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マッドマックス 怒りのデス・ロード・・・・・評価額1800円+
2015年06月15日 (月) | 編集 |
狂気が、荒野を覆い尽くす!

30年ぶりの「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、恐るべき熱量を持つ映画である。
近年は「ベイブ」や「ハッピー・フィート」など、すっかり動物映画の人になっていたジョージ・ミラー監督は、たまりにたまったマグマが噴出するように、バイオレンスなエナジーを大爆発させる。
上映時間2時間のうち、95%は終末世界の荒野で繰り広げられるバトルアクション。
トゲトゲの武装車両が砂漠を暴走し、狂ったキャラクターたちが、どつき合い!撃ち合い!爆発する!ただそれだけ!
砂嵐の熱風のようなエモーションがスクリーンから吹きつけ、観たことも無いビジュアルイメージに圧倒され、脳内には「ヒャッハー!」が無限リフレイン。
この映画にブレーキは存在せず、一度走り出したらもう誰にも止められない。
21世紀版「マッドマックス」のリブートはシリーズ最高傑作なのはもちろん、映画史に残るアクション映画の新たなアイコンであり、何よりも究極の見世物映画である!

文明が失われた終末の世界。
荒野で暴走軍団に襲われたマックス(トム・ハーディ)は、シタデルと呼ばれる要塞に監禁される。
そこでは異形の悪漢のイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)が、湧き出る水を餌にして人々を支配し、配下の男たちを洗脳し、自らを崇拝させていた。
そんな時、ジョーの右腕フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が、奴隷として捕らわれていた女たちを連れて逃亡。
ひょんな事から彼女らとタッグを組む事になったマックスは、巨大な武装トレーラーでフュリオサの故郷“グリーン・プレイス”を目指すことに。
だが、ジョーの率いる軍団の執拗な追跡と攻撃は止まず、一行は危険な峡谷地帯へと逃げ込むのだが・・・


とりあえず、オリジナルの旧三部作の簡単なおさらい。
1979年に公開された第一作「マッドマックス」は、正義の警官のマックス・ロカタンスキーの復讐劇。
パトカーを盗んだ凶悪犯ナイトライダーが、マックスに追跡されて事故死し、仲間のトーカッター(演じるのは本作のイモータン・ジョーと同一人物!)は報復として、マックスのバディと妻子を相次いで襲撃し、息子を殺害。
遂にブチ切れたマックスによって、トーカッター一味は追い詰められ、処刑される。
2年後の「マッドマックス2」には、誰もが度肝を抜かれた。
続きものではあるが、全く異なる世界観に変貌していたのである。
前作では治安は悪化しているものの、一応文明社会が存続しており、警察組織も健在だった。
ところが二作目になると、世界大戦によって都市文明も政府組織も完全に崩壊し、一面の荒野でエキセントリックな人々が、水とガソリンを巡って壮絶サバイバルを繰り広げていたのだ。
荒野の放浪者となっていたマックスは、はるか離れた平穏な地を目指すグループに加勢し、彼らの持つガソリンを狙う、ヒューマンガス様率いる暴走軍団とバトルチェイスを繰り広げる。
この“荒廃した終末世界+ゴテゴテの武装車両+ロックなコスチュームのマッチョな男たち”という組み合わせで作られた世界観は、映画だけでなく小説や漫画に至るまで、絶大な影響を及ぼした。
日本人なら誰もが知る「北斗の拳」は、“マッドマックスの子供たち”の中で、もっとも成功を収めたフォロワーの一つである。
こうして映画史のエポックとなったシリーズだが、ハリウッドとの結びつきが強まり、大幅に予算も増えた第三作「マッドマックス/サンダードーム」でまさかの失速。
少年少女たちに、彼らを導く救世主と信じ込まれたマックスが、交易都市を支配する女王エンティティと戦う。
大作感はあるのだが、年少の観客を意識し過ぎてハードな作風がすっかりマイルドになり、何より売りもののカーチェイスがほとんど無い!
期待に胸ふくらませて駆けつけた東京ファンタスティック映画祭での上映で、全編に渡って漂うコレジャナイ感に、呆然としたまま劇場を後にしたのを、今でも覚えている。

あれから早30年。
通算四作目となる本作は、旧三部作と世界観を共有しているが、厳密に言えば続編とは少し違う。
例えば「2」でスクラップになってしまったマックスの愛車、インターセプターが今回は何事も無かったかのように再登場。
また理由は後述するが、彼の心に幽霊の様に住み着いている“救えなかった我が子”が、一作目の男の子から女の子に変わっているのである。
本作はいわば、旧三部作の設定を微修正したうえで、「2」をベースにリブートした作品という色彩が強い。
理想郷へのエクソダスをはかる巨大なタンクローリーと、それを追う暴走軍団という基本構造などは「2」と共通。
冒頭いきなりマックスがヒャッハーな敵に襲われるとか、捕虜は車両の先頭に括りつけるとか、フックを引っ掛けてトレーラーを減速させるとか、見せ場のあちこちにも同一の要素がある。

