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2017年04月19日 (水) | 編集 |
成長しなくったって、イイじゃないか!
あの懲りない四人が帰ってきた。
ドラッグの退廃に浸る労働者階級の青年たちを描き、90年代を代表する刹那的青春映画となった「トレインスポッティング」の20年ぶりの続編である。
監督のダニー・ボイル、脚本のジョン・ホッジをはじめ、主要なスタッフ、キャストが再結集。
いま、なぜ再びの「トレインスポッティング」なのか。
前作のラストで、仲間たちの金を持ち逃げしたマーク・レントンを筆頭に、やりたい放題の破天荒な青春を送っていた四人の若者たちも、もう40代も半ば。
20年という歳月の経過があったからこそ見えてくる、人生の悲哀と衰えぬダメ人間パワーは、彼らと同じだけ歳をとった観客にとって希望であり絶望だ。
嘗ての青春映画は容赦なく心にビシビシ刺さる、素晴らしき"中年映画"となって見事な帰還を果たした。
仲間たちを裏切り、麻薬の売買で得た大金を持ち逃げしたマーク・レントン(ユアン・マクレガー)が、20年ぶりに逃亡先のオランダから故郷のエディンバラに帰ってくる。
既に母は亡くなり、彼を迎え入れるのは年老いた父だけ。
若き日を共にした悪友たちが気になったマークは、唯一分け前を渡していたジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)を訪ねるが、彼は自殺の真っ最中。
成り行きで助けるマークだったが、スパッドは相変わらずどん底の生活を送っていた。
一方、時代遅れのパブを相続したシック・ボーイことサイモン(ジョニー・リー・ミラー)は、ブルガリア人のパートナー、ベロニカ(アンジェラ・ネディヤルコーバ)と組んで、彼女を買った富裕層の男たち相手のゆすり家業。
20年前の事件で懲役を喰らったベグビー(ロバート・カーライル)は、仮釈放申請が却下され今も塀の中だ。
それぞれ崖っぷちのマークとスパッド、サイモンは昔のわだかまりを抱えつつ、パブを売春宿に改装するプランを立てて動き出す。
そんな時、刑務所でわざと怪我をして偽装入院したベグビーは、まんまんと脱獄に成功。
エディンバラの妻子の元に戻ってくるのだが・・・・
1996年に公開された前作は、「人生を選べ」と言いつつも、ドラッグの幻想に絡め取られ、猛烈に疾走しながら、実際には何処へも行くことのできない若者達の話だった。
マーク・レントンとヤク中仲間は、不況のエディンバラで、何者にもなれない現実をドラッグで紛らわし、いつ終わるともしれない怠惰な日常を生きる。
セコイ犯罪で小銭を稼ぎ、パブで酔ってはナンパとケンカ、たまにドラッグ断ちを試みるが挫折の繰り返し。
だが、彼らの青春の日常は徐々に崩壊し始める。
スパッドはブタ箱にぶち込まれ、シック・ボーイはラリっている間に、生まれたばかりの我が子を亡くし、注射針からHIVに感染したトミーはエイズを発症し死亡。
どうにもならない現実を打破するために、最後に選んだのもまたドラッグの取引というしょうもなさだったが、少なくとも彼らはまだ若く、未来の可能性は無限で楽観的だった。
前作の刹那的青春の背景には、若者たちの中でマグマの様に胎動している、圧倒的な熱量があったのだ。
あれから早20年。
時代は移り変わり、「トレインスポッティング」が長編二作目の若手監督だったダニー・ボイルは、「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー賞を獲得して巨匠と呼ばれる様になり、あの映画が初主演だったユアン・マクレガーは、今ではジェダイ・マスターのオビ=ワン・ケノービとして世界中の誰もが知っている。
しかし、映画が始まって40代のおっさんになった四人が続々と登場すると、何も変わってないじゃないか!(笑
冒頭のルームランナーが暗喩する様に、彼らは20年経っても、前作のラストで足踏みしているだけなのだ。
当時まだ統合途中だったヨーロッパは、一回りしてブレグジットにより統合崩壊の危機にある。
偶然だろうが、金を奪って唯一旅だったはずのマークが、逃亡先のオランダで居場所を失い、止むを得ずエディンバラに帰ってくるのも、なんだか再発しつつある英国病の象徴に思えてくるのが可笑しい。
映像も音楽も作品世界は相変わらずスタイリッシュだが、触れば切れそうな危うさはもう無い。
四人は全く成長していないけれど、やはりもう後先考えずに突っ走れるほど若者ではないのだ。
久しぶりに戻った実家で、マークが昔のレコードをかけようとして、思わず止めてしまう描写がいい。
音楽はこの世界の時代性そのものであり、当時の音楽を聴けば自分が年をとったことを否が応でも突きつけられてしまうからだ。
