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何者・・・・・評価額1750円
2016年10月18日 (火) | 編集 |
人はどうしたら「何者」かになれるのか。

「桐島、部活やめるってよ」の衝撃再び。
原作は、就職活動の苦闘の中で自分が「何者」なのかを模索する5人の大学生を通し、等身大の若者たちのリアルを描く浅井リョウの直木賞受賞作。
ここにあるのは友情、恋愛、そして裏切り
本来ならば絶対に明かしたくないホンネが、SNSによって浮かび上がり、登場人物たちの秘めたる葛藤が交錯する。
三浦大輔監督は、いかにも演劇畑出身らしいトリッキーな構成・演出で、激突する感情の嵐を極めて映画的に昇華し、圧巻の仕上がりだ。
それぞれの持ち味が生かされた、旬の若手演技派俳優陣の好演も十分に見ごたえあり。
※核心部分に触れています。

就職活動まっただ中の5人の大学生。
嘗て演劇サークルで脚本を書いていた拓人(佐藤健)、学生バンドのボーカルだった光太郎(菅田将暉)、光太郎の元カノでアメリカ留学から帰国した瑞月(有村架純)、やはり留学経験者で「意識高い系」の理香(二階堂ふみ)、そして社会のルールには乗らないと言いながらも、密かに就職を意識する隆良(岡田将生)。
理香と隆良が同棲する部屋を「就活対策本部」にすることになった彼らは、情報収集のために頻繁に集まるようになる。
着実に内定に近づいていく者、なかなか結果が出ない者、それぞれの考えていることをツイートするのがルーティン。
人間分析が得意な拓人は、そんな彼らのことを冷静に観察する。
しかし、遂に「内定者」が出た時、5人の間にある奇妙な均衡は崩れ、それぞれの焦りと嫉妬は、隠された裏の顔をむき出しにしてゆく・・・


この映画、ツイッターのTLでは絶賛しか流れてこないのに、オフラインでは結構酷評も耳にするのだが、その理由がよく分かった。

これSNS、特にツイッターをやったことのない人には、登場人物の中でSNSの持つ精神的な重さが実感できないのだ。
ネットジャンキーにとって、オンとオフの境は限りなく曖昧。
特に実名アカウントと裏アカを使い分けている人にとって、SNS上の自分は本来不可分な本音と建て前、ライトサイドとダークサイドだ。
SNSとは、知られたくない自分を誰かに知ってもらいたいという矛盾した欲求、心のアンバランスが具現化する場所なのである。
だからSNS世代にとって、この物語は自身の内面をグイグイとえぐられるとんでもなく怖い心理ホラーとなり、不気味極まりない音楽の使い方などを見ると、作り手も明らかにそっちを狙っている。

ある意味、「桐島」の数年後とも言える5人の就活生の中で、本作の視点であり主人公となるのが佐藤健演じる拓人だ。
ひょんなことから就職戦線で戦う「同士」となった彼らは、はじめのうちはお互いに情報提供で協力しあったり、息抜きの飲み会を開いたりと仲良くやっている。

