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ショートレビュー「コインロッカーの女・・・・・評価額1650円」
2016年02月17日 (水) | 編集 |
チャイナタウンの鬼子母神。

韓国から、またまた凄い新人監督が出てきた。

20世紀に日本でも社会問題となったコインロッカーベイビーとして生まれ、華僑系の裏社会で育った女・イリョンと、“オモニ(お母さん)”と呼ばれる組織の女ボスとの宿命的葛藤の物語。
「サイコメトリー 残留思念」の脚本家として知られるハン・ジュニが、自らのオリジナル脚本で見事な長編監督デビューを飾った。
主人公のイリョンを、若き演技派キム・ゴウンが好演し、圧倒的な存在感でオモニを演じるのは大女優キム・ヘス。
彼女はこの悪役とも言えるゴッドマザー役のオファーに、直ぐにはイエスと言わなかったそうだが、ハン・ジュニの脚本改訂作業を待って出演を快諾したという。
悲しき宿命を背負った二人の女の、情念渦巻くハードボイルドノワールである。

物語のモチーフとなっているのは、「新しき世界」や「共謀者」など、近年の韓国映画で一つのジャンル化している華僑系の犯罪組織だ。
韓国は日本以上に血統を重んじる社会ゆえに、華僑への差別も激しいものがあると聞く。
招かれざる客は食い詰め、やがて裏社会へと根を張って行くのは何処も同じ。
かつて中国から海を渡ってきた女は、生きるために情を捨て、遂には仁川のチャイナタウンを支配するドンとなった。
過酷な方法でヤミ金の借金を取り立て、払えなければ容赦無く殺して臓器を売り払う非道っぷり。
悪徳警官にも賄賂を渡してコントロールしているので、誰も手を出せない。
一方で、彼女は孤児の少年少女を集めて育て、自分を“オモニ”と呼ばせており、地下鉄駅10番コインロッカーに捨てられていたイリョンもその一人。
オモニの組織は、母親を頂点とするある種の疑似家族なのである。
もちろんそれは、単なるビジネス上の繋がりを超えた忠誠心を持たせるためでもあるのだが、ノワールに登場する犯罪組織の形態としてはかなり珍しい。

ところが、奇妙な均衡を保っていた疑似家族は、イリョンが組織のターゲットである青年・ソッキョンと出会った事によって、急速に崩壊する。
困難な状況でも決して希望を忘れず、人の良心を信じるソッキョンに、自分の知らなかった人間の生き方を見たイリョンは、急速に惹かれて行く。
だが、彼に特別な感情を抱いたイリョンは、オモニが重んじてきた裏社会の掟と、真っ向からぶつかる事になる。
偽りの家族はそれぞれの愛ゆえに破綻し、殺し合うしかない。

この作品は、言わばもう一つの「新しき世界」であり「スカイフォール」であり「アニマルキングダム」なのだが、軸となるメインキャラクター二人が共に女性である事、三代に渡り継承される母系の物語である事が強い未見性に繋がる。
印象的な雨の描写は浄化のメタファーか、あるいは喪失の涙雨か。

まあ韓国ノワールの例に漏れず、物語も描写もめちゃめちゃハードで容赦ないのだけど、後味は意外と悪くない。
なんでもハン・ジュニはこの作品にお金が集まると思わず、当初身銭をきって自主制作で作ろうと考えていたそう。
結果的に新人監督自身のオリジナル脚本で、本作の様な異色作が商業映画の企画として成立する韓国はやっぱ羨ましい。
日本公開はヒューマントラスト渋谷、シネリーブル梅田での「未体験ゾーンの映画たち」枠での限定公開だが、これは見逃すと後悔する。

これは母性の物語なので、「スィート・マリア」をチョイス。
ウォッカ30ml、ディサローノ・アマレット15ml、生クリーム15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
ミルクを思わせる乳白色の色合い。
ドライなウォッカと濃厚なアマレットを、生クリームが一つにまとめる。
映画はハードだが、こちらは優しい味わいのカクテルだ。

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