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2015年07月04日 (土) | 編集 |
幻想の未来を求めて。
「戦場でワルツを」の異才アリ・フォルマン監督による、異色の近未来SF。
スタニスワフ・レムの原作「泰平ヨンの未来学会議」は未読だが、監督によると大幅に脚色されているそうな。
果たしてこれはディストピアなのか、それともユートピアなのか?
実はこの映画、昨年の東京アニメアワードフェスティバルで鑑賞済みだったけれど、どうにも消化しきれず、レビューをアップしていなかった。
劇場公開で再鑑賞し、ようやく全貌が見えた気がする。
本作の大きな特徴は、複雑な多重構造だ。
主演はロビン・ライトだが、彼女が演じているのはロビン・ライトという女優、つまり自分自身である。
「プリンセス・ブライド・ストーリー」のヒロインとして華々しくスターダムを駆け上がったものの、その後は現場をドタキャンしたり、男運悪いし、ろくな映画出ないし、要するにあんた落ち目だよって役柄。
まあ現実のロビン・ライトのキャリアはそんなに酷くないとは思うけど、これはつまりアロノフスキーの「レスラー」や「ブラック・スワン」的な、現実の俳優のイメージをそのまま役に反映させる半ドキュメンタリースタイル。
彼女は勝気な娘と病に冒された息子と共に、空港の近くに住んでいるのだが、ハーヴェイ・カイテル演じるマネージャーが、映画会社のミラマウント(笑)からの最終オファーを持ってくる。
それは俳優の肉体から演技までを全てスキャンデータ化し、デジタルのキャラクターとして権利を買い取るから、もう人前で演技しちゃダメよというもの。
生身の俳優をCG化した事例が既にある現在、この設定はSFというにはあまりにリアリティがある。
もしも非現実が現実を侵食する事を受け入れるなら、はたしてその先にある未来とは何か。
映画の前半は病気の息子との時間を優先したいロビンが、契約を受け入れるまでの2013年を舞台にした実写ドラマ。
ここまでは、ほんの少しずれたパラレルワールドのハリウッドをシニカルに描いたメタフィクション、いわゆるセルフ・リフレクシブ・フィルムの一種と言えるだろう。
ところが、映画は後半驚くべき世界へと観客を招き入れるのである。
時代は一気に飛んで20年後の2033年、ロビンは契約の延長手続きのために、ミラマウント・ナガサキ(20年の間にどうやら日本企業と合併したらしい)主催の“コングレス”にやってくる。
この時代、ミラマウントは映画の次に来るものとして、観客が望む世界にトリップ出来るドラッグを売り出していて、ロビンを含むコングレスの参加者たちもそれぞれの思考の中でアニメ化されている。
この世界観は、映画の未来像として非常に面白く示唆に富んでいると思う。
デジタル化は制作プロセスにおける現実と虚構の境界を曖昧にしたが、非現実の侵食はおそらくそこでは止まらない。
近い将来、少なくとも映画の一部はゲームと融合してインタラクティブ性を強め、鑑賞するものではなく体験するものとなってゆくだろう。
そしてテクノロジーの主流が機械に頼るメカニカルから、人間の脳に直接作用するケミカルへと変わる時、果たしてこの世界はドラッグの見せる幻想の誘惑に抗えるだろうか。
俳優は、もともと現実と虚構を行き来する存在。
実写とアニメ、二つのロビン・ライトが体現するのは、境界を失いゆっくりと溶け合いながら崩壊してゆく世界そのもの。
前回観た時はドラッグが見せる世界がなぜアニメなのか?が引っかかったが、なるほど手描きアニメ風のアナログ世界は、現在のCGに代表されるデジタル進化の逆説でもある訳だ。
もちろんカオスとメタモルフォーゼに一番相応しい表現であり、フライシャー兄弟から今 敏までが溶け合うコングレスは、ハリウッドのシニカルなメタファーであると同時に、作者の映画的記憶の実体化でもあるのだろう。
誰もが自分の脳内の閉じた世界に暮らす時、暗闇の共有体験であった映画の魔法は消え去り、他人との絆すら無意味なものとなる。
崩壊する世界で、主人公が最後によりどころにしたのが、母としての愛だったというのが切ない。
あの無限ループが、彼女が一番愛おしい理想の時だったという訳か。
今回は、抜け出せない幻想の物語なので、あまりに魅惑的過ぎて酔い潰れるまで飲んでしまうという「ノックアウト」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット20ml、ペルノ10ml、ペパーミント・ホワイト適量をステアして、最後にチェリーを飾る。
清涼なペパーミントと複雑なペルノの香り、すっきりしたジンの味わい。
ガツンとくるタイプではなく、度数の割に飲みやすいので、ついつい深酒してしまって気づいたら夢の中という訳だ。
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「戦場でワルツを」の異才アリ・フォルマン監督による、異色の近未来SF。
スタニスワフ・レムの原作「泰平ヨンの未来学会議」は未読だが、監督によると大幅に脚色されているそうな。
果たしてこれはディストピアなのか、それともユートピアなのか?
