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2016年02月11日 (木) | 編集 |
その男、危険につき。
昨年のカンヌ国際映画祭で、「サウルの息子」を抑えて最高賞のパルム・ドールに輝いた作品。
物語の背景になっているのは、現代ヨーロッパの移民問題である。
タイトルロールのディーパンは、スリランカで政府軍と長年に渡り血で血を洗う内戦を繰り広げたゲリラ組織、“タミル・イーラム解放の虎”の元兵士。
スリランカ内戦は2009年に政府軍の全面勝利で一応の終結を見たが、政府側の報復を恐れたディーパンは、難民として国外への脱出を決意する。
映画は、戦いに敗れたディーパンが戦友たちの遺体を火葬するシーンから始まり、多くの人々が出国を待つ難民キャンプへと、いかにも社会派映画的な重苦しいムードを纏って幕をあける。
家族だと移住許可を得やすいので、ディーパンは難民キャンプで出会った見ず知らずの女ヤリニと孤児の少女イラヤルと偽家族を結成、フランスに入国するのだ。
※核心部分に触れています。観てから読むことをオススメします
しかしこれは一筋縄ではいかない、極めてトリッキーな作品である。
社会派映画の様にみせておいて、途中からゴリゴリのジャンル映画と化し、ジャンル映画に着地するかと思わせて、シュールにすっとぼけた方向に路線チェンジ。
映画の視点も、物語のそれぞれの段階で、三人の疑似家族を転々としてゆく。
偽りの家族はフランスでの在留資格を認められ、とある団地の管理人の仕事を得るのだが、この仕事が大誤算。
低所得者の集まる団地は、「マッドマックス」みたいなDQNなギャング集団の巣窟だったのだ。
団地の一角は、ギャングたちがドラッグを売買する“サロン”となっており、管理人も許可無く入れない。
夜な夜な危険な香りのする若者たちが集まり、時には敵対するギャングによる発砲事件が真昼間から起こる。
このギャング集団もまた、食い詰めた移民二世なのが実に皮肉。
戦いを逃れて来たディーパンは、別種の戦場に迷い込んでしまったのである。
物語の中盤で、フランスに潜伏している“解放の虎”の元上官と、ディーパンが面会する描写がある。
内戦で精神を病んでしまったらしい上官は、フランスを拠点として再びスリランカで戦争を起こすと主張し、ディーパンにも参加を強要しようとする。
だが、内戦で本当の家族を全て失い、今正に偽の家族から新たな絆を感じ始めているディーパンは、頑なに拒否。
彼にとって、戦いは自分の人生から全てを奪った忌避すべき行為なのである。
だからこそディーパンは、団地の中庭に突然境界線を引いて、ギャングたちに「安全地帯」を宣言。
彼のテリトリーでの違法行為を禁じるのだが、結果的にそれはギャングとの関係を決定的に悪化させ、ディーパンは抗争に巻き込まれたヤニリを助け出すために、再び銃を手にせざるを得ない。
静かに暮らそうとしている、うだつの上がらない移民の男。
しかしその内側に眠っている、恐ろしい一面をギャングたちは知らず、観客は知っている。
意外性の塊である本作は、「ラスト10分の衝撃」のコピーが相応しい。
異郷でのディーパンの苦労を淡々と描いてきたが故に、「戦い」を捨てるための「闘い」という、突然のジャンル映画的展開は予想外ではあるが、「待ってました!」という映画的カタルシスを感じるのは間違いない。
「これはこういう映画だから、こうなるんだろう」という観客の予想や思い込みを、ことごとく裏切る筋立ては、なるほどカンヌの審査委員長だったコーエン兄弟の作風と重なる部分がある。
物議を醸したという理想化されたエンディングのシークエンスも、「映画はあくまでも現実のアンチテーゼとしての虚構でしょ?」というジャック・オーディアールからのシニカルな問いかけだろう。
ある意味古典的ジャンル映画で、ある意味非常にモダンな作家映画。
クライマックスで主人公に張り付き、客観情報を入れないカメラなど、「サウルの息子」とはテリングに共通する部分があるのが面白い。
ヘビーな映画好きほど、楽しめる作品だと思う。
今回は、舞台となる街から「パリジャン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、クレーム・ド・カシス15ml、ドライ・ベルモット15mlをステアしてグラスに注ぐ。
ビタミンCが豊富なカシスのスピリットは、今ほど甘みの強くないものが、古来より薬として使用されてきたという。
パリジャンは、ジンの清涼感を、クレーム・ド・カシスの濃厚な甘味と香りが引き立てる。
ぶっちゃけディーパンには似合わないが、食欲を刺激するアペリティフだ。
