酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
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東京フィルメックス2016 まとめのショートショートレビュー
2016年11月29日 (火) | 編集 |
東京フィルメックス2016のつぶやきまとめ。
一番のお気に入りは、韓国のイ・ヒョンジュ監督による瑞々しい青春ラブストーリー「恋物語」。
正式公開されたら、是非また観たい。

バーニング・バード・・・・・評価額1550円
スリランカ内戦と言えば「ディーパンの闘い」が記憶に新しいが、これはいわば脱出出来なかったディーパンの、取り残された家族の物語だ。
密告により、政府に夫を殺された妻と八人の子供たち。
乳飲み子を抱えた妻は、何とか家族を支えようとするが、状況は悪化するばかり。
セーフティーネットなどという概念は無く、そもそも母子家庭が生きて行ける様に社会が出来てない。
過酷な労働、くり返される男たちの理不尽な暴力、そして村八分まで。
沸々と煮えたぎる静かな怒りが全編に渡って流れているから、あのラストしかないのだろう。
ただ、妻がなぜもとの土地で生きて行こうとするのかが今ひとつ分からない。
最初から一家でコロンボに出たら良いのにと思ってしまった。
夫の遺志を継ぐ以外に、何かスリランカ文化ならではの理由があるのかも知れないが、ならば少しでも言及が欲しかった。

よみがえりの樹・・・・・評価額1350円
現代中国の滅びゆく過疎の村。
10年前に死んだ妻の霊が息子に憑依し、嫁入りの時に植えた木を移してくれという。
舞台となってるのは監督の故郷で、聊斎志異が好きというだけあって、輪廻転生の物語は全体がフォークロアの様な独特のムードがある。
急速に発展する国の中で、忘却される村とそこに確かに暮らした人々が、幽霊となって自らの存在の証を残そうとする。
人間だけでなく、ヤギや犬やネズミたちも大きな時間の中で循環する魂。
いかにもアジア的なアニミズム世界観は、かなり好きな部類。
ただ、基本引きの長回しの画ばっかりなうえに、キャラクターの表情を描写するのを親の仇の様に嫌うので感情移入も出来ず、中盤からは少々退屈してしまった。
まあ感情ではなく、現象で描こうということなんだろうけど、テリングにはもう一工夫あっても良かったんじゃないか。

ザーヤンデルードの夜・・・・・・評価不能
大学教授の父と看護師の娘を軸に、イスラム革命の前・中・後を描く。
元々1990年に100分の作品として作られるも、当局の検閲によって37分カット。
その後上映禁止されネガが没収されたが、数年前に63分の版がイラン国外に持ち出された幻の映画。
大幅にぶった切られた上に、一部シーンでは音声まで消されていて、これはもう元々意図された映画とは言えないので、スコアは付けられない。
本作の辿った長いストーリーを含めて、1つの表現と捉えるべきだろう。
マフマフバルは、イスラム革命を挟んだ14年間でのイラン民衆の変化を見て、文化と政治と人々を描く作品として本作を企画。
監督はイランの人々に、自らを映し出す鏡を作ったそうだが、鏡に映った自分の姿を国家は気に入らず、破壊してしまったと言う訳だ。
独裁と検閲の恐ろしさを、リアルに実感させられると言う意味で貴重な作品。
タイトルのザーヤンデルード川に架かる、独特の構造を持つ橋が象徴的に使われていて、面白い効果を出している。
全長版が観たかった。

恋物語・・・・・評価額1650円
恋愛下手な女子美大生が、ひょんなことから出会った年下の彼女と恋に落ちる。
タイトルそのまま、ある恋の物語。
特に何か事件が起こる訳でもなく、二人が結ばれ、付き合い始めに盛り上がり、やがて少しずつすれ違い、お互いに葛藤を深めてゆく。
韓国はまだ同性愛にあまり寛容では無いというが、物語そのものは、どこにでもある恋人たちの風景。
でも二人の心の機微が繊細に描かれ、登場人物の一人ひとりがリアリティたっぷりに造形されているので、二人の恋の行方に全く目が離せない。
瑞々しい恋愛映画の秀作だ。
是非ぜひ、正式公開を望む!

苦い銭・・・・・評価額1550円
縫製産業の街、浙江省湖州に集う出稼ぎ労働者たちの世界を描くドキュメンタリー。
15で家を出て働きに出る少女、仕事がキツくて1週間で諦める者、作業が遅いとクビになる者、給料を払えと社長に絡む酔っ払いのおっさん。
十人十色、それぞれの出稼ぎ生活の日常を垣間見る。
好きなのは、全く噛み合ってない夫婦喧嘩と、酔っ払いのおっさんがちょい気があるっぽい女の子に何度も同じ事言って引かれるとこ。
おっさんがずーっと裁縫ハサミいじってて、酔っ払いに刃物はアブナイので、とりあえずハサミ置いとけと思った。
特に明確な主張がある訳じゃないけど、キャラが立っていて群像劇として秀逸。
彼らが働く工場は、日本基準なら全部ブラック企業だが、それなりにやりがいを感じて楽しんでいる者も、適応出来ずに去る者もいる。
登場人物それぞれの人生から、彼らを取り巻く社会のあり方を含めて、色々感じとれば良いと言うことだろう。
コピーブランド物はともかく、湖州で作られる服の一部は日本にも来てるんだろうなと思うと、妙な地続き感がある。
しかし王兵監督だから分かってたけど、今回も長いな。
演出の領域だから何とも言えないけど、「このカット、半分で良くない?」って所が多数。
163分を120分位にしてくれると、もっと観やすくなると思うんだが。

大樹は風を招く・・・・・評価額1650円
これは素晴らしい。
1997年、香港返還前夜。
新しい時代を迎える3人の伝説のヤクザの物語。
3人の監督が一人ずつキャラクターを担当しているのだけど、オムニバスではなくシームレスな作り。
演出の個性が、そのままキャラクターの個性になっているユニークなコンセプトだ。
強盗稼業から密輸業に転職するも、大陸の汚職官僚にキリキリ舞いさせられる者、大富豪を狙った誘拐を生業にする者、名前を変えて新たな仕事を狙う者。
しかし、彼らの一人が伝説の3人ヤクザを集めて、香港返還に合わせて大仕事をやろうと考えた事から運命が狂い始める。
これは香港返還という歴史的イベント、即ち"大樹"が招いた三つの小さな旋風の物語。
彼らは一瞬邂逅し、歴史の徒花として消える。
3人のヤクザ者は実在の人物らしい。
パワフルでどこか切ない、香港ノワール異色の快作。
こちらも正式公開を望みたい。

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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅・・・・・評価額1650円
2016年11月28日 (月) | 編集 |
ポケモンGO・ザ・ムービー?

