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2016年10月13日 (木) | 編集 |
神様はどこにいる?
2013年に日本でもクリーンヒットを飛ばした、「きっと、うまいく」の監督ラージクマール・ヒラーニ、主演アーミル・カーンのコンビ、再びの傑作。
奪われたある物を返してもらうために、神様を探しているという、「PK ピーケー」と呼ばれる謎めいた男の素朴な、しかし本質を突いた問いかけが、あらゆる宗教の神々が混在するインド社会を揺さぶってゆく。
前作同様にエンタメ要素てんこ盛りの楽しい映画だが、描かれているテーマは非常に深い。
しかも多民族、多宗教のインド独特の問題を扱っているように見えて、その実世界のどこにでもあてはまる普遍的なテーマを導き出すのだから見事だ。
本作でもアラフィフとは思えない見事な肉体を披露するアーミル・カーンが、ギョロッとした目でこの世を見通すPKを怪演し、ひょんなことから彼と関わることになるキュートなヒロインを、アヌシュカ・シャルマが演じる。
ベルギーに暮らすインド人留学生のジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ひょんなことから知り合ったパキスタン人留学生と大恋愛の末の大失恋。
失意のうちに帰国した彼女は、デリーのテレビ局で記者として働きはじめる。
ある日、ジャグーは地下鉄の中で黄色いヘルメットをかぶり、大きなラジカセを持って、全身に様々な宗教のおまもりを身に付け、「神様は行方不明」と描かれたチラシを配っている奇妙な男(アーミル・カーン)と出会う。
“PK”と呼ばれるその男に興味をひかれた彼女は、宗教ネタはタブーだと渋る上司を説き伏せて、彼を取材することに。
「あなたは何者?なぜ神を探しているの?」
ところが、彼女の問いに対して彼が語り始めた身の上話は、にわかには信じられない奇妙奇天烈なものだった・・・・
予告編には騙されたよ。
まさかそっち系ジャンルの映画だとは、夢にも思わなかった。
「PK」は俗語で「酔っ払い」の意味だそうだが、タイトルがアルファベット2文字なのは、たぶんあの大ヒット映画へのオマージュも入っているのだろう。
エネルギッシュでハチャメチャな大学生活から、現代インド社会の矛盾を鋭くあぶり出した前作に対し、今回俎上に上るのは“宗教”だ。
あるところから現代のインドにやって来て、帰るのに必要な重要なモノを失ってしまった主人公は、人々が宗教に縋るのを見て、自分も神に祈ってみる。
ヒンズーの神に祈って効果が無ければキリスト教会へ、それでダメなら今度はモスクへ行き、シーク教やジャイナ教の神にも願いを唱える。
ところが探し物は一向に出て来ず、常人とは異なる感性を持つPKの神々への問いかけが、徐々に周りの人々のカチコチの既成概念を溶かしてゆく。
ボリウッド映画の例にもれず、ミュージカルはもちろん、ラブストーリーからSF まであらゆる娯楽要素を満載する怒涛の展開ながら、物語の軸をぶらさずにテーマを深く掘り下げているのはさすがだ。
ヒロインのジャグーの留学先がベルギーであるのも、おそらく理由がある。
昨年からの難民問題とブリュッセルのテロ事件で改めてクローズアップされたが、欧州の中央に位置し、EU本部が置かれるベルギーはいまや人種のるつぼ。
特にイスラム圏から多くの移民が流入し、やがてベルギスタンというイスラム教国になるのではないかと言われているくらいだ。
ベルギーを舞台に、本作とは別の観点から宗教を俯瞰したのが、神の娘が主人公の「神様メール」だったのは記憶に新しい。
物語の本筋が始まる前に、ジャグーはこの国で、インドとパキスタン、ヒンズーとイスラムという対立構造により失恋の悲劇を味わっており、それが後々物語のテーマを描き出す過程で重要な意味を持ってくる。
しかし、人口の8割弱を占めるヒンズー教をはじめ、無数の宗教がひしめき合うインドの映画が、「えーと、それ言っちゃって大丈夫?」とびっくりする程に、宗教の本質にズバズバと切り込んでゆくのには驚かされる。
しかも主演のアーミル・カーンは、スーパースターとはいえ、宗教的にはマイノリティのムスリムなのだ。
たぶん彼の今までの人生でも、言いたいことは沢山あったのだろうが、ヒンズーの悪徳導師を凹ます展開など、タブーを恐れない展開にはちょっとヒヤヒヤさせられた。
まあ本作はインド映画の興行記録を書きかえるほど大ヒットしており、こちらが考える以上に彼の国の人々は宗教議論に寛容なのかもしれないし、列車テロのエピソードに象徴的な様に、特定の宗教を揶揄する作品ではないことはしっかり強調されている。
しかしPKの語っていることは、ある意味ヒンズー、イスラムを含む既存の宗教の全否定ともとれるのだから相当に刺激的だ。
