井の人々の視点で描いたのが特徴だ。
※ラストに触れています。

主人公のドクスは、戦争難民として逃げる途中、父と妹と生き別れとなり、残された母と二人の弟妹を連れて、釜山の国際市場にあるおばの家に辿り着く。
大黒柱を失った家族の生活は苦しく、長兄であり家長となったドクスは、家族のために身を粉にして働きはじめるのである。
弟の学費を稼ぐため、60年代には炭鉱労働者として西ドイツへと出稼ぎに
当時高度成長期だった西ドイツは、人手不足解消のため外国人労働者を受け入れ、韓国も外貨獲得のため国策として男は坑夫、女は看護師として多くの自国民を送り出した。
帰国して所帯を持ったのもつかの間、70年代にはおば夫婦の店を買い取る資金が必要になり、軍属として激戦が続くベトナムへ
ようやく一息ついた80年代には、離散家族の一人として、生き別れたままの父と妹を探す。
まさに疾風怒濤のドクスの人生と共に、韓国は徐々に豊かになり、彼の人生のバイプレイヤーとして現代グループの創始者・鄭周永とか、世界的デザイナーとなるアンドレ・キムとか、様々な有名人がちょこちょこ顔を出すというわけ。

愚直で不器用なアニキ、ドクスのプライオリティは常に“家族のために”で、その原体験には戦争の記憶があり、一個人として経験してきた生の歴史が彼の行動原理を形作っている。
だから朝鮮戦争で米軍によって助けられた経験が、ベトナムの戦場で目の前の人を見捨てないという行動を生み、ドイツでの出稼ぎの記憶が、外国人に差別的な態度をとる若い韓国人への憤りに繋がる。
ドクスは、ベトナムの戦場から妻に当てた手紙にこう綴るのである。
「戦争の時代を生きたのが、子供たちでなく僕たちでよかった」と。
本作は、そのレトロ調から韓国版の「ALWAYS 三丁目の夕日」に擬える向きもあるらしいが、作品のベクトルは相当に異なる。
限りなく美化された“昭和テーマパーク”とは対照的に、本作のベースは豊かさの裏側にある贖罪と悔恨の情であり、物語を貫いているのはあくまでも庶民目線で見た歴史のリアリテイ。
終盤、なぜ「国際市場」なのか?というタイトルの意味が明かされてからのエピソードは、涙なしには観られないだろう。

本作の冒頭とラストに登場する、一匹の白い蝶。
多くの文化で蝶は死者の魂の化身と考えられ、朝鮮戦争を描いた異色のファンタジー「トンマッコルへようこそ」でも印象的に描写されていた。
あの蝶は、約束を果たすために半世紀以上も頑張り続けたドクスに、ねぎらいを届けに来たお父さんだったのかなぁ。

ドクスを演じるファン・ジョンミン、妻ヨンジャ役のキム・ユンジン、役者は皆素晴らしいが、名バイブレイヤーのオ・ダルスが、「ガンプ」のゲイリー・シニーズ的役回りで、美味しいところをさらっていく。
しかしこれ、日本人でも十分楽しめるけど、韓国人にしか分からないお楽しみが、ディテールにたくさんあるんだろうなあ。

今回は、国際市場のある釜山の焼酎「C1」をチョイス。
「C1」は「Clean No.1」の略だそう。
韓国では地域ごとに人気の焼酎が異なっていて、釜山では同市のデソン酒造の作る「C1」がだいたいどこの店にも置いてある。
ここの特徴は、製造段階で特殊な振動を加えて酒を柔らかくする事で、なるほど飲んでみるとマイルドな印象で飲みやすい。
アルコール度数も比較的低く、そのままでも良いが、個人的にはスパークリングで割るのが好み。
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