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グッバイ、サマー・・・・・評価額1650円
2016年09月14日 (水) | 編集 |
背伸びするだけ、未来に近づく。

「エターナル・サンシャイン」「ムード・インディゴ うたかたの日々」など、ユニークな映像表現で多くのファンを持つミッシェル・ゴンドリー監督が、自らの原点を描いた半自伝的な青春ロードムービー
14歳の夏休み、個性を追い求めるアーティスト肌の主人公は、機械いじりの得意なクラスメイトと親友になり、廃品を集め手作りした“動くログハウス”で、広大なフランスを巡るグランド・ツーリングに出る。
旅立ちの動機は未知の世界への好奇心、日常の閉塞、そして幼い恋。

男の子なら誰もが記憶にある、少年時代の記憶の断片を散りばめた普遍的な物語で、思春期のビジョンクエストは、ワクワクする冒険の香りでいっぱいだ。
※ラストに触れています。

ベルサイユに住むダニエル(アンジュ・ダルジャン)は、絵の得意な14歳。
彼は女の子の様な可愛らしい風貌のために、クラスメイトからなにかといじられている。
ある日、ダニエルは転校してきたテオ(テオフィル・パケ)と出会う。
彼は目立ちたがり屋で、機械いじりが趣味のちょっと変わった男の子。
クラスでもちょっと浮いた存在の二人は、すっかり意気投合し、夏休みに日常から脱出するために、廃品を集めて実際に動く“車”を作り始める。
遂にやって来た夏休み、警察の目をごまかすために、一見すると小さなログハウスにしか見えないデザインで完成した車は、300キロ南の避暑地・モルヴァンを目指して走り始めるのだが・・・


これ好きだなあ。
14歳の夏、日本で言えば中二の夏休み。
中二病なんて言葉もあるが、何気に創作を生業にする人には、この時期に覚醒したというケースが多い。
ジェームズ・キャメロンは14歳でキューブリックにはまり、映画監督を志したというし、尾田栄一郎は中二で本格的に漫画を描き始めたのだそうな。
おそらくゴンドリーにとっても、この年齢は人生の分岐点だったのだろう。
まだ大人ではなく、かといってもう子供でもない。
境界の存在である14歳の少年の心は、未来への希望と不安が入り混じった漠然としたモヤモヤでいっぱいだ。
自分の可能性は無限で、何者にもなれるという根拠のない自信が湧き上がる一方で、結局何も出来ない大人になってしまうのではないかという悲観が顔を見せることも。

主人公で、作者の分身であるダニエルは、まさにそんな思春期の混沌の中にいる。
一見すると女の子に見える長いブロンドの美少年は、容姿をからかわれたくはないのだけど、他の少年たちの様なショートヘアにするのは「個性がなくなる」と拒否する。
彼は他の誰かと同じ、平凡な自分が嫌なのだ。
だから承認欲求が強く、早く特別な何者かになりたくて、描きためた絵でささやかな個展を開いたりもする。
たぶんクリエイター系の職業についている人の多くが、大なり小なりダニエルと似た少年時代を過ごしてきたのではないだろうか。
私もこんな美少年ではなかったけど、ちょっと自意識過剰で背伸びしがちな彼にはどっぷり感情移入してしまったよ。

当然、このキャラクターではクラスの中で浮いてしまうのだけど、ダニエルの場合は上手い具合に馬が合うテオと出会えた。
この二人、変わり者なのは同じだが、性格や家庭環境は対照的。
シングルマザーに育てられ、ロックな兄貴と歳の近い弟のいるダニエルは、プライドが高く、傷つくことが怖い、色々な意味でちょっと奥手。
一方、お調子者で物怖じしないテオの家庭は、母親は闘病中で子供に関心のない父は骨董商としてギリギリの生活。
互いに異なる葛藤を抱え、ちょうど凹凸の様に絶妙にかみ合った二人は、日常から脱出すべく二人の才能を組み合わせた車を作り始める。
廃品を集め、機械の部分はテオが主導して組み立て、警察の目をごまかすためのユニークなデザインはダニエル。
映像的にはわりと抑え目な本作だが、手作りの動くログハウスのワクワクするビジュアルは、まさにゴンドリーの世界。
子どもの頃に作った秘密基地の発展系で、あんなので旅をしたら最高に楽しそうだ。
テオみたいな器用な友だち欲しかったなあ。

二人の夢の車による冒険の波乱万丈も、あくまでも実際に起きそうな程度に抑えられているのも上手い。
大陸を巡るグランド・ツーリングは、ダニエルとテオにとって初めての誰からも束縛されない自由な時間、自由な経験
他人の庭に侵入しちゃったり、なぜか日本語が飛び交う怪しげな風俗店に入って“サムライカット”にされちゃったり、ロマ人のキャンプの近くに停めたばかりにヘイトクライムの巻き添えをくったり。
全て少年たちにとっては未知の体験で大いに刺激的だけど、決して荒唐無稽ではないのだ。
そして、ひと夏の冒険の終わりの日常への回帰は、ちょっとだけ成長した二人に、予期せぬ喪失と新たな旅立ちというちょっとビターな結末をもたらすのである。

本作はいわゆるバディものの構造を持っているが、基本の視点はあくまでゴンドリーの分身であるダニエルに置かれている。
彼の行動原理、そして旅の目的の根底に、同級生のローラへの恋心があるのも良い。
まだお互いの心の内を見抜くほど洞察力はなく、好きだからこそ行動する勇気も持てず、願望と妄想を募らせるだけ。
二人のさりげない心理描写の積み重ねがあるから、最後の最後に男女の視点を逆転させる描写のセンスの良さが際立つ。
旅の行程を恋路に見立てるのは、少年たちならぬ大人のグランド・ツーリングを描いたクロード・ルルーシュの「男と女」にも通じるフランスのエスプリ。
これはミッシェル・ゴンドリーの原点にして、この作家の良さがストレートに楽しめる作品で、今年公開の映画では「シング・ストリート 未来へのうた」と並ぶ、中二病映画の愛すべき佳作である。

今回は旅の目的地、モルヴァンが属するブルゴーニュ地方のワイン「サン・ブリ ドメーヌ・フェリックス&フィルス」の2014をチョイス。
ダニエルとテオも多分通りかかったであろう、サン・ブリ村を中心とした地域で作られる、ソーヴィニョン・ブラン100%のライトな白ワイン。
柑橘系の香りと、さっぱりとした喉ごしが楽しめる。
コスパも高く、普段使い出来る一本だ。

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