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スプリット・・・・・評価額1600円
2017年05月16日 (火) | 編集 |
何が「スプリット(分裂)」するのか?

M・ナイト・シャマランによる、異色のサイコ・スリラー。
ひとつの体に23もの人格を宿す男と、彼に拉致・監禁された3人の女子高生。
なぜ男は彼女らをさらったのか?
密室からの脱出の方法はあるのか?
やがて、男の中から現れる、想像を絶する24番目の人格とは何者か?
謎の男をジェームズ・マガヴォイが演じ、複数の人格を相手に、丁々発止の腹の探り合いを仕掛ける女子高生ケイシーにアニヤ・テイラー-ジョイ。
僅か900万ドルで作られた低予算映画ながら、シャマラン監督作品としては「シックス・センス」以来となる、全米三週連続一位を記録する大ヒットとなった。
※ラストと核心部分に触れています。

高校生のケイシー(アニヤ・テイラー-ジョイ)は、クラスメイトのクレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の誕生日パーティに招かれ、帰りにクレアの親友のマルシア(ジェシカ・スーラ)と共に、車で送ってもらうことになる。
ところが、駐車場で見知らぬ男(ジェームズ・マカヴォイ)が突然車に乗り込んできて、彼女らの顔にスプレーを吹きかける。
三人は眠らされ、気づいた時には窓の無い密室に監禁されていた。
拉致した男の奇妙な言動に恐怖した三人は、何とか脱出するために頭をひねる。
すると、扉の向こうでさっきの男と女性の話声がする。
声の限りに叫び、助けを求める三人だったが、扉を開けて入ってきたのは女装し、全く別人の雰囲気を纏った男だった。
しばらくすると、男は子供の様な屈託のない笑顔を見せ「ボク、ヘドウィック。9歳だよ」と話しかけてくる。
彼は、その心にいくつもの人格を宿す多重人格者だった・・・・


前作「ヴィジット」に続いて、M・ナイト・シャマランの作家性が生かされた、ウェルメイドな佳作だ。
この人の持ち味は、B級映画の題材を、思わせぶりにA級っぽいテイストで撮って、「なんだかよく分からないけど、凄そう」と思わせてしまうこと。
「レディ・イン・ザ・ウォーター」の様に外連味を重視しすぎて自滅したり、「アフター・アース」など、雇われ監督として撮った作品はただただ空虚だったりするが、素直に独特のB級感覚を発揮した時のシャマランは面白い。

誘拐された3人の女子高生、ケイシー、クレア、マルシアと、ジェームズ・マカヴォイが怪演する一つの体に23もの人格を持つ男。
まあ、実質的にはほぼ4人格しか出てこないのだが、これは尺を考えると致し方あるまい。
多重人格は「サイコ」の昔から、ホラーやサスペンスではおなじみの要素だが、女子高生たちが如何にして男を出し抜いて脱出するのかというスリルと、謎の24番目の人格への興味で引っ張る。
超自然的な要素も、やり過ぎずにいい塩梅だ。

「スプリット」というタイトル通りに、本作では様々な要素がスプリットされる。
まずは元人格のケヴィン以下、23の別人格に分裂した男の心。
それぞれの人格は主導権を巡ってけん制し合い、原則的にある人格が現出している時に起こったことは、他の人格には悟られないが、協力し合っている人格同士は同時に現出して話し合ったりすることも可能なようだ。
来年公開される「X-MEN」の新シリーズで、“マジック”を演じる事が決まっている、アニヤ・テイラー-ジョイ演じるケイシーは、多重人格のこの仕組みを使って、男にだまし合いを仕掛けるのである。
またケイシーら誘拐された女子高生は、幾つもの扉によって外界からスプリットされている。
僅かな隙間から見える断片的な情報は、希望と絶望の両方を彼女らにもたらす。
やがて脱出を図ったクレアとマルシアは、それぞれケイシーとは別の部屋にスプリットされ、お互いの生死すら分からなくなる。
彼女たちが閉じ込められている、迷路のような地下施設のデザインもいい。
物語のラストでその場所がどこだかが分かるのだが、施設の正体そのものもメタファーとして機能している。
ビジュアルでは、精神科医のフレッチャーのアパートの螺旋階段も印象的だ。
自分が誰と対峙しているのか分からなくなる、ミステリアスな心の迷宮への導入・脱出として効果的に使われている。

