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キングコング: 髑髏島の巨神・・・・・評価額1750円
2017年03月28日 (火) | 編集 |
怪獣vs狂人!

いや~、呆れるほど面白かった。
ギャレス・エドワーズ版「GODZILLA ゴジラ」と世界観を共有する、レジェンダリー・ピクチャーズの怪獣シリーズの最新作。
1933年のオリジナルから数えて、正規作としては東宝版を含めて8作目の「キングコング」である。
南太平洋に浮かぶ謎の島、髑髏島(Skull Island)を舞台に、侵入者である調査隊と島の守護神キングコングとの戦いが描かれるが、シリーズのビギニングという位置付けのため、過去の作品と違ってニューヨークには行かず、基本的にこの島だけで完結するのが特徴だ。
脚本は、「GODZILLA ゴジラ」から続投のマックス・ボレンスタインと「ナイトクローラー」のダン・ギルロイ、「ジュラシック・ワールド」のデレク・コノリー。
監督は、ラスプーチンみたいな顎髭がコングよりインパクト大、32歳の俊英ジョーダン・ヴォート=ロバーツが務める。
作品の間口が非常に広く、普通の観客にも十分楽しめ、マニアを満足させる未見性とオマージュのバランスも絶妙な、傑作エンターテイメントだ。
※核心部分に触れています。

ベトナム戦争末期の1973年。
アメリカ政府の特務研究機関モナークのビル・ランダ(ジョン・グッドマン)は、南太平洋にあって、常に嵐に取り囲まれている謎の島・髑髏島の調査を計画。
ジャングルのスペシャリストである元SASの軍人ジェームズ・コンラッド(トム・ヒドルストン)を案内役として雇い、米軍のプレストン・パッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)率いる軍のヘリコプター部隊と共に島への上陸に成功する。
しかし、地質調査のために爆弾を爆発させたところ、彼らの前に突如として巨大な類人猿”コング”が姿を現し、あっと言う間にヘリコプター部隊を全滅させてしまう。
散り散りになって生き残った人間たちは、二つのグループに分かれて迎えのヘリが来る島の北部を目指す。
だがこの島にいるのは、コングだけではなかった。
巨大な生物たちが支配する島で、人々は一人また一人と命を落として行く。
そんな時、コンラッドが指揮するグループは、高い塀に囲まれた原住民の村で、第二次世界大戦中にこの島に墜落した米軍パイロット、ハンク・マーロウ(ジョン・C・ライリー)と出会うのだが・・・


この映画のプロモーション中、なぜか「地獄の黙示録」のキービジュアルそっくりなポスターが発表されて話題を呼んだ。
ポスターが作られた理由は、映画を観ると一目瞭然。
これは、オリジナル「キングコング」の基本プロットと「地獄の黙示録」のディテールを巧みにミックスし、怪獣映画+秘境探検映画+戦争映画を一本で全てやった作品なのである。
トム・ヒドルストンが演じるジェームズ・コンラッドの役名は、「地獄の黙示録」の原作「闇の奥」の作者ジョセフ・コンラッドからの引用だろうし、ジャングルの奥で彼らを待っているマーロウは、「闇の奥」の主人公の名前だ。
そして、マーロン・ブランドが演じたカーツ大佐の役に当たるのが、コングへの復讐心から次第に狂気を帯びてゆくサミュエル・L・ジャクソンのパッカード大佐。
本作は基本的には、コングとパッカードという、全くサイズの違う二人の”怪物”による死力を尽くしたvsもの。
怪獣と人間が、思いっきりガン飛ばし合う映画は初めて観たよ(笑

ベトナムでの戦役で多くの部下を死なせた贖罪意識ゆえ、最初からちょっと壊れ気味のパッカード指揮下のヘリコプター部隊が、髑髏島を取り巻く嵐に突入するシーンは「天空の城 ラピュタ」を思わせる。
嵐を抜けた部隊のBGMに、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」代わりにブラック・サバスの「パラノイド」をかけるセンスが最高だ。
しかし侵入者たちは、すぐにこの島がただの孤島ではないことを身を持って知るのである。
突如として現れる、コングのスケール感の描写が素晴らしい。
本作のコングは、ゴジラと戦うために45メートルまでスケールアップした東宝版を除けば、過去最大の31.6メートル。
ショットによってかなり縮尺を変えていると思うが、カメラワークが巧みで怪獣と間近で対峙するリアリティが感じられ、本当にとんでもなく巨大で恐ろしく見えるのだ。
パッカードにとって部隊を壊滅させ部下を殺したコングは、ベトコンへの恨みも積み重なって絶対に倒すべき敵となるのだが、最初に自分の行為が相手を怒らせた事実は彼の中から綺麗さっぱり忘れられている。
コングという未知の存在との遭遇と戦いを通して、"敵"とは自らが求めて初めて存在するもので、憎しみという燃料によって戦争の狂気は増幅してゆくというテーマが、ベトナム戦争末期という時代性と相まって浮き彫りになるという訳だ。