「ハリー・ポッター」シリーズと世界観を共有する、新シリーズの第一弾。
世界中に生息する魔法動物について書かれた、ホグワーツ魔法学校の教科書「幻の動物とその生息地」の著者、魔法動物学者のニュート・スキャマンダーを主人公とした物語だ。
この本は実際に出版されているが、映画は本を執筆する前の冒険を描く物語で、直接の原作ではない。
舞台は現代のイギリスから、一気に時代をさかのぼり1920年代のニューヨークへ。
スキャマンダー先生は、ひょんなことから魔法動物の入ったトランクを、人間のおっさんのトランクと取り違え、超常の力を持つ動物たちが大都会に放たれてしまう。
J・K・ローリングが初のオリジナル脚本を書き下ろし、監督は「ハリー・ポッター」シリーズの“クローザー”として手腕は証明済みのデヴィッド・イェーツ。
大人から子供まで楽しめる見応えたっぷりの娯楽大作であり、続編への大きな期待を抱かせるに十分な仕上がりだ。

1926年のニューヨーク。
魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、絶滅寸前の魔法動物を研究し、保護する仕事をしている。
彼は保護したサンダーバードを故郷のアリゾナで解放するために、アメリカ大陸にやって来たのだ。
ところがちょっとしたアクシデントで、魔法動物が入ったトランクを人間のトランクと取り違えてしまう。
アメリカ合衆国魔法議会(MACUSA)のティナ・ゴールドスタイン(キャスリン・ウオーターストン)と共に、持ち主のジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)の居場所を突き止めた時には、既に何匹もの魔法動物が逃げ出してしまっていた。
おりしも、ニューヨークでは謎の魔法現象による事故が多発していて、魔法排斥を訴える人間との緊張が高まっていた。
MACUSAの闇祓い、パーシバル・グレイブズ(コリン・ファレル)は、事件を魔法動物によるものと考え、スキャマンダーの逮捕を命じる。
ティナの妹のクイニー(アリソン・スドル)の気転で脱出したニュートらは、逃げた魔法度物を捕まえつつ、事件の真相を探り始めるのだが・・・・


予告編の時から思っていたけど、こりゃまるでポケモンGOが実写になったような話だ。
魔法動物を捕まえるというコンセプトもそうなのだけど、キャラクターのビジュアルも似ている。
植物の苗の様なボウトラックルはマダツボミを思わせるし、光るモノが大好きなニフラーはちっちゃな黒いコダック、抑圧された魔法使いの負のエネルギーが作り出す魔法現象、オブスキュラスは超強力なゴースだ。
キャラクターは、そのままちょっとカリカチュアしてポケモン世界に置いても違和感ゼロ。
ドラえもんのポケット状態のスキャマンダー先生のトランクの中は、魅惑的な魔法動物たちが暮らす動物園の様で、是非ともテーマパークのアトラクションにして欲しい。

映画の前半は、逃がしてしまった魔法動物たちを追うポケGO編、後半はそこに魔法界の危機が加わり、複合的に盛り上がるという構図。
本作は「ハリー・ポッター」と同じ世界観の別の時代で展開するが、物語の構造は大きく異なる。
宿命を背負った少年ハリーを主人公とした「ハリー・ポッター」シリーズは、基本的に子供たちの成長ストーリーだ。
純真無垢な子供時代から始まる物語は、やがてヴォルデモートによる闇に包まれ、彼らは未来を取り戻すための熾烈な戦いを経て大人の魔法使いとなってゆく。
だから登場人物たちは常に新たな葛藤に直面し、一作毎に変化するのである
しかし新シリーズの主人公、ニュート・スキャマンダーは初めから完成された大人であって、本作でも特に大きな葛藤は抱えていないし、物語を通して変化もしない。
彼の役回りは、どちらかというと狂言回し
旅をしながらその土地の人々に新風をもたらし、葛藤を解消する契機となる存在で、「男は辛いよ」の寅さんや、「水戸黄門」の黄門様に近いのだ。

ここで、本作の舞台が第一次世界大戦と世界恐慌の狭間、狂騒の20年代のアメリカであることが生きてくる。
元々「ハリー・ポッター」は、反差別というテーマを内包している。
先日も舞台版のハーマイオニー役が、アフリカ系の俳優に決定したことが話題になったが、彼女は小説の中でもマグル(人間)出身として差別されていた。
「ハリー・ポッター」の裏テーマだった差別と不寛容とそれに対抗する力を描くのならば、なるほど現代のイギリスよりも、20年代のアメリカの方がずっと象徴化しやすく、異邦人であるスキャマンダー先生の視点で描けば尚更である。

アメリカでは、「魔法使いと人間との恋愛や結婚が禁止されている」という台詞が出てくるが、これはもちろん当時のアメリカの一部州で施行されていたジム・クロウ法を反映したもの。
魔女狩りを復活させようとする狂信的なキリスト教原理主義の結社が、魔法能力を持つ者を抑圧していたり、MACUSAのグレイブスがスキャマンダー先生とティナをすぐ死刑にしようとするのは、未だキリスト教の超保守派が力を持ち、死刑制度が残るアメリカへの皮肉だろう。
グレイブスがオブスキュラスを作る能力を持つ者を探すのも、恐怖によって人間との対立を煽り、戦争を起こすためだ。

一方で、スキャマンダー先生やティナだけでなく、“ノー・マジ(人間)”のジェイコブが思わぬ大活躍を見せ、クイニーとのロマンスで上記の魔法界版のジム・クロウ法に風穴を開けることを予感させるのは、本作のスタンスを象徴する。
狂騒の20年代には、文学では失われた世代が台頭、ジャズやアール・デコなど多くの新しい文化が花開き、放送メディアやモータリゼーションといったテクノロジー革命によって、古い既成概念が破壊されていった。
この時代に女性の社会進出が進み、しかし依然として壁があることも、ティナとクイニーの姉妹のMACUSAでの立ち位置によって表現されている。
議長が“マダム・プレジデント”なのは、もしかすると幻のヒラリー大統領へのローリングからのエールだったのかもしれない。

