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ショートレビュー「天空の蜂・・・・・評価額1600円」
2015年09月30日 (水) | 編集 |
蜂の一刺しを恐れるのは誰か。

1995年のある日、無人飛行可能な自衛隊の新鋭大型ヘリがジャックされ、高速増殖炉の上空でホバリング。
このまま時間が経てば、ヘリは燃料切れで原子炉建屋に落下する。
姿無き犯人の要求は、日本全国の全ての原発を即時停止させ、再始動不可能な状態に破壊する事。
20年前に東野圭吾の原作を読んだ時、映像化想定で書いたのだろうな、と思ったのを覚えている。
まるでハリウッド映画の様な設定はもちろん、プロットの構成も極めて映画的で、腕の良い脚本家がいれば現実的な上映時間で十分脚色可能な内容だった。
それゆえ、映画化まで20年の歳月がかかったのは意外ともいえるが、むしろ2015年の今作られた事は必然だったのかもしれない。

冒頭、自衛隊への引渡し式直前、巨大なヘリが突如として動き出す瞬間から、物語はサスペンスフルに展開する。
高速増殖炉上空の“蜂”の燃料が尽きるまで、わずか8時間。
日本そのものを人質にとった犯人とその正体を追う当局の捜査劇と、ヘリの奪還と同時に高速増殖炉の安全確保をしなければならない現場の闘い。
また、ヘリには開発者の湯原の一人息子が取り残されており、上空にホバリングしているヘリからの決死の救出劇、さらには原発開発を担当する三島と湯原のエンジニア同士の葛藤と、幾つものプロットが重層的に進行し飽きさせない。
原作からはある程度改変された箇所はあるものの、基本的には忠実な作り。
もっとも、数多いキャラクターの背景は描き足りない部分が多く、132分の上映時間はやや窮屈な印象がある。
特にミッドポイントで取り残された少年の救出劇が描かれて以降は、展開がやや雑然とした印象になってしまった。
これ以上刈り込まないのであれば、上映時間は2時間半程度は欲しかったところで、結果的に説明的な描写・台詞が目立つのはちょっと残念だ。

大変な力作だと思うが、港で言われている様な反原発メッセージ映画とは違う
確かに原発が重要なモチーフになっているし、物語のキーではあるのだけど、これは原発の是非を描く作品では全くないのだ。

天空の蜂の一刺しを恐れるのは、ことなかれ主義でありながら冷徹な権力と、面倒なことに無関心でありながら白黒レッテル貼りに嬉々とする大衆。
問題を認識しながら、見たくないものには目を瞑る者たち。
異なる意見を持つ誰かを攻撃することが、正義だと勘違いする者たち。
「標的は原発」という刺激的なコピーを掲げた本作、娯楽映画として水準以上の作品だと思うが、興業的には苦戦しているという。
この事実もまた、劇中に描かれた日本と日本人のカタチの現われと言えるのかもしれない。

原作の出版から20年。
無人航空機技術は軍事だけでなくドローンとして一般化し、高速増殖炉は相変わらず金食い虫、そして何よりも劇中では“あり得ないこと”とされている原発ゼロの世界を、3.11の記憶と共に我々は経験してしまった。
あえて舞台を現在ではなく、原作の書かれた1995年のままとした事で、本作は未来から俯瞰した過去の未来予想図という不思議な味わいを持つ異色作となった。
ある種の“仮想の未来の悪夢”を描いたフィクションに、時代がぴったりフィットしてしまったのは、なんとも皮肉だ。


今回は天空の蜂だけに蜂蜜酒のミード。
国産蜂蜜を使った会津ミード「美禄の森」をチョイス。
まろやかな甘みと適度な酸味があり、フレッシュな森の恵みを味わえる。
キンキンに冷やしてそのまま食前酒にしても良いし、炭酸で割っても美味しい。
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