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2015年06月30日 (火) | 編集 |
残したい、最後の声。
餡は甘いものだけど、映画はちょっとビターだ。
明け方、桜並木に近い古めかしいビルの屋上で、たばこを燻らせる一人の男。
彼の背負っているものの重さ、静かなる葛藤を、映像だけで端的に感じさせる秀逸なオープニング。
長瀬正敏演じる千太郎は、小さなどら焼き屋「どら春」を一人で切り盛りする店長だ。
ある日、店に徳江という謎めいた老婆が現れて、働かせて欲しいという。
最初は断っていた千太郎だが、徳江の持参した餡のクオリティに驚き、彼女をバイトとして雇いながら、教えをこう事にする。
徳江の作る餡の評判は瞬く間に広がり、店は繁盛。
しかし彼女の体にはある秘密があり、次第に周囲に波紋が広がってゆくのである。
正直私は、河瀬直美監督の映画がちょっと苦手だ。
ビジュアルなどは、パッと見いかにも女性らしい繊細で知的なイメージなのだが、実はかなり野性的で理性よりも本能でグイグイおされる感じ。
作品世界そのものが、ある種の作家のサンクチュアリを形作り、入れればいいのだけど、時として映画に拒絶されるような感覚に陥るのである。
ところが、本作は彼女にとって初の原作ものだからなのか、日・仏・独合作というグローバルな体制だからなのか、とても作品に入りやすい。
いや決して薄味になったわけではなく、生と死の物語、背景となる四季の移ろい、アニミズム的な自然の捉え方といった作家の特色は色濃く出ている。
タイトルの「あん」について、監督は日本語だと“あ”と“ん”で最初と最後、フランス語だと数字の“1”、英語でもアルファベットの最初の“A”で、万国共通のタイトルと語っていたが、この映画自体とても間口が広く、普遍性のある作品になっているのではないか。
満開の桜が美しい、穏やかな春の風景から始まる映画は、中盤で意外な方向に舵を切る。
手の指が不自由な徳江が、ハンセン病の患者だったことが世間に知れ、店は一気に閑古鳥が鳴くようになり、徳江は仕事を辞めざるを得なくなるのである。
徳江は、餡作りで一番大切なのは「大豆の声を聞くこと」だという。
大豆が畑で生まれ、長い道程を経て店へとたどり着くように、この世の全てのものには耳を傾けて聴くべき旅の物語がある。
本作の主要登場人物は、千太郎と徳江、そして内田伽羅演じる常連の女子中学生のワカナ。
過去に他人の人生を狂わせてしまい、刑務所に入っていた経験を持つ千太郎にも、母親との間に静かな確執を抱えるワカナにも、心に秘めた物語があり、聞いてくれる人を待っている。
だが誰よりも封じられた声を届けたかったのは、理不尽な差別によって日の当たる人生を奪われた、徳江自身なのだろう。
どら焼きの餡は外からは見えないから、食べてみなければその存在は分からない。
悲しみをうちに隠す人たちが、餡が取り持つ不思議な縁によって出会い、少しだけ重なってお互いの声を聴く。
人生の冬の季節の中で、彼らが集った小さな陽だまりの暖かさは儚く、だからこそとても愛おしいのである。
映画館を出たら、この世界に溢れる小さき声に耳を澄ませてみよう。
今回は映画の舞台にちなんで、「金婚」で知られる東村山市久米川町の豊島屋酒造の季節限定酒「十右衛門 純米無濾過原酒 おりがらみ」をチョイス。
十右衛門の新酒に、もろみを漉した際の”おり”を絡め、味わいの深みを増した一本になっている。
さすがにどら焼きに日本酒は・・・と思う人が多いだろうけど、案外お酒にスイーツは相性良かったりするんだけどな。
餡を使った和菓子の他にも、チョコレートなんかはけっこういける。
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餡は甘いものだけど、映画はちょっとビターだ。
明け方、桜並木に近い古めかしいビルの屋上で、たばこを燻らせる一人の男。
彼の背負っているものの重さ、静かなる葛藤を、映像だけで端的に感じさせる秀逸なオープニング。
長瀬正敏演じる千太郎は、小さなどら焼き屋「どら春」を一人で切り盛りする店長だ。
ある日、店に徳江という謎めいた老婆が現れて、働かせて欲しいという。
最初は断っていた千太郎だが、徳江の持参した餡のクオリティに驚き、彼女をバイトとして雇いながら、教えをこう事にする。
徳江の作る餡の評判は瞬く間に広がり、店は繁盛。
しかし彼女の体にはある秘密があり、次第に周囲に波紋が広がってゆくのである。
正直私は、河瀬直美監督の映画がちょっと苦手だ。
ビジュアルなどは、パッと見いかにも女性らしい繊細で知的なイメージなのだが、実はかなり野性的で理性よりも本能でグイグイおされる感じ。
作品世界そのものが、ある種の作家のサンクチュアリを形作り、入れればいいのだけど、時として映画に拒絶されるような感覚に陥るのである。
ところが、本作は彼女にとって初の原作ものだからなのか、日・仏・独合作というグローバルな体制だからなのか、とても作品に入りやすい。
いや決して薄味になったわけではなく、生と死の物語、背景となる四季の移ろい、アニミズム的な自然の捉え方といった作家の特色は色濃く出ている。
タイトルの「あん」について、監督は日本語だと“あ”と“ん”で最初と最後、フランス語だと数字の“1”、英語でもアルファベットの最初の“A”で、万国共通のタイトルと語っていたが、この映画自体とても間口が広く、普遍性のある作品になっているのではないか。
満開の桜が美しい、穏やかな春の風景から始まる映画は、中盤で意外な方向に舵を切る。
手の指が不自由な徳江が、ハンセン病の患者だったことが世間に知れ、店は一気に閑古鳥が鳴くようになり、徳江は仕事を辞めざるを得なくなるのである。
徳江は、餡作りで一番大切なのは「大豆の声を聞くこと」だという。
大豆が畑で生まれ、長い道程を経て店へとたどり着くように、この世の全てのものには耳を傾けて聴くべき旅の物語がある。
本作の主要登場人物は、千太郎と徳江、そして内田伽羅演じる常連の女子中学生のワカナ。
過去に他人の人生を狂わせてしまい、刑務所に入っていた経験を持つ千太郎にも、母親との間に静かな確執を抱えるワカナにも、心に秘めた物語があり、聞いてくれる人を待っている。
だが誰よりも封じられた声を届けたかったのは、理不尽な差別によって日の当たる人生を奪われた、徳江自身なのだろう。
どら焼きの餡は外からは見えないから、食べてみなければその存在は分からない。
悲しみをうちに隠す人たちが、餡が取り持つ不思議な縁によって出会い、少しだけ重なってお互いの声を聴く。
人生の冬の季節の中で、彼らが集った小さな陽だまりの暖かさは儚く、だからこそとても愛おしいのである。
映画館を出たら、この世界に溢れる小さき声に耳を澄ませてみよう。
今回は映画の舞台にちなんで、「金婚」で知られる東村山市久米川町の豊島屋酒造の季節限定酒「十右衛門 純米無濾過原酒 おりがらみ」をチョイス。
十右衛門の新酒に、もろみを漉した際の”おり”を絡め、味わいの深みを増した一本になっている。
さすがにどら焼きに日本酒は・・・と思う人が多いだろうけど、案外お酒にスイーツは相性良かったりするんだけどな。
餡を使った和菓子の他にも、チョコレートなんかはけっこういける。

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![]() (東京)十右衛門 720ml おりがらみ純米無濾過生原酒 金婚 豊島屋 |
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