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ズートピア・・・・・評価額1750円
2016年04月28日 (木) | 編集 |
恐怖を煽る者に「NO!」を。

様々な動物たちが暮らす大都会「ズートピア」を舞台に、ウサギの新米警官・ジュディと、ひょんなことから彼女とコンビを組むキツネの詐欺師・ニックの活躍を描くファンタジー。
なかなか仕事を任せてもらえないジュディがやっと掴んだチャンスから、奇妙なバディは肉食動物たちの失踪事件の裏に隠された、大掛かりな陰謀を暴き出してゆく。
かわいい動物キャラクターとカラフルな世界観は一見子ども向けながら、そのテーマはびっくりするぐらい硬派。
本作が描こうとしているモチーフは、ズバリ「差別」であって、むしろ大きいお友達の心にこそ、ズンと突き刺さる。
監督は、同性婚をしていることを公表している「塔の上のラプンツェル」のバイロン・ハワードと、ゲームの世界でマイノリティの悲哀を描いた「シュガー・ラッシュ」のリッチ・ムーア。

動物たちの大都会、ズートピアにやって来たウサギのジュディ・ホップス(ジニファー・グッドウィン)は、新任警察官。
だが、体の小さなウサギが警察官になった例は過去になく、誰も彼女の能力を信用してくれない。
署長のボゴ(イドリス・エルバ)から与えられた仕事は、捜査ではなく駐禁の切符切り。
そんなある日、ジュディは他の動物たちから差別され、希望を無くした厭世的な詐欺師のキツネ、ニック・ワイルド(ジェイソン・ベイトマン)と出会う。
同じころ、街では肉食動物たちの謎の失踪事件が相次いでいて、警察は大忙し。
捜査から締め出されていたジュディは、当初無関係と思われていたカワウソの失踪事件を担当させてほしいとボゴにかけ合う。
ボゴはしぶしぶ48時間の期限で捜査を認めるが、解決できない時はジュディが仕事を辞めるという条件を出す。
数少ない手がかりから、事件にニックが関わっていると睨んだジュディは、彼を探し出して協力を約束させるのだが、実は失踪事件にはある陰謀が絡んでいて・・・


ここ数年の間、11月のホリデーシーズンのスタートに合わせて新作を公開する事が慣例となっていたいディズニーが、本作を2016年の春に封切ったのには、おそらく意味がある。
これ、明らかに狙って今年のアメリカ大統領選挙にぶつけてきている、ものすごく政治的な風刺劇なのだ。
多種多様なバックグラウンドと個性を持った動物たちが暮らすズートピアは、そのまま世界中から人が集まる現代アメリカのカリカチュア。

主人公のウサギのジュディは「チビの女だから無理」という性差別の、相方のキツネのニックは「キツネだから信用できない」という人種差別の壁に苦しんでる。

監督によると、当初物語の主役はニックだったのだが、厭世的でズートピアの社会を嫌っているニックを視点にして話を進めると、観客が感情移入しにくいという調査結果が出てしまった。
そこで街を愛し、街のために役に立ちたいと願っている、ジュディのキャラクターが作られたのだという。
バディでありながらお互いにアンチテーゼでもある二人の関係は、後述する物語の工夫にもリンクし、結果的にこの変更は大成功だと思う。
ちなみにジュディ・ポップスというキャラクター名は、TVシリーズ版「21ジャンプストリート」のジュディ・ホフス捜査官に酷似している。
彼女もまたチーム最高の学歴を持ちながら、小柄で黒人の女性であるがゆえに差別を受けていた。
またニックのデザインベースは、本作と同じく擬人化された動物たちで描いた1973年の「ロビン・フッド」の主人公のキツネ。
顔つきだけでなく、緑のシャツを着ているのも同作へのオマージュだろう。

立場は違えど社会のマジョリティではないジュディとニックは、事件解決へ向けてバディを組むと、抜群の相乗効果を発揮して結果を出す。
肉食動物たちの失踪は、彼らが原因不明のまま突然知性を失って凶暴化し、異常な事態を憂慮したライオンハート市長によって隠されていたから。
二人のマイノリティは、彼らを蔑んでいた者たちを見事に見返したのである。
しかし本作が秀逸なのは、差別をなくそう!頑張れば皆が報われる!という反差別の単純な図式からもう一歩踏み込んでいるところ
ここでジュディが草食で、ニックは肉食という差異が生きてくる。
この世界では嘗ての捕食者と被捕食者という関係は無くなっているが、人口の9割を占める草食動物は常に肉食動物に潜在的な不信を抱いている様なのだ。
ライオンハート市長が事件を隠蔽していたのも、ズートピア内部で両者の関係が崩壊する事を恐れたため。
10:1はアメリカのアフリカ系人口の比率とほぼ同じであり、ライオンハート市長をオバマ大統領に見立てると、意図するところは分かりやすい。

そして事件解決の記者会見で、ジュディが不用意に発した凶暴化は肉食動物の“血”のせいかも知れないという言葉が、封印されていた草食動物たちの恐怖に火をつけてしまう。
失望したニックはバディを解消して去り、ライオンハート市長は逮捕され、各地で肉食動物を排斥する動きが広がったことで、責任を感じたジュディは失意のうちに警察を辞めざるを得ない。
普段差別される側も悪気なく他者を差別する事があるし、意識せずに憎悪を煽っていることもある。

