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ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち・・・・・評価額1650円
2017年02月12日 (日) | 編集 |
ミス・ペレグリンの屋敷は、何を象徴しているのか?

異才ティム・バートン監督の最新作は、特殊能力を持った子どもたちが暮らす屋敷を訪れた孤独な少年が、迫り来る超常の危機に直面し、自らの宿命に立ち向かう物語。
すっかり成長したエイサ・バターフィールドが、主人公のジェイクを好演。
子どもたちの守り手である屋敷の主人、ミス・ペレグリンをエヴァ・グリーンが演じる。
原作は短編映画作家でもあるランサム・リグズが、収集していた古い写真などの遺物から着想したというファンタジー小説「ハヤブサが守る家」だが、設定にはなんとなく既視感が。
そう、「X-MEN」シリーズに出てくる、外の世界では偏見と迫害にさらされるミュータントたちのサンクチュアリ“恵まれし子らの学園”的物語を、バートン流に作るとこうなるのだろう。
※核心部分に触れています。

現在のフロリダに住む孤独な少年ジェイク(エイサ・バターフィールド)は、唯一の理解者だった祖父のエイブ(テレンス・スタンプ)が怪物に殺されるのを目撃。
エイブの残した言葉に従って、彼の思い出の地であるウェールズのケルン島を訪れ、永遠にループする24時間の時空に隠された、奇妙な屋敷を見つける。
そこはハヤブサに変身することが出来るミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)を守護者に、空中浮遊出来る少女や、透明人間の男の子、常に袋を被った双子に、無機物に命を吹き込むことのできる少年、後頭部に鋭い歯を持つもう一つの口がある女の子ら、奇妙な子どもたちが暮らす秘密境。
ここの時間は1943年の9月3日を永遠に繰り返すことで、外の世界から守られているのだが、子どもたちの目を食べようとする怪物”ホローガスト”を率いる、バロン(サミュエル・L・ジャクソン)という男に狙われている。
エイブは少年時代をここで過ごし、やがてホローガストと戦うために、ループを出て行ったという。
実は、普通の人間は時のループを通ることができず、ジェイクもまた自分がエイブから受け継いたある特殊な能力を持った”奇妙な子ども”であることを知る・・・・

ここしばらく原点回帰路線が続いているバートン作品だが、本作もその傾向が強い。
ホラ吹き爺さんの話を追っていったらホントだった!というのは、私的バートンのベスト「ビッグ・フィッシュ」を思わせるし、「シザーハンズ」や「フランケンウィニー」と同じく、一般社会では生きられない優しき異形の者たちへの愛が溢れ出す。
「トイ・ストーリー」のシドが作っていた様な、命を吹き込まれた不気味なオモチャのコマ撮りバトルやら、クライマックスにワラワラと現れるガイコツ兵士など、ハリーハウゼンへの熱いリスペクトを含め、バートンの好きなもの全部入り、大人気ない大人の夢のオモチャ箱といった映画だ。
因みにガイコツ兵士は原作には登場しないのだが、どうしても出したくなって加えてしまったらしい(笑

ミス・ペレグリンの能力によって、24時間の無限ループの中で生きる奇妙な子どもたちを、彼らを狙う悪漢と怪物から守る筋立てに、ジェイクが自分の居場所を見つける成長物語を組み合わせる骨子はシンプル。
だがこれは時間SFの要素もあるので、ディテールは少しややこしい。
設定では、世界のあちこちに時間ループに隠された秘密境が存在していて、それぞれの場所の時間はループが作られた時代に留め置かれる。
ジェイクの生きている基本の時代設定は2016年だが、ミス・ペレグリンの屋敷のループは1943年作られたので、永遠に1943年のまま。
もし何らかの事態が起こりループが閉じると、その時点から時が動き出す。
逆に過去の時代から、未来のループに入ることもできるのだけど、その場合子どもたちは“時間に追いつかれて”年老いてしまうので、未来に留まれるのは僅かな時間のみなのだ。
物語の終盤は、動き出した1943年と2016年に作られたループを行ったり来たりするので、「え―と、いまはどっちの時代の時空?」とちょっと混乱する。
もっとも、パラドックスの部分はかなり強引だけど、世界観がリアルなSFというよりもファンタジーよりなのでそれほど気にはならない。
クライマックスのミス・ペレグリンの救出劇プラス、悪漢バロンとホローガストとの戦いのシークエンスは、それぞれの持つ能力もちゃんと生かされている。
双子の一発芸には笑ったが、彼らが一般社会で暮らせない理由である“不自由な能力”が“自由をもたらす武器”となる展開は胸のすくようだ。