実はこの映画、昨年の東京アニメアワードフェスティバルで鑑賞済みだったけれど、どうにも消化しきれず、レビューをアップしていなかった。
劇場公開で再鑑賞し、ようやく全貌が見えた気がする。
本作の大きな特徴は、複雑な多重構造だ。
主演はロビン・ライトだが、彼女が演じているのはロビン・ライトという女優、つまり自分自身である。
「プリンセス・ブライド・ストーリー」のヒロインとして華々しくスターダムを駆け上がったものの、その後は現場をドタキャンしたり、男運悪いし、ろくな映画出ないし、要するにあんた落ち目だよって役柄。
まあ現実のロビン・ライトのキャリアはそんなに酷くないとは思うけど、これはつまりアロノフスキーの「レスラー」や「ブラック・スワン」的な、現実の俳優のイメージをそのまま役に反映させる半ドキュメンタリースタイル。
彼女は勝気な娘と病に冒された息子と共に、空港の近くに住んでいるのだが、ハーヴェイ・カイテル演じるマネージャーが、映画会社のミラマウント(笑)からの最終オファーを持ってくる。
それは俳優の肉体から演技までを全てスキャンデータ化し、デジタルのキャラクターとして権利を買い取るから、もう人前で演技しちゃダメよというもの。
生身の俳優をCG化した事例が既にある現在、この設定はSFというにはあまりにリアリティがある。
もしも非現実が現実を侵食する事を受け入れるなら、はたしてその先にある未来とは何か。
映画の前半は病気の息子との時間を優先したいロビンが、契約を受け入れるまでの2013年を舞台にした実写ドラマ。
ここまでは、ほんの少しずれたパラレルワールドのハリウッドをシニカルに描いたメタフィクション、いわゆるセルフ・リフレクシブ・フィルムの一種と言えるだろう。
ところが、映画は後半驚くべき世界へと観客を招き入れるのである。
時代は一気に飛んで20年後の2033年、ロビンは契約の延長手続きのために、ミラマウント・ナガサキ(20年の間にどうやら日本企業と合併したらしい)主催の“コングレス”にやってくる。
この時代、ミラマウントは映画の次に来るものとして、観客が望む世界にトリップ出来るドラッグを売り出していて、ロビンを含むコングレスの参加者たちもそれぞれの思考の中でアニメ化されている。
この世界観は、映画の未来像として非常に面白く示唆に富んでいると思う。
デジタル化は制作プロセスにおける現実と虚構の境界を曖昧にしたが、非現実の侵食はおそらくそこでは止まらない。
近い将来、少なくとも映画の一部はゲームと融合してインタラクティブ性を強め、鑑賞するものではなく体験するものとなってゆくだろう。
そしてテクノロジーの主流が機械に頼るメカニカルから、人間の脳に直接作用するケミカルへと変わる時、果たしてこの世界はドラッグの見せる幻想の誘惑に抗えるだろうか。
俳優は、もともと現実と虚構を行き来する存在。
実写とアニメ、二つのロビン・ライトが体現するのは、境界を失いゆっくりと溶け合いながら崩壊してゆく世界そのもの。
前回観た時はドラッグが見せる世界がなぜアニメなのか?が引っかかったが、なるほど手描きアニメ風のアナログ世界は、現在のCGに代表されるデジタル進化の逆説でもある訳だ。
もちろんカオスとメタモルフォーゼに一番相応しい表現であり、フライシャー兄弟から今 敏までが溶け合うコングレスは、ハリウッドのシニカルなメタファーであると同時に、作者の映画的記憶の実体化でもあるのだろう。
誰もが自分の脳内の閉じた世界に暮らす時、暗闇の共有体験であった映画の魔法は消え去り、他人との絆すら無意味なものとなる。
崩壊する世界で、主人公が最後によりどころにしたのが、母としての愛だったというのが切ない。
あの無限ループが、彼女が一番愛おしい理想の時だったという訳か。
今回は、抜け出せない幻想の物語なので、あまりに魅惑的過ぎて酔い潰れるまで飲んでしまうという「ノックアウト」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット20ml、ペルノ10ml、ペパーミント・ホワイト適量をステアして、最後にチェリーを飾る。
清涼なペパーミントと複雑なペルノの香り、すっきりしたジンの味わい。
ガツンとくるタイプではなく、度数の割に飲みやすいので、ついつい深酒してしまって気づいたら夢の中という訳だ。

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