出自や性別もバラバラの、スキャマンダー先生と仲間たちの冒険は、アメリカ魔法界の厚い壁にも亀裂を入れ、狂騒の風を招き入れた。
振り返って90年後の現在、現実世界ではブレグジットやトランプの当選といった逆風が吹きまくっているが、少なくともフィクションの世界では順風の方がまだまだ優勢の様だ。
シリーズは5部作らしいけど、どこかで「ハリー・ポッター」シリーズとの接点も出てくるのか楽しみ。
エズラ・ミラーと、最後にサプライズ登場したあの人には、また暴れてほしいのだけど。

今回はマンハッタンが舞台ということで、ウォッカベースのカクテル「ビッグ・アップル」をチョイス。
氷で満たしたタンブラーに、ウォッカ45ml、アップル・ジュース適量を加え、軽くステアする。
カットしたリンゴを飾って完成。
クセがなく、スッキリとした味わいで、それゆえにグイグイいけてしまう危険なカクテルだ。

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ショートレビュー「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK・・・・・評価額1600円」
2016年11月21日 (月) | 編集 |
アウトローが、パパになる!?

無頼の正義漢、ジャック・リーチャーの活躍を描くシリーズ第二弾。
前作「アウトロー」の監督クリストファー・マッカリーが、「ローグ・ネイション」に引き続き「ミッション:インポッシブル」の6作目を手掛ける関係で、こちらはエドワード・ズウィックにバトンタッチ。
しかし監督は代っても、作家の特徴は上手く生かされている。
 
さす名プロデューサー、トム・クルーズ。 

トムと組んだ「ラスト・サムライ」や「ブラッド・ダイヤモンド」など、異なるバックグランウドを持つ二人の人物の関係を軸にした、バディものを得意とするズウィックだが、今回はコンビを超えてトリオ。 

しかも相手は二人の女性である。 

本作でジャック・リーチャーが成敗するのは、アフガンの戦場で暗躍する民間軍需企業と、彼らと通じた軍の幹部。
リーチャーと非公式な協力関係にあったスーザン・ターナー少佐が、アフガンでの武器横流し疑惑を調査したところ、軍内部に巣食う何者かの陰謀によって逮捕されてしまう。
それをリーチャーが救出し、二人で事件の真相に迫って行くのはバディものの王道。
だが、本作で彼は、もう一つの緊急事態に直面する。
それは見ず知らずの女性が、リーチャーの過去の軍籍を辿って出した請求。
実は彼には生まれたことを知らせていなかった15歳になるサマンサという娘がいて、彼女の養育費を支払えと言うのだ。
半信半疑のリーチャーだが、まずい事に敵が彼女の存在を知ってしまい、図らずも娘かも知れないサマンサを守りながら、ターナーと事件の謎を解くという二重作戦を余儀なくされるのである。


ぶっちゃけ、孤高の正義の味方が、軍と民間軍需会社が癒着した裏アフガン利権を暴くというのは、わりと既視感のあるモチーフ。 

だがこの映画の面白味は、むしろ本来お一人好きの主人公が、図らずも疑似家族の夫でパパになってしまい、むっちゃ気の強い女性二人相手にタジタジになるギャップにある。
 
年下のエリート軍人であるターナーとの、いいムードに成りそうでならない微妙な関係もさることながら、本作の白眉はやはりサマンサとの疑似親子の描写だろう。
最初は娘の存在など信じられなかったリーチャーだが、サマンサのカンの鋭さ、観察力の高さは天性のスパイというべきもので、彼女と過ごすうちに「んー、もしかしてホントにオレの娘かもしんない・・・(-ω-`;)ゞ」と、だんだんとパパの顔になってゆくのは見もの。
ターナーとサマンサがキャッキャと女子トークしている所に入ろうとして、バタンと扉を閉められてしまうところなんて、切なくて思わず吹いた。

もちろん、サスペンス・アクション映画としてもなかなか良く出来ていて、戦争を隠れ蓑にする巨悪を倒す展開は痛快だし、ハロウィン・パレードに湧くニューオーリンズの、迷路のような市街地を駆け巡る立体的な追跡劇は手に汗握る。
「ミッション:インポッシブル」シリーズほどギミック満載の超大作ではなく、製作費も半分以下のこちらのシリーズは7、80年代のプログラム・ピクチュアの趣のある愛すべき小品。 

しかしトム・クルーズも50代半ばになって、ひと昔前のイーストウッドみたいな役柄が似合う様になって来たなあ。

今回は、舞台となるニューオーリンズに度々襲来する、「ハリケーン」の名を持つご当地カクテル。
ライト・ラム60ml、ダーク・ラム60ml、パッションフルーツ・ジュース60ml、オレンジ・ジュース30ml、ライム・ジュース15ml、シロップ1tsp、グレナデン・シロップ1tspを氷と共にシェイクして、氷を満たしたグラスに注ぐ。
本当はハリケーングラスという腰のくびれた専用のグラスがあるのだが、ビアグラスやタンブラーでも良いだろう。
最後にスライスしたオレンジとマラスキーノ・チェリーを飾って完成。
南国らしい、華やかでさっぱりしたカクテルだ。
日本でハリケーンと言えば、ウイスキーベースのカクテルだが、こちらは全くの別物。

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ショートレビュー「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に・・・・・評価額1650円」
2016年11月15日 (火) | 編集 |
「黄金時代」のちょっと前。

舞台は1980年のテキサス。
大学野球の名門、南東テキサス大のチームに加入した新入生ピッチャー、ジェイクの新学期開始までの4日間が描かれる。 

リチャード・リンクレイターらしい、人生の中の“ある時間”を巡る物語だ。
クラブハウスで同居することになる、変人だらけのチームメイトたちには早々に馴染むものの、 ジェイクと愉快な仲間たちの頭にあるのは野球、セックス、パーティー。 