しかしこの映画は、単にバートン好みのフリークスたちが、アドベンチャーを繰り広げるだけの映画ではない。
本作のファンタジー設定の裏側には、巧妙に戦争と迫害にまつわる暗喩が隠されているのである。
物語の発端となるエイブが、ナチスに占領されたポーランドから逃げて、ウェールズにやって来たユダヤ人という設定がキーだ。
記憶に新しいドキュメンタリー映画「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」で描かれていたように、英国はヨーロッパ大陸で迫害されていたユダヤ人の子どもたちを難民として受け入れていた。
おそらく、エイブもまた英国に逃れることができた、幸運なユダヤの子だったのだろう。
エイブはエイブラハムの短縮形で、旧約聖書でユダヤ人の祖とされるアブラハムの英語読み。
ジェイクも聖書の登場人物でアブラハムの孫、ヤコブの英語読み短縮形だ。
ここまで揃えば、エイブとジェイクにしか見えない怪物ホローガストが、具現化された"ホロコースト”であることは明らかだろう。
つまりエイブとジェイクは全てのユダヤ人の象徴であり、迫害される子どもたちのための隠れ家であるミス・ペレグリンの屋敷の物語は、第二次世界大戦中にユダヤ人の子どもたちを襲った出来ごとの映画的再現であり、メタファーなのである。
ユダヤの教義では汚れた生き物とされる、ハヤブサが子どもたちの守り手であることも、出自に対する不寛容の否定と考えると納得だ。
ちょっとダークなファンタジーを通して、歴史上の悲劇を反転させ、多様性と寛容を語る試みは成功していると思う。

ひとつ引っかかるのは、ケルン島のループの年代設定。
劇中で屋敷に爆弾が落ちるのは1943年の9月3日の夜中。
しかし、この時期にはもうドイツ軍の襲撃はかなり散発的になっていたはずで、東海岸や内陸ならいざ知らず、映画のように何の戦略目標も無さそうなウェールズの西の果ての離島くんだりまで来ることはありえないのではないか?と思って調べてみると原作でループが作られるのは1940年の9月3日じゃないか。
これなら、英国本土上陸を狙ったドイツが英国を猛爆撃したバトル・オブ・ブリテンの真最中だから、まだ可能性がある。
ならばなぜ考証を崩してまで3年も時期をずらしたのか、何か理由があるはずなのだけど、少なくとも映画を観ただけではよくわかない。
何かにまつわる日だとしても、なにしろ戦争中で毎日何かしら起こっているし、この日の最大の事件たる連合軍のイタリア本土侵攻は、映画の内容とはあまり関係ない。
唯一思い至ったのは、ジェイクが1943年に戻るための旅路の途中、1942年に海軍に入ったというエピソードとの整合性を取るためだけど、タイムパラドックスを重視した脚色とは思えないので、その可能性も薄そうだ。
「1943年9月3日」は、とりあえずバートンからの謎かけとして頭の隅に置いておこう。

今回はダーク・ブルーの衣装を纏ったミス・ペレグリンのイメージで、「ブルー・レディ」をチョイス。
ブルー・キュラソー30ml、ドライ・ジン15ml、レモン・ジュース15ml、卵白適量を強くシェイクしてグラスに注ぐ。
卵白の細かい泡が、口当たりをとても柔らかくしている。
ブルー・キュラソーのオレンジ風味とジンの清涼感のマッチングもよく、フルーティで優しい味わいのカクテルだ。

ところで、爆弾が落ちる瞬間に時間を巻き戻し、永遠の無限ループを生きるという設定は萩尾望都の傑作短編「金曜の夜の集会」と同じ。
何度も繰り返すうちに、少しずつ変化が起こるのもよく似ている。
まあ、あっちは1年でこっちは1日だけだし、偶然なんだろうけど。

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