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2016年09月26日 (月) | 編集 |
愛した人のことを、本当に知っていますか?
「悪人」の、李相日と吉田修一のタッグ再び。
一件の殺人事件から始まる物語は、一年後に三つに枝分かれ。
東京、千葉、沖縄に忽然と姿を現した三人の男を巡る、オムニバス的な構成のミステリアスな群像劇が展開する。
タイトルの「怒り」の対象とは何か?
これは人が人を愛するときに生まれる、様々な感情の帰結する先を描く、非常にパワフルでヘビーな人間ドラマ。
渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、森山未来ら日本を代表する名優たち、そしてオーディションで役を掴み取ったという広瀬すず、佐久本宝らの新世代。
俳優たちの情念の演技が激突する時、えもいわれぬエモーションがスクリーンから迸る。
※完全ネタバレ。核心部分に触れています。
ある夏の日、八王子の民家で凄惨な殺人事件が起こる。
窓が閉め切られ、蒸し風呂のようになった浴室には、惨殺された夫婦の遺体と共に「怒」の血文字が残されていた。
犯人は顔を整形手術し、別人となって捜査の網を掻い潜り、逃亡を続ける。
そして一年後、千葉と東京と沖縄に、時を同じくして素性の知れない三人の男が姿を現す。
千葉では、家出して東京の風俗店で働いていた愛子(宮崎あおい)が父の洋平(渡辺謙)に連れ戻されて帰郷。
彼女は二ヵ月前にふらりとやって来て、漁港で働き始めた田代(松山ケンイチ)と出会い、恋に落ちる。
東京では、エリートサラリーマンの優馬(妻夫木聡)が、同性愛者の集まるクラブで直人(綾野剛)と関係を持つ。
優馬は過去を語りたがらない直人を家に迎え入れ、同棲を始める。
同じころ沖縄では、男関係でトラブルを起こした母と、逃れるようにして引っ越して来た高校生の泉(広瀬すず)が、無人島でバックパッカーの田中(森山未来)と鉢合わせする。
一年前の事件を追う警察は、整形後の手配写真を公開するが、その写真は三人の男それぞれに、どこかが似ていた。
千葉、東京、沖縄で、人々の心に疑念が湧き上がる・・・・
日本映画奇跡の年、2016年の傑作群にまた一本。
分かっていたけど、やはり李相日は凄い。
142分の長尺を全く感じさせない、ち密な筋立て、パワフルなテリングに圧倒された。
凄惨な殺人事件の一年後、日本の三か所に表れた三人の男を巡る三つの物語は、直接は交錯しない。
逃亡劇のモデルになっているのは、おそらく映画化もされた市橋達也事件だろう。
犯人の手配写真にどこか少し似ているということが発端となって、三人の男を愛する人間たちが、少しずつ疑念を募らせてゆくのだが、犯人探しのミステリの体裁は保ちながらも、描かれるのはむしろ、人を愛し信じることの難しさと尊さ、そして恐ろしさだ。
表面的な「面白さ」の奥底にテーマを潜ませるのは、殺人犯の逃避行をモチーフに、本当の悪人とは誰なのか?という人間社会の深層を描き出した秀作、「悪人」とも共通する。
独立した三つの物語は、それぞれが単独でも映画になりそうな濃密さ。
千葉に表れた“田代”は、漁協で働く洋平の娘、愛子と恋に落ちる。
このエピソードは、家出して歌舞伎町の風俗店で働く愛子を、洋平が連れ戻しに行くシーンから始まる。
8年前に洋平が妻を亡くして以来、父娘の間にはわだかまりが出来ているらしく、洋平はどこかで愛子を信じられず、彼女の様な娘は幸せになれないと思っている。
だから、愛子が田代と暮らしたいというと、驚きつつも受け入れるのだが、今度は手配書を見た愛子自身が、田代を信じられなくなってしまう。
人間は自分以外の存在をどこまで信じられるのか、愛の前に立ちはだかる大きな難問に、父娘は直面するのである。
東京を舞台に描かれるのは、同性愛者のカップルの物語だ。
大手企業に勤める優馬は、ある夜関係を持った“直人”を家に招き入れ、同棲をはじめる。
エリートであり、同性愛者であることもある程度オープンにしている優馬にとって、レジ袋の中で斜めになってしまった弁当を一生懸命直そうとする直人は、どこか頼りない守るべき存在。