もっとも、世界観を共有するとは言っても、本作と旧三部作とはもはや別物だ。
第一作のバジェットは僅か65万ドルで、それが「2」で200万ドルとなり「サンダードーム」では1200万ドルにまで増えるのだが、ハリウッド大作と比べるとまだ低予算。
ところが本作の予算は、前作の軽く10倍以上の1億5000万ドルにまで膨れ上がっている。
インフレ率を考えても、堂々たる超大作であり、画面に投入されている物量の差は歴然だ。
さらにここ30年間の、映像テクノロジーの凄まじい進化がある。
ジョージ・ミラーは可能な限りライブでの撮影に拘ったようだが、それでもデジタル技術の助けが映像のゴージャスさを劇的にアップグレートしているのは確実。
またカメラと撮影技術の発達は、80年代にはあり得なかった画を捉えることを可能にした。
予算がガソリンなら、技術はニトロ。
ジョージ・ミラーのイマジネーションのV8エンジンは、二つの燃料を得て誰も観たことのないレッドゾーンに突入する。

いやもうとにかく、発想のイカレっぷりが凄い。
悪漢たちがマックスを捕虜にした理由も、そのまんま車に括りつけて負傷者の人間輸血パックにするためって、なんじゃそりゃ(笑
シタデルにはなぜか牛のように搾乳機に繋がれている太った女たちがいて、どうやらその母乳は交易品らしい。
さらにはジョーの軍団のボスたちは、皆揃いも揃って奇形だったり、旧作では見え隠れしている程度だった、ミラーの異形愛というか奇形愛が、こっちではデビッド・リンチ並にストレートに炸裂している。
一見ほとんど有って無きがごとく、しかし実際には綿密に構成された本作のプロットをシンプルに表現すれば、「マックスと虐げられた女たちが、奇形の狂った男たちと戦う話」となるだろう。
もし日本でやったらプロ市民の怒りを買いそうだが、創作者の壮大なる狂気の前には下手なモラルなど吹っ飛ばされる。
トレーラーを追撃するジョーの軍団には、なぜか巨大ドラムを叩く男たちとか、車の上で火炎放射器付きギターを弾く男とか、戦意を鼓舞するだけのバンドマンたちがいるのもおかし過ぎ(笑

しかし、いくらビジュアルが凄くても、それだけではこれほど熱い映画にはならない。
本作が素晴らしいのは、狂気が支配する世界の中で、キャラクターのエモーションだけはキッチリと描きこんでいるからである。
マックスはなぜ、女たちを助けるのか。
これは本来息子だった設定を娘に変えた理由でもあるだろうが、彼は嘗て愛する者たちを救えなかった事をトラウマとして抱えている。
人と関わらずに生きていこうとするのも、自らの中にある贖罪の意識と、もう同じ思いを繰り返したくないという脅迫観念からだろう。
だからこそ最初は嫌々だったとしても、真に生きたいという女たちを前に、マックスは彼女らを見捨てることは出来ないのである。
徹底的に支配された女たちの、自由への渇望は言うまでもなく、それぞれのキャラクターの持つ葛藤は、第三の燃料となって物語を突き動かす。
そして映画は、終盤まるで砂漠版「デンデラ」を思わせる、老婆たちの戦闘集団の出現によって、明確にその帰結すべき目標を定める。
目指すべき自由な未来は逃亡の先には無く、戦って勝ち取らなければならないのだ。
老婆たちは繋ぐものたちで、若い女たちは明日を芽吹かせるものたちであり、そこに過去の呪縛から逃れられないマックスの居場所は無い。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、異才ジョージ・ミラーの現時点での集大成にして、驚くべき傑作である。
映画とはそもそも見世物から始まった芸術で、原点は映像の力によって人を驚かせ、感動させること。
歴史あるシリーズだから、薀蓄はいくらでも語れるが、私はこの映画の魅力を端的に表現できる言葉を知らない。
我々観客の想像力を遥かに超える創作者の偉大なイマジネーションと、それを現実化した未見性の塊のような映像に圧倒され、この天晴れな大活劇にただただ酔った。
二代目マックスを襲名したトム・ハーディは、見事に先代メル・ギブソンのイメージを払拭したし、男前のバトルヒロイン、フュリオサを演じたシャーリーズ・セロンも新境地だろう。
聞くところによると、ミラーは本作を新たなシリーズの起点と考えていて、ハーディのマックスをもう3本作る構想があるらしい。
はたして、このとてつもない「Part1」を超えることが出来るのか、既にアナウンスされている「Mad Max:The Wasteland 」を、首を長くして待ちたい。

今回は、灼熱のバトル後の渇きを癒すべく、オーストラリアを代表する銘柄の一つ「ヴィクトリア・ビター」をチョイス。
アメリカンビールほどライトではないが、適度なホップ感と苦味が爽快な喉越しを演出する。
昔オーストラリアに行ったときには、カンガルーのソーセージを肴にこれを飲んだ。
それだけで気分はワイルドなロード・ウォーリアー(笑

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