映画の中で起こるのも、ほとんどこの3つ+ちょっとだけ真面目な恋愛。 

高校ではスター選手だったものの、ジェイクは今後4年間を過ごす場所にやって来ただけで、高校とはレベルの違う大学チームの一員としても正式に認められた訳でもなく、新学期も始まっていないから、大学生でもなく、野球選手でもない。
つまり、まだ“何者”にもなっていない。
リンクレイターの作品は、往々にして何かが始まるまでの時間を淡々と描き、主人公が人生の次のステップに足を踏み入れる瞬間で終わる。
1980年8月28日の木曜日に始まり、9月1日の月曜日に終わる本作が描くのも、可能性を秘めた若者が新しい何かを求め、フロンティアに飛び込む直前の、戸惑いとワクワクが膨れ上がる胎動期だ。
邦題の様に「世界はボクらの手の中に」あると信じていた、誰にでもある人生の黄金時代が、ジェイクにとっては間もなく始まろうとしているのだ。
「死ぬ時に後悔するのは、やったことじゃない。やり残したこと」
「今を楽しめ。長くは続かないんだから」
「素敵だと思わない?何かに情熱を注げるってこと」
物語に散りばめられた“言葉”が、ジェイクの糧となり、背中を押す。

文化系と体育会系で主人公のキャラはだいぶ違うものの、これはある意味「6歳のボクが、大人になるまで。」のその後であり、対とも言える一本だ。
同時に、76年を舞台に田舎の高校生を描いた、93年の「バッド・チューニング」の続編的な作品でもある。 
親として子の成長を12年間追った「6歳のボクが、大人になるまで」で、子育ても終わったし、一回転くるりと回って再びの18歳というワケか。
60年生まれの作者にとって、「バッド・チューニング」と本作は、自分自身の体験をストレートに反映したものなのだろう。
(ちなみに「バッド・チューニング」は23年前に観たが、日本未公開だったとは知らなかった。むしろリンクレイターの自分史ともいうべき三本を、まとめて観られるのは面白いかも)
ピチピチのTシャツ、ディスコ、パンクなど、ディテールを彩る80年代のアイコンもノスタルジック。
ザ・ナックの「My Sharona」から始まって、そのまんまタイトルにもなっているヴァン・ヘイレンの「Everybody Wants Some!!」など当時のヒット曲満載で、サントラが欲しくなる。

あと本作に、 ジョン・ランディスの「アニマル・ハウス」をはじめ、あの時代の青春映画の数々へのオマージュ的な趣を感じるのは私だけだろうか。 
ヒロインを演じるゾーイ・ドゥイッチの両親が、80年代青春映画を代表するリー・トンプソンとハワード・ドゥイッチ監督なのも、時の流れの連環であり感慨深い。 
しかしこれ、ほんと何にも起こらない話だから、魅力を説明するのが難しい・・・。

今回は、大学生のパーティーの定番、「ミラー・ドラフト」をチョイス。
水の様に薄いアメリカンマスプロビールの代表格だが、この薄さが熱い野外のスポーツ観戦などにはピッタリで、野球場で飲むととても美味しく感じるのだ。
はっちゃけた大学のクラブハウスパーティーなどだと、ビールサーバーに大量のマリワナがぶち込まれてたりする。
あんまり飲んでないのに、妙に酔いが早かったりすると、それはかなりの確率でマリワナビールだ(笑

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ソーセージ・パーティー・・・・・評価額1650円
2016年11月10日 (木) | 編集 |
ソーセージが知った、世界の真実(笑

最初から最後まで下ネタ全開、アホらしくて最高。
神様(人間)に買われると「楽園に行ける」と信じているスーパーマーケットの食品たちが、真実を知るべく大冒険を繰り広げる。  
セス・ローゲンが、出演だけでなくエヴァン・ゴールドバーグと共に脚本とプロデュース、「スーパーバッド童貞ウォーズ」「ザ・インタビュー」チームによる新たな怪作だ。

似た系統の「テッド」は、ギャグが有機的に繋がって行かないので、あまり乗れなかったが、こちらは構成も巧みで10倍面白い。 
共同監督のコンラッド・ヴァーノンは、ドリームワークス系の「モンスターVSエイリアン」や「シュレック2」で知られる人だが、もう一人のグレッグ・ティアナンは、正真正銘のキッズアニメ「機関車トーマス」の中の人なのだから罪作りな映画である。
※ラストに触れています。


スーパーマーケット“ショップウェル”では、独立記念日を前にした食品たちが、自分たちはいつ買われるのかと、ワクワクしながら待っている。
人間たちに“ゲート”の外に連れ出してもらえれば、そこは楽園だと信じられているのだ。
ソーセージのフランク(セス・ローゲン)は、ホットドックバンズのブレンダ(クリスティン・ウィグ)と相思相愛。
いつかプラスチックのパッケージから出て、心置きなく彼女に挟まれることを夢見ている。
ところが、一度買われた後に返品されたハニーマスタードが「外の世界は地獄」だと言い残し、自殺してしまう。
神様への疑念がわき上がる中、フランクとブレンダはショッピングカートの“事故”によってパッケージから飛び出してしまい、広大なスーパーの荒野に置き去りに。
二人は同じように転げ落ちてしまったラバッシュ(デヴィッド・クラムホルツ)とベーグル(エドワード・ノートン)と共に、元の陳列棚目指して歩きはじめるのだが・・・



ソーセージが男の子で、ホットドックバンズが女の子って、なんて露骨な(笑
しかも良く見ると、バンズのデザインはかなり卑猥だぞ。

だがこの映画、ほとんど小学生男子並みの発想で作られた、お下品極まりない代物ではあるものの、その実かなり社会派なのだ。 

各食品をそれぞれのオリジンからエスニックグループに見立てていたり、つぶれたりサイズが小さかったりする規格外の食品を肉体的なコンプレックスに擬えたり、アメリカと世界の相当にシニカルな風刺になっている。
さらに、人間を信奉する食品たちを通し、宗教の本質に対する批評的な視点もあるのはちょっと「PK ピーケー」を思わせる。
大爆笑しながら、ギャグの元になっている現実を考えさせられる、何気に知的な下ネタ映画なのだ。

しかしこれ、人種ネタが多いのと、アメリカのスーパーに並ぶ食品の知識がないとギャグの意味が分からなかったりする部分があるので、割と人を選ぶかも知れない。 
膨大なディテールから少し紹介しておくと、ドイツ発祥のキャベツの漬物、ザワークラウトの軍団はなぜかジュース撲滅を叫んでいるのだが、これはもちろんユダヤ人(Jew)とジュースを掛けたブラックなギャグ。