しかし、素性を明かさない直人に、ある事が切掛けになり嫉妬心を抱き、次いで手配写真を見てしまったことで疑念にかられる。
時を同じくして直人が失踪。
突然警察からかかってきた電話に、彼が犯人である事を確信した優馬は、保身のために無関係を装うのだ。
優馬の愛は、嫉妬と猜疑心によって崩壊してしまうのである。
沖縄に表れた“田中”を巡る物語は、他の二つの物語と明確に構造が異なる。
千葉と東京の物語は、男と女、男と男の愛に関する物語だ。
しかし田中は、少なくとも恋愛の対象にはならない。
無人島でキャンプしていた田中と出会う泉は、男関係にだらしない母と、夜逃げ同然で沖縄にやって来た母子家庭の娘。
彼女が田中に対して抱いているのは、年上の自由な男性への憧れに似た感情だろう。
泉には、彼女に対して恋心を募らせている辰哉という同級生がいる。
三人が友だち関係になった時に、泉が辰哉の目の前で米兵にレイプされるという痛々しい事件が起こり、泉は心を閉ざしてしまうのである。
彼女を救えなかったことで自己嫌悪に陥った辰哉にとって、同じ罪を共有する田中の存在は救いであり、ある種の共犯者だと思っている。
だから辰哉が全ての真相を知った時、彼らの物語は残酷な結末に向かって、一気呵成に動き出すのである。
信じて欲しかった者は信じられず、信じるに値しない者が信じられてしまう悲劇。
それぞれの物語は完全に独立しているが、細切れ化ギリギリの巧みな編集構成と、話が切り替わりる時点で映像と音声をクロスさせ、ボイスオーバーを駆使することによって、全体を一つの作品とし、重層的なテーマを浮かび上がらせている。
タイトルの「怒り」は、殺人事件の犯人である田中が、この世の全てに対して抱いている抑えがたい感情であり、衝動だが、それは結局もっとも鋭いブーメランとなって彼に戻ってくる。
この感情がフィーチャーされるのは、三つの物語の中でも沖縄だけ。
犯人を他のどこでもなく、基地問題で揺れる沖縄に逃亡させたのには明らかに意味がある。
田中も、泉も、辰哉も、沖縄そのものもそれぞれに別種の怒りを抱えた存在だ。
もちろん他のエピソードの登場人物の中にも怒りはあるが、それは愛や疑念、恐れと言った感情に対して、相対的に小さい。
むしろ浮かび上がるのは、坂本龍一によるテーマ曲のタイトルでもある「許し」の感情だ。
前作が「許されざる者」だったから、今回は許しまでを描いたという訳か。
本作は、冒頭の殺人現場に残された「怒り」の血文字から「許し」のテーマ曲へと向かう物語だが、沖縄の物語だけは怒りが解消されるわけでも、許されるわけでもない。
ハッピーエンドと言える千葉の物語と、後悔と共にではあるが葛藤に一応の決着を見る東京の物語、対してラストカットの誰にも届かない泉の魂の叫びは、この世界の不条理と残酷さを象徴している。
李相日作品の例に漏れず、この映画も役者が皆さん素晴らしいが、特に宮崎あおいの凄みを改めて感じた。
そしてベテランの名優たちに混じって、広瀬すずは昨年の「海街diary」から「ちはやふる」そして本作と、名監督たちに愛されここ一年で演技者として物凄く成長したのじゃなかろうか。
辰哉役の佐久本宝が、またいい面構えでインパクト大。
なかなか楽しみな逸材が出てきた。
今回は沖縄の泡盛を使ったカクテル「泡盛モヒート」をチョイス。
泡盛の老舗「残波」の推奨レシピは、氷を入れたグラスに残波の白45ml、レモン汁20ml、シロップ10mlを注ぎ、かき混ぜる。
叩いたミントを入れ、適量のソーダを注いだら、最後に手の平でミントの葉を叩いて更にトッピング。
泡盛のほのかな甘みにミントの香りが爽やかな、ドライで夏向きの一杯だ。
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「悪人」の、李相日と吉田修一のタッグ再び。
一件の殺人事件から始まる物語は、一年後に三つに枝分かれ。
東京、千葉、沖縄に忽然と姿を現した三人の男を巡る、オムニバス的な構成のミステリアスな群像劇が展開する。
タイトルの「怒り」の対象とは何か?
