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ファインディング・ドリー・・・・・評価額1700円
2016年07月20日 (水) | 編集 |
みんな、どこかが欠けている。

ディズニー・ピクサーの追求する多様性の世界、再び。
13年前に大ヒットした「ファインディング・ニモ」の1年後を描く続編で、世界観・キャラクターはほぼ共通。
今回は、カクレクマノミのマーリン、ニモ親子の親友である、ナンヨウハギのドリーが主人公となり、彼女の記憶の中の両親を探してオーストラリアから遥かカリフォルニアへと、三匹が大冒険の旅に出る。
監督・脚本は、前作から続投のアンドリュー・スタントン。
残念ながら大コケしてしまった実写進出作「ジョン・カーター」を挟んで、スタントンのアニメーション作品としては「WALL・E / ウォーリー」以来8年ぶりとなる。
様々な生き物たちが行き交うワクワクする海の世界を背景に、極上の娯楽性と深い社会性を併せ持つ秀作であり、子供を持つ親にとっては、夏休みに子供たちを連れて観に行くのにこれほどふさわしい作品もなかろう。
※核心部分に触れています。

行方不明になったニモを探す冒険から1年。
忘れんぼのドリー(エレン・デジェネレス)は、ある夜子供の頃の夢を見る。
翌日、ちょっとした事件によって記憶を一部取り戻したドリーは、生き別れの両親を探すために遥か1万キロ彼方のカリフォルニアに行くと言いだす。
なりゆき上、マーリン(アルバート・ブルックス)とニモ(ヘイデン・・ローレンス)も旅に付き合うことになり、三匹は回遊するウミガメの背中にのって太平洋を北上。
ところが目指すカリフォルニアのモロベイにやって来た時、ドリーは水族館の海洋生物研究所の職員に捕獲されてしまう。
自分が生まれたのは、どうやらこの水族館だということを思い出したドリーは、海に戻るのを拒否してクリーブランドに行きたがるミズダコのハンク(エド・オニール)や、ドリーの幼馴染だというジンベイザメのデスティニー(ケイトリン・オルソン)に助けられ、両親がいるはずの水槽を目指す。
一方、ドリーとはぐれたマーリンとニモは、鳥のベッキーに運んでもらい、水族館に侵入しようと悪戦苦闘を繰り返すのだが・・・・



うだるような暑さの中、陰鬱な政治の季節から現実逃避するつもりで観たら、ある意味すごく現実的な話だった。
ドリーが物忘れしやすいという設定なのは覚えていたものの、てっきり彼女の“種”の特徴だと思い込んでいたが、然にあらず。

彼女は生まれながらの記憶障がい者なのだ。
ドリーだけでなく、本作の登場キャラクターは、ことごとく何らかのハンディキャップを持っている。
ジンベイザメのデスティニーは、弱視で水槽に頭をぶつけてばかり。
そのまた友達の白イルカのベイリーは、頭を怪我したことでイルカの音波探知機能、エコロケーションを使えなくなったと思い込んでいる。
ドリーを助けるミズダコのハンクは、人間の子供たちに脚を一本引きちぎられて、七本しかない。
魚たち以外にも、マーリンとニモを水族館へ運ぶ鳥のベッキーや、マーリンに入れ知恵するアシカたちの中でジェラルドと呼ばれている一頭は、何らかの知的障がいがあるように見える。
この傾向は本作で始まったことではなく、そもそも前作のタイトルロールであるニモも、片方の胸ヒレが小さく泳ぎが上手くないというハンディキャップがある。

近年のディズニーとピクサー、同一グループの二つのアニメーションスタジオは、良い意味でお互いに刺激し合っている様に見える。
春に公開されたディズニーの「ズートピア」は、知性を持った動物たちの世界を舞台に、本当の意味で「誰でも何にでもなれる世界」とは何かを問い、反差別というテーマを打ち出した極めて政治的な野心作だった。
対して、ピクサーが制作した本作が描くのは、ハンディキャップとの共生とお互いを想う親子の心の尊さだ。
この世界では、ほとんどの主要キャラクターに何らかの障がいがある一方で、それぞれが人とは違う何かを持っている。
例えば、ドリーは記憶障がいがあるが知能は非常に高く、人間の言葉も読めるしクジラ語も話せる。
ミズダコのハンクは、脚の数は足りなくても魚と違って水から出ても活動することができる。
それぞれに欠けた部分と秀でた部分のある彼らは、お互いに助け合うことで困難を克服してゆくのである。

