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ちはやふる 上の句 & 下の句・・・・・評価額1750円
2016年05月03日 (火) | 編集 |
繋がっているから、強くなれる。

挑戦的な作品である。
末次由紀作の同名漫画を原作に、競技かるたに明け暮れる高校生たちを「上の句」「下の句」と題した二部作で描く熱血青春映画。
和のスポコン+控えめなラブストーリーに、思春期のワクワクドキドキが加速する。
観客の立場では、二部作というのは必ずしも歓迎出来ない上映形態。
しかし脚本も手掛ける小泉徳宏監督は、真っ直ぐの剛速球で「上の句」を、鋭い変化球で「下の句」を構成し、物語の連続性を保持しながら大きく構造を変えることで、二部作を意味のあるものとした。
登場人物の成長と共に、映画自体もより複雑に深化させることによって、「下の句」では「上の句」の向こう側、違った世界が見えるのだ。
タイトルロールでもある綾瀬千早役の広瀬すずをはじめ、フレッシュな若手俳優たちによって演じられるキラキラの群像劇は、日本青春映画史に残る金字塔となった。

幼馴染の綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の3人は、競技かるたのチームでいつも一緒。
ところが、新が家庭の事情で福井に引っ越したことで、なんとなく疎遠になってしまう。
数年後、瑞沢高校に入学した太一は、同じ高校に進学した千早が競技かるた部を作ったことを知る。
「かるたをやっていたら、きっとまた会える」新とのそんな約束を、千早は覚えていたのだ。
相変わらずの情熱でかるたに打ち込む千早は、以前大会で闘ったことのある西田優征(矢本悠馬)、和のものを心から愛する大江奏(上白石萌音)、頭脳派オタクの駒野勉(森永悠希)を次々に勧誘。 
遂には、しばらくかるたから離れていた太一も入部することになる。
瑞沢高校競技かるた部は、全国大会目指して東京都大会にエントリー。
大会は全員が闘う団体戦、未経験者を抱える瑞沢は苦戦しながらも勝ち上がってゆくのだが、遂に全国レベルの強豪、北央高校の高い壁が彼らの前に立ちはだかる・・・


第一部の「上の句」は、真ん中ド直球、王道の青春映画である。
この話の主人公は、物語の視点でもある野村周平演じる太一。
彼は新や千早に比べると才能に恵まれている訳でもなく、子どもの頃かるたをとっていたのも、かるたが好きというよりも千早への恋心ゆえ。
高校を瑞沢に決めたのも、最近疎遠になってしまった彼女がここへ進学すると聞いたから。
誰もが聞いたことはあるけど、実際どうやるのかは良く知らない百人一首の競技かるた。
映画は、しばらくかるたから離れていた太一の視点で、奥深い競技かるたの世界に入ってゆき、彼らの部活を通じて自然にルールが理解できるようになっている。
そして何よりも、これがスポーツであることを実感させるのは、その激しさである。
極限まで集中力を高め、詠み手の言葉が音になる前に聞き分けて、一瞬の差でかるたをとる、というよりも弾き飛ばす。
これを勝負がつくまで何十回もくりかえすのだから、そりゃあ精も根も尽き果てる訳だ。

試合の勝敗は、相手の陣内にかるたが残って、自陣のかるたが無くなったら勝ち。
お互いの陣内にそれぞれ一枚だけ残った状態、つまり次の一手で勝敗が決まる状態を、「運命戦」というのだそうな。
詠まれるのが自陣のかるたなら、抑えるだけでいいので十中八九勝負はつく。
だから運命戦の勝敗は殆ど時の運と言えるのだが、太一はある時から運に見放されてしまっている。
小学生の頃、新と対戦した太一は、千早にいいところを見せたくて、卑怯な手を使って勝ったことがあり、その罪悪感をいまだに引きずっているのだ。
端的に言えば、「上の句」は子供の頃の行為でトラウマを抱えてしまった太一が、再び千早とかるたをとる日々を通して葛藤し、自ら犯した罪に決着をつける話である。
上手いのは、競技かるたと登場人物の青春をほぼイコールというくらい密接に描いていることで、それぞれの思春期の葛藤が、即ちかるたの選手としての苦悩にリンクしていること。
だからパワフルな団体競技の勝利のカタルシスが、そのままそれぞれの葛藤の解消と人間的な成長に直結し、見守ってきた観客に大きな満足を感じさせる。
「ちはやふる」はジャンプ漫画じゃないけど、「上の句」はまさしく「友情・努力・勝利」を描いた王道の青春ストーリーなのである。