「神様二人いる」とは、PKの見たこの世界の宗教観。
一人は本当の創造主で、信じる者は心の中で祈れば良いだけ。
もう一人の神様は、人間が作ったもので、良くも悪くも人間に似ている。
偽りの神々は業突く張りで、恐怖をビジネスにして人々を支配し、搾取していると言うのだ。
信仰をもつことは大切だし、人生を豊かにしてくれる。
だが、それは決して盲信であってはならない。
人々が信心深くあればあるほど、その縋る心を利用して利益を得ようとする者、偽りの神の名を語ろうとする者が出てくる。
そもそも人間は神に会えないし、神の言葉を届けられない。
ましてやテロリストが主張するように「神を守る」など、ちっぽけな私たちには決してできない。
本作は、PKという特異なキャラクターを通して、極めてロジカルにこの世界における宗教の存在を観察し物語ることで、自らの内なる神を感じ、心の声を聞くという本来の意味での信仰のあり方を、観る者に実感させるのである。
それにしても、2時間半を超える尺を全く飽きさせず、描いたエピソードは全て伏線として最後には完璧に回収してゆく作劇の妙が光る。
宗教の本質をディープに突きながら、同時に宗教を理由にした偏見や差別は、創造主に祝福された真実の愛の前に全く力を失うことを、PKとジャグーとパキスタン人の元彼の奇妙な三角関係から導き出し、クライマックスに全てを収束させる巧みさには思わず唸った。
おなじみミュージカルシークエンスも多くはないが、ノリノリな上にキャラクターも振り付けも可愛くて、サントラが欲しくなる。
マサラ風味も適度に抑えられ、尺もインドのエンタメ作品としては比較的短めなので、ボリウッド映画デビューにもオススメ。
あとこれ、覚えておいていつか使いたい名言の嵐だから、是非とも劇場パンフに「PK語録」を入れて欲しいものだ。
今回は、インドの代表的なビール「キングフィッシャー ストロング」をチョイス。
キングフィッシャーは世界的な銘柄で、日本で売られているものはイギリス産とインド産がある。
こちらのストロングはインド産で、定番のプレミアムと比べるとアルコール度数が7.5°と高めなのだが、本国ではこれが一番人気だとか。
あっさりテイストはスパイシーなインド料理を引き立てるが、基本南国のビールらしく、喉越しスムーズで飲みやすいので、日本人にも好まれると思う。
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2013年に日本でもクリーンヒットを飛ばした、「きっと、うまいく」の監督ラージクマール・ヒラーニ、主演アーミル・カーンのコンビ、再びの傑作。
奪われたある物を返してもらうために、神様を探しているという、「PK ピーケー」と呼ばれる謎めいた男の素朴な、しかし本質を突いた問いかけが、あらゆる宗教の神々が混在するインド社会を揺さぶってゆく。
前作同様にエンタメ要素てんこ盛りの楽しい映画だが、描かれているテーマは非常に深い。
しかも多民族、多宗教のインド独特の問題を扱っているように見えて、その実世界のどこにでもあてはまる普遍的なテーマを導き出すのだから見事だ。
本作でもアラフィフとは思えない見事な肉体を披露するアーミル・カーンが、ギョロッとした目でこの世を見通すPKを怪演し、ひょんなことから彼と関わることになるキュートなヒロインを、アヌシュカ・シャルマが演じる。
ベルギーに暮らすインド人留学生のジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ひょんなことから知り合ったパキスタン人留学生と大恋愛の末の大失恋。
失意のうちに帰国した彼女は、デリーのテレビ局で記者として働きはじめる。
ある日、ジャグーは地下鉄の中で黄色いヘルメットをかぶり、大きなラジカセを持って、全身に様々な宗教のおまもりを身に付け、「神様は行方不明」と描かれたチラシを配っている奇妙な男(アーミル・カーン)と出会う。
“PK”と呼ばれるその男に興味をひかれた彼女は、宗教ネタはタブーだと渋る上司を説き伏せて、彼を取材することに。
「あなたは何者?なぜ神を探しているの?」
ところが、彼女の問いに対して彼が語り始めた身の上話は、にわかには信じられない奇妙奇天烈なものだった・・・・
予告編には騙されたよ。
まさかそっち系ジャンルの映画だとは、夢にも思わなかった。
「PK」は俗語で「酔っ払い」の意味だそうだが、タイトルがアルファベット2文字なのは、たぶんあの大ヒット映画へのオマージュも入っているのだろう。
エネルギッシュでハチャメチャな大学生活から、現代インド社会の矛盾を鋭くあぶり出した前作に対し、今回俎上に上るのは“宗教”だ。
あるところから現代のインドにやって来て、帰るのに必要な重要なモノを失ってしまった主人公は、人々が宗教に縋るのを見て、自分も神に祈ってみる。