ここで、本作の主要キャラクター中で、数少ない健常者であるマーリンの存在が重要になってくる。
彼は元来が生真面目なのに加えて、唯一の家族であるニモを失いかけた経験から慎重な性格になっていて、息子に対しては過保護に世話を焼き過ぎ、他人のやることはあまり信用しない。
その硬直した独善性ゆえ、良かれと思って行動した結果、かえって事態を悪化させてしまったりするのだ。
彼の思考は、ハンディキャップを持つ者に対する、マジョリティの善意の無理解を象徴する。
マーリンの対となるのが、生き別れになったドリーの両親だ。
記憶障がいを持ったドリーのために、二人は彼女が迷子になっても帰ってこられるように、貝殻を目印に家に帰る方法を教える。
ドリーがいなくなった後も、彼女の帰りを待ち続けた両親のスタンスは、過保護に成り過ぎずあくまで娘のことを信じるというもの。
もちろん、大切な人(魚)を心から想う気持ちは共通。
石頭のマーリンも、ドリー一家の再開を目の当たりにし、息子ニモの天真爛漫で素直な心に救われ、相手を信じることの大切さを改めて知るのである。

仲間や家族の絆と信頼というテーマは前作を踏襲したものと言えるが、陸海空を駆け巡る大活劇を通し、以前は隠し味的だったハンディキャップの要素を前面に出して、無理なく深化させているのはさすが。
そしてこれも、主人公が男性から女性に変わった。

前作ファンの期待する世界観やキャラクターのポイントをきちんと抑えながらも、前作との間にある13年の時代の変化はしっかりと反映されており、大人も子供も、それぞれの視点で楽しめる実に夏休みらしい娯楽映画だ。

ピクサー作品は、いつも現実をベースに巧みにアレンジを利かせた世界観が見どころのひとつだが、今回の舞台はサンタバーバラの北に位置する風光明媚なモロベイ。
だが実際にはここに水族館は無く、モデルになっているのはモロベイから200キロほど北にあるモントレー・ベイ・アクアリウムだ。
ヒューレット・パッカードの創業者の一人、デービッド・パッカードが海洋生物学者の愛娘を代表に、私財を投じ缶詰工場を大改装して設立した水族館。
映画のものほど大規模ではなくジンベイザメなどはいないが、ロケーションや海側から見た建物は良く似ているし、太平洋の海を模した巨大水槽や、ハンクのトラウマである子供たちが直に海洋生物に触れられるタッチプールなどは実在する。
本作のスタッフはここに足繁く通って、水族館の構造からカリフォルニア沿岸の海中の様子まで、多大なインスピレーションを受けたという。
1984年の開館以来、地元の自然を再現したユニークな展示方法は、世界中の水族館に影響を与えており、訪ねて損は無いおススメの観光地だ。


同時上映の「ひな鳥の冒険」は、秀作揃いのピクサー短編の中でも圧倒的に素晴らしい。

ひょんなことから、海に対してトラウマを抱えてしまったイソシギのひな鳥の、ささやかな成長物語。

未知の体験に世界が一気に広がる喜びが、スクリーンから説得力たっぷりに伝わってくる。
デジタル技術の発達が可能にしたリアリズムとファンタジーの絶妙のバランスは、過去には不可能だった現在ならではの表現。

これを観るためだけでも劇場に行く元はとれる、傑作短編アニメーションである。
ちなみにこの鳥もモントレー・ベイ・アクアリウムの、水辺の自然を再現したコーナーで見ることができる。

今回は、タイトルロールのドリーから「ブルー・レディ」をチョイス。
ブルー・キュラソー30ml、ドライ・ジン15ml、レモン・ジュース15mlに卵白1個分を加え、しっかりシェイクしてグラスに注ぐ。
目に鮮やかなブルーが南国の澄んだ海を思わせ、ブルー・キュラソーの甘味、ジンの清涼感、レモン・ジュースの酸味を、卵白が優しくまろやかにまとめ上げる。
見た目も美しく味わいも爽やかな、夏を演出する一杯だ。

ところで、これ吹替え版で観ると一番の衝撃は「八代亜紀」だと思う(笑
原語版だと「シガ二―・ウィーバー」なのだけど、彼女の日本版が八代亜紀というのはキャラのポジション的に何となく納得出来るような、出来かねるような・・・
いきなり「八代亜紀です」とかアナウンスされると、カリフォルニアの海が玄界灘に見えてくるのは狙いなのか何なのか(笑
シガ二―・ウィーバーがネタ化しはじめたのは、「宇宙人ポール」あたりからかと思ったが、良く考えたら「ウォーリー」で宇宙船のコンピューターの声をやったのが最初だったか。
その意味で、これはスタントンのセルフパロディなのだな。

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