だが、それぞれの心の中には焦り、妬み、不安などが渦巻いており、交錯する諸々の感情を、嘗て演劇サークルで脚本を書いていた拓人が冷静に観察してゆく。

原作者の朝井リョウと交流があるという佐藤健が、TVで拓人は彼に似ていると言っていたが、まあ作家とはそういうものなのだろう。

青春の終章にある若者たちが、学生という守られた存在から、社会の中で「人生」をスタートさせるまでの物語は、生みの苦しみ。
就活の長い道程を通して、5人の旅の仲間の運命は別れる。
「好きだった人に再会したいから」と、分かりやすくもポジティブな思考で出版社に絞った光太郎。
父と別れ自分を頼ってきた母を養うためという、こちらはやむを得ない理由で志望の外資系を諦め、大手通信社という安定を目指した瑞月。
明と暗、それぞれに明確な理由を持って就活に挑んだ2人は内定を掴み、他の3人は最後まで内定を得られない。
プライドが高く、経験値をひけらかすものの、結局自分が何を出来るのか、したいのかを語れない理香。
自称クリエイターで、世間のルールを馬鹿にしながらも、実際には何も作り出していない隆良。
この二人は「意識が高い人」と「俺はまだ本気出してない人」の典型的なステロタイプだが、就活生じゃなくてもこういうちょいイタな人は珍しくないので、観客は彼らのダメっぷりを見て「ア~、こういうウザい人いるいる」と共感する仕組み。

では、拓人はどうなのか。
実はある時点で、拓人に関して衝撃の事実が明らかになる。
彼は皆を応援するふりをしながら、実はツイッターの裏アカで仲間たちを見下して、笑い飛ばしているのである。
しかも、そのことは既にバレバレになっていて、本人だけが気づかれていないと思っているめっちゃイタ過ぎの奴だったのだ。
この事実が分かった時、彼の視点で物語を辿ってきた観客は思わず息をのむ。
なぜなら、私たちも心の中で他の4人をウザがって、散々馬鹿にしていたから。
拓人は自分自身であることに気づいた時、他の登場人物に放った刃はスクリーンから跳ね返り、自分の心にグサリと刺さるのだ。

同期入学なのに、留学していた瑞月と理香と同じ年に就活している時点で、カンの良い人は気づくだろうが、拓人は実は就職浪人している。
光太郎と隆良はそれぞれ留年と休学しているので、それぞれ卒業が一年遅れ。
だから拓人だけはこれが二年目の就活なのである。
なぜ自分には内定が出ないのか。
なぜ自分は「何者」にもなれないのか。
最後まで顔がはっきりと写らないある人物、拓人が就活に明け暮れている間に、さっさと「何者」かになってしまったこの男が物語のキーだ。
彼は拓人の合わせ鏡であり、自ら否定したもう一人の自分であり、実はなりたかった自分なのである。

ツイッターの140文字の表裏が反転するクライマックスは、拓人が演劇を志していたという設定が存分に生かされ、リアルとバーチャルの表裏一体を、現実とシームレスとなった劇中劇の形で表現してゆくユニークなもの。
「桐島」の、“火曜日の屋上”に匹敵する、怒涛の映像スペクタクルは圧巻だ。

隠されたホンネが赤裸々に語られるこのシークエンスは、わき腹をジワジワとえぐられる様で、精神的に相当にキツイ。

実際に就活生で、裏アカで毒を吐いている様な人が観たら、立ち直れないくらいにショックを受けるかもしれないが、既に自分の中に拓人がいることを知ってしまった私たちは、この痛みから逃れる術がない。
途轍もなく苦しく、残酷な映画である。


ゴールに向かって走っているつもりで、実はスタートから一歩も動けていなかった拓人が、本当の自分と向き合い、改めてスタートを切るところで映画は終わる。
なんでも原作には、それぞれのキャラクターをフィーチャーした「何様」というアナザーストーリーもあるらしいから、
今度は映画からTVドラマに展開させても面白そうだ。

私は大学出てからはずっと海外で暮らしていたので、自分では就活の経験がないのだけど、青春の通過儀礼として一度はやってみたかったな。

今回は佐藤健がCMに出演していた「サントリーウィスキー知多」をチョイス。
知多半島にある知多蒸留所はサントリーが国内に所有する3蒸留所の一つ。
ここで作られるグレーンウィスキーをブレンドして作られるのがこちら。
風味は軽めで口当たり良く、適度な甘みも感じる。
サントリーの推奨はハイボールで、確かにスッキリとした風味が合っている。


しかし「君の名は。」からはじまって「怒り」、次いで本作と、今年の下半期は川村元気プロデューサーが傑作を連発し、全部持ってく勢いだ。
名前の通りに元気一杯だな。

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