ヒンズーの神に祈って効果が無ければキリスト教会へ、それでダメなら今度はモスクへ行き、シーク教やジャイナ教の神にも願いを唱える。
ところが探し物は一向に出て来ず、常人とは異なる感性を持つPKの神々への問いかけが、徐々に周りの人々のカチコチの既成概念を溶かしてゆく。
ボリウッド映画の例にもれず、ミュージカルはもちろん、ラブストーリーからSF まであらゆる娯楽要素を満載する怒涛の展開ながら、物語の軸をぶらさずにテーマを深く掘り下げているのはさすがだ。
ヒロインのジャグーの留学先がベルギーであるのも、おそらく理由がある。
昨年からの難民問題とブリュッセルのテロ事件で改めてクローズアップされたが、欧州の中央に位置し、EU本部が置かれるベルギーはいまや人種のるつぼ。
特にイスラム圏から多くの移民が流入し、やがてベルギスタンというイスラム教国になるのではないかと言われているくらいだ。
ベルギーを舞台に、本作とは別の観点から宗教を俯瞰したのが、神の娘が主人公の「神様メール」だったのは記憶に新しい。
物語の本筋が始まる前に、ジャグーはこの国で、インドとパキスタン、ヒンズーとイスラムという対立構造により失恋の悲劇を味わっており、それが後々物語のテーマを描き出す過程で重要な意味を持ってくる。
しかし、人口の8割弱を占めるヒンズー教をはじめ、無数の宗教がひしめき合うインドの映画が、「えーと、それ言っちゃって大丈夫?」とびっくりする程に、宗教の本質にズバズバと切り込んでゆくのには驚かされる。
しかも主演のアーミル・カーンは、スーパースターとはいえ、宗教的にはマイノリティのムスリムなのだ。
たぶん彼の今までの人生でも、言いたいことは沢山あったのだろうが、ヒンズーの悪徳導師を凹ます展開など、タブーを恐れない展開にはちょっとヒヤヒヤさせられた。
まあ本作はインド映画の興行記録を書きかえるほど大ヒットしており、こちらが考える以上に彼の国の人々は宗教議論に寛容なのかもしれないし、列車テロのエピソードに象徴的な様に、特定の宗教を揶揄する作品ではないことはしっかり強調されている。
しかしPKの語っていることは、ある意味ヒンズー、イスラムを含む既存の宗教の全否定ともとれるのだから相当に刺激的だ。
「神様二人いる」とは、PKの見たこの世界の宗教観。
一人は本当の創造主で、信じる者は心の中で祈れば良いだけ。
もう一人の神様は、人間が作ったもので、良くも悪くも人間に似ている。
偽りの神々は業突く張りで、恐怖をビジネスにして人々を支配し、搾取していると言うのだ。
信仰をもつことは大切だし、人生を豊かにしてくれる。
だが、それは決して盲信であってはならない。
人々が信心深くあればあるほど、その縋る心を利用して利益を得ようとする者、偽りの神の名を語ろうとする者が出てくる。
そもそも人間は神に会えないし、神の言葉を届けられない。
ましてやテロリストが主張するように「神を守る」など、ちっぽけな私たちには決してできない。
本作は、PKという特異なキャラクターを通して、極めてロジカルにこの世界における宗教の存在を観察し物語ることで、自らの内なる神を感じ、心の声を聞くという本来の意味での信仰のあり方を、観る者に実感させるのである。
それにしても、2時間半を超える尺を全く飽きさせず、描いたエピソードは全て伏線として最後には完璧に回収してゆく作劇の妙が光る。
宗教の本質をディープに突きながら、同時に宗教を理由にした偏見や差別は、創造主に祝福された真実の愛の前に全く力を失うことを、PKとジャグーとパキスタン人の元彼の奇妙な三角関係から導き出し、クライマックスに全てを収束させる巧みさには思わず唸った。
おなじみミュージカルシークエンスも多くはないが、ノリノリな上にキャラクターも振り付けも可愛くて、サントラが欲しくなる。
マサラ風味も適度に抑えられ、尺もインドのエンタメ作品としては比較的短めなので、ボリウッド映画デビューにもオススメ。
あとこれ、覚えておいていつか使いたい名言の嵐だから、是非とも劇場パンフに「PK語録」を入れて欲しいものだ。
今回は、インドの代表的なビール「キングフィッシャー ストロング」をチョイス。
キングフィッシャーは世界的な銘柄で、日本で売られているものはイギリス産とインド産がある。
こちらのストロングはインド産で、定番のプレミアムと比べるとアルコール度数が7.5°と高めなのだが、本国ではこれが一番人気だとか。
あっさりテイストはスパイシーなインド料理を引き立てるが、基本南国のビールらしく、喉越しスムーズで飲みやすいので、日本人にも好まれると思う。

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