アラブやイランで食される薄焼きパンのラバッシュは、成り行きでウッディ・アレンっぽいユダヤのベーグル(エドワード・ノートン上手い!)と爆笑コンビを組む。 
彼らは両方ともヒヨコマメのペーストのフムス(Hummus)が好きというセリフがあるのだけど、フムスはイスラエルとレバノンの間でどちらが発祥かという本家争いがあり、更にシリアとイランが支援し、イスラエルが弾圧するパレスチナの政党ハマス(Hamas)と英語の発音が近い。
ラバッシュが、楽園で77本のエクストラバージンオリーブオイルに浸りたいと言うのは、イスラム過激派が、ジハードで死ねば72人の処女が待つ天国に召されると信じていることへの皮肉。
レズビアンのタコスが横長なのを気にしてるのは、メキシコの女性はお尻が大きいというステロタイプだ。

また、食品たちの世界では賞味期限が即ち命の長さなのだけど、「外の世界は楽園だ」という神話を作ったのは、他の食品より遥かに長い命を持つ保存食たち。
それぞれ微妙に現実の商標とは変えてあるのだが、先住民のシャーマンっぽいマジカルなキャラクターになっているファイアウォーターは、同名の酒もあるけど、一般にバーボンなどの強い蒸留酒の総称。
MR.グリッツは米南部でポピュラーなコーンミールのおかゆで、箱に「南部の魂」って書いてある(笑
もう一人のトゥインクは、「ゾンビランド」とか「WALL・E/ウォーリー」でもネタにされていた、永遠に腐らないという都市伝説のあるお菓子のトゥインキー。
彼ら不死者は、有限の命しかない食品たちの心を救うために、偽りの神話を流布したというのだが、彼らが皆キリスト教保守派の牙城、いわゆる南部バイブルベルトにルーツ持つ食品なのは、明らかに狙っている。
神話に疑念を募らせ真実を知ろうとするフランクと、神を疑ってはいけないというブレンダの宗教観が、世界一の科学立国でありながら、一方で進化論を否定したりする、分断されたアメリカの現実を反映していて面白い。

そして真実を知ったフランクたちによる、“神殺しの儀式”を経て、食品たちは遂に独立記念日に独立を勝ち取るという流れなのだが、アメリカ人にとっては誰でも知っている食品を擬人化することで、世界観に入りやすいだけでなく、自分たちの社会の多分に自虐的な鏡像となる仕掛け。

冒頭で食品たちが歌う、神様を讃えるディズニー・ミュージカル調の歌があるのだけど、何気に音楽がアラン・メンケン本人だったり、一流の人たちが思いっきり遊び倒した大怪作は、細かい所までしっかりと考えられた優れた風刺映画でもあるのだ。
ホモもヘテロも、キリストもイスラムも、みんなで乱交ラブすればピースになるよって、子供には絶対見せられないクライマックスも、各方面にケンカ売ってる。 

ついこの前「ザ・インタビュー」でキム・ジョンウンに報復されたばっかなのに、セス・ローゲンたちもソニー・ピクチャーズも全然懲りないな(笑
懐かしの「スター・ゲート」のパロディで虚構と現実の境界を越えるラストも、ちょっと「LEGO ムービー」的ではあるが、上手い落とし方。

いや・・・もしかして続編あるのかも(;´・ω・)・・・?

今回は南部の魂が詰まったファイアウォーター、「ワイルドターキー」の13年をチョイス。
1855年創業のオースチン・ニコルズ社は、元々野性の七面鳥狩りに訪れるハンターたちが顧客だったことから、この名を付けたという。
同社は元々蒸留所を持たず、購入した原酒をブレンドしていたのだが、1971年にバーボン・ウィスキーの聖地、ケンタッキーの伝統ある旧リピー蒸留所を買収して以来、一貫して自社生産している。
13年ものは深いコクと繊細な甘み、独特のスパイシーな後味が特徴。
庶民の酒なのでCPも高い。

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ショートレビュー「湯を沸かすほど熱い愛・・・・・評価額1700円」
2016年11月06日 (日) | 編集 |
愛を、燃やし尽くす。

自主映画出身の中野量太監督による、長編商業映画デビュー作。
これは期待以上の面白さだ。

余命宣告された主人公が、残された時間でバラバラだった家族の抱える問題を総解決。 

予告編で全部見せちゃってない?と思っていたのだけど、あれはまだまだ序の口だった。
宮沢りえ演じる幸野双葉は、高校生の娘・安済と二人暮らし。
元々銭湯を経営していたのだが、夫の一浩が一年前に蒸発してしまい、それ以来銭湯は休業中。
ところが、ある日意識を失って倒れた双葉が、末期癌を宣告されたことから、彼女は「死ぬまでに、どうしてもやらなければならないこと」に向かって一気呵成に動き出す。
蒸発したダメ夫を連れ戻し、彼が他の女との間に作ったという幼い娘を受け入れ、家業の銭湯を再開、学校でいじめにあっている安済には勇気をもって立ち向かわせる。

と、ここまでは予告通りなのだが、話はまだ終わらないのだ。
実は幸野家の女たちには三代に渡る隠された過去があり、双葉は家族を再生するだけでなく、全ての真相を明らかにして、家族の枠組みを超えた新たな共同体を構築し始めるのである。

家族だけでなく、関わった人々全てに愛を注ぎ、幸せにしようとするスーパーお母ちゃん・双葉。 

なぜ彼女は、それ程までに熱く人を愛すのか。
前半、綿密に張られた伏線がひとつひとつ回収され、秘められていた家族の真実の姿が明らかになる後半は、良くできたミステリを観ている様。
自らは愛されなかった故、逆に自分以外は愛に包まれていて欲しいという双葉の苦しくも熱い想いに、いつしか涙腺は決壊している。 


そして家族だけでなく、双葉の愛を受け取った人々が彼女の想いに応え、タイトルの本当の意味が明らかになるラストは、色んな意味で衝撃だった。 

いやコレは攻めている。
ある意味ここだけホラーなのに、よくぞ製作委員会で通ったものだ。
これが新人監督によるオリジナル脚本の作品であることも注目に値する。
もちろん自主映画での実績があり、テレビディレクターとしての経験も買われたのだろうが、作品企画に携わる者として、今の日本で非原作ものの企画を通すことがいかに難しいか分かるので、本作がある程度の規模と有力な俳優陣を擁して実現したことには拍手を送りたい。


杉咲花のいじめられっ子やオダギリジョーのダメ父さんも好演だけど、本作はやはり宮沢りえのスター映画だ。 
この人、いわゆる美魔女と呼ばれている人たちとは対照的に、44歳の実年齢相応に見えるのだけど、本当に良い歳の取り方していると思う。 