島の世界観は、過去の作品で描かれた髑髏島に、「もののけ姫」をミックスした感じ。
この島では動物たちは巨大で、力なき原住民たちは彼らを神と崇め畏怖の念を抱きながらひっそりと生きている。
コングの天敵である、髑髏の様な頭を持ち、後ろ足が無く前肢のみで這い回る巨大トカゲのスカル・クローラーに、馬鹿でかい水牛型のスケル・バッファロー、大木ほどもある大ナナフシに、明らかに東宝の「キングコング対ゴジラ」オマージュの大ダコ風水性怪獣、さらに竹林に擬態する巨大蜘蛛は、クモンガかと思ったら何と六本木ヒルズの蜘蛛のオブジェ、ママンからの発想だとか。
蜘蛛が脚で兵士を串刺しにするのは、モロにルッジェロ・デオダードの「食人族」だったが、イーライ・ロス以外にもハリウッドにこの映画の信奉者はいるんだな(笑
まあ、このあたりのオマージュや引用はまだ分かるのだが、意外だったのは松本零士の「戦場漫画シリーズ」的エピソード。
太平洋戦争中に島に墜落したマーロウには、最初は命を奪い合う敵であり、後に共に島からの脱出を目指したグンペイ・イカリという日本人のバディがいた。
同じ島に敵味方の兵士が降り立ち、のちに和解するのはジョン・ブアマンの「太平洋の地獄」っぽいが、壊れた飛行機の部品をニコイチしてイカダを作って脱出というアイディアの元ネタは、おそらく同じ設定の「戦場漫画シリーズ」のエピソード「雷撃艇13号」あたりだと思う。
なかなか渋いところだが、この映画の作り手のマニアックさなら十分あり得るだろう。
もっとも、新たな要素は多く導入されているものの、本作はあくまでも長い歴史を持つ「キングコング」の一作である。
全体的には、1933年のオリジナルを強く意識した作りで、ニューヨークには行かないものの、ヘリとの空中戦はあるし、コングは一度は"鎖"に囚われ、美女には弱いというお約束も踏襲されていて、キャラクターイメージはしっかりと守られている。

全編見せ場の連続で、怪獣も沢山出てきてお腹一杯、全く飽きる暇がないのだけど、一方で決して長尺という訳でもないのに、結構な数の登場人物をさばき切り、人間ドラマも見応えがある。
メインキャストから端役に至るまで、無駄なキャラが一人もいないのは見事だ。
唯一不満があるとすると、キャラクターが誰一人として変化しないこと。
この物語は、敵への憎しみから狂気に支配されてゆくパッカードと、憎しみから脱却して敵との友情を築いたマーロウが表裏の関係となっている。
二人の体現するテーゼとアンチテーゼのぶつかり合いはあるものの、彼らはすでに完成されたキャラクターで、個の中の葛藤による心情の変化はない。
話を進行させる役回りであるコンラッドの中に僅かでもこれがあると、物語の厚みが違ったはずで、現状ではパッカードとマーロウに全部持ってかれてしまって、印象が薄いのが勿体無い。
とはいえ、ビジュアルだけの超大作にとどまらず、これだけテーマ性があり完成度の高いドラマを構築したのは十分称賛に値する。

しかし、本作で一番胸が熱くなったのは、尿意に耐えてやたらと長いエンドクレジットを乗り切った後である!
なんとなく最後にマーベル的なオマケがあるのは知っていたものの、予想を遥かに上回るインパクトに、劇場ではオタクな観客たちから思わず驚嘆の声と拍手が起こっていたし、私もあの瞬間脳内に変な汁が出た(笑
いや〜、2019年がもの凄く楽しみだ。
その後の2020年には既に「Godzilla vs. Kong」が一足先にアナウンスされてる訳だけど、両者の体格差はどうするんだろう。
仮に2020年が舞台だとすると、本作から47年経っているから、コングがその分成長してデカくなったとしても、100メートル越えのゴジラとは勝負にならない気がするのだけど。
まさか増殖するのだろうか?

増殖と言えば、本作の最大の謎が突然増殖するヘリコプターだ。
調査隊を乗せた貨物船アテナ号には前部甲板に5機、後部甲板とその奥の格納庫に3機が確認出来るのだが、上空に来るとなぜか13〜14機に増えてる。
しかも物語の終わりには更に3機が迎えに来るので、あの小さな貨物船に海自のいずも型ヘリ空母の搭載機数を超える17機が隠れていたことになる。
レジェンダリーの怪獣映画は「パシフィック・リム」でも、たった8機のチヌークで2000トンもあるイェーガーを空輸しちゃってたし、ヘリの扱いがやたら雑だ(笑

今回はもちろん、家に帰ってテレビでメジャーリーグを見ながら飲みたい「バドワイザー」をチョイス。
1876年に発売されてから、実に140年の歴史を誇るアメリカン・ビールの代表格。
本作ではパッカードとマーロウがこれを飲んでいる。
水みたいに薄いのが、カラッとした気候でのスポーツ観戦にはぴったりで、知らぬ間にピッチャー1つくらい簡単に空けられてしまう。

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