これは人が人を愛するときに生まれる、様々な感情の帰結する先を描く、非常にパワフルでヘビーな人間ドラマ。
渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、森山未来ら日本を代表する名優たち、そしてオーディションで役を掴み取ったという広瀬すず、佐久本宝らの新世代。
俳優たちの情念の演技が激突する時、えもいわれぬエモーションがスクリーンから迸る。
※完全ネタバレ。核心部分に触れています。
ある夏の日、八王子の民家で凄惨な殺人事件が起こる。
窓が閉め切られ、蒸し風呂のようになった浴室には、惨殺された夫婦の遺体と共に「怒」の血文字が残されていた。
犯人は顔を整形手術し、別人となって捜査の網を掻い潜り、逃亡を続ける。
そして一年後、千葉と東京と沖縄に、時を同じくして素性の知れない三人の男が姿を現す。
千葉では、家出して東京の風俗店で働いていた愛子(宮崎あおい)が父の洋平(渡辺謙)に連れ戻されて帰郷。
彼女は二ヵ月前にふらりとやって来て、漁港で働き始めた田代(松山ケンイチ)と出会い、恋に落ちる。
東京では、エリートサラリーマンの優馬(妻夫木聡)が、同性愛者の集まるクラブで直人(綾野剛)と関係を持つ。
優馬は過去を語りたがらない直人を家に迎え入れ、同棲を始める。
同じころ沖縄では、男関係でトラブルを起こした母と、逃れるようにして引っ越して来た高校生の泉(広瀬すず)が、無人島でバックパッカーの田中(森山未来)と鉢合わせする。
一年前の事件を追う警察は、整形後の手配写真を公開するが、その写真は三人の男それぞれに、どこかが似ていた。
千葉、東京、沖縄で、人々の心に疑念が湧き上がる・・・・
日本映画奇跡の年、2016年の傑作群にまた一本。
分かっていたけど、やはり李相日は凄い。
142分の長尺を全く感じさせない、ち密な筋立て、パワフルなテリングに圧倒された。
凄惨な殺人事件の一年後、日本の三か所に表れた三人の男を巡る三つの物語は、直接は交錯しない。
逃亡劇のモデルになっているのは、おそらく映画化もされた市橋達也事件だろう。
犯人の手配写真にどこか少し似ているということが発端となって、三人の男を愛する人間たちが、少しずつ疑念を募らせてゆくのだが、犯人探しのミステリの体裁は保ちながらも、描かれるのはむしろ、人を愛し信じることの難しさと尊さ、そして恐ろしさだ。
表面的な「面白さ」の奥底にテーマを潜ませるのは、殺人犯の逃避行をモチーフに、本当の悪人とは誰なのか?という人間社会の深層を描き出した秀作、「悪人」とも共通する。
独立した三つの物語は、それぞれが単独でも映画になりそうな濃密さ。
千葉に表れた“田代”は、漁協で働く洋平の娘、愛子と恋に落ちる。
このエピソードは、家出して歌舞伎町の風俗店で働く愛子を、洋平が連れ戻しに行くシーンから始まる。
8年前に洋平が妻を亡くして以来、父娘の間にはわだかまりが出来ているらしく、洋平はどこかで愛子を信じられず、彼女の様な娘は幸せになれないと思っている。
だから、愛子が田代と暮らしたいというと、驚きつつも受け入れるのだが、今度は手配書を見た愛子自身が、田代を信じられなくなってしまう。
人間は自分以外の存在をどこまで信じられるのか、愛の前に立ちはだかる大きな難問に、父娘は直面するのである。
東京を舞台に描かれるのは、同性愛者のカップルの物語だ。
大手企業に勤める優馬は、ある夜関係を持った“直人”を家に招き入れ、同棲をはじめる。
エリートであり、同性愛者であることもある程度オープンにしている優馬にとって、レジ袋の中で斜めになってしまった弁当を一生懸命直そうとする直人は、どこか頼りない守るべき存在。