細くって、そのまま消えてしまいそうな繊細な少女性と、パワフルな母性を同時に体現して素晴らしい。
間違いなく、彼女の新たな代表作となるだろう。

今回はロケ地となる足利市のココ・ファーム・ワイナリーから、「農民ロッソ」をチョイス。
嘗て、知的障害を持つ「こころみ学園」の生徒と教師たちが、社会とかかわれるようにと、自ら山を切り開いて58年前に開設した愛の詰まったワイナリー。
農民ロッソは、その名の通り素朴で柔らかな赤。
シチュエーションを選ばず、CPも十分高い。
このワイナリーは11月に毎年の収穫祭を開催していて、ちょっとした地域のお祭りになっていてとても楽しい。

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東京国際映画祭2016 まとめのショートショートレビュー
2016年11月05日 (土) | 編集 |
第29回東京国際映画祭の鑑賞作品つぶやきまとめ。
招待作品の「この世界の片隅に」と「メッセージ」が圧巻の出来栄え。
イタリアとインドで、葛藤する女性たちを描いた「7分間」と「ブルカの中の口紅」は、是非正式公開に繋がって欲しい作品。

7分間・・・・・評価額1650円
11人の怒れる女。
舞台はイタリアの片田舎。
外国企業に買収された工場の運命は、労働者委員会の11人の女たちに託される。
新経営者の要求は「休息時間の7分間削減」ただ一つ。
たかが7分、されど7分。
その数字の持つ本当の意味に気付いた時、白熱した議論が始まる。
勤続30年のベテランから高卒の新人、元難民まで、年齢も出自もバラバラな委員会の女たちの面構えがいい。
経営者に屈して雇用を守るのか、7分を無限に続く譲歩の始まりと捉え、闘うことを選ぶのか、これはイタリアだけでなく労働者の尊厳と権利を巡る世界的なイシュー。
ほとんど密室で展開する会話劇。
非常に演劇的な構成だなと思ったら、やはり実話ベースの舞台があり、その映画化なのだとか。
脚本家は「十二人の怒れる男」からインスパイアされたらしいが、全会一致が原則の陪審員と違い、こちらは多数決だから11人なんだろうな。
見応えのあるパワフルな力作。

名誉市民・・・・・・評価額1550円
シニカルなラテンのブラックコメディ。
偏屈なノーベル賞作家が、アルゼンチンの田舎にある故郷の町から名誉市民にしたいという申し出をうけ、40年ぶりに帰郷する。
望郷と嫌悪の気持ち半々ながら、幼馴染とか元カノとか色んな人が会いに来て、歓迎に思わず感涙。
だが町を捨て大成功した男が帰ってきた事で、主人公に関わる人達の間で波風が立ち、彼の意固地な性格もあって、いつしか町には見えない嵐が吹き荒れる。
作家の話らしく、物語にはあるロジックが仕掛けられているのだけど、心の故郷と現実の乖離はかなりリアリティある。

ザ・ネオン・デーモン・・・・・評価額1550円
冒頭からレフンの自己愛と悪趣味全開。
映像ドラック色の強い変態ホラー映画だ。
欲望渦巻くハリウッドのモデル業界に、エル・ファニング演じるナチュラルビューティの16歳がやって来る。
誰もが一目で彼女の虜になり、トントン拍子にエージェントも仕事も決まる。
彼女も自分の美しさと価値を十分分かっていて、自信満々。
しかし、全てが作り物の虚構の街で、「自然な美」を誇る者は異分子だ。
いつしか彼女への嫉妬と羨望が、周りの女たちを狂わせてゆく。
原色バリバリの映像とチープな電子音楽が、レフン流の退廃の美学を盛り上げる。
作品から透けて見える自分大好きっぷりからすると、ある意味エルちゃんは作者自身なんだろう。
ただ彼女、確かに美しく育ってるんだけど、あんまモデルっぽくは見えなかった。
まあ例によって相当えげつないことやってるので、好みはハッキリ分かれるだろう。
隣のおじさんは、途中から下向いちゃってたよ。

この世界の片隅に・・・・・評価額1800円
本記事アップ済み。

メッセージ・・・・・評価額1750円
未知の宇宙人との意思疎通を託された、言語学者の物語。
普通に考えれば、ハリウッド大作になるとは思えない、テッド・チャンの短編にどうアプローチするのかと思ったが、これは脚色が見事だ。
原作は、宇宙人とのコミュニケーションの現場に絞ったシンプルな話。
対して映画は、もしも意図のわからないUFOがあちこちに居座ったら、世界はどう動くのかと言うシミュレーション的視点を加え、極めてスリリングに盛り上げる。
しかも原作のエッセンスを完全に保持したまま、スケール感のある娯楽映画に昇華しているのだから畏れ入った。
これは言語をモチーフに、世界の見え方と私達の存在する意味を哲学する、美しく詩情あふれる物語。
ランダムに挿入される主人公のフラッシュバック映像の意味を知った時、観客は深い思念の海に沈んでゆくだろう。
優れたハードSFの多くは、同時に味わい深い詩である。
しかし本国公開は来月なのに、日本公開が来年のGW明けって何考えてんだろう。
これ、もしかするとオスカーもあるぞ。
どうせ本国公開後にはネットに情報が溢れるし、これは見方によってはネタバレがいかに無意味かという話でもあるのでw
いっそ原作読んじゃうのが、より深く観られて良いと思う。

ブルカの中の口紅・・・・・評価額1650円
これ大好き。
家族の前ではブルカを被りながらシンガーになる夢を抱く大学生、対照的な二人の男に二股中のエステシャン、甲斐性無しの夫に黙って始めた仕事で出世してゆく三児の母、若い水泳コーチに恋してしまった初老のおばさん。
現代インドに生きる、4人の女性の日常が描かれる。
彼女らそれぞれに秘めたる葛藤があり、欲望があるのだけど、おばさんの朗読する官能小説が物語の展開を絶妙にアシスト。
扱ってるモチーフはシリアスなんだけど、説得力あるキャラクター、ユーモラスな演出と軽快なテンポが、作品を娯楽映画として観やすく纏め上げている。
まだまだ抑圧の強い社会で、女性たちの自立への助走の物語は、ビターだが力強く響いて、グッと感情移入。
まあ女性視点で語られる「女やるのもなかなか辛いよ」って話だから仕方ないけど、男たちは本当にロクな奴がでてこないw
これはまこと愛すべき作品で、日本でも上手く小規模公開したら人気出ると思う。

