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ヘイル、シーザー!・・・・・評価額1600円
2016年05月23日 (月) | 編集 |
虚構の街の狂想曲。

ケネス・アンガーの著書「ハリウッド・バビロン」を思わせる、コーエン兄弟のメタ的ハリウッド論。

舞台は1950年代、ジョッシュ・ブローリンが好演するエディ・マニックスは、キャピトル映画制作部のエライ人だが、MGMのスタジオ・エグゼクティブだった同姓同名の人がモデル。
スーパーマン役で知られる、ジョージ・リーヴスの自殺の真相をモチーフとした「ハリウッドランド」で、ボブ・ホスキンスが演じた業界のフィクサーだ。

スタジオの命運を賭けた大作映画、「ヘイル、シーザー!」の主演スターが誘拐された事件を発端に、ありとあらゆる問題が噴出、全ての尻拭いをしなければならないマニックスは、ふと自分の人生を見つめ直す。
陽の当たらない裏方仕事はめちゃくちゃ大変だし、家族との仲もギクシャクしていて、もっと稼ぎの良い業界からはヘッドハントされている。
なのに、「なんで自分は映画なんてやっているのだろう?」と。

日々沢山の映画が作られている夢の工場、ハリウッド。
キャピトル映画のエディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)は、今日もスキャンダルのもみ消しや、あちこちの現場で起こるトラブルの解決に忙しい。
敏腕のマニックスの元には、航空機メーカーのロッキード社から破格の待遇で引き抜きの話も来ているが、どうしても映画業界を去る踏ん切りがつけられずにいた。
そんな時、撮影中の大作「ヘイル、シーザー!」の主演スター、ベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐され行方不明に。
主演スターの不在が続けば、製作費は膨れ上がり、スタジオは窮地に追い込まれる。
事件の解決を急ぐマニックスだが、その間にも様々な苦情やトラブルが舞い込んできて、彼はカオスの縁に追い詰められてゆく。
その頃、海辺の豪邸で目を覚ましたウィットロックは、自分を誘拐したコミュニストの脚本家たちと、経済の議論に明け暮れていた・・・



スタジオで撮影されている“どこかで見た様な”数々の映画が可笑しい。
作品もキャラクターも全部現実のモデルがいる。

スカーレット・ヨハンソンが「水着の女王」のエスター・ウィリアムなのは分かりやすいが、他はいくつのかの作品や人物をミックスしてアレンジを利かせているもよう。
表題作の「ヘイル、シーザー!」は「クォ・ヴァディス」や「聖衣」といった史劇スペクタクル、誘拐されるジョージ・クルーニーはロバート・テイラー、カーク・ダグラス、ヴィクター・マチュアあたりか。
どこか「マジック・マイク」ライクな水兵役で、華麗なタップを決めるチャニング・テイタムは、「踊る大紐育」のジーン・ケリーで、歌えるカウボーイのオールデン・エアエンライクは、「アニーよ銃をとれ」で知られるハワード・キールっぽい。
他にも某アカデミー賞監督や、著名な双子のコラムニストなど、マニア心をくすぐるキャラクターが山ほど登場する。

もちろん、これらは単なるパロディではない。
史劇スペクタクルやミュージカルは、新興勢力のテレビに対抗するために、各映画会社が映画館でこそ映えるものをと力を入れいてたジャンル。
古代ローマの実力者が全く新しいキリストの教えに触れる「ヘイル、シーザー!」は、これから斜陽に向かう“虚業”の映画界から“実業”の航空産業へのヘッドハントを受け、人生設計に悩む主人公の葛藤の暗喩になっている。
また50年代は、黄金時代のハリウッドが最後の輝きを放ったのと同時に、冷戦を象徴するマッカーシズムの風が吹き荒れ、多くの映画人が弾圧された暗黒の時代。
ジョージ・クルーニーを誘拐する“コミュニストの脚本家たち”は、議会の非米活動委員会での証言を拒否し、議会侮辱罪で有罪判決を受けた、いわゆる“ハリウッド・テン”の面々がモデルだろう。
面白いのは、コーエン兄弟が彼らのキャラクターを使って描くのが、ハリウッドの経済であるということ。
従来ハリウッド・テンは、言論の自由や個人の信念というマジメな視点で語られることがほとんどだったが、本作は興行収入を現場の映画人に還流せずに資本家が吸い上げる、ハリウッドのシステムへのアンチテーゼとして扱われている。
元々冷戦は資本主義と共産主義という経済システムの対立だった訳で、突き詰めると金の話になるのだけど、共産主義の理想を語るハリウッド・テンが結局ソ連からも見捨てられ、文字通り波間に漂っちゃうのがコーエン兄弟流のシニカルさ。

もっともこれらの凝ったエピソードは、虚実がシームレスに入り混じる映画界という不思議な社会を形作るディテールに過ぎない。
本作を端的に言えば、50年代のハリウッドという戯画化された世界を背景に、映画人生に迷った一人の中年男がミドルエイジクライシスを乗り越え、生き方の決意をするまでの物語。
冒頭から何度も教会を訪れては、会社の誰にも言えない心情を牧師に告白している主人公が、最後に告げる言葉には思わず胸を熱くさせられた。
嘘だらけ変人だらけの業界は、バカバカしくヤクザな商売ではあるものの、言葉のみならず人々に光で綴った物語を届けられる映画は唯一無二。
たとえ虚業であろうが、他のものでは代用の効かない魅力が確かにあるのだ。
コーエン兄弟は、最近は脚本家としてヘビーな作品が続いていたが、こちらは肩の力が抜けたライトなコメディ。

まあ、色々と含ませた結果、ややとっ散らかった印象になってしまったものの、「とりあえず俺たち映画好きなんだよね・・・」という作者の想いが一番伝わってくる、微笑ましい佳作だ。


しかし、これは全く万人向けの映画ではない。
いわば究極の内輪話なので、元ネタとなっている人物・作品・事件がわからないと、単なる賑やかしにしか見えず、作者が何を描こうとしているのか全く理解できないだろう。

少なくともこの時代の映画をある程度観ていて、アメリカ現代史の最低限の知識がある人向け。

一般のお客さんは完全に置き去りだけど、例えば映画検定とかを受けているマニアには、最高に楽しい映画なのではないだろうか。

今回は、夢工場ハリウッドの映画ゆえ「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジ・キュラソー20ml、ベルノ1dashをシェイクして、グラスに注ぐ。
オレンジ・キュラソーの爽やかさと、ブランデーのコクは相乗効果抜群。
以前はペルノではなく、ドラック成分のあるアブサンが使われていたが、それもなんとなくアンダーグラウンドなハリウッドっぽい?

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