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神様メール・・・・・評価額1700円
2016年06月02日 (木) | 編集 |
いっそ世界をリセットしよう!

いかにも曲者のジャコ・ヴァン・ドルマル監督らしい、一筋縄ではいかない作品だ。
どこかモンティパイソンを思わせるシュールでシニカル、それでいて詩的なファンタジー。
「神様ってひどい奴だよね」って、この死と破壊に満ちた世界に生きる者なら、誰もが一度は思ったことがあると思うが、本作はその通りに癇癪持ちでサディストの神を造形。

虐げられた神の娘が反乱を起こし、人類一人ひとりに余命を知らせてしまったことで、世界が変わってゆく。
原題「Le tout nouveau testament」は「新・新約聖書」の意。
人間界にやって来た神の娘は、嘗て兄のキリストが試みたように、彼女の元に集う使徒によって現代人のための新たな福音書を記そうとしているのである。
※核心部分に触れています。

神(ブノワ・ポールブールト)は、初めにブリュッセルを作った。
いまもこの街の高層アパートの一室に住み、パソコンで世界の運命を操っている。
だが、10歳になる神の娘エア(ピリ・グロワーヌ)は、好き勝手に人間界をいじくり、人々に不幸にして楽しんでいる父親が大嫌い。
傲慢な神は、家の中でも母の女神(ヨランド・モロー)やエアのことを奴隷のように扱っている。
そんな暮らしに嫌気がさした彼女は、人間たちを運命から解放するため、神が居眠りしているうちに、彼のパソコンを操作して全人類に余命を知らせるメールを送信。
さらに兄のJCことキリストに勧められ、新たに使徒を6人選び「新・新約聖書」を記して、人類を救済すために人間界に下る決意をする。
洗濯機のトンネルから地上へと出たエアは、6人の使徒を探して旅に出る。
一方、エアが人々に余命メールを送ったことに気付いた神は、彼女を捕まえるべく後を追うのだが・・・


ベルギーの映画だし、神の息子がジャン・クロード・バンダムと同じイニシャルのJC(イエス・キリスト)だったりするので、一応キリスト教の宗教観に基づいている様だが、本作の神はとりあえず全知全能ではないっぽい。

神はパソコンを使って世界を動かしているが、機械音痴ゆえにエアに悪戯されてパソコンをエラーにされると何も出来ない。

そもそも誰がパソコンを作ったのかというのも謎だし、ここではパソコンは神の上位存在であり、実はパソコンが神を使役しているとも言える。
それで彼がなにをしているかと言えば、年がら年中ビールを飲んで酔っ払い、人間たちを神の名のもとに戦わせたり、「パンが落ちるときはジャムの面から」とか「浴槽に浸かったとたん電話がかかってくる」とかバカバカしい法則を作っては困らせたり、ろくでもないことばかりだ。
家族に対しても態度は酷く、寝ている間にエアが余命メールを送ったことに逆上し、「シャイニング」のジャック・ニコルソンよろしく、斧で娘の部屋のドアをぶち破ったりする壊れっぷり。

エアが人々に余命を知らせるのは、傲慢な神によって握られている運命から解放するため。
自分の運命を知らないからこそ、人間は死を恐れ、神に縋ろうとする。
だが、もしも逃れられない死がいつ訪れるのか、全ての人が知っているとしたら、神はそれほど必要とされなくなるだろう。
正確な死期を悟った人間たちの反応は様々。
メールを受け取った瞬間死んじゃう人がいたり、逆に余命がある間は何をしても死なない訳だから、飛び降りたり爆発したり無謀な挑戦を繰り返すユーチューバ―がいたり、自分が障がいを持つ子供より早死にすることに悲観する母がいたり。
もし自分だったらどうするだろう、どのくらいの余命がほしいだろうかと、つい考えてしまう。
まあ、あまり長くてもそれはそれで苦しそうだから、最低二けたくらい残っていればとりあえずは納得できるかな。

