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メアリと魔女の花・・・・・評価額1550円
2017年07月11日 (火) | 編集 |
にわか魔法少女の大冒険。

ひょんなことから一晩だけ魔女となった、自分に自信のない女の子が、魔法界のマッドサイエンティストの暴走を止めため、不思議な世界で冒険を繰り広げる。
「思い出のマーニー」の西村義明プロデューサー、米林宏昌監督ら嘗てのスタジオジブリのスタッフが中心となって立ち上げた新会社、スタジオポノックの第一作。
英国の作家、メアリー・スチュアートの小説「The Little Broomstick(新訳 メアリと魔女の花)」を、米林監督と「かぐや姫の物語」の坂口理子が脚色している。
豪華な声優陣も含めて、盤石の布陣で挑んだ大作だが、はたして若者たちの新スタジオはジブリの陰から逃れられたのだろうか。
※核心部分に触れています。

深い森が広がる、赤い館村に引っ越してきた11歳の少女メアリ(杉咲花)は、ある日、霧の中で美しい青い花を見つける。
それは嘗て魔女の国から盗み出され、7年に1度しか咲かない禁断の花“夜間飛行”だった。
花の力で一夜限りの魔女となったメアリは、積乱雲の向こうにある魔法界の最高学府、エンドア大学にやって来る。
校長のマダム・マンブルチューク(天海祐希)は、花の力で魔法を使えるメアリを、最高レベルの才能を持つ本物の魔女と勘違いして入学を許可。
しかし、メアリが夜間飛行を持っていることに気付いたマンブルチュークは、メアリの友だちのピーター(神木隆之介)を誘拐し、花を渡すことを要求。
実は、エンドア大学では、マンブルチュークと魔法科学者のドクター・デイ(小日向文世)によって、ある秘密の実験が行われており、夜間飛行はその最終実験に欠かせないものだったのだ。
メアリは魔法書「呪文の神髄」を使って、全ての魔法を終わらせようとするのだが・・・


米林監督の「思い出のマーニー」を最後に、ジブリが制作部門を閉鎖して3年。
大きすぎるブランドの終焉は、その反作用として、今までジブリの陰に隠されていたアニメーション作家たちに、スポットライトを当てるという結果をもたらした。
新海誠の「君の名は。」、山田尚子の「声の形」、片淵須直の「この世界の片隅に」の相次ぐ大ヒット、そして湯浅政明の「夜明け告げるルーのうた」が、高畑勲以来22年ぶりに、アヌシー最高賞に輝いたのは記憶に新しい。
これら高い作家性を持つ傑作群の登場と、その興行的あるいは批評的成功は、日本の長編劇場用アニメーションが、興行形態を含め地殻変動を起こしたことを示している。

そんな中、旧ジブリのスタッフを中心として設立されたスタジオポノックは、自分たちがジブリの後継者であることを高らかに宣言した。
本作の「魔女、ふたたび。」というキャッチコピー、主人公の横顔を意匠したスタジオのロゴは、明らかにジブリを連想させるし、西村プロデューサーは、製作発表記者会見で「ジブリの血を引いた作品」と語っている。
要するにポストジブリの時代に、すっぽりと空いたままの旧ジブリのポジション、正確に言えば宮崎駿が担ってきた大衆エンターテイメント路線のポジションを、客層ごとそのまま引き継ごうという訳だ。
結果的に、その目論みはまずまずの成功と共に、呪縛をもたらしていると思う。

本作を観た観客が確実に感じる既視感は、ある程度意図されたものだろう。
少女の魔女は「魔女の宅急便」だし、巨大な積乱雲の向こうにあるエンドア大学は「天空の城ラピュタ」、人間の子どもが図らずも不思議な世界へ招かれるのは「千と千尋の神隠し」、動物たちの反乱は「もののけ姫」の引用と言える。
ジブリ映画、もとい宮崎映画全部入りの世界観だ。
ふとした偶然から魔力を手に入れたメアリは、意思を持つ魔法の箒によってエンドア大学に連れてこられるのだが、ちょっとホグワーツっぽいこの大学では、秘密裏に恐ろしい実験が行われている。
それは誰もがあらゆる魔法を使えるようにするために、人間をより高次の存在に変身させることで、実験を完成させるためには、神秘の力を秘め、7年に一度しか咲かない夜間飛行が必要になる。
マンブルチュークとドクター・デイも元々は普通の教育者だったのだが、過去に一度夜間飛行を手にしてしまったことで、未知の領域に魔法を進化させられるという考えにとりつかれてしまった。
この映画の世界では、魔法と科学は融合していて、いき過ぎた欲望の追求で起こる事件は、思いっきり原発事故のメタファー
夜間飛行が青白い光を放つのは、原発で見られるチェレンコフ光を思わせるし、クライマックスには“メルトダウン”の描写すらあるのだ。
まあ、そんな社会的テーマ性までもが、3.11後に「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」という横断幕を掲げたジブリの魂を継承しているのである。