20年前の事件のわだかまりを胸のうちに抑えつつ、結局のところ連むしかないマーク、サイモン、スパッドの三人と、マークの帰還を知り復讐に燃えるベグビー。
やってことは以前とほとんど変わらないが、若気の至りの自暴自棄も、それが20年も続けばもはやぶざまだ。
成長しない男たちとは違って、一人ちゃんとした大人になっている、ダイアンとの対比が切ない。
だが、そんな彼らを映画は決して絶望的なだけには描かないのである。
前作のドラッグに変わって、四人を縛るのは"過去"だ。
本作は完全な続き物で、この作品の中に前作を内包しているのだけど、現在の葛藤を生み出している過去の様々な因縁が、スパッドが彼なりの視点で書いている"回想録"によって、物語として昇華されるメタ的な構造になっているのが面白い。
モチーフは何処にも行けないダメダメな男たちで、やっていることも大して変わらないのだけど、前作があっての本作という入れ子構造と、20年の歳月の経過が全く別のアプローチを可能にしているのである。
四人は20年かけて振り出しに戻った訳だが、何処にも行けてないということは、逆に言えばここからまだ何処にでも行けるということだ。
彼らはこれから真の大人になるのかも知れないし、また同じループを繰り返すだけかも知れない。
とことん情けないおっさんたちの悪あがきは、今まさに何処かへと旅立とうとしている若者たちが観ると、多分あまりピンとこないのではないかと思う。
しかし、今四十代後半のほぼ同世代で、20年前に前作を観てすっかり魅了された元若者としては、成長できない自分の鏡像を見せられているようで、色々身につまされる話だった。
彼らをもっと残酷に描くことも出来たと思うが、微妙な希望を残してくれたのには、正直なところ思わずホッとした。
20年前の「トレインスポッティング」は、青春真っ只中だった私たちにとって「俺たちの映画」だったが、「T2 トレインスポッティング」も、中年になった私たちの、愛すべき「俺たちの映画」だったのである!
今回はスコットランドのクラフトビール醸造所、ブリュードッグの「ハードコア・インペリアルIPA」をチョイス。
名前の通り普通のビールでは物足りない人のための、ハードコアなIPAだ。
強いホップ感と驚くほどフルーティーで複雑なアロマが、ゆっくりと脳を酔わせてゆく。
ブリュードッグは、他にも様々なユニークなビールをプロデュースしていて、ハードコアほど強くなくていいという人には、ややマイルドな「パンクIPA」もオススメだ。
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あの懲りない四人が帰ってきた。
ドラッグの退廃に浸る労働者階級の青年たちを描き、90年代を代表する刹那的青春映画となった「トレインスポッティング」の20年ぶりの続編である。
監督のダニー・ボイル、脚本のジョン・ホッジをはじめ、主要なスタッフ、キャストが再結集。
いま、なぜ再びの「トレインスポッティング」なのか。
前作のラストで、仲間たちの金を持ち逃げしたマーク・レントンを筆頭に、やりたい放題の破天荒な青春を送っていた四人の若者たちも、もう40代も半ば。
20年という歳月の経過があったからこそ見えてくる、人生の悲哀と衰えぬダメ人間パワーは、彼らと同じだけ歳をとった観客にとって希望であり絶望だ。
嘗ての青春映画は容赦なく心にビシビシ刺さる、素晴らしき"中年映画"となって見事な帰還を果たした。
仲間たちを裏切り、麻薬の売買で得た大金を持ち逃げしたマーク・レントン(ユアン・マクレガー)が、20年ぶりに逃亡先のオランダから故郷のエディンバラに帰ってくる。
既に母は亡くなり、彼を迎え入れるのは年老いた父だけ。
若き日を共にした悪友たちが気になったマークは、唯一分け前を渡していたジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)を訪ねるが、彼は自殺の真っ最中。
成り行きで助けるマークだったが、スパッドは相変わらずどん底の生活を送っていた。
一方、時代遅れのパブを相続したシック・ボーイことサイモン(ジョニー・リー・ミラー)は、ブルガリア人のパートナー、ベロニカ(アンジェラ・ネディヤルコーバ)と組んで、彼女を買った富裕層の男たち相手のゆすり家業。
20年前の事件で懲役を喰らったベグビー(ロバート・カーライル)は、仮釈放申請が却下され今も塀の中だ。
それぞれ崖っぷちのマークとスパッド、サイモンは昔のわだかまりを抱えつつ、パブを売春宿に改装するプランを立てて動き出す。
そんな時、刑務所でわざと怪我をして偽装入院したベグビーは、まんまんと脱獄に成功。
エディンバラの妻子の元に戻ってくるのだが・・・・
1996年に公開された前作は、「人生を選べ」と言いつつも、ドラッグの幻想に絡め取られ、猛烈に疾走しながら、実際には何処へも行くことのできない若者達の話だった。