隠したいコンプレックスの原因を他人に向ければ、それは容易に不寛容と憎しみに変化してしまう。
そして、いつの世にもどこの社会にも、人々の心の奥底にある潜在的な恐怖を利用しようとする者がいるのだ。
自分の中にもあった差別する心に真摯に向き合ったジュディと、彼女を信じたニックは再びバディを組み、人知れず動物たちの心を支配しようとする真の黒幕と対決する。
それは表層的な理想郷ではなく、綻びを綻びと認めることで、本当の意味で「誰でも何にでもなれる」ズートピアへの、長い長い道のりの新たな第一歩なのである。

もっとも風刺的部分は置いといても、テーマはアメリカ社会のカリカチュアに限らない普遍性があるし、ズートピアの世界観を見てるだけでも楽しいのだけど。
ブラッド・バード監督の「トゥモローランド」の未来都市を思わせるズートピアは、極大から極小、極寒から灼熱にいたる動物たちの生息環境をワクワクするアミューズメント都市に再構成。
それぞれの動物たちの特徴が作り出す現象が、現実のアメリカ社会のあるあるネタになっているのもおかしい。
現実でもいつも長蛇の列が出来て、簡単な手続きに異様に時間がかかるDMVの職員を、ナマケモノにしたシニカルなセンスには爆笑してしまったし、リベラルな都市にはつきもののヌーディストのコミュニティに、田舎娘のジュディが恥じらいを隠せないのには、自分が街中で初めて全裸の人を見たときの記憶が蘇った(笑
アイスクリーム屋に掲げられた「We reserve the right to refuse service to anyone.(誰に対してもサービスを拒否する権利を有する)」のサインは訴訟社会のアメリカでは、あらゆるサービス業の店で見かけるおなじみのものだ。

ディテールには、遊び心満載のマニアックな映画・TVネタも満載。
「アナと雪の女王」の「Let it go」から、「風と共に去りぬ」の「Tomorrow is another day」に至る名台詞の洒落た引用。
事件の鍵を握るミスター・ビッグの元ネタはもちろんヴィトー・コルレオーネで、娘の結婚式の設定は「ゴッド・ファーザー」の冒頭シーン。
ジュディが最初に探すカワウソのエミットさんは、ジム・ヘンソン監督の「マペットのクリスマス」の主人公、カワウソのエメットへのオマージュ。
おそらく、他にも無数のディテールが隠されていると思うので、複数回観る時の楽しみになりそうだ。

しかし他者との関わり方、差別とは何か?どうすればよいのか?の様な具体的なテーマを、分かりやすく噛み砕いて子どもたちに伝えようとする姿勢は、振り返って日本のキッズムービーに一番欠けているところかも。
それもディズニーの様な、保守本流のメジャーどころがやっているアメリカの映画文化は、やはり奥深い。
奇しくもマイノリティへの恐怖を煽って、マジョリティの人身掌握につなげる辺りは、今旋風を巻き起こしてるあの人のやってることそっくり。
本作の作り手が一番見せたいのは、子どもたちよりむしろトランプかも知れないな。

今回は、現実世界のズートピアということで、カクテルの「ニューヨーク」をチョイス。
バーボン45ml、ライムジュース15ml、グレナデン・シロップ1/2tsp、パウダーシュガー1tspをよくシェイクしてグラスに注ぎ、最後にオレンジ・ピールを絞る。
濃厚なバーボンとライムは実によく合い、甘酸っぱくて微かにほろ苦い。
鮮やかな色味はどことなく野菜ジュースっぽくも見えるので、ジュディに似合いそう。

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ピクサー展 スタジオ設立30周年記念 PIXAR 30 YEARS OF ANIMATION
2016年04月28日 (木) | 編集 |
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故スティーブ・ジョブズが、ルーカス・フィルムのCG部門を買収し“PIXAR”と名付けたのは1986年のこと。
当時誰も見た事が無かった、コンピューターが作り出すキャラクターアニメーションを作り続けて30年。
現在までに公開された全ての長短編を網羅した回顧展だ。
展示は主にコンセプトアートやストーリーボード、カラースクリプトなど膨大なドローイングと、キャラクターの立体モデル。
各セクション、各作品ごとのインタビューやメイキング、短編セレクションなどの映像展示。
伝わってくるのは、徹底的なスートーリー優先、スートーリー至上主義なのがいかにもピクサー。
全てをじっくり見て回るには4、5時間は余裕でかかるだろう。
このボリュームで大人1500円は安いと思う。
東京都現代美術館で5月29日まで。

ところで「メリダとおそろしの森」のほぼ完成されたキャラクターのドローイングに、「2005年」のスタンプが押してあったのには衝撃を受けた。
この映画は2012年公開だから、キャラデサフィニッシュしてから更に7年もかけてるってこと?
・・・体制が違い過ぎて羨むことすら出来ない(・_・;

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