物語的には、現在進行形のメインプロットと、ケイシーの過去を描くサブプロットが並行して語られ、二つの話の関連性と集束のさせ方も上手い。
マカヴォイのキャラクターは、幼少期の虐待によって、いくつもの人格を作り出したのだが、多重人格を進化の一形態だと考えるフレッチャーとのセラピーによって、ある種の優生思想を持つようになっている。
彼の心に住む何人かの人格は、24番目の人格が現れることによって、肉体をも進化を遂げ、人類を超えるミュータントとして生まれ変わると信じているのだ。
そのための生贄として、何の苦労も知らない怠惰な女子高生が選ばれたというワケ。
もっとも、彼が狙っていたのは、以前イタズラされたクレアとマルシアであって、ケイシーはたまたま巻き込まれただけ。
実は彼女自身も心に大きな傷を抱えていて、彼女の過去を描くことによって、二人の間にある同根の関係が徐々に明らかになり、クライマックスで24番目の出現における肉体的な覚醒と、それまで対立関係にあった両者が、共に精神的に解放されるという意外な展開に繋がっている。

もっとも、この辺りはB級をB級のまま終わらせない、シャマラン映画に慣れ親しんだ観客には驚きは少ないだろう。
本作のユニークさは、24番目の人格とその目指す先が示唆するように、サイコ・スリラーの構造に、アメコミヒーローものの世界観を裏返して内包していることにある。
マーベルやDCに代表されるアメコミヒーローは、マスクを被ることによって普段とは別人格となるが、彼らの多くはミュータント、あるいは肉体改造や機械の力を借りて進化した人間で、特に「X-MEN」シリーズにおけるミュータントは本作の多重人格と同じく差別の対象だ。
ならば鋼の肉体を持つ24番目の人格は、新たな進化の方程式によって出現した「X-MEN」の裏返しであり、アンチヒーローなのである。
そして、シャマランの本当の狙いは、物語の最後に明確になる。
ダイナーで事件を伝えるニュースが流れ、客の一人が「15年前の事件を思い出す。あの犯人、だれだっけ?」と言うと、カウンターにいた男が答える。
「ミスター・グラスだ」と。
しかもこの男、ブルース・ウィリスではないか!

15年前に公開された「アンブレイカブル」は、シャマラン流のアメコミヒーローの再解釈であった。
ブルース・ウィリスの役は、どんな事故にあってもかすり傷すら追わない男・ディヴィッド。
ある時彼は、サミュエル・L・ジャクソンが演じる極端に体が弱いミスター・グラスと出会い、自分がコミックに出てくるようなヒーローだと教えられる。
最初は信じないディヴィッドも、次第にヒーローとしての使命に目覚め、自分を導いてくれたミスター・グラスに感謝するのだが、実は不死身の人間を探し出すために、ミスター・グラス自身が数々の重大事故を引き起こしていたことが明らかになる。
ヒーローとヴィランは表裏一体で、同じ存在が運命の悪戯によって両極端に“スプリット”されただけ。
見方によっては、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」の構造を先取りした作品であり、アメコミではないものの、「ダイ・ハード」シリーズで、絶対死なない男を演じていたブルース・ウィリスを不死身の男役に当てるという、茶目っ気のあるキャスティングを含めて、なかなかに斬新な作品だった。
しかし、15年目にして突然の続編とは。
そう言えばシャマランは、「アンブレイカブル」公開時に、三部作構想があると語っていたような。

シャマランが、長くほったらかしだった三部作を、いつ再開させようと考えたのかは分からないが、サミュエル・L・ジャクソンが、マーベル作品でヒーローを次々スカウトするニック・フューリー役を演じたあたりなのではないかと推測する。
フューリーはまさにミスター・グラスの再反転版のキャラクターだし、既にアナウンスされている次回作「グラス」は、拡大を続けるマーベル・シネマティック・ユニバース、あるいはDCエクステンデッド・ユニバースに対するシニカルなアンチテーゼとして、なかなか面白そうだ。
そう考えると、アニヤ・テイラー-ジョイの出演も、「X-MEN」とどっちが決まるのが早かったのか気になる。

今回は「スプリット」ならぬ「スピリット」にしよう。
ジェームズ・マガヴォイの出世作といえば「ナルニア国物語」のタムナスさん。
タムナスさんはしばしば羊の姿で描かれる牧神フォーン。
という訳で、スペルは違うけどラム酒の「レモン・ハート デメララ」をチョイス。
古谷三敏の漫画「BAR レモン・ハート」のタイトルでも知られる、1804年創業のラムの老舗だが、一時閉鎖され、現在はカナダのハイラム・ウォーカーから発売されている。
バリエーションも豊富だが、デメララは濃い褐色のダークラム。
黒糖の香は豊だが、甘味はそれほど強くなく、比較的すっきりとした風味。
CPも高く、カクテルベースとしても使い勝手が良いが、おススメはロックだ。

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