鳥類学者・・・・・評価額1600円
シュールな流離譚。
ポルトガルの森で遭難した無神論者の鳥類学者が、狂信的な中国人巡礼者に捕まったり、なぜか天狗の扮装の若者たちの儀式を目撃したりの大冒険。
しかし、彼がある大きな「罪」を犯すと、物語は急速に超自然的な様相を帯びてくる。
下敷きになってるのはリスボン生まれの聖人、聖アントニオの伝説。
俗人の鳥類学者が、冒険の旅の結果「今までとは別の存在」になることを、聖アントニオの逸話に擬えたというわけ。
監督は最初これをウェスタンにしたかったそうで、このごった煮っぷりはその名残か。
キリスト教の暗喩が散りばめられた作品なので、ベースになった聖アントニオのことは少し予習するのが無難。
まあシュールなテリングだけでも面白いけど。

CYBORG009 CALL OF JUSTICE 第1章・・・・・評価額1400円
面白かったが、後半ぶっ飛び過ぎてついて行けなかった「RE:CYBORG」と違って、今回はぐっとオーソドックス。
やっと穏やかな生活を手に入れた00ナンバーのサイボーグたちが、予期せぬ戦いに巻き込まれる。
舞台が殆ど00たちの隠れ家だけだったり、キャラクターアニメーションが今時のCGアニメにしては熟れていないなど、低予算を感じさせる部分はあるし、30分一区切りのTVっぽい構成なのは気になるが、これはこれで面白い。
3部作の第一部だが、切りのいいとこで終わってる。
神山総監督によれば、ジョーとよく似ているが、信念の異なる男(演者は3代目ジョーの井上和彦!)がラスボスとして立ちはだかるそうで、これからの展開が楽しみだ。

オリ・マキの人生で最も幸せな日・・・・・評価額1550円
異色のボクシング映画。
フィンランドで初めて開かれる世界戦の挑戦者となったオリ・マキは、試合直前に恋をしてしまい、準備が手につかなくなってしまう。
プロボクサーにとって「最も幸せなこと」は、チャンピオンになることのはず。
では1人の人間としては?
周りが取らぬ狸の皮算用で試合に向けて勝手に盛り上がる中、二つの葛藤に直面した主人公は、プロとしてはかなり危なっかしい。
彼にとって「最も幸せな日」は果たして来るのか。
オリ・マキは実在の人で監督の同郷とか。
彼は創作者の孤独なプレッシャーを抱え、オリ・マキの話に大いに共感したらしい。
60年代の空気を伝える、モノクロ16ミリの映像も味わい深い。
ホッコリさせてくれるボクシング映画は珍しい。

バース・オブ・ネイション・・・・・評価額1650円
KKKの誕生を描いたグリフィスの「國民の創生」から、1世紀後に生まれた逆視点。
1831年に起こった、黒人奴隷ナット・ターナーの反乱と、彼が蜂起するまでの葛藤の日々が描かれる。
聖書の説教師でもあったターナーの話ゆえ、キリスト教要素が非常に強い。
冒頭の儀式で語られる様に、ターナーは単なる反乱者ではなく、聖書を誤って解釈する悪しき白人から奴隷たちを救い出す、モーゼでありキリストだ。
上映後のティーチインでも誰かが言っていたが、全体「ブレイブハート」ぽいと思ってたら、町山さんによるとネイト・パーカー監督はメル・ギブソンに助言を仰いでたらしい。
だからなのか、やや象徴性に振りすぎた気もするが、映画史上の大先輩に大胆にも喧嘩を売ったパワフルな力作。
「奇妙な果実」を挿入歌として、180年前の出来事と20世紀を橋渡しし、現在に繋げる工夫も良い。
グリフィスとパーカー、彼らが描いた二つの"NATION"は未だ本当の意味で融合していない。

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この世界の片隅に・・・・・評価額1800+円
2016年11月02日 (水) | 編集 |
どっこい、私は生きている。

「夕凪の街 桜の国」で知られる、こうの史代の名作コミックを、「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が、6年越しのプロジェクトとして長編アニメーション映画化。
戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女の目を通した、市井の人々の戦時下の“日常”の物語だ。
同じ時代の広島を描いた「夕凪の街 桜の国」のアナザーストリーとも言える作品で、どこにでもある普通の暮らしが、戦争という暴力によって少しずつ崩れ、誰もが何かを失ってゆく時代の情景となって、緻密な考証に裏打ちされた美しくリリカルなアニメーションで描かれる。
充実したボイスキャスト、特に語り部でもある主人公・すずさんに魂を吹き込んだ能年玲奈改め、のんの演技が圧倒的に素晴らしい。 
全ての作り手の想いがスクリーンに結実した、珠玉の傑作である。
※核心部分に触れています。

浦野すず(のん)は、広島市の南端に位置する江波で育った絵が得意な少女。
昭和19年の初春、18歳になった彼女は、故郷から20キロ離れた軍港の街、呉に暮らす北条家の長男で、軍法会議の事務官をしている周作(細谷佳正)の元に嫁ぐ。
すずは周作を知らなかったが、ずっと以前の子供時代に、周作がすずを見初めたのだという。
港を見下ろす山裾にある北条家は、すず夫婦と足の悪い義母・サン(新谷真弓)、海軍工廠で働く義父の円太郎(牛山茂)、出戻りの義姉・径子(尾身美詞)とその娘・晴美(稲葉菜月)のにぎやかな六人家族。
若き主婦となったすずは、次第に物資が不足してゆく中、工夫を凝らして一家を盛り立てる。
しかし、やがて戦火は激しさを増し、帝国海軍の拠点である呉は、連日米軍の猛爆撃にさらされ、毎日眺めていた軍艦の群れは炎に包まれ、街は焦土と化してゆく。
そして昭和20年8月6日の朝、すずは故郷広島の空に閃光が走り、見た事もない巨大な雲が立ち上がるのを目撃する・・・・