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昨年のカンヌ国際映画祭で、「サウルの息子」を抑えて最高賞のパルム・ドールに輝いた作品。
物語の背景になっているのは、現代ヨーロッパの移民問題である。
タイトルロールのディーパンは、スリランカで政府軍と長年に渡り血で血を洗う内戦を繰り広げたゲリラ組織、“タミル・イーラム解放の虎”の元兵士。
スリランカ内戦は2009年に政府軍の全面勝利で一応の終結を見たが、政府側の報復を恐れたディーパンは、難民として国外への脱出を決意する。
映画は、戦いに敗れたディーパンが戦友たちの遺体を火葬するシーンから始まり、多くの人々が出国を待つ難民キャンプへと、いかにも社会派映画的な重苦しいムードを纏って幕をあける。
家族だと移住許可を得やすいので、ディーパンは難民キャンプで出会った見ず知らずの女ヤリニと孤児の少女イラヤルと偽家族を結成、フランスに入国するのだ。
※核心部分に触れています。観てから読むことをオススメします
しかしこれは一筋縄ではいかない、極めてトリッキーな作品である。
社会派映画の様にみせておいて、途中からゴリゴリのジャンル映画と化し、ジャンル映画に着地するかと思わせて、シュールにすっとぼけた方向に路線チェンジ。
映画の視点も、物語のそれぞれの段階で、三人の疑似家族を転々としてゆく。
偽りの家族はフランスでの在留資格を認められ、とある団地の管理人の仕事を得るのだが、この仕事が大誤算。
低所得者の集まる団地は、「マッドマックス」みたいなDQNなギャング集団の巣窟だったのだ。
団地の一角は、ギャングたちがドラッグを売買する“サロン”となっており、管理人も許可無く入れない。
夜な夜な危険な香りのする若者たちが集まり、時には敵対するギャングによる発砲事件が真昼間から起こる。
このギャング集団もまた、食い詰めた移民二世なのが実に皮肉。
戦いを逃れて来たディーパンは、別種の戦場に迷い込んでしまったのである。
物語の中盤で、フランスに潜伏している“解放の虎”の元上官と、ディーパンが面会する描写がある。
内戦で精神を病んでしまったらしい上官は、フランスを拠点として再びスリランカで戦争を起こすと主張し、ディーパンにも参加を強要しようとする。
だが、内戦で本当の家族を全て失い、今正に偽の家族から新たな絆を感じ始めているディーパンは、頑なに拒否。
彼にとって、戦いは自分の人生から全てを奪った忌避すべき行為なのである。
だからこそディーパンは、団地の中庭に突然境界線を引いて、ギャングたちに「安全地帯」を宣言。
彼のテリトリーでの違法行為を禁じるのだが、結果的にそれはギャングとの関係を決定的に悪化させ、ディーパンは抗争に巻き込まれたヤニリを助け出すために、再び銃を手にせざるを得ない。
静かに暮らそうとしている、うだつの上がらない移民の男。
しかしその内側に眠っている、恐ろしい一面をギャングたちは知らず、観客は知っている。
意外性の塊である本作は、「ラスト10分の衝撃」のコピーが相応しい。
異郷でのディーパンの苦労を淡々と描いてきたが故に、「戦い」を捨てるための「闘い」という、突然のジャンル映画的展開は予想外ではあるが、「待ってました!」という映画的カタルシスを感じるのは間違いない。
「これはこういう映画だから、こうなるんだろう」という観客の予想や思い込みを、ことごとく裏切る筋立ては、なるほどカンヌの審査委員長だったコーエン兄弟の作風と重なる部分がある。
物議を醸したという理想化されたエンディングのシークエンスも、「映画はあくまでも現実のアンチテーゼとしての虚構でしょ?」というジャック・オーディアールからのシニカルな問いかけだろう。
ある意味古典的ジャンル映画で、ある意味非常にモダンな作家映画。
クライマックスで主人公に張り付き、客観情報を入れないカメラなど、「サウルの息子」とはテリングに共通する部分があるのが面白い。
ヘビーな映画好きほど、楽しめる作品だと思う。
今回は、舞台となる街から「パリジャン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、クレーム・ド・カシス15ml、ドライ・ベルモット15mlをステアしてグラスに注ぐ。
ビタミンCが豊富なカシスのスピリットは、今ほど甘みの強くないものが、古来より薬として使用されてきたという。
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ぶっちゃけディーパンには似合わないが、食欲を刺激するアペリティフだ。

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