しかし、素性を明かさない直人に、ある事が切掛けになり嫉妬心を抱き、次いで手配写真を見てしまったことで疑念にかられる。
時を同じくして直人が失踪。
突然警察からかかってきた電話に、彼が犯人である事を確信した優馬は、保身のために無関係を装うのだ。
優馬の愛は、嫉妬と猜疑心によって崩壊してしまうのである。
沖縄に表れた“田中”を巡る物語は、他の二つの物語と明確に構造が異なる。
千葉と東京の物語は、男と女、男と男の愛に関する物語だ。
しかし田中は、少なくとも恋愛の対象にはならない。
無人島でキャンプしていた田中と出会う泉は、男関係にだらしない母と、夜逃げ同然で沖縄にやって来た母子家庭の娘。
彼女が田中に対して抱いているのは、年上の自由な男性への憧れに似た感情だろう。
泉には、彼女に対して恋心を募らせている辰哉という同級生がいる。
三人が友だち関係になった時に、泉が辰哉の目の前で米兵にレイプされるという痛々しい事件が起こり、泉は心を閉ざしてしまうのである。
彼女を救えなかったことで自己嫌悪に陥った辰哉にとって、同じ罪を共有する田中の存在は救いであり、ある種の共犯者だと思っている。
だから辰哉が全ての真相を知った時、彼らの物語は残酷な結末に向かって、一気呵成に動き出すのである。
信じて欲しかった者は信じられず、信じるに値しない者が信じられてしまう悲劇。
それぞれの物語は完全に独立しているが、細切れ化ギリギリの巧みな編集構成と、話が切り替わりる時点で映像と音声をクロスさせ、ボイスオーバーを駆使することによって、全体を一つの作品とし、重層的なテーマを浮かび上がらせている。
タイトルの「怒り」は、殺人事件の犯人である田中が、この世の全てに対して抱いている抑えがたい感情であり、衝動だが、それは結局もっとも鋭いブーメランとなって彼に戻ってくる。
この感情がフィーチャーされるのは、三つの物語の中でも沖縄だけ。
犯人を他のどこでもなく、基地問題で揺れる沖縄に逃亡させたのには明らかに意味がある。
田中も、泉も、辰哉も、沖縄そのものもそれぞれに別種の怒りを抱えた存在だ。
もちろん他のエピソードの登場人物の中にも怒りはあるが、それは愛や疑念、恐れと言った感情に対して、相対的に小さい。
むしろ浮かび上がるのは、坂本龍一によるテーマ曲のタイトルでもある「許し」の感情だ。
前作が「許されざる者」だったから、今回は許しまでを描いたという訳か。
本作は、冒頭の殺人現場に残された「怒り」の血文字から「許し」のテーマ曲へと向かう物語だが、沖縄の物語だけは怒りが解消されるわけでも、許されるわけでもない。
ハッピーエンドと言える千葉の物語と、後悔と共にではあるが葛藤に一応の決着を見る東京の物語、対してラストカットの誰にも届かない泉の魂の叫びは、この世界の不条理と残酷さを象徴している。
李相日作品の例に漏れず、この映画も役者が皆さん素晴らしいが、特に宮崎あおいの凄みを改めて感じた。
そしてベテランの名優たちに混じって、広瀬すずは昨年の「海街diary」から「ちはやふる」そして本作と、名監督たちに愛されここ一年で演技者として物凄く成長したのじゃなかろうか。
辰哉役の佐久本宝が、またいい面構えでインパクト大。
なかなか楽しみな逸材が出てきた。
今回は沖縄の泡盛を使ったカクテル「泡盛モヒート」をチョイス。
泡盛の老舗「残波」の推奨レシピは、氷を入れたグラスに残波の白45ml、レモン汁20ml、シロップ10mlを注ぎ、かき混ぜる。
叩いたミントを入れ、適量のソーダを注いだら、最後に手の平でミントの葉を叩いて更にトッピング。
泡盛のほのかな甘みにミントの香りが爽やかな、ドライで夏向きの一杯だ。

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