マーク・レントンとヤク中仲間は、不況のエディンバラで、何者にもなれない現実をドラッグで紛らわし、いつ終わるともしれない怠惰な日常を生きる。
セコイ犯罪で小銭を稼ぎ、パブで酔ってはナンパとケンカ、たまにドラッグ断ちを試みるが挫折の繰り返し。
だが、彼らの青春の日常は徐々に崩壊し始める。
スパッドはブタ箱にぶち込まれ、シック・ボーイはラリっている間に、生まれたばかりの我が子を亡くし、注射針からHIVに感染したトミーはエイズを発症し死亡。
どうにもならない現実を打破するために、最後に選んだのもまたドラッグの取引というしょうもなさだったが、少なくとも彼らはまだ若く、未来の可能性は無限で楽観的だった。
前作の刹那的青春の背景には、若者たちの中でマグマの様に胎動している、圧倒的な熱量があったのだ。
あれから早20年。
時代は移り変わり、「トレインスポッティング」が長編二作目の若手監督だったダニー・ボイルは、「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー賞を獲得して巨匠と呼ばれる様になり、あの映画が初主演だったユアン・マクレガーは、今ではジェダイ・マスターのオビ=ワン・ケノービとして世界中の誰もが知っている。
しかし、映画が始まって40代のおっさんになった四人が続々と登場すると、何も変わってないじゃないか!(笑
冒頭のルームランナーが暗喩する様に、彼らは20年経っても、前作のラストで足踏みしているだけなのだ。
当時まだ統合途中だったヨーロッパは、一回りしてブレグジットにより統合崩壊の危機にある。
偶然だろうが、金を奪って唯一旅だったはずのマークが、逃亡先のオランダで居場所を失い、止むを得ずエディンバラに帰ってくるのも、なんだか再発しつつある英国病の象徴に思えてくるのが可笑しい。
映像も音楽も作品世界は相変わらずスタイリッシュだが、触れば切れそうな危うさはもう無い。
四人は全く成長していないけれど、やはりもう後先考えずに突っ走れるほど若者ではないのだ。
久しぶりに戻った実家で、マークが昔のレコードをかけようとして、思わず止めてしまう描写がいい。
音楽はこの世界の時代性そのものであり、当時の音楽を聴けば自分が年をとったことを否が応でも突きつけられてしまうからだ。
20年前の事件のわだかまりを胸のうちに抑えつつ、結局のところ連むしかないマーク、サイモン、スパッドの三人と、マークの帰還を知り復讐に燃えるベグビー。
やってことは以前とほとんど変わらないが、若気の至りの自暴自棄も、それが20年も続けばもはやぶざまだ。
成長しない男たちとは違って、一人ちゃんとした大人になっている、ダイアンとの対比が切ない。
だが、そんな彼らを映画は決して絶望的なだけには描かないのである。
前作のドラッグに変わって、四人を縛るのは"過去"だ。
本作は完全な続き物で、この作品の中に前作を内包しているのだけど、現在の葛藤を生み出している過去の様々な因縁が、スパッドが彼なりの視点で書いている"回想録"によって、物語として昇華されるメタ的な構造になっているのが面白い。
モチーフは何処にも行けないダメダメな男たちで、やっていることも大して変わらないのだけど、前作があっての本作という入れ子構造と、20年の歳月の経過が全く別のアプローチを可能にしているのである。
四人は20年かけて振り出しに戻った訳だが、何処にも行けてないということは、逆に言えばここからまだ何処にでも行けるということだ。
彼らはこれから真の大人になるのかも知れないし、また同じループを繰り返すだけかも知れない。
とことん情けないおっさんたちの悪あがきは、今まさに何処かへと旅立とうとしている若者たちが観ると、多分あまりピンとこないのではないかと思う。
しかし、今四十代後半のほぼ同世代で、20年前に前作を観てすっかり魅了された元若者としては、成長できない自分の鏡像を見せられているようで、色々身につまされる話だった。
彼らをもっと残酷に描くことも出来たと思うが、微妙な希望を残してくれたのには、正直なところ思わずホッとした。
20年前の「トレインスポッティング」は、青春真っ只中だった私たちにとって「俺たちの映画」だったが、「T2 トレインスポッティング」も、中年になった私たちの、愛すべき「俺たちの映画」だったのである!
今回はスコットランドのクラフトビール醸造所、ブリュードッグの「ハードコア・インペリアルIPA」をチョイス。
名前の通り普通のビールでは物足りない人のための、ハードコアなIPAだ。
強いホップ感と驚くほどフルーティーで複雑なアロマが、ゆっくりと脳を酔わせてゆく。
ブリュードッグは、他にも様々なユニークなビールをプロデュースしていて、ハードコアほど強くなくていいという人には、ややマイルドな「パンクIPA」もオススメだ。

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