エアが出会う6人の使徒たちも、それぞれに余命を知る。
嘗て事故で片腕を失った孤独な美女、オーレリーは11年6カ月27日。
余命を知ったことから、なぜか保険屋からスナイパーに転職したフランソワは25年3カ月8日。
彼はオーレリーを撃ったことから、不思議な恋に落ちる。
セックス依存症のマルクは預金を全て風俗につぎ込んで、83日の余命を生きようとするが、ひょんなことから自分の性癖の切っ掛けになった女性と再会する。
自分に無関心な夫に愛想を尽かしたマルティーヌが、残り25年2ヵ月17日のパートナーに選んだのは、心優しいサーカスのゴリラ。
この有閑マダムとゴリラの恋は、明らかに同じ設定の大島渚監督の「マックス、モン・アムール」へのオマージュだろう。
まああれはゴリラじゃなくてチンパンジーだけど。
世評は高くないけど、本作にも通じるすっとぼけた味があって結構好きな作品だ。
12年9カ月5日の余命を持つジャン=クロードは、友達になった鳥を追って北極圏へと旅をする。 
そして、最年少のウィリーは、余命も一番短い54日。
トランスジェンダーである彼は、最後の日々を女の子として過ごすことを決める。
それぞれの物語に立ち会うエアは、人間たちの心の音楽を聴き、余命を知ったことでそれまでの世界から逃れ、異なる人生を歩み出した6人のユニークな人生模様が、新たな福音書となることを見届けるのである。

新たな使徒が6人なのは、キリストが集めた12人と合わせて18人とするため。
「18」は母の女神が好きな数字だから、18人がそろえば母が何か行動を起こすはず、とエアは思っている。
ならば、無口で野球カードと刺繍が大好きで、最悪な夫に虐げられている女神は何者なのか。
そもそも一神教の神は一人であって、二人いるのならそれは多神教である。
女神はたぶん、一神教が広まる以前、世界中の人々に信仰されていた豊穣をもたらす地母神なのだろう。
今はなぜかエアの部屋で置物になっているJCが、使徒集めを途中でしくじったおかげで「神は一人で男の姿をしている」という概念が固定化してしまったので、調子に乗った神は女神の声を封じ、世界をわがものにしているのである。
彼女が古の女神なのは、パソコンが彼女に「久しぶり」と呼びかけることからもうかがえる。
本作で神を象徴する旧約聖書は、キリストの(作りかけた)新約聖書とは様々な点が矛盾するが、人々はそれを色々な宗教的解釈をすることで正当化してきた。
本作は、この矛盾こそが世界を混乱させているのでは?世界には矛盾を解消する「新・新約聖書」が必要なのでは?と説く。
傲慢で役立たずの神より、サイケなセンスの女神と勝ち気な娘の方がマシ。
エアが18人を集めたことによって、遂に女神は神が好き勝手に壊した世界をリセットし、改良しはじめるのだが、このシークエンスのビジュアルイメージは相当にトリップ感があって楽しい(笑
一神教の父権制から、多神教の母権制への回帰を思わせる展開は、日本で観れば単にシュールなファンタジーだが、キリスト教圏では相当に刺激的な内容だろう。

身分証をもっていない神が、不法移民と間違えられてウズベキスタンに送還されちゃうのもシニカルで可笑しい。
ベルギーはイスラム圏からの移民が急増し、いずれベルギスタンというイスラム国家になるのではないかと言われているくらい。
キリストの神もイスラムの神も、あがめる人が違うだけで元々同じ存在だから、本来神にとってはどっちでも良いはずという皮肉なのだろうな。

今回は、ビールばっかり飲んでいるベルギーの神の話だから、同じくベルギー生まれの“悪魔のビール”「デュベル」をチョイス。
泡立ち良く、スムーズなのど越しが特徴の美味しいビールだが、完成した時は第一次世界大戦の戦勝を記念して「ビクトリー・エール」と名付けられていたという。
ところが、試飲会で飲んだ一人が「このビールはまさに悪魔だ」と言ったことから、悪魔を意味する「Duvel」に銘柄が変更されたとか。
ベルギーには神と悪魔が両方いるのだな(笑
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