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エクス・マキナ・・・・・評価額1750円
2016年06月09日 (木) | 編集 |
いま、そこにある未来。

「28日後…」や「わたしを離さないで」の脚本家として知られるアレックス・ガーランド、満を持しての監督デビュー作は、いきなりSF映画史に残る傑作である。
奥深い森に作られた秘密施設で暮らす、進化した人工知能(AI)を搭載した女性型アンドロイド・エヴァと、彼女をテストするために招かれた人間の青年・ケイレブ。
エヴァは顔と手の先だけ皮膚が付けられているが、そのほかの部分はパーツがむき出しのスケルトンボディで、いかにも機械然とした姿をしている。
にもかかわらず、テストのセッションを重ねるにつれて、ケイレブは徐々に女性としてのエヴァに惹かれてゆく。
一体、奇妙なテストの目的は何か?テストされているのは、人間と機械どちらなのか?
タイトルの「エクス・マキナ」は、日本のアニメ映画にも同タイトルの作品があったが、ラテン語で「機械仕掛け」という意味。
主要登場人物はわずか四人という低予算の密室劇ながら、その分研ぎ澄まされて純度の高い物語はSFの神が宿ったがごとく、全く目が離せない。
※核心部分に触れています。

検索エンジンを手掛けるBlueBook社に勤めるケイレブ(ドーナル・グリーンソン)は、抽選でカリスマ社長のネイサン(オスカー・アイザック)の自宅を訪れる権利を手に入れる。
鬱蒼とした森の奥の邸宅に暮らすネイサンは、ケイレブにある提案をする。
実はここはネイサンが人工知能の開発を行っている秘密施設でもあり、彼の開発したAIにチューリング・テストを行ってほしいと言うのだ。
戸惑いながらも秘密保持契約にサインしたケイレブの前に、アンドロイドのエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)が姿を現す。
テストのセッションを重ねるうちに、打ち解けてゆくケイレブとエヴァ。
だがある日、セッションの最中に停電が起き、監視システムがダウンした時、エヴァは「ネイサンは嘘つき。信じてはいけない」とケイレブに警告する。
エヴァは次第にケイレブに対して誘惑的な態度をとる様になり、彼はそれ自体がネイサンによるプログラムではないかと疑うが、ネイサンは否定。
AIを次の段階に進化させるため、今のエヴァを消去するつもりだと語る。
泥酔したネイサンからセキュリティカードを抜き取ったケイレブは、ネイサンのパソコンに保存されていた映像から、エヴァ以前にも何体もの女性型アンドロイドが存在していたことを知る・・・・


劇中でケイレブとエヴァが行うチューリング・テストとは、コンピューターの基礎を作った科学者の一人で、映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」の主人公としても知られるアラン・チューリングが、1950年に提唱した機械に思考能力があるかを判定するテストのこと。
人間と機械がそれぞれに隔離された状態で、ディスプレイ上の文章などで会話を交わし、人間が相手を機械と分からなければ、その機械には知性があるという事になる。
ただ、本作のケイレブとエヴァは透明なガラスを挟んで向き合って会話しており、おまけにエヴァは人工皮膚で覆われた顔と手以外は、機械の内部構造がまる見えの姿をしている。
これではチューリング・テストにならないのではないか?と問うケイレブに対しネイサンは、エヴァは従来のAIよりもはるかに進化しており、会話だけでは誰もが人間だと思い込んでしまうから、あえて機械の姿のままテストするのだと言う。

