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ショートレビュー「3月のライオン 前編/後編・・・・・評価額1650円」
2017年04月26日 (水) | 編集 |
将棋だけ、じゃなかった。

幼くして事故で家族を亡くし、中学生の時にプロの棋士となった高校生、桐山零の葛藤と成長を描くリリカルな青春ストーリー。
原作もTVアニメも名作なので、必然的に期待のハードルは上がるが、二部作とはいえ、これだけ複雑な物語をよくぞまとめ上げた。
前後編277分の長尺を、全く飽きさせない。
大友啓史監督作品としては、「るろうに剣心」三部作以来の秀作だ。

主人公の桐山は、家族の死後に父の友人だったプロ棋士・幸田の家に引き取られるのだが、この時に幸田に「君は、将棋が好きか?」と聞かれたことが、全ての葛藤の発端となっている。
もしも「将棋が嫌い」と答えたなら、幸田は引き取ってくれただろうか。
何も持たない幼子は、生きるために将棋に縋るしかなかった。
自分の人生で、信じられるのは将棋しかない、将棋が強くなければ生きていけない。
そんな強迫観念を抱きながら、ずっと将棋と向き合ってきた桐山は、プロとなった今も、自分が本当に将棋を好きなのか分からない。

一方で、幸田の実子で共に育った義理の姉と兄は、天性の才能を持つ桐山を打ち破ることが出来ず、プロ棋士への道を閉ざされ、第二の人生に迷ったまま。
将棋によって救われる者、将棋によって絶望する者。
勝つか負けるか、ゼロサムの勝負師たちの世界では、誰もが将棋によって人生を左右されている。
そんな将棋漬けの生活を送る桐山にとって、初めて出来た安らぎの場が、和菓子屋・三日月堂の三姉妹の家だ。
将棋とはほとんど無縁の彼女たちとの交流を通して、桐山は幸田の家では味わうことの出来なかった家族の温もりを知ってゆく。

この作品の特徴は、破竹の勢いで出世街道を駆け上がる、プロ棋士として桐山を描く、ある種の競技スポーツものとしての面と、人間関係が苦手で視野の狭い少年が、世界の真実を知って行く成長ストーリーとしての面が、良い塩梅でバランスしながら融合していること。
基本的には、前編で桐山をはじめとする登場人物たちが、それぞれの葛藤を募らせ、後編では一人ひとりが、苦しみもがきながらも、答えを見つけてゆく構成となっている。
「君は、将棋が好きか?」という一つの問いから始まった桐山の葛藤は、何時しか自らを袋小路へと追い込み、孤立させてゆくが、物語を通してようやく彼は気付くのだ。
不幸なのは自分だけではなく、誰もが何かを背負って生きていること。
気づこうとしていなかっただけで、多くの人々の愛を受けながら成長していたこと。
そして、自分はやっぱり将棋が好きだということ。

桐山を演じる神木隆之介は、原作のイメージにぴったりだし、俳優陣は皆おしなべて好演。
ちょっと残念だったのは、染谷将太が特殊メイクで演じる二階堂の出番が、後半ではほとんどなくなってしまったこと。
美味しいキャラクターなのに勿体ない。
まあそれも含めて、全体的にややダイジェスト感はのこるものの、これは原作漫画のボリュームを考えれば致し方ないか。
佐々木蔵之介、伊藤英明、豊川悦司、そして羽生名人っぽいボスキャラには加瀬亮と、主だったところに主役級を配したプロ棋士の世界は、重量感があり対局のシークエンスは見応え十分。
将棋映画といえば二階堂、もとい村山聖の映画もあったけど、盤上の戦争の緊張感はむしろこっちが上だ。
もちろん、将棋に詳しい人の方がディープに楽しめるのは確かだろうが、知らなくても何が起こっているのかはだいたい分かる。
私も基本ルールを知っているくらいで、決して将棋通ではないけれど、いくつもの息詰まる対局には手に汗を握った。

素晴らしいのが山本英夫のカメラだ。
静的な将棋をモチーフにしながら、シネマスコープサイズを生かした、実に豊かな映画的な映像を構築しているのは見事。

舞台となる、隅田川周辺の下町の風情が、いい隠し味になっている。
三日月堂の三姉妹の家にいる、猫たちが可愛い。

今回は平成16年に起業し、湯島に本拠をおくクラフトビール、「アウグスビール ピルスナー」をチョイス。
丁寧に作られた、正統派ピルスナー。
酵母は、ヴァイエンシュテファン修道院のピルスナー酵母を取り寄せ、麦芽、ホップも本場産を使うというこだわり様。
スッキリ爽やか、飽きのこない端正な味わいだ。

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