ところが「下の句」になると、映画はガラリとその作りを変えてくるのだ。
物語の入り口の視点は「上の句」同様太一だが、彼の抱えていた葛藤はほぼ解消してしまっているので、徐々に千早と新の新たな葛藤にシフトする。
正確に言えば、明確に太一をフィーチャーしていた「上の句」に対し、「下の句」は幾つもの視点がクロスする、より複雑な構造になっているのだ。
描かれるのは、なぜ自分たちはかるたをするのか、いったい何を目指しているのかという根本的な問いに対し、お互いに影響し合いながら、それぞれの答えを出すまでの物語。
かるたの最高位である名人を祖父に持つ新は、いつか祖父に認められたいと思ってかるたをしてきたが、祖父の死で目的を見失う。
一方の千早は、最強のライバル若宮詩暢の登場で、自分の中でかるたの持つ意味が変わるのを感じている。
松岡茉優が、堂々たるボスキャラ感を漂わせて演じるこのキャラクターは、本作の白眉であり要石的な重みを持つ重要な存在。
彼女にとっても、代表作になったのではないか。

そもそも千早がかるたをとり続けていたのは、離れていても新や太一と繋がりを保っているため。
人との繋がりのためのかるたゆえに、高校でもかるた部を作った。
しかし、圧倒的な強さを誇る若宮詩暢は一匹狼。
千早は勝つためのかるたと、繋がるためのかるたの間に迷ってしまうのだ。
「上の句」で知った仲間と共に努力して闘い、勝つ喜び。
それに対して、若宮詩暢の様にひたすら自分を追い込み、至高の一点のみを追い求める喜び。
人生とかるたの意味に悩む千早と新の姿に、國村隼演じる原田先生の格言が染みてゆく。
「個人戦こそが、本当の団体戦」「かるたをとる理由は一つでなくていい」
かるたで生じた悩みは、結局かるたが解消する。
千早は若宮詩暢との死力を尽くした闘いで、逆説的に繋がる喜びを再発見し、そんな千早の姿を見て、新はかるたをとる意欲を取り戻す。

「下の句」で描かれていることは、皆が一致団結して出した「上の句」のシンプルな結果の先にあるものであって、枝分かれしている分より深く複雑だ。
映画は「上の句」の冒頭と「下の句」のラストを、未来のある場面の括弧で閉じる事で、一つの固まりとして融合させているが、逆にそれが綾瀬千早と仲間たちの物語が、映画で描かれた後もまだまだ続いてゆくことを示唆して、「下の句」には未完結のモヤモヤがやや残る。
まあ、それはやむを得ないだろうなあ・・・と思っていたら、突然の続編の発表である。
もちろん「上の句」の興業的成功を受けての事なのだろうけど、これは小泉監督としては初めから狙っていたのではないか。
だとすると「下の句」は二部作の完結編ではなく、三部作の真ん中、つまり「帝国の逆襲」であったのだ!
本当の完結編となるという、「ちはやふる」第三部が今から待ちきれない。
もっとも、続編も二部構成で、計四部作という可能性もあるけど。

今回は、かるた全国大会の舞台となる近江神宮に程近い大津の地酒、平井商店の「浅茅生 純米酒」をチョイス。
純米酒らしい柔らかな米の香り、あっさりとした喉ごしが特徴的な、CPの良い酒だ。
ちなみに銘柄の浅茅生は、百人一首の第39番の参議等が詠んだ 「浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき 」に出てくる言葉。
「茅の生えた野原の篠原、その「しの」のように、私は恋心をしのんでいましたが、想いがあふれて、なぜこんなにも貴女のことを恋しいのでしょうか。 」という意味の恋の歌だ。

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