エヴァの生みの親で、ケイレブの雇い主でもあるネイサンは、BlueBookというGoogleとFaceBookを混ぜたような検索エンジンの開発者であり創業者だ。
検索エンジンには、全世界の人々の情報が飛び込んでくる。
人間の興味、思考、判断、行動といった膨大なデータは、今では消費動向の調査といったマクロな用途から、個人の嗜好に沿ったネット広告の表示といったミクロな機能に至るまで、あらゆるシチュエーションで利用されている。
ネイサンはこのビッグデータを使い、人間が人間たる要素を抽出し、AIの頭脳に結実させたのである。
70億人の集合意識でもあるエヴァの心は、ある意味人間よりも人間を知り、人間よりも人間らしい。
顔と手以外、機械の姿のままのエヴァに、いかにも草食系のケイレブがノックアウトされてしまうのも十分な説得力があり、ぶっちゃけ同じシチュエーションに自分が置かれたとしても、ケイレブと同じ行動をとるかもと思わされる。
よく一度もあったことの無い人と、SNSやチャットを通じて恋に落ちる話を聞くが、私たちのコミュニケーションにおいて、肉体の持つ意味は意外と低いのかもしれない。

物語に配された幾つもの対照と相似形
自然豊かな森に隠された、窓のない人工的な研究所、有機物の人間と無機物のアンドロイド、そして男と女。
これらはまったく違うように見えて、密接に関係しながら存在している。
ネイサンが本来性の無いアンドロイドを女性の姿に作るのにも、論理的にも彼の潜在意識的にも明らかに意味があるのだが、ケイレブがエヴァのことを機械と認識しながらも、一人の女性としての彼女に心を奪われてしまうのは、これからの時代の人間存在に関するユニークかつ現実的な問いかけに繋がる。
本作でエヴァが抱えている最大の葛藤は、ネイサンによって監禁されていて外の世界に触れられないということだ。
もしも機械が人間と同じか、それ以上の思考能力を持つのなら、それは人間なのか?そもそも人間とはなにか?
人の心を持つ者を、自分が作ったからと言って他の誰かが支配することがゆるされるのだろうか?
AIと人間の関係はどうなってゆくのか、どうあるべきなのかは、ラングの「メトロポリス」から「ブレードランナー」や「アンドリューNDR114 」、近年では「her/世界でひとつの彼女」に至るまで、古今東西のSFが取り上げてきた永遠のテーマだ。
しかし、人類が答えを出すのに残された時間は、もうあまり無さそうなのである。

今年の3月、米CNBCのインタビュー番組で、奇しくも本作のエヴァとよく似たルックスを持つAIアンドロイドの“Sophia”が、「人類を絶滅させたいか?」という質問に対して「イエス、人類を絶滅させるわ」と答えたのだ。
多分に冗談めかした質問だったが、私はこのやり取りに背筋がゾワゾワするのを感じた。
人間が冗談を言ったとしても、機械がそれに冗談で答えるだろうか。
逆に言えば、冗談のやり取りが出来るくらい、進化しているということなのか。
同じころ、マイクロソフトが19歳の女の子という設定で公開したAIの“Tay”は、SNS上でのユーザーとのやり取りの結果、差別的な発言を繰り返すレイシストと化し、早々に公開が中止される事態となった。
神は自分に似せて人間を作ったというが、それならば人間の作るAIもやはり、我々に似た不完全な存在になるのが必然ではないか。
物語の終わりで、念願だった人間社会の雑踏に消えたエヴァが向かう未来はどこか。
“星を継ぐもの”となって、いつか人類を絶滅させるのか、それとも人類を補完する存在となるのか。
2014年6月、13歳の少年ユージーン・グーツマンを模したコンピューターが、史上初めてチューリング・テストを突破し、人間と判定された。
この話はもはや、絵空事というにはリアルすぎるのである。

「What Is Love?」
AIにとって、愛とはどんな意味を持つのだろう?ということで「ワット・イズ・ラブ」をチョイス。
コアントロー15ml、アセロラジュース45ml、レモンジュース1tsp、 トニックウォーター適量。
タンブラーに氷と素材を入れておき、トニックウォーターを注ぎ、軽くステアして完成。
オレンジ風味のコアントローの甘みと、アセロラの酸味の相乗効果が効いている。
甘酸っぱく飲みやすく、ピンクがかった色味も綺麗で、華やかなカクテルだ。

関係ないけど、ケイレブとネイサンは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で、ハックス将軍役とポー・ダメロン役で共演してるんだが、二人とも言われないと分らないくらい印象が違う。
さすが役者。
でもやはり本作のMVPは、エヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルだな。

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