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ショートレビュー「人生スイッチ・・・・・評価額1650円」
2015年08月12日 (水) | 編集 |
アングリー・アニマルズの饗宴。


アルゼンチン発の、シニカルでブラックなオムニバス悲喜劇。
「私が、生きる肌」などで知られるスペインの鬼才ペドロ・アルモドバルがプロデュースし、監督・脚本を務めるのはアルゼンチンの俊英ダミアン・ジフロン。
6本のエピソード間に関連は無いが、主人公は全員“怒り”の感情に駆り立てられ、ふとした瞬間に人生が変わってしまう。

第一話は、過去に自分と関わった人全てを巻き込んで、壮大な復讐を遂げようとする男の物語。
ごく短い作品なので詳細は書かないが、話の中心にいる男は画面に一切登場せず、彼を知る人々の会話で話が進むのが面白い。
動機が同じかは分らないが、つい最近似た様な事件が実際にあったのも不気味さを募らせる。

第二話は、自分の家族をメチャクチャにした高利貸しの男に、偶然再会してしまったウェイトレスの話。
殴った方はすぐ忘れるというが、高利貸しは彼女が誰がを覚えていない。
ウェイトレスに昔話を聞いた店のおばちゃんは、そんなひどい男を生かしておいても社会に害をなすから、猫いらずで殺してしまうおうと言い出す。
ところが毒入りポテトを出したところ、意外な人物があらわれ、話は予想外の方向に。

第三話は、新車で颯爽と走行中に、前を塞ぐノロノロ車に罵声を浴びせた男の悲劇。
パンクして止まったところに、ノロノロ車が追いついてきて、相手のドライバーと喧嘩になる。
相手の浴びせた一言にぶち切れた主人公が、思いもよらぬ逆襲を仕掛けた事で、事態はさらにエスカレートしてゆく。

第四話は、主人公がビルの爆破解体技師という時点で嫌な予感で一杯。
駐車禁止区域じゃないのに車をレッカー移動され、役所への支払い拒否で揉めた事から、ピタゴラスイッチの様に人生が暗転し、抗おうとすればするほどドツボにはまってゆく。
傑作「瞳の奥の秘密」のリカルド・ダリンが怒れる中年オヤジを公演している。

第五話は、バカ息子の起こした人身事故を、何とか隠蔽しようとする金持ちの父親の物語。
弁護士を呼んで、身代わりをたて、検事を丸め込んだところまではいいのだが、どいつもこいつも金に目がくらんで自分の取り分を引き上げようと必死。
遂にぶち切れた父親は、もう金は払わんと宣言するのだが、事すでに遅し、事件は意外な結末を見る。

最終第六話の主人公は、結婚式当日の花嫁。
彼女は人生の絶頂の席で、花婿の浮気を知ってしまう。
いわゆる結婚式の修羅場というやつだが、二転三転する物語の帰結する先は、それまでのエピソードとは一線を画し、なるほど本作のタイトルにピッタリである。

邦題は「人生スイッチ」だが、物理的なボタンとかスイッチの類が出てくる訳ではない。
心の中で感情のスイッチが入ったという事だろうけど、映画を観ると原題の「Relatos salvajes」がしっくりくる。
直訳すると「獣の物語」で、オープニングのタイトルバックにも動物たちの写真が並ぶ。

人間と動物を分けるものは理性、しかし怒りという激烈な感情に我を忘れた人間は、最もナマな動物的姿をさらすと言うワケか。

描かれるシチュエーション的には、交通トラブルから浮気発覚まで様々だが、本作が非常に上手いのは、それぞれの主人公を客観視しつつも、適度に感情移入出来るようになってることだ。
たとえば、急いでいるのにやたらノロノロ走る車にイライラさせられた経験はドライバーなら誰でもあるだろうし、役所の理不尽な対応はどうにも腹に据えかねると思っている人も多いだろう。
信じていた恋人の浮気や、親の心知らずのバカ息子、なぜか善良な自分より出世する悪党、人生理不尽で怒りたくなる事ばかりで、いっそ皆いなくなれ!という妄想を一度も抱いたことの無い人はおそらくいないのではないか。
本作は、そんな一線を超えてしまった主人公たちの織り成す悲喜劇だが、「そこで踏みとどまれ」と思わせつつも、超えちゃった気持ちも分るという匙加減が絶妙なのである。

ちょっと面白かったのは、ほんの数分という短かめの話からスタートして、段々とエピソードが長くなる事で、最後の話では30分を超えていた。

尺を揃えるかランダムかの多いオムニバスで、こういう作りは記憶に無いが、テリングのリズムとしてなかなか悪くない。
壮大なバッドエンドで幕を開け、バッドとグッドのバランスを強弱しながら、最後は思いもよらない感情の不思議に帰結させる。
オムニバスは単体では面白くても、トータルするとどこか物足りなさを感じさせる作品が多いが、これは一人の作家によって構成されている事もあってか、一本の映画としての完成度、満足度もなかなかに高い。
センスよく纏められた、見応えのある大人の寓話集である。

今回はアルゼンチンワインの白、「カテナ・アラモス・シャルドネ」 をチョイス。
アンデス山脈の麓で作られるシャルドネらしいシャルドネ。
夏にピッタリのピーチやグレープフルーツの爽やかな風味と軽やかな香りが楽しめる。
南米のワインはヨーロッパに比べると割安なのもうれしく、これ同レベルのフランス産なら倍出しても全然無理だろう。
何かとストレスのたまる世の中、怒りのコントロールには多少アルコールのヘルプを借りていいかもしれない。

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