しかし、当然ながら米林宏昌と宮崎駿の作家性は大きく異なる。
例えば、宮崎作品における少年少女のキャラクターは、基本的に天真爛漫でポジティブ。
彼らの抱えている葛藤は、多くの場合外部からもたらされる危機が要因だ。
対照的に本作のメアリは、自分が大嫌いで、自信を持てないネガティブな少女として造形されている。
内的な要因による葛藤は「思い出のマーニー」の主人公・杏奈にも通じ、宮崎作品の少年少女が、大人からみた理想の子どもだとすると、米林作品に登場するのは、よりリアルで作者自身の実感に近い少年少女像と言えるだろう。
キャラクター観の違いは、米林監督のデビュー作で、宮崎駿が脚本を担当した「借りぐらしのアリエッティ」にも見て取れる。
米林監督は宮崎駿の脚本をそのまま使わず、取捨選択して再構成していったそうだが、小人の少女と重い病気を抱えた人間の少年の物語では、おそらくは脚本が描き出そうとした、世界の理をも含む大きなテーマと、演出家の志向する、より小さくパーソナルなテーマが、一本の作品の中で鬩ぎ合っていた。
そのアンバランスさが、思春期の不安や希望と結びついて、面白い効果を生んでいたのだが、本作では宮崎映画的なテイストを追求するあまり、少々作家性を押さえすぎている様に思う。

米林監督は、どちらかと言えば本作の様なノンストップ活劇よりも、リリカルな人間ドラマの方が得意なのだろう。
もちろん、彼は元々敏腕アニメーターだし、画をダイナミックスに動かすことに関しては誰よりも上手く、それは本作におけるスペクタクルな名ショットの数々からも見てとれる。
ただこの人は、演出家としては非常に上品で、宮崎駿のように、多少論理がぶっ壊れてしまっても、勢いで全てを押し流してしまうような、強引な演出はおそらく出来ない。
今回は冒険ファンタジーという題材が重なるだけに、観客に「もし宮崎駿が演出していたら?」を想像させてしまうのは苦しい。
おそらく、動物たちの反乱は、嘘をついてでも破壊スペクタクルと組み合わせるだろうし、マンブルチュークやドクター・デイのキャラクターは、確実にもっと狂気を迸らせるだろう。
米林監督の資質を生かすには、ややダイジェスト的に展開する脚本を更に細かく描き込み、特にメアリの成長物語の部分を明確に軸とすべきだった。
特に、冒頭で魔女の花を盗み出す赤毛の少女の正体と、メアリとの関わりは明らかに描き足りていない。
本作を鑑賞した後に、プロット上問題のある部分、描写が足りない部分を書き出してみたが、102分とコンパクトな上映時間にプラス30分の尺があれば、さらに魅力的な物語が構築出来たのではないかと思う。
もっとも、尺が伸びるということは、そのまま製作費の増大につながるし、新スタジオとして冒険し難いのも理解できる。

「メアリと魔女の花」には色々と欠点はあるけど、それは嘗てのジブリ映画も同じ。
少なくともこの映画は、幾つかの宮崎作品の様に、途中から破綻してはいない。
作家映画と考えると、やや突き抜け切れていないが、大人も子どもも楽しめるファミリームービーとして十分によく出来ているし、新たなブランドの一発目としては、賞賛して良い作品だと思う。
少し気になったのは、メアリが変身魔法を解く時に「魔法なんかいらない!」と言い切ること。
これは、テーマにつながる決め台詞としてちょっとアバウトすぎる。
魔法の世界は魔法の存在が前提なのだから、これでは彼らの存在そのものを否定して、投げ出しただけになってしまう。
変身実験=原発事故と置き換えると「科学なんかいらない」という、一番身も蓋もない結論である。
一時だけ魔女になったものの、人間として生きてゆく自分には必要ない、という意味であることは分かるのだが、一番印象に残る台詞だけにもうちょっと考えて欲しかったな。
ともあれ、宮崎駿の引退撤回と共に、本家ジブリも再び動き出した。
重鎮vs若手の、継承を巡る真の勝負はこれからだ。
本作の興行的成功を祈ると共に、スタジオポノックの次回作を、楽しみに待ちたい。

夜間飛行のデザインは何となくブルーベリーの実に見える。
今回は、偶然にも映画のキャラクター名に似ているドクターディムースの「ブルーベリー ワイン」をチョイス。
ブルーベリー100%から作られる、ドイツ製のブルーベリーワイン。
葡萄のワインよりアルコール度数が低く、飲みやすいので強いお酒が苦手な人にもお勧めできる。
そのままで十分美味しいが、暑い夏には氷をいれてもよし、ソーダで割ってもよし。
冬にはシナモンやフルーツジュースを加えて、ホットワインにしても美味しい。

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