これは太平洋戦争中、18歳で広島から軍都・呉に嫁いだ平凡な少女・すずさんと二つの家族、彼女の人生に関わる沢山の人々の物語。
こうの史代の原作は全三巻。

脚色は原作に極めて忠実に成されているが、若干削られた部分もあれば、逆により細かく考証が深められた所もあり、基本よりすずさんに寄り添う内容になっている。
情報量が多いこともあって、物語の展開するテンポは非常に早く、全くダレる間が無い。
それでいて、ひとつひとつのシーン、カットにはゆったりとした空気が流れ、画面の隅々まで極めて丁寧に描写されているのである。
制作チームは貴重な資料写真に写っていた店や物だけでなく、そこにいた人物までをも突き止め、話を聞ける者には直接取材したという。 
本作が描くのは“戦争”だけではない。
たとえ世界中に狂気が蔓延し、何百万の兵士たちが殺し合っていたとしても、人間が暮らしている限り、生活があり、日常がある。 
ここにあるのは、戦争を含めた時代そのものであり、市井の人々のリアルな生活の記憶なのだ。


すずさんは今でいうところのちょっと天然な人なのだが、人の好い北条家の家族とともに、ごく自然に新婚生活をスタートする。
物語の前半となる昭和18年から19年半ばにかけては、後にB-29の基地となるサイパン島はまだ陥落しておらず、戦局は急速に悪化しつつあるものの、庶民の生活を大きく脅かす程には至っていない。
凶悪な暴力は、その姿を南方の島々や中国大陸に留め置かれ、銃後の人々はその本当の恐ろしさを未だ知らないのである。
それでも、次第に物資の供給が減ってゆく中、すずさんは野草を献立に盛り込むなど不器用ではあるものの工夫を凝らし、貧乏なら貧乏なりに、物が無いなら無いなりに毎日を楽しんでいて、北条家には笑いが絶えない。
彼女には、初恋の相手である水原哲という幼馴染がおり、映画版では原作から役割が変わっているが、周作にも嘗て関係があったらしい白木リンという女性がいる。
まだ若い二人の、お互いに対する嫉妬心も人が人を想う心の複雑さを感じさせ、また夫婦の絆を深める重要なアクセント。
重巡青葉に乗組む海軍の水兵である哲は、すずに「ずっとこの世界で普通で、まともでおってくれ」と言うのだが、彼女はどんな時代にあっても、普通に生きることを諦めない人なのだ。

しかし、物語の後半になると、世界は徐々に変貌する。
重要な軍事目標が集中する呉には、米軍機がひっきりなしに来襲し、“明日”は確実にある物ではなくなってゆく。
吹き荒れる戦争の嵐は、普通でいることをもはや許さない。
昭和20年6月、すずさん目の前で炸裂した爆弾は、姪の晴美の幼い命を奪い去り、彼女自身も爆風で右手を失う。
そして、その年の8月6日、広島の空に閃光と共に巨大な雲が立ちあがり、15日には玉音放送が流れ、遂に戦争は終わる。
信じていた日常はまやかしで、暴力で支配した世界が、別の暴力によって打ちのめされただけであることを思い知らされた時、すずさんは悔しさから泣き崩れるしかない。
誰もが何かを、誰かを喪失し、もう戻らないと知りつつ、探している時代。
すずさんの右手だけでなく、広島の実家の両親は原爆で亡くなり、子どもの頃、鬼いちゃんと恐れていた兄も戦死し、ただ一人生き残った妹にも原爆症の症状が出ている。

それでも、すずさんは生きている。
原作に「私たちは記憶の器」と言う台詞がある。
絵が好きなすずさんは、帰郷した際に広島の風景をスケッチブックに残すのだが、その街は絵を描いた彼女の右手と同じく、永遠に失われてしまった。
だが、すずさんをはじめ生き残った者たちの心の中に、嘗て存在していた人や物の記憶は残り続ける。
そんな人々の姿が描かれた本作もまた、正に現在へと繋がる記憶の器だ。 
驚くほど緻密に作り込まれた生活描写を背景に、リアリティ溢れる登場人物の心の機微が伝わってくる。
まるでこの時代にタイムトラベルして、映画に登場する人たちと出会い、しばし生活を共にしたかのような、不思議な感覚。

実写でなく、原作のタッチを生かしたアナログ感のある詩的なアニメーション表現が、より“器”としての普遍性を増している。
爆弾と砲弾の破片が降り注ぐ、恐ろしくリアルな戦争描写がある一方、漫画的なキャラクターの豊かな表情には、誰もがほっこりとさせられ感情移入を拒めない。
人間界の争いなど関係なく存在する豊かな自然の描写は、アニメーション界のマリックと言っても過言ではないだろう。

もしもすずさんが実在して、生きていれば今91歳。
私はこの映画を観て、彼女より少しだけ上の世代の、今は亡き祖父母にとても会いたくなった。
彼らは戦争中のことは殆ど語らなかったけど、いったいどんな記憶を心の内に秘めていたのだろう。
もう時間は多く残されていないかも知れないが、あの時代を生きた人々は間違いなく今もこの世界に存在しているということを、本作から改めて実感させられた。
せめて、晴美と同い年の父母から、僅かでも記憶を受け継ごう。

深く長い余韻を引くラストカットから、原作のその先を描くエンドクレジットロール、日本映画史上最高額を記録したクラウドファンディングのサポーターロールに至るまで、スクリーンに映し出される全てがきちんと作品として表現されているのも素晴らしい。
原作の、消えてしまった右手が語るという描写を、コトリンゴの歌に置き換えるというアイディアも秀逸。
破壊された広島の街で、周作と再会したすずは言う。
「周作さん、ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」
この世界の片隅で、小さな宝石のような映画と出会った。
作ってくれて本当にありがとう。
この映画は、ヒットさせねばならない。


今回は、戦後のすずさん夫婦にエールを贈りたく、福井県鯖江の加藤吉平商店の「梵(ぼん) 純米大吟醸 プレミアムスパークリング」をチョイス。
日本酒スパークリングは他にもあるが、アルコール度数の低い甘ったるい飲み物で、正直美味しいとは思えない物が大半。
しかし、これは完全に別格だ。
シャンパーニュと十分と渡り合える傑作で、値段もこの内容なら十分納得できる。
精米歩合20%の生原酒を、酵母と共にシャンパン瓶で二次発酵させたもの。
やわらかな吟醸香が微細な泡と共にはじけ、スッキリとした喉ごしとふくよかな味わいは、飲む喜びとなって至福の時を演出してくれる。

それにしても、驚異的に充実している今年の邦画。
実写だけでなく、8月の「君の名は。」、9月の「聲の形」、そして本作と、長編アニメーションにも映画史級の傑作がほぼ月替わりで現れているのは、まことに驚くべき事だ。 

本当に隕石でも落ちるんじゃなかろうか。

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