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ショートレビュー「淵に立つ・・・・・評価額1650円」
2016年10月21日 (金) | 編集 |
とある家族の罪と罰。


ある意味日本のハネケ、まことにおそろしい映画である。
古舘寛治と筒井真理子が演じる利雄と彰恵は、ほとんど二人だけで回しているような、小さな町工場を経営している夫婦。
二人には、エレクトーンを習っている10歳の一人娘・蛍がいる。

両親と娘一人がつつましく暮らすごく平凡な家族に、ある日異分子が侵入する。

父親と因縁があるらしい、その男の介入によって、家族の間に少しずつ亀裂が入り、平和な日常は破断点に向かって動き出すのだ。

謎の男・八坂草太郎を演じる浅野忠信が良い。
彼の、「人の姿をしているけど人じゃない感」を、始めて見出したのは「寄生獣」だったか。
昨年の「岸辺の旅」の幽霊役も印象的だったが、温和な表情の内に得体のしれない激しい感情を抱えた草太郎は、利雄一家と同じ空間にいても、全く異なる精神世界を生きていることを強く感じさせる。

草太郎は嘗て人を殺める罪を犯したのだが、共犯者である利雄をかばって一人だけ服役し、出所後に利雄の元を訪ねてきたのだ。
単に困って頼ってきたのか、それとも自分が服役している間に、のうのうと幸せを享受していた利雄に復讐しにきたのか。
利雄は草太郎の真意を測りかねるのだが、事情が事情だけに断れず、家族に真相を語ることも出来ない。
彼等の奇妙な同居生活は、草太郎が関わったことが示唆される、ある悲劇によって終わる。
しかし、後半画面に登場しないにも関わらず、終始物語を支配するのはこの男なのである。


そして悲劇から8年後、以前とは違った「日常」を生きる一家の元に、別の異分子が出現。

利雄の工場で地方出身の若者が働くことになり、彼の発した何気ない一言によって、8年前の傷が再び抉られ、罪と罰の物語は連環する。

私たちは、近しい人の事を本当に知っているのか。

一見暖かな家族の裏に隠された、秘密と孤独。
平凡な人生を生きていると思っていても、気付いたら淵に立っているのかもしれない。

因果応報に巻き込まれた形の妻と娘が、「原罪」を前提とするキリスト教徒なのが象徴的だ。

浅野忠信の場違いな白シャツなどの視覚的表象性、メトロノームの音、町工場の機械音、細かな生活音の重なりなど音響演出が不安感を掻き立てる。


登場人物がドンと突き放される感覚は、原発事故によって滅びゆく日本という、ペシミスティックな寓話的世界観のなか、生と死の意味を伝えた前作「さようなら」同様。
好みは分かれると思うが、ズシリと見応えのある「ファミリーもの」の力作である。

本作はカンヌ受賞作だが、深田晃司監督の作風はいかにもヨーロッパの映画人が好みそうなビターなテイストで、こういう既成概念の裏側を覗き込むような作家は日本映画には希少なタイプかもしれない。

今回は守られなかった家族の物語なので「屋」を「守る」と書いて「おくのかみ」と読ませる、東京都東村山の地酒、豊島屋酒造の「屋守 雄町 純米吟醸 瓶火入れ 無調整 原酒」をチョイス。
ふわりと広がる吟醸香の良さと、キレがありながら、原酒の濃厚な旨みを堪能できる。
食欲を刺激する酒である。

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